ジルコニアの気まま日記

[妹勇者冒険譚　ゴッド・オブ・デス編　書き直し分（完）] カテゴリの記事

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• 最終話　妹勇者冒険譚　その２．

  　楽しい時間というのはすぐに過ぎてしまうわけで。　宴も終わり、ゲティンと別れた私達は天上界からレテ大陸に降り立ち、自分達の乗り込んできた船に乗り込もうとしたんだけどさ？　「あれ？アセトどうしたの？立ち止まっちゃって、乗らないの？」　ただ下を俯き、船の前で立ち止まるアセトの姿。　そして、何かを言おうとしては言葉を飲み込み、そんなのが何度か繰り返された。　短くない時間が過ぎ、やっと気持ちの整理がついたのか、アセトがゆっくりとその重い口を開いたんだよ。　「皆とはここでお別れですわ・・・」　『えっ！？』　アセトから出て来たのはまさかの別れの言葉だった。　「ど、どういうことなのですかアセト！？」　「実は昨日の宴の時にゲティンから言われたんですのよ」　「ん、何を言われたんだ？」　「えぇ、ゲティンが天上界に上がることで神秘の泉の管理者がいなくなることは昨日話ありましたわよね？」　「うん、そうだね。あ、もしかして！？」　「そうですのよ。わたくしに神秘の泉の巫女になって欲しい。ゲティンからそうお願いされましたの」　「なるほど、昨日２人がこそこそと隅の方で何かやってたのは、その話をしてたのか」　「えぇ、皆と別れるのは寂しいですけれど、でも。世界が平和となり、魔導師としてのわたくしの力はもう世界では必要とされなくなりますわ。それでしたら、こうしてわたくしを必要としてくださる場所があるのでしたら、そこで尽力を尽くしたい、そう思ったのです」　「そうですか・・・わかりました。アセトが自分で決めた事です、私からはとやかく言うつもりはありません。それに、アセトならばきっとうまくやれます。それは私が保証しますよ」　「うん、アセトが決めたことだしね。私もそれに対してどうこう言うつもりはないよ」　「あぁ、これが今生の別れになるわけでもねぇだろうしな。ま、また落ち着いたら会いに言ってやるさ」　「ありがとうございます。セラ・ミハイル・クレッシル。皆との楽しい思い出の詰まった２年はわたくしの大切な宝物として大事に記憶しておきますわ」　「それじゃあね、アセト！今度遊びにいくからね～」 　船に乗り込み出発した私たちを手を振り見送ってくれたアセトと別れた私たちを乗せた船はレテ大陸を出発し、じきにハルトの街の船着場へと到着した。　と、その時だったよ。　「なぁセラ・ミハイル」　「ん？な、何かな？」　「どうしたんですかクレッシル？」　「アセトと別れたばっかで、こんな事を言うのも何だか気がひけるんだが」　ポリポリと頭を掻きながら何か凄くいいにくそうにしてクレッシル。　「もしかして、クレッシルもここでお別れだ、っていうつもりなんですか？」　「な、ははは。ま、簡単に言っちまうとそういうことだ」　「そうですか・・・」　「でもでも、クレッシル行く場所あるの？」　「あ～・・・実はな？えっと、そのぉ・・・」　さっきも何だか言い難そうな感じだったクレッシルだったけど、今度は何故か頬を少し赤らめて言いよどむクレッシルの姿にミハイルはピンときたようで。　「あ～・・・ヨハンの事ですか？クレッシル」　「あ、あぁ・・・そ、そうだ」　「ん？ん？どういうこと？」　「実はな？キュロス城で格闘技大会があったじゃねぇか。んで、その前にヨハンとこで一緒に稽古してたんだが、その時に。そのぉ・・・プロポーズ的なモノをな、受けたんだ」　「お、おぉおおお！？おめでとうクレッシル！」　「んで、だ。こうして天上人・魔族とも共存する道を歩み始め、私たちの役目も終わった今、私はこんな私を好きだと言ってくれるヨハンの元へ行ってやりたい、そう思うんだ」　「そうですか、ふふ。うらやましいですねクレッシル。今度セラと一緒に冷やかしに行って差し上げますよ」　「あ、あはは・・・ま、まぁ。そういうことだからよ、本当。今までありがとな、セラ・ミハイル。皆でした旅・生活。すんげぇ楽しかったぜ♪」　「クレッシル？ヨハンをあまり困らせてはダメですよ？」　「へへっ、分かってるって」　「お幸せにね、クレッシル♪」　そして、アセトに続きクレッシルまでもが私たちの元から去っていった。　「セラはこれからどうするんですか？」　「ん～・・・私はあれだよ。天上人・魔族が手を取り合って共存してくれるとは言ったけどさ、それを私たち人間が受け入れなかったら意味ないし？皆で仲良くしよう！っていうのを世界を回って話ししてこようかなぁ？って思ってる」　「そうですか、それなら私もそれにお付き合いさせてもらいましょうかね」　まさかの申し出だったよ。でも、いいのかな？　「えっ？いいの？ミハイル」　「ふふ、当たり前じゃないですか。だって私は一番最初、旅に出る時にセラの父上から宜しく頼むぞ、ってお願いされてるんですよ？」　あ、あ～・・・そういえばいっちばん最初。私がお兄様を探しに旅に出るって時にそんな事を言ってたような気がするよ。　「それに、まだまだセラは私がいないと出来ないことも多いですし、きっちりとこれからも指導してあげますよ♪」　「あ、あはは・・・お手柔らかにね」　「さて、それではまずは一番近いキャメロット城から行くとしますか」 　妹勇者冒険譚　～ゴッド・オブ・デス～編　終わり

