JEWEL
日記・グルメ・小説のこと709
読書・TV・映画記録2696
連載小説:Ti Amo115
連載小説:VALENTI151
連載小説:茨の家43
連載小説:翠の光34
連載小説:双つの鏡219
完結済小説:桜人70
完結済小説:白昼夢57
完結済小説:炎の月160
完結済小説:月光花401
完結済小説:金襴の蝶68
完結済小説:鬼と胡蝶26
完結済小説:暁の鳳凰84
完結済小説:金魚花火170
完結済小説:狼と少年46
完結済小説:翡翠の君56
完結済小説:胡蝶の唄40
完結済小説:琥珀の血脈137
完結済小説:螺旋の果て246
完結済小説:紅き月の標221
火宵の月 二次創作小説7
連載小説:蒼き炎(ほむら)60
連載小説:茨~Rose~姫87
完結済小説:黒衣の貴婦人103
完結済小説:lunatic tears290
完結済小説:わたしの彼は・・73
連載小説:蒼き天使の子守唄63
連載小説:麗しき狼たちの夜221
完結済小説:金の狼 紅の天使91
完結済小説:孤高の皇子と歌姫154
完結済小説:愛の欠片を探して140
完結済小説:最後のひとしずく46
連載小説:蒼の騎士 紫紺の姫君54
完結済小説:金の鐘を鳴らして35
連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~152
連載小説:狼たちの歌 淡き蝶の夢15
薄桜鬼 腐向け二次創作小説:鬼嫁物語8
薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て20
完結済小説:玻璃(はり)の中で95
完結済小説:宿命の皇子 暁の紋章262
完結済小説:美しい二人~修羅の枷~64
完結済小説:碧き炎(ほむら)を抱いて125
連載小説:皇女、その名はアレクサンドラ63
完結済小説:蒼―lovers―玉(サファイア)300
完結済小説:白銀之華(しのがねのはな)202
完結済小説:薔薇と十字架~2人の天使~135
完結済小説:儚き世界の調べ~幼狐の末裔~172
天上の愛 地上の恋 二次創作小説:時の螺旋7
進撃の巨人 腐向け二次創作小説:一輪花70
天上の愛 地上の恋 二次創作小説:蒼き翼11
薄桜鬼 平安パラレル二次創作小説:鬼の寵妃10
薄桜鬼 花街パラレル 二次創作小説:竜胆と桜10
火宵の月 マフィアパラレル二次創作小説:愛の華1
薄桜鬼 現代パラレル二次創作小説:誠食堂ものがたり8
薄桜鬼 和風ファンタジー二次創作小説:淡雪の如く6
火宵の月腐向け転生パラレル二次創作小説:月と太陽8
火宵の月 人魚パラレル二次創作小説:蒼き血の契り0
黒執事 火宵の月パラレル二次創作小説:愛しの蒼玉1
天上の愛 地上の恋 昼ドラパラレル二次創作小説:秘密10
黒執事 現代転生パラレル二次創作小説:君って・・3
FLESH&BLOOD 二次創作小説:Rewrite The Stars6
PEACEMAKER鐵 二次創作小説:幸せのクローバー9
黒執事 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:碧の花嫁4
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄1
火宵の月 芸能界転生パラレル二次創作小説:愛の華、咲く頃2
火宵の月 ハーレクインパラレル二次創作小説:運命の花嫁0
火宵の月 帝国オメガバースパラレル二次創作小説:炎の后0
黒執事 フィギュアスケートパラレル二次創作小説:満天5
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士2
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て5
薄桜鬼 現代妖パラレル二次創作小説:幸せを呼ぶクッキー8
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ5
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法7
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁12
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:幸せの魔法をあなたに3
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華14
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女0
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜18
火宵の月 昼ドラ大奥風パラレル二次創作小説:茨の海に咲く華2
火宵の月 転生航空風パラレル二次創作小説:青い龍の背に乗って2
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊1
