JEWEL
日記・グルメ・小説のこと727
読書・TV・映画記録2761
連載小説:Ti Amo115
連載小説:VALENTI151
連載小説:茨の家43
連載小説:翠の光34
連載小説:双つの鏡219
完結済小説:桜人70
完結済小説:白昼夢57
完結済小説:炎の月160
完結済小説:月光花401
完結済小説:金襴の蝶68
完結済小説:鬼と胡蝶26
完結済小説:暁の鳳凰84
完結済小説:金魚花火170
完結済小説:狼と少年46
完結済小説:翡翠の君56
完結済小説:胡蝶の唄40
完結済小説:琥珀の血脈137
完結済小説:螺旋の果て246
完結済小説:紅き月の標221
火宵の月 二次創作小説7
連載小説:蒼き炎(ほむら)60
連載小説:茨~Rose~姫87
完結済小説:黒衣の貴婦人103
完結済小説:lunatic tears290
完結済小説:わたしの彼は・・73
連載小説:蒼き天使の子守唄63
連載小説:麗しき狼たちの夜221
完結済小説:金の狼 紅の天使91
完結済小説:孤高の皇子と歌姫154
完結済小説:愛の欠片を探して140
完結済小説:最後のひとしずく46
連載小説:蒼の騎士 紫紺の姫君54
完結済小説:金の鐘を鳴らして35
連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~152
連載小説:狼たちの歌 淡き蝶の夢15
薄桜鬼 腐向け二次創作小説:鬼嫁物語8
薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て20
完結済小説:玻璃(はり)の中で95
完結済小説:宿命の皇子 暁の紋章262
完結済小説:美しい二人~修羅の枷~64
完結済小説:碧き炎(ほむら)を抱いて125
連載小説:皇女、その名はアレクサンドラ63
完結済小説:蒼―lovers―玉(サファイア)300
完結済小説:白銀之華(しのがねのはな)202
完結済小説:薔薇と十字架~2人の天使~135
完結済小説:儚き世界の調べ~幼狐の末裔~172
天上の愛 地上の恋 二次創作小説:時の螺旋7
進撃の巨人 腐向け二次創作小説:一輪花70
天上の愛 地上の恋 二次創作小説:蒼き翼11
薄桜鬼 平安パラレル二次創作小説:鬼の寵妃10
薄桜鬼 花街パラレル 二次創作小説:竜胆と桜10
火宵の月 マフィアパラレル二次創作小説:愛の華1
薄桜鬼 現代パラレル二次創作小説:誠食堂ものがたり8
火宵の月腐向け転生パラレル二次創作小説:月と太陽8
火宵の月 人魚パラレル二次創作小説:蒼き血の契り1
黒執事 火宵の月パラレル二次創作小説:愛しの蒼玉1
天上の愛 地上の恋 昼ドラパラレル二次創作小説:秘密10
黒執事 BLOOD+パラレル二次創作小説:闇の子守唄1
FLESH&BLOOD 二次創作小説:Rewrite The Stars6
PEACEMAKER鐵 二次創作小説:幸せのクローバー9
黒執事 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:碧の花嫁5
黒執事 現代転生腐向けパラレル二次創作小説:君って・・5
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄1
火宵の月 芸能界転生パラレル二次創作小説:愛の華、咲く頃2
火宵の月 ハーレクインパラレル二次創作小説:運命の花嫁0
火宵の月 帝国オメガバースパラレル二次創作小説:炎の后0
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士2
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ5
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て5
薄桜鬼 現代妖パラレル二次創作小説:幸せを呼ぶクッキー9
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法7
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁12
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:幸せの魔法をあなたに3
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華14
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女0
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜18
火宵の月 昼ドラ大奥風パラレル二次創作小説:茨の海に咲く華2