  2017年12月02日

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• 最終話　妹勇者冒険譚　その１．

  　「よくぞ無事に戻ってきてくれた。そして、何よりもあのアシュタロトと魔族・天上人・地上人が互いに手を取り合い共存するという誓いをさせたことに、ただただワシも感服するばかりだ」　イブリース城を後にした私達は、その足で天上界はゼウス達が待つゴッド・キャッスルへと戻っていた。　「もったいないお言葉です。そして、これがアシュタロトとセラが誓約を結んだ誓約書です」　ゲティンから誓約書を受け取ったゼウスはそれに軽く目を通してから再び口を開いてきたよ。　「うむ、確かに預かったぞ。セラフィム＝ライト。そして皆の者。この度は本当にご苦労であった。サタナエルから始まった一連の魔族との争いもこれで全て終わったのだ。本当に心から感謝しているぞ」　「セラ・ミハイル・クレッシル・アセト。今まで本当にお疲れ様でした。皆の活躍は地上世界だけでなく、天上界・魔界でも今後広く語り継がれる事でしょう」　「そして、ゲティンよ。今回の件では本当にお前には迷惑をかけてしまった。ゲティンが動いてくれなければ、絶対にこのような結果はなかったと思っている」　「わたしは自分が正しいと思った道を進んだだけです」　「迷惑ついでにもう１つだけゲティンに話があるのだが・・・」　「なんです？どのような話です？ゼウス」　「うむ、今回このような事があり、ワシはその責任をとり最高神の座から降りようかと思っているのだが・・・」　「はぁ？」　「そのワシの後釜、最高神の座をゲティン、そなたに譲りたいと思っている」　「わたしがです？」　「他のものもゲティンであるなら文句はないであろう。どうだ、やってはくれないか」　ゲティンがめんどくさそうな表情を浮かべながらチラッと辺りを見回すと、その場にいたマスティマ・ペネム・アルマロスは良い笑顔でゲティンの方を見ながら、コクリと頷いたんだよ。　「はぁ、別にやるのは構わないですけど、そうなると神秘の泉の管理はどうするのです？」　「神秘の泉の管理はわしの方から後任のモノを任命してもよいのだが、もしゲティンに後任を任せたいと思うモノがいるのであれば、その任命も一任してもよい」　「・・・・・・」　ゼウスの言葉にゲティンはたっぷり時間をかけて考えてから口を開いた。　「わかりました。その話、謹んでお受けしましょう」　「そうか、ありがとうゲティン」　「ふふ、おめでとうゲティン♪」　「大出世じゃないですかゲティン」　「へへ、おめでとさんだ」　「最高神ということは上に上がってしまうんですのよね、そうなるともうゲティンとも杯を交わすことが出来なくなってしまいますのね」 　私たちは素直にゲティンが最高神に任命された事を祝福したんだけど、アセトだけはちょっと寂しそうな表情を浮かべてたよ。　そして、その後私たちはゼウスの計らいによりゴッド・キャッスルで大きな宴を開いて貰ってそれに参加し、美味しい料理やお酒に舌鼓を打っていた。　「う～ん、美味しい～♪ねぇねぇミハイル。これもすっごく美味しいよ！」　「はいはい料理は逃げていきませんからもう少し落ち着いてください」　「んむがぐ、むぐぐぐぐぐ、むがががが～」　「ねぇクレッシル。口に入れながら喋るのはマナー違反だよ？」　「なぁ、アセトとゲティンはどこいったんだ？」　「あれ？そういえば２人の姿がみえませんね」　私たちが美味しいご飯に夢中になってる間にアセトとゲティンの２人がどこかに消えてたよ。　「あ、いた！！」　皆の輪からかな～り離れた場所に影２つ。　遠目に見る限り、手に何か持ってるように見えるし、もしかしたら２人で最後のお酒を楽しんでるのかな？そうだったら邪魔しちゃ悪いよね。　その後、宴は夜が明けるまで続き、私たちはその宴を思いっきり楽しんだのだった。　最終話　妹勇者冒険譚　その１．終わり　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年12月02日