火宵の月×薔薇王の葬列 クロスオーバー二次創作小説:薔薇と月0
金カム×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:優しい炎0
火宵の月×魔道祖師 クロスオーバー二次創作小説:椿と白木蓮0
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月10
火宵の月 遊郭転生昼ドラパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁1
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:それを愛と呼ぶなら1
FLESH&BLOOD 千と千尋の神隠しパラレル二次創作小説:天津風5
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母13
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫20
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:黄金の楽園0
火宵の月 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:Ti Amo~愛の軌跡~0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳥籠の花嫁0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:蒼き竜の花嫁0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君0
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥6
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師4
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている2
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥27
火宵の月 転生昼ドラパラレル二次創作小説:それは、ワルツのように1
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計9
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~6
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華0
火宵の月 現代ファンタジーパラレル二次創作小説:朧月の祈り~progress~1
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:ガラスの靴なんて、いらない2
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師1
火宵の月 吸血鬼オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:黎明を告げる巫女0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:光の皇子闇の娘0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:闇の巫女炎の神子0
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く1
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~2
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら2
PEACEMEKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で8
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して20
天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿1
火宵の月 異世界ハーレクインファンタジーパラレル二次創作小説:花びらの轍0
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達1
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔6
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~1
火宵の月 千と千尋の神隠し風パラレル二次創作小説:われてもすえに・・0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう8