火宵の月 転生航空風パラレル二次創作小説:青い龍の背に乗って2
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊1
火宵の月×薔薇王の葬列 クロスオーバー二次創作小説:薔薇と月0
金カム×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:優しい炎0
火宵の月×魔道祖師 クロスオーバー二次創作小説:椿と白木蓮1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月10
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:それを愛と呼ぶなら1
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母13
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫20
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:黄金の楽園0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳥籠の花嫁0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:蒼き竜の花嫁0
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥7
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師4
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥27
火宵の月 転生昼ドラパラレル二次創作小説:それは、ワルツのように1
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計9
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器1
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華0
火宵の月 現代ファンタジーパラレル二次創作小説:朧月の祈り~progress~1
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:ガラスの靴なんて、いらない2
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師1
火宵の月 吸血鬼オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:黎明を告げる巫女0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:光の皇子闇の娘0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:闇の巫女炎の神子0
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く1
火宵の月 昼ドラファンタジー転生パラレル二次創作小説:Ti Amo~愛の軌跡~0
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~3
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して20
火宵の月 異世界ハーレクインファンタジーパラレル二次創作小説:花びらの轍0
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達1
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花2
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔6
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~1
火宵の月 千と千尋の神隠し風パラレル二次創作小説:われてもすえに・・0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう8
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇2
火宵の月×天愛クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー0
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい4