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• 第７８話　こんなあっさりでいいの？　その２．

  　「油断しました・・・まさかあそこからファイアボールを唱えてくるとは思ってもいませんでしたよ」　「ふふ、今ので右手は使えなくなったんじゃないのかな？」　「確かに、今の一撃はかなり痛かったです。ですがまだ、左手が乗っています。剣が握れればなんら問題ありません。それに、ダメージという点では貴女も今の攻撃はそれなりに効いたのではありませんか？」　「ふふ、そうだね・・・今のは、ちょ～っと痛かったよ」　横腹の肉を少し食いちぎられたけど、まぁ・・・まだ大丈夫。　それに、今ここで弱みを見せたら一気に持ってかれそうだからね。　アシュタロトは左手に握ったレイピアを強く握り直し、こっちに向かって間合いをつめてきたよ。　間合いを詰めてきたアシュタロトの攻撃は単調なモノ。１・２・３、１・２・３。　左右に振りながらその合間に突き攻撃を繰り出してる感じ。　ん、確かに突きのスピードはそこそこに速いみたいだけど・・・　その左右に攻撃を揺さぶる時のモーションにちょっとした隙がある？　後ろに移動しながらアシュタロトの攻撃を避け、反撃するタイミングを見計らってみようかな。　とりあえず様子見に徹してみたんだけど、それでもアシュタロトは攻撃の手を変えることなく、同じように単調な攻撃を繰り返してきたよ。　「どうしたのですか、ただ避けるだけでは私は倒せませんよ」　攻撃を繰り出しながらそう彼が口を開いた瞬間だったよ。　ちょっとレイピアの繰り出すタイミングがずれたところを狙って私はゴッド・オブ・デスを振り上げアシュタロトのレイピアを思いっきり上に跳ね上げた。　キーン！　「し、しまった」　トスッ。　レイピアを弾かれ、その弾かれたレイピアへ視線がいった瞬間私はゴッド・オブ・デスの冷たい切っ先をアシュタロトの首元へとつき立てたのだった。　「これで、勝負あったね」　「ゴクリ・・・」　一瞬の隙を突かれ喉元に冷たい刃を突きつけられたアシュタロトは一筋の冷や汗を流し喉を鳴らしたよ。　「ふ、ふふ。流石ですセラフィム＝ライト。まさか一瞬の隙を突き勝負を決めてくるとは、やはり貴女は私の想像以上の力をお持ちのようだ」　「なんか手を抜かれてたように感じたけど、キノセイかな？」　「そのようなことはありませんよ、初めにも言いましたが、貴方相手に手を抜いて勝てると思っている程うぬぼれていません」　「いや、それよりもなんかわざと負けた感を感じるんだけど」　「キノセイですよ。そのようなことをして、私にどのような得があるのでしょうか？」　まぁ、確かにそうだよね。アシュタロトがわざと負けたとして、彼にとってメリットがあるとは到底思えない。　「まぁ、いいでしょう、今回は潔く私の負けを認めましょう」　「その言葉、信じていいんだね？」　「もちろんです。私は嘘はつきません」　そう口では言ってるものの、一応警戒しつつゴッド・オブ・デスを背中にかけると、アシュタロトは自身の目の前で指を軽くくるくると回したんだけど、そうするとポンッ！って何か一枚の紙切れが現れたよ。　「何かな、その紙は」　「これは私とセラフィム＝ライトの誓約書ですよ。誓約書」　「誓約書？」　「はい、勝負を始める前に言いましたよね？貴女はこの勝負に勝ったら私に世界を征服だったり侵略するような行動をやめさせ、手を取り合い共存の道をたどりたいと。その内容が記されている誓約書です」　「ちょっと確認いいです？」　アシュタロトの出した誓約書をゲティンが、じ～っと真剣な眼差しで隅から隅まで目を通してから、驚いたような表情を浮かべつつ私の方へ手渡してきたよ。　「驚きました・・・この誓約書本物です。今後魔族は地上世界・天上界に対して侵略行為を行わない。そして、その逆。地上世界・天上界の民も魔界・魔族に対する一方的な殺戮を行わず、共に歩み共存することを誓うという内容が書かれています」　「この誓約書には特殊な魔法が掛けられていますので、ここに私とセラフィム＝ライト。２人の署名が入った瞬間からこの誓約書の内容は確実に履行されます」　サラサラサラッと。　私とアシュタロトが署名をすると、誓約書は自ら発光をはじめ、そして２つに分裂すると私とアシュタロトの手元にそれは落ちてきたよ。　「ありがとうございますセラフィム＝ライト。これにて私とセラフィム＝ライトの誓約は履行され、これで私たち魔族は地上世界にも天上界にも手出しできなくなりました」　負けたはずなのに何故かニコニコとしてるアシュタロト。何でこんなにも協力的なの？もしかしてアシュタロトも実は心の奥底では、こうなることを望んでた？　でも、だったら何で私達を亡き者にしようとゼウスまで使ったのか・・・　ん～・・・わかんないなぁ・・・それに最後の攻撃、アレどう考えてもワザと私に攻撃をしかけさせる為に隙を作ったようにも見えるし‥‥　「どうしたんですかセラ？」　「あ、ううん。なんでもないよ何でも」　「さぁ、用事は終わったんだ。とっとと帰ろうぜ」　「えぇ、まずは天上界へ行きゼウスに報告しましょう」　こうして、魔族の王であるアシュタロトと共存する道を選ぶ、ということで誓約を果たした私たちはイブリース城を後にしたのだった。　第７８話　こんなあっさりでいいの？　その２．終わり　　最終話　　　　　妹勇者冒険譚　　　　へ続く