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇2
火宵の月×天愛クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー0
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい4
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう)10
火宵の月×ハリー・ポッタークロスオーバーパラレル二次創作小説:闇を照らす光0
火宵の月 現代転生フィギュアスケートパラレル二次創作小説:もう一度、始めよう1
火宵の月 異世界ハーレクインファンタジーパラレル二次創作小説:愛の螺旋の果て0
火宵の月 異世界ファンタジーハーレクイン風パラレル二次創作小説:愛の名の下に0
火宵の月 和風転生シンデレラファンタジーパラレル二次創作小説:炎の月に抱かれて1
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず1
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師0
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰2
火宵の月 異世界ファンタジーハーレクイン風昼ドラパラレル二次創作小説:砂塵の彼方0
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素材表紙は湯弐さんからお借りしました。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「そうよ。原作者のH先生が、是非あなたに演って欲しいというオファーを受けたの。はい、これ。」 火月のマネージャー、種香はそう言うと、ドラマの原作漫画を手渡した。「長編だけど、面白いわよ。」「ありがとうございます!」 火月は早速、帰宅してすぐにドラマの原作漫画『火宵の月』文庫全巻を読破した。(あ~、そう来るかぁ、あのラスト!また読み返したくなる!)「火月ちゃん、おはよう。原作、もう読んだの?」「はい。何か僕、初めてのドラマで主演なんて、緊張しちゃうなぁ・・」「大丈夫よ、火月ちゃんなら出来るわよ。」 テレビ局内のメイクルームで、種香がそう言って火月を励ましていると、そこにいつも火月を目の敵にしているモデルが入って来た。「何で、あんたが主役なの?大した実力もない癖に!」「すいません、台本に集中したいので、出て行って貰えます?」「何よ、偉そうに!」 モデルはそう叫ぶと、近くにあったゴミ箱を蹴ってメイクルームから出て行った。「あんなの、気にする事ないわよ。」「う、うん・・」 火月はそう言いながら『火宵の月』の台本の一ページ目を見て、素っ頓狂な叫び声を上げた。「何、どうしたの!?」「おおおお姉さん、僕の相手役、土御門有匡様なんですか!?」「あら、今更気づいたの?」「僕、あの人の、奥さん役ぅ~!?」「もう、そんなに驚く事ないじゃない。」「プレッシャー、感じちゃうなぁ。」「大丈夫よぉ、火月ちゃんならやれるわよ。自分に自信を持って!」 メイクルームを種香と共に出た火月が向かったのは、都内某所にあるホテルで開かれたドラマ『火宵の月』の制作発表記者会見だった。 そこには、沢山のマス=メディアが集まり、壇上には名だたる名優達の姿があった。(ますます緊張しちゃうなぁ・・) 火月がそんな事を思いながら周りを見渡していると、そこへ有匡が記者会見の会場であるホテルの宴会場に入って来た。「有匡様だわ!」「いつ見ても素敵だわ~!」(圧倒的な気・・僕、この人の奥さん役、務まるのかなぁ・・) 火月が遠目でマスコミに囲まれている有匡を眺めていると、急に彼が火月を見た。(えっ!?こっちに来る?)「また、会えたな。」「え、僕の事を憶えて・・」「共演者の顔は全て憶えるようにしている。それに、お前のような娘に会ったのは初めてだからな。」 そう言って火月は、有匡に微笑んだ。(顔、近い・・)「まぁ殿、こちらにいらしたんですの?そろそろ会見が始まりますわよ。」「わかった。」 有匡はそう言うと、壇上へとあがっていった。「ほら、火月ちゃんも。」「え、あの、どうして僕の名前を知って・・」「あらぁ、忘れちゃったのぉ?あたしよぉ、小里。」「式神の、お姉さん!?」「後でね。」 小里はそう言って笑うと、火月の肩を叩いた。 ほどなくして、『火宵の月』制作発表記者会見が始まった。 司会のアナウンサーによるドラマの紹介と、原作者、脚本家の挨拶の後に、キャストの紹介と挨拶が行われた。「土御門有匡です。陰陽師役は初めてなので、精一杯務めさせて頂きます。」 有匡がそう言ってマイクを置くと、マスコミの方から盛大な拍手が彼に送られた。「土御門火月役を演じさせて頂きます、高原火月です!