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう)10
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり2
火宵の月×ハリー・ポッタークロスオーバーパラレル二次創作小説:闇を照らす光0
火宵の月 現代転生フィギュアスケートパラレル二次創作小説:もう一度、始めよう1
火宵の月 異世界ハーレクインファンタジーパラレル二次創作小説:愛の螺旋の果て0
火宵の月 異世界ファンタジーハーレクイン風パラレル二次創作小説:愛の名の下に0
火宵の月 和風転生シンデレラファンタジーパラレル二次創作小説:炎の月に抱かれて1
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず1
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰2
火宵の月 異世界ファンタジーハーレクイン風昼ドラパラレル二次創作小説:砂塵の彼方0
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁1
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「PECEMEKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ピスメでオメガバースパラレルです。α土方さん×Ω沖田さんという設定です。オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。「事件の下手人が捕まらないと、安心して寝れやしないわ。」「そうですね。」 主である少女―美佐の元に仕えて数年経つが、美佐は大店の娘“らしく”我儘な性格で、良く自分を始めとする使用人達を振り回して困らせていた。「お嬢様、わたくしはこれで失礼致します。」「梓、花王堂でこのお菓子を買って来て頂戴。」「かしこまりました。」「頼んだわよ。」美佐の部屋から出た梓は、深い溜息を吐いた。 その時、下男の三郎が梓の前を通りかかった。「梓、今から出掛けるのかい?」「はい。」「お嬢様の我儘にも困ったものだね。」「ええ、本当に。」「気を付けてね。」「はい。」 梓は屋敷から出ると、美佐いきつけの和菓子屋・花王堂へと向かった。「すいません、この菓子を一つ下さいな。」「はい。」 美佐のお気に入りの菓子を買って屋敷へと戻る途中、梓は何やら人だかりが屋敷の前に出来ている事に気づいた。「何かあったのですか?」「あんた、無事で良かったねぇ。さっき、あそこのお嬢さんが賊に殺されたんだよ。」「お嬢さんだけじゃないよ、家族や使用人も皆殺しだってさぁ・・」(お嬢様が、殺された・・) つい先程まで、自分に対してぞんざいな口を利いていた美佐が殺されたなんて、梓は信じられなかった。「大店の華屋が賊に襲われたそうだ。」「家族と使用人は皆殺しだったそうだ。」「惨いもんだぜ・・」 総司は道場で稽古をしていると、中庭の方から華屋の事件の事を話している隊士達の会話を聞き、思わず持っていた木刀を落としてしまった。「総司、どうした?」「すいません、身体が怠くて・・」 そう言った後、総司は倒れた。「総司が倒れた!?あいつは大丈夫なのか、勝っつぁん!?」「あぁ、総司なら大丈夫だ。医者が言うには、軽い貧血らしい。」「そうか。」「それよりもトシ、この前掃除を蔵で抱いただろう?」「あぁ、それがどうした?」「もしかしたら、総司は・・」勇の言葉を聞いた歳三は、彼が何を言いたいのかがわかった。「その時は、その時だ。」「そうか・・」 そんな二人の会話を、総司は自室で聞いていた。(子供、かぁ・・) 男女問わず妊娠できる身体であるΩ。 だが、男性の妊娠・出産は、女のそれ以上に命に関わるという。 歳三との子は欲しいが、己の命と引き換えとなると、自分の命か、子供か―その選択を迫る時が、必ず来るのだろうか。「総司、どうした?」「いいえ、何でもありません。それよりも土方さん、あの事件はどうなったんですか?」「華屋の事件か?下手人は、まだ捕まっていないようだ。」「そうですか。実はわたし、殺された娘さん・・美佐さんとは面識があるんです。いや、あった、と言った方が正しいですね。」 総司がそう言うと、美佐と会った日の事を話した。 その時美佐は、近々結婚する予定があるのだという。「相手は誰なのかわかりませんでしたが、とても幸せそうでした。それなのに・・」「そうか。総司、ゆっくり休んでいろ。」「わかりました。」 歳三が自室から出た後、総司は溜息を吐いた。「ここか・・」 屯所を出た歳三は、凄惨な事件現場へと向かった。 かつては賑わっていた華屋は荒れ果て、朽ちるのを待つだけの状態となっていた。