  2017年11月25日

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• 第７８話　こんなあっさりでいいの？　その１．

  　ゴッド・オブ・デスを両手で強く握り直し、精神を集中させていった。　「ほぉ・・・凄まじい力ですね・・・聖属性の高まりもそうですが、闇属性の力の増幅も想像以上ですよ・・・本当、この一年でここまで力を増強させるとは・・・よほど何か大きなことがあったのでしょう」　アシュタロトは驚きながらも感嘆の声を挙げ、私の方をマジマジと見つめてきた。　私の背中からは左右色の違う、漆黒の翼と美しい白色の大きな翼が生えてきた。　「手加減はしないよ、アシュタロト！！」　「望むところです。もとよりお互いに手なんか抜けないと思いますがね」　そう言うと彼は蛇の右手を前に突き出してきたよ。　「先手必勝です！フレイム！！」　アシュタロトが唱えると同時に私の足元からは炎の波が立ち始めた。　「当たんないよ！」　「ふふ、そこに移動して避ける事は予測済みです、バーンエクスプロージョン！」　私が横に避けるのは本当に予想されてたんだろう。私の避けた着地点に今度は大きな爆発が起こり、それが私を飲み込もうとしてきた。　「う・・・」　とっさに背中から生えてる翼で体を覆うようにバーンエクスプロージョンの爆発を凌いでたんだけどさ・・・　爆発が収まると同時にアシュタロトのレイピアが真っ直ぐ私の方へ向かって伸びてきてるのが見えたんだよ。　「あ、あぶなぁ！？」　急いでバックステップで距離をとったんだけどさ、その様子を彼はクスクスと余裕の笑みを浮かべながら見てきてるんだけど？　「やはり今の連携は通用しませんか。流石セラフィム＝ライト、というとこでしょうかね。それでこそ私も本気で戦う価値があるというもの」　「君の本気がどれ程のモノかは知らないけど、それでもそんな余裕でいられるのも今のうちだよ。私は絶対に負けないんだから」　再度ゴッド・オブ・デスを強く握り直してから、今度は私からアシュタロトの方へと攻撃を仕掛けた。　地面を強く蹴って一直線にアシュタロトとの間合いを一気につめ、まずはこのダッシュの勢いをそのまま剣に乗せてゴッド・オブ・デスを思いっきり斜め下から上に向けて振りぬいた。　「せいやぁあああああああああ！」　「ふ、そのような大振りの攻撃が本気で当たると思っているのですか」　私の振りぬいた剣を涼やかな表情で横に避けたアシュタロトへ今度は上に振りぬいた剣を下に向けて往復させたんだよ。　まさか振り上げた剣を勢いを止めることなく戻してくるとは思ってもみなかったようで、一瞬慌てた様子を浮かべたアシュタロトだったんだけど。　「くぅ、今のは危なかったですね」　紙一重とはまさにこのこと。本当すんでの所でアシュタロトは私の振り下ろした剣を避けちゃったんだよ。　ズシーン！！　力任せに振り下ろしちゃったものだから途中で止めることも出来ずにゴッド・オブ・デスは大きな音を立てて床に叩きつけられた。　床に叩きつけられた剣を持ち上げて再度距離をとろうとした私の腹部へアシュタロトの右手、蛇が大きく口を開けて飛び込んできた。　「っ！？」　腹部に広がる激痛。　私の横腹にアシュタロトの右手が牙を思いっきりたて噛み付いてきた。　一旦ゴッド・オブ・デスを持って態勢を立て直すのは後回しにして、先にコイツをどうにかしないと・・・　「ファイアボール！！」　とっさに出た魔法はそれだったよ。　私の横腹に牙を立てるアシュタロトの右手に超々近距離からのファイアボールを放ちそれが当たると表情を歪め私から右手を離すと向こうから距離をとってくれたよ。　第７８話　こんなあっさりでいいの？　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年11月25日

