★ハワイで暮らす日々　BY CHIYO★

ハワイでピアノを習う子が、必ずしもお金持ちとは限らないけれど、
ある程度は、経済的に余裕がある家庭の子供だといえるだろう。

私の生徒に、１４歳と１２歳のフィリピン人の兄弟がいる。
お兄ちゃんの方はもうかれこれ、８年近くも通っているので、
私も両親とは長年の付き合いという感じだ。

その家ではおかあさんがどうしても女の子がほしくて、
３人目の子供を産んだのだが、また男の子だった。
さすがにもうあきらめたそうだが、その３番目の子供ももう５歳。
この夏からピアノを始めるという。

私のピアノスタジオでは、月謝は１ヶ月分を月初めにいただくことになっている。
でも、その兄弟は、いつも月謝を持ってくるのが遅れる。

時々月初めに小切手を持ってきて、「あら、めずらしい」と思っても、
その後おかあさんから電話が来て、
「悪いけど、残高の関係で、３週目までキャッシングしないでほしい」などと言う。

その家族はとっても音楽が好きで、おとうさんも昔ピアノを習ってたというし、
共働きの両親に代わって、たまにおじいちゃんが孫を連れてきたりする。

特別裕福な家庭でもないし、子供２人の個人レッスンの月謝は
けっこう大変なのかもしれない。
と思って、私はいつも月謝の遅れに対しては
「Ｎｏ　ｐｒｏｂｌｅｍ」と言ってきた。

さらに、ちょっとしたエクストラの曲などの楽譜は、
いちいち買うのも大変かと思い、私の本をコピーしてあげたりもしていた。

なのに・・・！
今日その子たちのレッスンが終わった後、地下のスタジオからお店に上がり、
ふと外を見ると、ぴかぴかのベンツにその兄弟が乗り込んでいるではないか。

運転しているのは、おじいちゃん。
私は思わず外に出て、窓から無邪気に手を振っている弟に
「これ、おじいちゃんの車？　素敵ねえ～」ときいてみた。

すると「ううん、これダディーの車だよ！」と得意そうに答える弟。
「すごい、ベンツの新車じゃない、いつ買ったの？」と私。
「えーっと、去年の冬かな。　まだ１年経ってないよ」とおにいちゃん。

あっそう。
つまり、ピアノの月謝は、いつも後回しにされてたわけね。
要するに、二の次ってことね。

おとうさんが「今月子供たちの歯医者に＄４００かかっちゃって」とか、
おかあさんが「子供が３人いると、お金がかかってほんとに大変なの」とか
いつも言ってたけど・・・

いいじゃない、ベンツの新車が買えるなら！
先生よりずーっとお金持ちじゃない！

もちろん、”先生よりお金持ち”の生徒は他にもいっぱいいる。
私が知ってるだけでも、古いのもあれば新しいのもあるが、
ベンツで子供の送り迎えをしてる親が、５、６人はいる。

別にベンツだけがお金持ちの象徴というわけではないが、
やはりハワイでも、メルセデスというのは、一種のステイタスシンボルだろう。

私もこの間帰国した時に、冗談で
「私もがんばって仕事して、そのうちベンツでも乗ろうかな」と言ったら、
父に「やめなさい、おまえには似合わないから」と言われたけど。
どうせ乗れないけど。

それにしても・・・。
私の子供の頃は、雪の中を（冬だけだけど）、バスでピアノに通ったものだ。
それを、ベンツで送り迎えとは。

来週からあの子たちを、ビシビシ鍛えてやる！
というのは冗談だけど（笑）