初めてのドラマ主演で何かと至らない所があると思いますが、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します!」 火月の声が大き過ぎ、マイクがハウリングを起こしてしまった。「す、すいません・・」「いやぁ~、元気が良くていいね!」「そ、そうですか?」 制作発表記者会見の後、火月達は竹本Pが予約した居酒屋で彼主催の飲み会に参加していた。「あの、土御門さんは・・」「殿なら、他のドラマの撮影があって遅れるって。結構、忙しいからねぇ、彼。」「そうなんですか・・」「あらヤダ、元気ない。“久しぶりに”会ったばかりなのに、もう会えないなんて寂しいわよねぇ~」「お、お姉さん・・」「火月ちゃん、飲んでる~?」 そう小里と火月の間に割って入って来たのは、泥酔した小林Dだった。 彼は、こういった場に顔を出しては、若い俳優やモデル、歌手などにしつこく絡む事で悪名高かった。 そして小林Dは案の定、火月に絡んで来た。「すいません、僕・・お酒、弱いんで・・」「え~、そんな事言わないで飲みなよ~」 彼はニヤニヤと笑いながら、火月の空のグラスに、ビールを注いだ。「一気に飲んでよ~!」「イッキ、イッキ~!」 泥酔した男達に半ば煽られるような形で、火月はビールが入ったグラスに口をつけようとした時、それを誰かが掴んだのを見た。「もう、小林さんったらうちの若い子を虐めないで下さいよ~」 そう言いながらビールを一気飲みしたのは、妖艶な黒髪の美女だった。「有子ママ、久し振り~!今日は忙しくて来てくれないのかと思ったよ~」「そんな事ないじゃないですか~、小林さんはうちのお得意様なんですから~」 そう言って笑う謎の美女と、火月は目が合った。 彼女の、碧みがかった切れ長の黒い瞳に気づいた瞬間、火月は叫びそうになったが、その前に美女が人差し指を彼女の唇に押し当てた。「うぇぇ~」「ほらほら小林さん、タクシー来ましたよ。」 美女との飲み比べに負けた小林Dを店の外まで送り出した美女―もとい有匡は、溜息を吐いて火月の方へと振り向いた。「全く、世話が焼ける男だ。」「すいません、ご迷惑をお掛けしてしまって・・」「謝るな。あいつの酒乱ぶりは今に始まった事ではない。それに、ああいう輩はさっさと酒で潰すに限る。」 有匡はそう言うと、長い黒髪を纏めていた簪を抜いた。 美しく波打つ彼の黒髪を見た火月は、その姿を“誰か”と重ねていた。「どうした?」「あの、その髪、地毛ですか?」「そうだが、それがどうし・・こら、髪を引っ張るな!」「あ、すいまへ~ん。」「きゃ~、火月ちゃ~ん!」 泥酔した火月はキス魔と化し、有匡に抱きついたまま離れようとしなかった。“火月”(誰、僕を呼ぶのは?)“こんな所で寝ていたら、風邪をひくぞ。” そう言って自分に優しく微笑んでいるのは、有匡と瓜二つの顔をした男だった。(え・・)「おい、起きろ。」「う・・」「水だ、飲め。」「は、はい・・」 有匡からペットボトルのミネラルウォーターを受け取った火月は、飲み口にストローをさしてその中身を少しだけ飲んだ。「あの、ここは?」「ここは、わたしの部屋だ。」「え、え~!」「叫ぶな。居酒屋で酔い潰れたお前をわたしがここまで連れて来た。あいつらは随分嬉しそうに騒いでいたがな。」「すいません、迷惑をお掛けしてしまって・・」「全く、世話が焼ける奴だ。ここで暫く休んでいろ。わたしはシャワーを浴びて来る。」 有匡はそう言って火月を寝室に残し、浴室に入った。(全く、調子が狂う・・) アルコールと煙草の臭いがしみついた髪を洗いながら、有匡は溜息を吐いた。 彼女―火月と初めて会った時、火月と“何処か”であったような気がしてならないのだ。 それに、火月と会ってから不思議な夢ばかり見る。 その夢には、いつも彼女と瓜二つの顔をした女性と、自分と彼女にそれぞれ似た双子が出て来る。“先生、もし生まれ変わっても、僕は・・” 夢の内容は。よく憶えていない。「あの~、すいません・・着替え、ここに置いておきますね。」「わかった。」 有匡がそう浴室の中から火月に向かって答えると、脱衣所の方から大きな物音と火月の悲鳴が聞こえた。「おい、大丈夫か!?」「すいません・・」 濡れた髪をそのままにして、有匡が浴室から出ると、脱衣所では何故か自分のシルクのパジャマを着ている火月が、転んで擦り剥いてしまった膝小僧を擦っていた。「何故、わたしのパジャマを着ている?」「他に、着る物がなかったので・・あ、今から脱ぎますね。」「脱ぐなっ!」 パジャマのボタンを外そうとする火月を、有匡は慌てて止めた。「ここで寝ろ。わたしは部屋で寝る。」「は、はい・・」 有匡が寝室へと消えてゆくのを見送った火月は、リビングのソファに横になると、そのまま眠った。“先生、泣かないで・・” また、あの夢だ。 骨まで凍えるような寒さの中、有匡は“誰か”の手を握っていた。“また、会えるから・・” 夢から覚めると、有匡は涙を流していた。(何故、涙など・・) 有匡が寝室から出てリビングへと向かうと、キッチンで火月がコーヒーを淹れていた。「あ、すいません、勝手にキッチン使っちゃって・・」 そう言った火月は、パジャマの裾から白く長い足を惜し気なく有匡の前に晒していた。「さっさと寝室で着替えて来い。」「あ、すいませ・・うわぁ!」「殿~、おはようございます・・キャァァ~!」 いつものように有匡を迎えに来た小里は、有匡の部屋の合鍵を使ってリビングに入った時、有匡が火月を押し倒している姿を見て、思わず悲鳴を上げてしまった。「殿、まぁぁ~」「誤解だっ!」 気まずい空気が二人の間に流れる中、『火宵の月』撮影初日を彼らは迎えた。にほんブログ村