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• 第７７話　こんなヤツに振り回されてたとか　その２．

  　「セラフィム＝ライト。貴女は去年初めて魔法の山でお会いした時から比べると、随分と力を強めましたね」　「あ、ど、どうも」　「きっと今の貴女であるならば、ゼウスとでも対一で戦い勝利する事も出来るでしょう」　彼は何を言いたいんだろうか？　「それでどうでしょうか？私と一戦交えてみませんか？」　えっ！？　どういう・・・こと？　突然のアシュタロトからの言葉に私含めその場にいた全員が困惑した表情を浮かべた。　「私はセラフィム＝ライト。貴女と一対一で真剣勝負をしたいといったのですが？」　「私と一対一で？？？」　彼は何を考えてるんだろうか・・・？　今自分で、私にはゼウスよりも強い力を持ってるって言ってたはずなのに。そんな相手と一対一で勝負をしたいなんて申し出をしてくるなんてさ・・・　そんなにアシュタロトは自分の力に自信があるってこと？　自分はゼウスよりも強いんだぞ、って言いたいの？　私達が困惑していると彼は何故か楽しそうにしながら口を開いてきたよ。　「貴女方がここへ来た理由は私を倒すためですよね？なら受けない理由はないと思いますが」　「倒すためじゃないよ？ただそんな地上世界や天上界を制圧するとかいう物騒な事をやめて、一緒に魔族・天上人・人間が共存できればいいな、って思ってその話し合いにきたんだよ」　私から発せられた言葉が予想外すぎたんだろうね、アシュタロトは一瞬キョトンとした表情を浮かべたものの、すぐに笑い始めたよ。　「ふ、ふふふふ。ふはははははは。面白い事を言いますね」　「私は本気だよ？本当にそう出来たらなって思ってる」　私の言葉を聞いて腕を組んで考え出したアシュタロトだったけど、すぐに腕組をやめて言葉を続けてきたよ。　「わかりました。私がもし貴女にやられるようでしたら、その条件を飲みましょう」　意外だった・・・まさかそんなすんなりと条件を飲んでくれるなんて。　やっぱりまだ自分は私になんか負けるわけがない、そう思ってるのかもね。　「何でしたらちゃんとした魔法の力によって確実に履行する契約書に署名もして差し上げますよ」　でも不思議だよ……本当、何だろう・・・何を考えてるんだろうアシュタロトは。　普通そこまでやるなんていわない・・・よね？　「ですが、もし私が勝った場合はそうですね・・・・セラフィム＝ライト。貴女に私の妻になって貰いましょう」　「はぁ？」　アシュタロトからの私が負けた際の条件を聞いて思わずそんな素っ頓狂な声が上がっちゃったよ。　本当、それくらいに意外な・・・ううん、異常な条件を突きつけられた。　だって、ねぇ？私を妻にしたい、だよ？　「いえいえ、私は本気ですよ？貴女程の素晴らしい力を持った女性と私の血があわさり生まれた子はまさにこの世界で最強の名をほしいままにする戦士になるでしょう。そうすれば、以後どのような英雄が現れようとも、我が魔族の勝利・繁栄は確実に約束されます」　な、なるほど・・・確かにそれは向こうからしたら大きいかもしれないね・・・　私が勝てば確実に魔族達を大人しくさせることが出来る・・・でも、もし私が負けた時は・・・ううん、そんな負けた時のことなんて考えたらダメだよ！！　「いいよ、その勝負受けて立つよ」　「セ、セラ！？いいのです？」　「そんなめちゃくちゃな内容の勝負を本当に受けるんですか！？」　「うん、でも勝てれば・・・ううん、この戦いに勝てば魔族達は大人しくしてくれるんだし。やるしかないよ」　「ふふ、ありがとうございます。流石セラフィム＝ライトと言うところでしょうか」　「話はいいよ、さぁ勝負するなら早くやろうよ。みんなは絶対に手を出しちゃダメだよ」　この戦いでこれからの未来の事が全て決まる。　そんな戦いにまさか私一人で挑むことになるなんて‥‥でも、後には引けないしやるしかないよね！！　第７７話　こんなヤツに振り回されてたとか　その２．終わり　第７８話　　こんなあっさりでいいの？　　　その１．へ続く