(短い間でこんなに寂れるものとは、何とも・・) 歳三が華屋の中に入ると、血痕と思しき赤黒い染みが畳の上に広がっていた。 歳三が奥へと進もうとした時、彼は背後に強烈な視線を感じて振り向くと、そこには一人の青年が立っていた。「あ・・あぁ・・」「失礼だが、貴殿は?」「ひぃぃ~!」 歳三が青年に声を掛けると、彼は素っ頓狂な悲鳴を上げて逃げていった。(何だったんだ、あいつ・・) 歳三がそんな事を思いながら華屋から外へと出ると、彼は一人の娘と目が合った。「あなたは・・」「俺は壬生浪士組の土方だ。あんた、華屋の・・」「わたしは、美佐お嬢様の身の回りのお世話をしておりました、梓と申します。」「ここへは、お嬢様の弔いに?」「はい。お嬢様を殺してしまったのは、わたしですから。」 梓はそう言って華屋の前で手を合わせると、美佐の冥福を祈った。「それは、一体どういう意味ですか?」「あの日、わたしはお嬢様を独りにしてしまいました。」 梓はあの日から、美佐を独りにさせてしまった事を後悔していた。「あなたの所為ではありません。」「どうか、お嬢様を殺した奴らを捕まえて下さいませ!」 梓はそう叫ぶと、歳三に向かって頭を下げた。「梓ちゃん、あんたにお客様え。」「わかりました。」(こんな時間に、うちを訪ねて来る客なんて・・) 梓がそんな事を思いながら新しい奉公先の邸から外へと出ると、そこには誰も居なかった。(やっぱり・・) 梓が屋敷の中へと戻ろうとした時、彼女は何者かに胸を刺された。「あなたが・・お嬢様を・・」 梓の意識は、闇の底へと落ちていった。「華屋の女中が、土左衛門で見つかった。」にほんブログ村
2023年12月03日
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「PECEMEKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ピスメでオメガバースパラレルです。α土方さん×Ω沖田さんという設定です。オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。「辰之進様、どうなさったのです、鼻歌などをお歌いになって・・」「いや、何でもない。」 上機嫌に鼻歌を歌いながら三味線を奏でる夫の姿を辰之進の妻・愛梨は訝し気に見ていた。「そうですか・・」 愛梨はそう言って自室に引き籠もると、溜息を吐いた。 辰之進と夫婦になって三年経つが、彼との間に子が授からないでいた。 愛梨と辰之進は、政略結婚で結ばれた。 Ωである愛梨は、幼い頃麻疹に罹り、その後遺症で子が授かりにくい身体になってしまった。 親族からは、“とんだ外れ嫁を貰ったものだ”と陰口を叩かれ、肩身が狭い思いをしていた。 そんな愛梨の事などを知らずに、辰之進は榮之助と共に毎日遊び歩いている。 榮之助は、愛梨の親戚筋に当たる少年で、Ωだった。 Ωが同じ屋根の下に二人居るのは珍しいようで、周囲から、“石女の嫁の代わりに側室代わりとして小姓を置いているのではないか”という根も葉もない噂話をしていた。「榮之助、お前にひとつ、聞きたい事があるの。」「聞きたい事?」「あなた、旦那様と・・」「辰之進様とは、番っておりません。」「そう・・最近、旦那様の機嫌が良いのだけれど、あなた何か知っていないかしら?」「そういえば・・」 榮之助は愛梨に、菓子屋で会った青年について話した。「そう・・」 総司は、その日巡察で洛中を歩いていた。(ん?) 背後から、何処か悪意を感じさせるような視線を浴びて振り向くと、そこには誰も居なかった。「沖田組長、どうかなさったんですか?」「いいえ、何でもありませんよ。」(確かに、感じたんだけれどなぁ・・) 屯所の中で素振りをしながら、総司はあの“視線”の事を考えていた。「総司、どうした?」「土方さん・・」「呼吸が少し乱れているぞ。巡察中、何かあったのか?」「はい、それが・・」 総司が歳三に、巡察中に感じた“視線”の事を話すと、彼は眉間に皺を寄せた。「そいつは人攫いかもしれねぇな。」「人攫い?」「最近、Ωの人攫いがこの辺りで出没しているんだとよ。」「物騒ですね。」「あぁ、だからお前も攫われないようにしろよ。」「大丈夫ですって!」 そんな事を歳三と話していた総司は、また次の日も“視線”を感じた。(また、だ・・)“視線”の正体が判らないまま総司が屯所に戻ると、その前に一人の青年が立っていた。「あなたは・・」「息災で何よりだ。」 青年はそう言うと、総司に微笑んだ。「どうして、ここがわかったんですか?」「君の匂いを辿って来た。」 彼は、総司を抱き締めると、その唇を塞いだ。「やめて・・」「漸く見つけた・・わたしだけの、“運命の番”。」「てめぇ、“俺の”総司に何をしていやがる?」 歳三は、そう言うと青年に刃を突きつけた。「そなた、あの時菓子屋に居た者だな?名を名乗れ。」「てめぇの方から名乗りやがれ。」「わたしは会津藩士・市原辰之進と申す。そなたは?」「壬生浪士組副長・土方歳三だ。