2024.03.05
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素材表紙は湯弐さんからお借りしました。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「や~い、火月の男女!」「ブース!」 小さい頃、火月は自分の容姿が周りから違うという事で、いじめられていた。『いいかい、火月。“人と違う”と言う事は、強みになるんだよ。』 毎日泣きながら学校から帰って来た火月を優しく膝上に抱いた祖母は、そう言って彼女を励ました。『お祖母ちゃん、僕アイドルになれる?』『なれるさ、あんたは、“特別”なんだからね。』祖母の言葉を胸に、火月はアイドルになるという夢を叶える為、音楽学校へと入学した。だが、そこで待っていたものは、秒刻みの過酷なスケジュールと、先輩達による厳しい指導だった。(僕、才能ないのかなぁ・・) 音楽学校での厳しいレッスンを終え、火月は人気のない場所で日本舞踊の練習をしていると、不意に背後から視線を感じたので彼女が振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。 燃えるような美しい紅い髪をしたその女性は、澄んだ海のような碧い瞳で火月を見た後、こう言った。“見つけた・・” その女性は、そう呟いた後、煙のように掻き消えていった。(え、何今の!?) 不気味な体験をした火月は、音楽学校を卒業するまで、その場所には二度と近づかなかった。「高原さん、あなたに話があるの。」「え、はい・・」 音楽学校の卒業式を終えた火月は、理事長室に呼ばれた。 そこには、大手芸能事務所の社長が居た。「あなた、芸能界に興味ない?」 夢への扉が、開いた気がした。「土御門有匡さん、クランクアップです!」「お疲れ様でした~!」 漸く終わった―そう思いながら、土御門有匡はドラマの撮影を終えて楽屋へと戻ると、大きな溜息を吐いた。 7歳の頃から子役としてデビューし、もう20年もこの虚飾に塗れた世界で生きている。 実家は世界で五指に入る程の財閥でありながら、こうして彼が家業を継がずに役者をしているのは、かつてハリウッドで名優としてその名を馳せた父・有仁のお陰だ。 ただ、もうこの業界で生きるのは限界だと、有匡は最近感じていた。(もう潮時かもしれないな。) そんな事を思いながら有匡が衣装から私服へと着替えていると、突然楽屋のドアが開き、一人の少女が入って来た。 金髪紅眼の容姿をした少女は、有匡が上半身裸である事に気づいて、慌てて彼に向かって頭を下げると、こう言った。「すいません、間違えました!」(うるさい奴だったな・・)「殿、如何なさいましたか?」「いや、さっき間違えて入って来た子が気になってな。」「あぁ。あの金髪の子ですか?“ウィッシュ☆”というアイドルグループのメンバーですわ。」「アイドル、ね・・」 そういえば今日は音楽番組の収録があると誰かが言っていたな―そんな事を思いながら、有匡は備え付けのテレビのスイッチを自然につけていた。 画面には、5人位の少女達が煌びやかな揃いの衣装に身を纏いながら、歌い、踊っていた。 その中で一際光っているのは、自分の楽屋に間違って入って来た金髪の少女だった。 その歌声は美しく澄んでいて、踊りにもキレがあった。「あの金髪の子は、誰だ?」「あの子は、高原火月ちゃん。あの椿音楽学校の卒業生ですわ。」「椿音楽学校ねぇ・・」 そこは数々の名優を輩出してきた名門校で、バレエ・声楽・日本舞踊のみならず、茶道・礼儀作法などの授業がある“女学校”として有名な所だった。「まぁ、お珍しいですわね、人嫌いの殿が他人に興味を持つなんて。」「うるさい、放っておけ。」 そうマネージャーの小里に憎まれ口を叩きながら、有匡は番組が終わるまでテレビから目を離せなかった。「お疲れ様でした。」「お疲れ~!」 番組の収録を終えた火月が他のメンバー達と楽屋へと向かっていた時、一人の男と擦れ違った。 彼は、自分が間違えて楽屋に入ってしまった時に居た男だった。「お疲れ様です!」「耳元で喚くな、うるさい。」「す、すいませんっ!」 男が去った後、火月は他のメンバー達からの質問責めに遭った。「火月ちゃん、土御門有匡様とお知り合いなの!?」「え、さっきの人が?」「え~、火月ちゃん知らないの!?芸能界で“抱かれたい男”10年連続ナンバーワンに選ばれているスターなのよ!」「へ~、そうなんだ~」 帰宅した火月は、有匡が出演していたドラマのDVDを観た。(何だろう、この人とは、何処かであったような気がする。) 翌日、事務所の社長から、火月はとんでもない知らせを受けた。「え、僕がドラマ出演ですか!?しかも時代劇で主演!?」にほんブログ村
2024.02.01