  2017年11月25日

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• 第７７話　こんなヤツに振り回されてたとか　その１．

  　「さぁ、これで邪魔者はいなくなりました」　取り巻きの魔物達が大広間から撤退するのを見届けると、彼はそう言ってからニヤリと笑いかけてきた。　「それで、今日はここへどのようなご用件で見えられたのでしょうか？」　　さっきまでとは打って変わって、人の良さそうな笑みを浮かべつつこっちに近付いてきたアシュタロト。　「あ、う、うん・・・」　何だろう・・・彼から妙な威圧感を感じる……　前に魔法の山で会った時はこんなの感じなかったのに・・・　って、ダメダメ。こういうのは相手に飲み込まれたおしまいだよ。　「ねぇアシュタロト？単刀直入に聞くよ」　「はい、どうぞ。何なりと聞いてください」　「どうしてゼウス達天上人を利用して私達を亡き者にしようとしたのかな」　「おっと、困りましたね。まさかいきなりそのような話の核心部分に触れてくるとは思ってもいませんでしたよ」　絶対に本当はそんな事・・・困ったなんて微塵も思ってないよ。　だって、完全に顔がそう言ってるもん。　「私達もどうして自分達が狙われたのか。そんな理由くらいは十分理解していますし、そうされても文句は言えない立場であることはわかっています。ですが何故天上人を利用したのですか」　ミハイルの貫くような鋭い瞳、言葉に静かに耳を傾けていたアシュタロトがゆっくりと口を開いてきたよ。　「私は貴女がた四大天使には本当感謝しているのですよ」　「感謝・・・？何でだよ」　「わたくし達が貴方に何をしたというんですの」　「私はサタンの三男としてこの世に生を受けました。普通であれば私のような魔族には今のこの地位を手に入れるこは出来ないはずでした・・・」　少し遠くを見つめ語り部モードに入るアシュタロトの言葉に私達は静かに耳を傾けた。　ですが、運命の女神は・・・いや、この場合悪魔と言った方がいいですね。　運命の悪魔は私に微笑みかけてきてくれたのですよ。　まずは長兄であるフェルナンデスが天上人の女と駆け落ちし、そしてそれを由としなかったサタン・サタナエルがフェルナンデスを殺し。　そして、昨年次兄であるサタナエルは貴女達四大天使によって倒された。棚ぼたとはまさにこの事。　私は労せず魔王の座をこの手中に収めたのですよ。　そして、こうして魔王の座を手に入れたということは、これは私に全世界を手中に収めろ。　そういう悪魔のお告げなのではないか、そう感じました。　それで、そうする為にはどうすればいいのか。　それを考えた時に、ふと思い出したんですよ。ゼウスの事をね。　利用できるモノは利用する。それは至極当然の事。　だから私はゼウス達天上人を利用し自分の手を煩わせず貴女達を倒し、地上世界を手にいれ、そして貴女達との戦いで疲弊した天上界をも攻め落とそう、そう思ったのです。　何か、物凄くばかばかしい理由っていうか・・・なんていうか。　こんな奴に私達は命を狙われ、そして天上人の皆。ゼウスは踊らされたんだ‥‥そう思うと正直悲しくなってくるよ。　でも、彼の気持ちもわかるような気はする。　下にいた人が急に権力を持ったり、力無きモノが急に大きな力を持つとそれを無闇に振りかざしたくなるっていうのはさ。　「貴方のその自分勝手な考えで一体どれだけの血が流れたと思っているのですか！？」　「魔界を統べる存在。魔王というだけで満足できなかったとは・・・確かに、人の上に立つ者はそれだけの思いを持っているのはいいことだとは思いますが」　「こっちからしてみりゃ良い迷惑だ」　「それで、どうして他の魔物の皆さんを外に出したんですの？あれだけの数で押し切ればわたくし達だってただですまなかったでしょうし、何よりその疲弊したところを狙えましたわよね？」　「確かにそうかもしれません。ですが、まともに戦ったところで私が勝てる見込みは５０％」　ん、向こうは私たちの力を評価してくれてるのかな？５０％って答えたってことは。　第７７話　こんなヤツに振り回されてたとか　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年11月25日