総司からその汚い手を離しやがれ!」「土方さん・・」「そなた、この者の“番”か?」「だとしたら、どうした?」 歳三と青年は、暫くの間睨み合ったが、やがて青年は刀を鞘におさめた。「また会おう。」「変な野郎だ・・」 自分の前から立ち去ってゆく青年の背中を睨みつけた歳三が総司の方を見ると、彼は荒い呼吸をして苦しそうにしていた。「総司、どうした?」「土方さん・・」 歳三が総司に近づこうとした時、彼から噎せ返るような甘い匂いが漂って来た。「助・・けて・・」 総司は潤んだ目で歳三を見つめると、彼の胸に顔を埋めた。「今、助けてやる。」 歳三は総司を横抱きにすると、そのまま蔵へと向かった。(あいつ・・) 歳三の脳裏に、自分に対して挑発的な笑みを浮かべていた青年の顔を思い出した。 彼が、総司に対して何かを放ったのだろうか。 歳三は総司の“熱”を鎮める為、彼を抱いた。「土方、今まで何処に行っていた?」「あんたが知らなくてもいい事だ。」「ふん、生意気な口を利きおって。」 芹沢はそう言った後、鉄扇を歳三の頭上に振り翳した。「芹沢先生、こんな男放っておいて行きましょう。」「また、女の所か?」「貴様には関係のない事だ。行くぞ、新見。」「はい、先生!」(何とかしねぇとな。) その日の夜、Ωの娘が人攫いに遭い、数日後遺体となって発見された。 彼女の全身には、激しい拷問の痕があった。―これで三人目や。―恐ろしいわ。―はよ、犯人捕まえてくれへんやろうか。「いやぁね、こんな事件が続いたら、安心して町を歩けやしない。」「お嬢様・・」にほんブログ村
2023年10月20日
「PECEMEKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ピスメでオメガバースパラレルです。α土方さん×Ω沖田さんという設定です。オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。「え?」 総司がそう言って振り向くと、そこには精悍な顔立ちをした青年の姿があった。 年の頃は自分とさほど違わない。そして、彼は恐らく言葉遣いから見て、自分と同じ江戸の生まれだ。「あの、あなたは・・」「辰之進(たつのしん)様、こちらにおられたのですか!お探ししましたよ!」甲高い声がして、店の中に色白の十代の少年が入ってきた。「済まない榮之助(けいのすけ)、京で美味しそうな甘味を見つけてしまったから、ついフラフラとこの店に迷い込んでしまった。」「もう、勝手に何処かへ行かないでくださいよ!奥様にわたしが叱られてしまいます!」「はは、すまん。榮之助、どれでも好きな菓子を買ってやるから、機嫌を直してくれ。」「もう、子ども扱いしないでください!」 そう言って頬を膨らませている少年の姿が、幼い日の自分の姿と総司は重なった。「総司、こんな所に居やがったのか!」「土方さん、どうしてわたしがここに居るってわかったんですか?」「あ、ごめぇん総司、土方さんにお前がここに居るって言ったの、俺。」暖簾から少し顔を出した新八が、申し訳なさそうな口調でそう言って総司に向かって両手を合わせた。「なかなか屯所に帰ってこねぇから心配したんだぞ。まさかお前ぇ、俺に隠れて甘味を買おうとしていやがったな!?」「あはは、バレちゃいました?じゃぁ、土方さんに買って貰おうかなぁ?」「てめぇ、調子に乗るんじゃねぇ!」歳三はそう言って眉間に皺を寄せたが、結局総司が選んだ菓子を買って帰ったのだった。「辰之進様、どうかされたのですか?」「いや・・もう帰ろうか榮之助、余り遅くなっては母上に叱られてしまうからな。」 去り際、青年―市原辰之進は、華奢な青年の隣に立つ黒髪の男を見つめた。刹那、二人の視線が絡み合い、辰之進は男の瞳の奥に宿る獣の存在に気付いた。(この男、わたしと同じ・・)「土方さん、どうかしたんですか?」「いや、何でもない。それよりも総司、俺に黙って勝手に何処かへ行くなよ。」「何ですか、それ。もしかしてわたしの首に鈴でもつける気ですか?」「それはお前の今後の態度次第だな。」「酷い~!」 そんなことを話しながら歳三と総司が屯所から戻ると、そこへちょうど芹沢が二人の前に通りかかった。「おや、誰かと思ったら土方君と沖田君ではないか?」 芹沢はそう言うと、土方の隣に立っている総司を見た。「これは芹沢さん、こんな時間帯にどちらへ?」「ちょっとした野暮用(やぼよう)だ、君達が気にすることはない。」 芹沢は口元を少し歪めて笑うと、そのまま総司と土方に背を向けて去っていった。「野暮用って何でしょうね?」「さぁな。また騒ぎを起こさなきゃいいが・・」にほんブログ村
2023年06月28日
「PECEMEKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ピスメでオメガバースパラレルです。α土方さん×Ω沖田さんという設定です。オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。 近藤達が上洛し、前川邸に屯所を構えてから数月が経った。「総司、聞いたか?芹沢さん、菱屋の妾に手を出したらしいぜ。」「芹沢さんが?何人目ですか、その人?」「さぁな。それにしても芹沢さん、最近やり過ぎじゃねぇの?」「そうそう、この前も角屋で大暴れして大変だったっていうじゃねぇか。」 朝稽古の後、井戸で身体を洗いながら原田、永倉、藤堂の三馬鹿トリオがそんな事を話していると、総司は背後から鋭い視線を感じて振り向いたが、そこには誰も居なかった。「総司、どうした?」「いいえ、何でもありません。」(嫌な気配が一瞬したけれど、気の所為かな?)「総司、ここに居たのか。」「土方さん。」 背後から聞こえた声で総司が振り向くと、そこには何故か険しい表情を浮かべている土方の姿があった。「どうしたんですか、そんなに怖い顔をして?」「ちょっと俺の部屋に来い。」土方はそう言うと、総司の腕を乱暴に掴んだ。「お前ぇ、ちょっとは周りから狙われているって事を自覚しろ。」「え、自覚ですか?」総司が首を傾げなら土方の方を見ると、彼は苦虫を噛み潰したかのような顔をしていた。「最近、芹沢がやり過ぎているという事は、お前も知っているだろう?」「ええ。」「あいつには、何も言われていないか?」「ええ、何も言われていませんよ。」「そうか・・」 土方は安堵の表情を浮かべながら、総司を見つめた。 芹沢は、土方と同じα(アルファ)だ。 彼が、時折Ω(オメガ)である総司に執拗な視線を送っている事に土方は気づいた。その度に、土方は芹沢に向かって威圧フェロモンを出していた。 番となったΩは、番が居ないΩとは違い、発情フェロモンを出さない。だが、芹沢は何故か総司のフェロモンを敏感に感じ取っているようなのだ。(あいつは何者だ?)「どうした、トシ?そんな怖い顔をして。」「別に、何でもねぇよ。それよりも近藤さん、その文は?」「会津藩から来た・・芹沢さんの事で、話したいことがあるそうだ。」「そうか・・」 土方は眉間に深い皺を寄せ、溜息を吐いた。 芹沢の最近の横暴ぶりは、会津藩主であり京都守護職でもある松平容保の耳にも届いていた。 角屋で暴れて営業停止にした事や、大和屋を焼き討ちにした事などを受け、会津藩は芹沢の事を見過ごすことができなかったのだろう。「これから色々と厄介な事になりそうだな。」「ああ、そうだな。」 一方、総司は三馬鹿トリオと共に、ある場所に居た。「なぁ総司、もう帰らねぇか?」「まだ少し居たいです。うわぁ、これ限定のお菓子ですって!」 そう叫びながら総司が美味しそうな菓子の前に立った時、彼は誰かとぶつかってしまった。「あ、すいません・・」「其方、Ωだな?」にほんブログ村
「PECEMEKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ピスメでオメガバースパラレルです。α土方さん×Ω沖田さんという設定です。オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。「土方さん、わたしなんかでいいんですか?」「馬鹿野郎、俺はずっとお前ぇだけだ・・心から契りたいと思っているのは。」 そう言った土方の目には、嘘はなかった。「土方さん・・」「総司、俺を信じろ。」総司は涙を流しながら、土方の言葉に頷いた。 山南は総司に薬を渡すのを忘れていた事を思い出し、彼が泊まっている部屋へと向かった。 すると、襖の向こうから聞こえる微かな土方の呻き声と総司の喘ぎ声に、山南は中で何が行われているのかを察してもと来た道を戻った。「山南さん、総司の様子はどうだった?」「どうやら、土方君に任せておけば大丈夫みたいだ。」「そうか・・」 総司の発情期(ヒート)が終わる七日の間、近藤は宿の者へ総司の部屋へ誰にも近づかないように頼んだ。「総司、身体の方は大丈夫か?」「ええ。」 総司はそう言って恥ずかしそうに俯いた。 そんな二人の様子を遠くから見つめながら、山南は何かを悟ったような表情を浮かべていた。「沖田君、ちょっといいかい?」「どうしたんですか、山南さん?」「こんな事を聞くのは大変聞き辛いんだが・・君は土方君と番になったのかい?」「それは、いくら山南さんでもお答えできません。」「悪いことを聞いてしまったね。」「いいえ。ご心配してくださり、ありがとうございました。」 そう言って自分に背を向けて歩き出す総司の髪が風に揺られ、微かに彼の白い項が露わになった。 そこには、番の印―αの噛み痕があった。 近藤達試衛館一派と、芹沢鴨をはじめとする水戸一派が京に着いたのは江戸を発ってから約一月後の事だった。「何だかこれから楽しみですね、土方さん。」「そうか?」 そう言って土方が総司の方を向いた時、背後から刺すような視線を感じた。「どうしたんですか、土方さん?」「いや、何でもねぇ。それよりも総司、芹沢には気をつけろ。」「どうしてそんな事を言うんですか、土方さん?」「何だか嫌な予感がするんだよ。絶対にあいつと二人きりにはなるなよ、わかったな?」「はい、わかりました。」 京に到着した日の夜、芹沢達が居る八木邸の方で彼らが騒ぐ声が聞こえてきた。「うるせぇ奴らだな。忠臣報国の士だが何だか知らねぇが、人の迷惑を考えやがれってんだ。」「そんなに怒るな、トシ。」 土方は何処か芹沢にうさんくさいものを感じていた。「総司、まだ起きているか?」 土方がそう言って総司の部屋へと向かうと、総司は既に夢の住人となっていた。「ったく、布団も敷かずに寝やがって・・」 土方はクスクスと笑いながら総司の上に布団を掛けた。にほんブログ村
「PECEMEKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ピスメでオメガバースパラレルです。α土方さん×Ω沖田さんという設定です。オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。 1862(文久2)年、近藤をはじめとする試衛館の者達は、浪士組に加わる事となった。「トシ、俺達は漸く武士になれるんだぞ!」「あぁそうだな、勝っちゃん。」 夢に向かって京への旅路を歩く近藤と土方の背中を、総司は何処か遠い目で見つめていた。「総司、どうしたんだ?」「山南さん、何でもありませんよ。」「少し顔色が悪いんじゃないのか?」 山南はそう言うと、総司の顔が少し蒼褪めている事に気づいた。「後で薬をあげるから、それまで耐えてくれ。」「はい・・」 山南は試衛館の中で近藤以外に唯一、総司がΩである事を知っていた。「あ~、疲れたぁ!」「新八っつぁん、酒でも飲んで旅の疲れをぱぁっと癒そうぜ!」「いいねぇ左之、お前の奢りな!」「新八っつぁんも左之さんもずりぃ、俺も混ぜてくれよ!」 宿に到着した原田・永倉・藤堂の三馬鹿トリオは、そう言うと宿の部屋から出て行った。「それにしてもちと疲れたな、トシ。風呂にでも浸かってゆっくりとするか。」「そうだな・・勝っちゃん、総司は何処に行ったんだ?」「さっき体調が優れないから先に部屋で休むとか言ってたな。」「そうか・・」 土方は総司の事が気になり、彼が泊まっている部屋へと向かった。「総司、居るか?」「土方さん・・」 襖の向こうから総司の苦しそうな声が聞こえ、土方はそっとそれを開けた。「入るぞ。」「お願い・・入らないで・・」そう言って部屋の隅で膝を抱えて苦しそうに呻いている総司を見つけた土方は、彼の全身からあの時嗅(か)いだ花のような甘い香りがまた漂っている事に気づいた。「総司、お前ぇ・・」「お願い、出て行ってください・・」 噎(む)せかえるかのような甘い香りに、土方は総司がΩである事をこの時初めて知ったのだった。「お前ぇ、薬はどうした?」「山南さんがくれる筈だったんですが、まだ戻っていなくて・・土方さん、何をしているんですか?」「さっきから頭がクラクラしてきて堪らねぇ・・総司、暫くこうしてくれねぇか?」 土方はそう言うと、総司を抱き締めた。「やめて、離して!」「総司、どうして俺に黙っていた?」「嫌われたく、なかったんです。Ωである事を、土方さんに知られたら、わたしは・・」「総司、お前ぇ・・」「ずっと好きでした。でも、わたしは・・」 己の腕の中で震える総司の小さな背中を、土方は優しく撫でた。「俺も、お前ぇの事が好きだ。」「土方さん?」総司が鳴き腫らした目で土方を見つめると、彼は苦しみに歪み、今にも泣きそうな顔をしていた。「総司、どうして俺に黙ってた?俺が、そんな事で・・お前ぇがΩだと知って、俺がお前ぇを嫌いになる訳ねぇだろう!」「土方さん・・」「薬がねぇなら、他にお前ぇを楽にさせる方法があるぜ。」そう言うと土方は、総司の唇を塞いだ。「土方さん、何を・・」「総司、俺はこれからお前ぇを抱く。」にほんブログ村
「PECEMEKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ピスメでオメガバースパラレルです。α土方さん×Ω沖田さんという設定です。オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。 総司が蔵から出て来たのは、発情期(ヒート)が治まった七日後の事だった。「総司、顔色が悪いぞ。少し部屋で休んだらどうだ?」「はい、そうします。」 近藤の優しさを感じながら、総司は彼の優しさに甘え、自室で休むことにした。 総司がΩである事を知っているのは、姉達の他に、幼少の頃から世話になって居る近藤家の者達だけだった。 βである近藤は、Ωである総司を実の弟のように可愛がり、Ω故に世間から蔑んだ目で見られる総司の事を土方と共に常に守って来た。 幼い頃、近藤や土方の事を実の兄のように慕っていた総司だったが、それは初めての発情期の発作に襲われた時に変わった。 全身を襲う苦しみ、そして自分が自分ではなくなるような恐怖を味わった総司は、ただ泣く事しか出来なかった。 