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• 第７６話　歓迎？イブリース城　その２．

  　「これだけ人がいるとセラフィム達も安心してゆっくりと話が出来ないでしょう。皆さん散りなさい。私がここは話をつけましょう」　まさかアシュタロトから私達を倒せ！！　じゃなくて、自分が話をつけるからこの場から去れ、何て言われるとは思ってもなかったんだろうね。　この場にいた魔物達、全員が全員目を丸くさせ、私達がこの大広間に入ってきた時以上のざわめきが巻き起こってる。　そして、誰一人としてこの場から外に出て行こうとはしない。　「私の言う事が聞けないというのですか？」　一向に外に出て行こうとしない魔物達に対して、凍てつく程鋭く冷たい声・瞳を向けたアシュタロト。　その眼光の鋭さ、威圧感、プレッシャーは流石に魔王とでも言うんだろうか。　流石にそんな態度をとられたら大人しくするしかないわけで。　その場にいた魔物達は静かになったんだけどね？　そんな中、１人（匹？）の魔物がアシュタロトの方へと大きな足音を立て、怒り肩でズカズカと近付いていったよ。　「やいやいやい！てめぇアシュタロト！何腑抜けた事言ってやがんだ！！今俺達の目の前には俺達の怨敵である四大天使がわざわざ自らやられに来たんだぞ！？」　「・・・ふぅ。ですから貴方がたでは束になっても彼女達には勝てない。そう思ったからこそ、優しい私が貴方がたの代わりに話をつけてさしあげよう、そう言っているのですがね？」　言ってる内容は部下の事を思って、優しい事を言ってるはずなのに、言い方だったり、その物凄くドスの利いた低いトーンで凄みを効かせて言ってるもんだからそういう風にしか聞こえない。　いや、それはきっと分かっててわざとやってるんだろうけどさ。　「俺達が束になっても勝てない？そんなはずあるか！！こちとら今この場には５０００もの同胞がいるのだぞ！？むしろ負ける要素が見当たらない」　「・・・ふぅ。闘いとは数ではない、そんな簡単なこともわからないとは愚かな」　アシュタロトの言葉に魔物は更に苛立ち、物凄い青筋を立ててるよｗ　「俺は前々から貴様の事が気に入らなかったんだ。この機会に四大天使の前にまずは貴様から始末ｓ・・・」　ものすご～くヒートアップしてた魔物さんだったけど、彼が言葉を言い終えることはなかった。　ううん、正確にはそうすることをアシュタロトが許さなかった。　彼が言葉を言い終える前にアシュタロトは顔色ひとつ変えずに、レイピアを右手で握り、目にもとまらぬスピードでそのレイピアを振りぬいたんだよ。　その振りぬいたレイピアは目の前にいた魔物の首を胴体から一瞬にして切り離していた。　「！？」　そして、その切り離された魔物の首は無情にもコロコロとその場を転がりアシュタロトの足元までたどり着いた。　頭を切り離され、主を失った胴体はズシーン！大きな音を立ててその場に倒れこんだよ。　アシュタロトは自身の足元に転がった魔物の生首を見下ろすと表情ひとつ変えずに・・・　グシャ！！　「ひぃ！？」　自身の足元に転がった首をまるで虫を踏み潰すかのようにつぶしちゃったんだよ。　そんな光景にその場にいた魔物達が一瞬のうちに静まりかえったのは言うまでもないわけで。　「さぁ、今の馬鹿みたいな目に会いたくなかったらすぐにこの場から出て行きなさい。貴方達など束になってもこの場で簡単に消し去ることくらい可能ですよ」　静かだけど、その内に確かに見える怒りの感情。　一瞬間をあけたけど、今目の前で起こった事を認識するとこの大広間にいた魔物達は何も言わずにその場を去っていったよ。　そして、この大広間には私達５人＋アシュタロトだけを残して他は誰もいなくなった。　第７６話　　　　歓迎？イブリース城　　　　その２．終わり　第７７話　こんなヤツに振り回されてたとか　その１．へ続く