その時彼は、近藤に連れられて江戸に住んでいる蘭方医の下で治療を受け、そこで発情期の事や、その発作を抑える薬を処方された。“君には辛いだろうが、Ωとして生まれた以上、一生薬を飲み続けなければならない。だが失望してはいけないよ。” あれ以来、総司は発情期が来る前に蘭方医から薬を貰いに行っていたし、欠かさずにその薬を飲んでいた。 その度に、総司はΩである事を心から憎んだ。 だが、Ωでありながら総司には剣の才能があり、その才能だけが総司にとって心の拠り所となっていた。「勝っちゃん、総司居るか?」「歳、総司なら体調を崩して部屋で休んでいるぞ。」「そうか。」 七日ぶりに試衛館を訪ねた土方は、最近総司が自分を避けている事に気づいた。「なぁ近藤さん、俺ぁ総司に嫌われているような気がするんだが・・」「そうか?トシ、その菓子、総司の好物だろう?」「違ぇよ、俺が食いたくて買っただけだ。」「わかったよ。総司は離れに居る。行って顔見せてやれ。」近藤はそう言うと、土方の肩をポンと叩いて外へと出た。「総司、起きてるか?」「土方さん・・」「お前ぇ、風邪はもう治ったみてぇだな。これ、良かったら一緒に食わねぇか?」 土方がそう言って総司に見せたのは、総司の好物の団子だった。「有難うございます、土方さん。」「なぁ総司、お前ぇ何か香でもつけているか?」「いいえ、何もつけていませんけど?」「そうか・・さっきお前から甘ぇ香りがしたんだが、気の所為か?」「甘い・・香り?」 土方の言葉を聞いた総司は、かかりつけの蘭方医が昔自分に話してくれた番の事を思い出した。“Ωはαと番(つがい)になると、フェロモンを発さなくなるが、極稀に『運命の番』というものが存在する。”“運命の番・・ですか?”“ああ。『運命の番』は、性別関係なく惹かれ合う・・そしてその運命には、何人にも逆らえない。”(そんな・・まさか・・土方さんが・・わたしの、“運命の番”?)「総司?」「いいえ、何でもありません・・」にほんブログ村
「PECEMEKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ピスメでオメガバースパラレルです。α土方さん×Ω沖田さんという設定です。オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。試衛館きっての天才剣士・沖田総司には、誰にも言えない秘密があった。 それは―「総司、どうした?」「何でもありません・・」 いつものように朝稽古を終わらせた総司は、急に身体が火照ってきたのを感じてその場で蹲った。「熱でもあるのか、総司・・」「大丈夫ですから!」心配そうに自分の額に触れようとする土方の手を総司は邪険に振り払うと、そのまま近藤が居る母屋へと走り去った。「近藤さん・・」「総司、どうした?」「すいません、また・・」「わかった。」 総司の様子を見た近藤は、後で薬を用意すると総司に言い、彼がある場所へと向かう事を許した。 そこは、総司がある期間中に使用する目的で作られた蔵だった。(何で、わたしが・・わたしだけが・・) Ω(オメガ)に生まれてしまったんだろう。 この世には、男女の他にα(アルファ)、β(ベータ)、Ωという第三の性が存在する。 人口の大半を占めるβ、人口の約1割を占め乍らも支配階級に属するα、そして“劣等種”として扱われ、人権すら認められていないΩ。 そのΩに、総司は生まれてしまった。 総司がΩである事を、姉達は隠した。 Ωである事が判れば、性別問わず性被害に遭い、最悪の場合殺されてしまうことがあった。 総司は姉達に守られ、試衛館に引き取られてからは近藤や土方に守られていた。 だが、どんなに二人に守られていても、自分は所詮“劣等種”なのだと、こんな時に総司は思い知らされるのだった。(もう、こんな身体、嫌だ・・) 蔵の中で一人、総司は襲い掛かる発作に耐えていた。 Ωが“劣等種”と呼ばれ、蔑まれる理由―それは、三ヶ月に一度来る発情期により、生殖行為の事しか考えられなくなるからであった。 男女問わず子を産むことが出来るΩだが、その所為で長い歴史の中で蔑まれ、迫害されてきたのだった。 漸く19世紀に入ってΩの発情期の発作を抑える薬が開発されたが、それらは舶来品の上に非常に高価な物だったので、それに手を出せない庶民は自分達の力で、気休め程度の抑制剤を作るしかなかった。「総司、薬を蔵の前に置いたからな。発作が落ち着いたら飲め。」「ありがとうございます、近藤さん。」 閉ざされた闇の向こうから、近藤の優しい声が聞こえた。「有難うございます、近藤さん。」 近藤が遠ざかる気配がしたのを確認した総司は、蔵の扉を開け、その前に置かれていた薬と湯呑が置いてある盆を手に取り、再び蔵の中へと入っていった。 自分がΩである事を、誰にも知られてはいけない。 それがたとえ、自分を守ってくれる土方であっても―にほんブログ村