  2017年11月18日

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• 第７６話　歓迎？イブリース城　　その１．

  　そっと扉を開けて中の様子を窺ってみると、そこは大広間だったよ。　そして、その大広間には沢山の魔物達が並び誰かの話を聞いている最中だった。　大広間の最奥へと視線を向けてみると、その並ぶ魔物達に対して熱弁をふるっている人物を発見。　この城の主であろうその熱弁をふるっていた人物というのは、右手が蛇になっているパッと見た目凄く渋いおじさｍ・・・　じゃなくて、え～っと。いや、うん。間違ってはないよ？間違ってはないんだけど。　まぁ、魔族にしてはかな～り（見た目だけは）紳士的なサタナエルの弟である現魔王のアシュタロトの姿があったんだよ。　まさか、私達がベルフェゴールちゃんのところから飛んできた場所がアシュタロトの居城のすぐ目の前だったなんて・・・　いや、まぁ。探す手間も省けたしこうしてすぐに目的の人物に会えたのは良いことだけどさぁ。　本当、ご都合主義だとかなんだとかって言われそうだよねぇ（遠い目　で、扉から身を乗り出して中の様子を窺ってたんだけどさ？　そんな私達に気付いた魔物達が慌て騒ぎ始めたよ。　「お、おい！？人間だぞ！！人間が攻め込んできたぞ！？」　「いや、違う！人間だけじゃない！天上人もいるぞ！！」　「ま、まさかたったこれだけの人数で魔界へ・・・アシュタロト様の居城まで乗り込んできたというのか！」　魔物達は騒いではいるんだけど、何だろう。誰も私達の正体には気付いてない感じ？　ってかさ、私達って魔物達から恐れられる有名人じゃないの？（　「静かにしなさい！」　騒ぐ魔物達に対して大広間内に怒声を響かせ一括したアシュタロト。　「そんなに取り乱す事もないでしょう」　騒ぎの中、大広間に響き渡るアシュタロトの声がはっきりと聞こえる。　流石魔王ってところかな、アシュタロトのその一括だけで騒ぎ出した場の空気が一瞬で引き締まった感じだよ。　「これはこれは、ようこそ我が居城であるイブリース城へお越しくださいました。セラフィム＝ライトとその仲間の皆さん」　左手をおなかの辺りに持ってきて優雅に頭を下げ挨拶をしてきたアシュタロト。　前に会った時もそうだけど、表面は本当良いよねぇ。　でも、こういう人ほど裏だったり心の中ではどんな事を思ってるのかわからないし、用心しないとね。　アシュタロトの言葉に静かになったはずのその場にいた全員はまたザワザワとざわめき始めたよ。　「な、セラフィム＝ライト！？サタナエル様を倒したやつらか」　「む・・・そういえばあの顔見たことあるぞ！」　入り口から身を乗り出して広間の中を見てた私達だけど、流石にばれたわけだし、隠れてる必要はないよね。　と、いうわけで。私達は扉から大広間の中へと足を踏み入れた。　「わざわざこのような辺境の地までお越しいただきありがとうございます」　なんだろう、何でアシュタロトは自分の本拠地であるこの場に私達が足を踏み入れているというのにこんなに平静を装っていられるんだろう。　不意打ちに近い状態で私達はやってきたわけだから、何も準備とか出来てないはずなのに・・・　私がアシュタロトに対して訝しげな表情を向けてると再び口を開いてきたよ。　「何か緊急の用があるからここまでこられたのですよね？」　周りの魔物達は今にも飛び掛りたい、飛びかかろうとしてる中アシュタロトだけは、あくまでも凄く紳士的に接してきたんだよ。　前に魔法の山で会った時もそうだったんだよねぇアシュタロトって。　でも、裏からゼウスを操ってたのもアシュタロトだっていうし、何より裏で何を考えてるのかつかめないっていうか、なんていうか。う～ん・・・・　「まぁ、もちろん用があったから来たわけだけどさ」　「ふむ・・・・」　何か考え込むような仕草をしたアシュタロトだったけど、すぐにその口を開いてきたよ。　第７６話　歓迎？イブリース城　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年11月18日

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• 第７５話　こんな場所にあるとか　その２．

  　次に私達がやってきた場所というのは・・・　「ここは食堂、だね」　うん、１０人掛けくらいのテーブルが置かれ、その脇には調理台。　「を？飯が作ってあんぜ！！」　そう言ってご飯の方にフラフラと足を向けるクレッシル。全く・・・あの子はｗ　「私達人間には毒かもしれません。不用意に食べないほうがいいですよ？というよりも、勝手に人様のご飯を食べるとか常識的に考えてダメですからね？」　「んぐ？？もがもがもがががががが！！」　ミハイルがそう言ってる間にもクレッシルは用意してあったご飯に手をつけてたよ・・・　「あのさぁ・・・何をやってるのかなぁ」　ゴクン。　「いやぁ、あれだよ。腹が減っては戦はできねぇだろ？それにせっかく用意してあんのに誰もいないようだから、冷めたらもったいないし、私が処理しておいてやろうと」　そう言いながらも食べる手を止めようとしない彼女。　っていうかさ・・・本当、これが罠で毒でも入ってたらどうするつもりなのさ・・・　今ここでマトモに戦闘が出来るのは私とクレッシルだけだっていうのにさぁ……　「はぁ・・・クレッシル？無用心すぎますわよ」　「でも、これすげぇうめぇぞ？」　ズイッとクレッシルに差し出されたのはどう見ても見た目的に毒が満載されてそうっていうか・・・普通に食べようとは思えない色のナニカ。　う、う～ん・・・　流石に私は死にたくないし？クレッシルの差し出してきたモノには手を出せなかったよ。　そして、私達を横目にクレッシルはそこに用意してあったご飯を美味い美味いって言いながら全部たいらげちゃったよ・・・　満腹状態になってご満悦なクレッシルを引っ張って次にやってきた場所は・・・　「ここは兵士の詰め所？」　「みたいですね、ですが今誰もいない・・・つまりそういうことなのでしょうか」　寝室といい、ここといい、人がいる気配がないし、やっぱりどこかに出かけたのかな？　「こっち、こっちにわたくし達のポスターが貼ってありますわよ？」　アセトに手招きされてそっちを見てみたんだけどさぁ・・・　子供がするかのような落書きをされボロボロの私達のポスター・・・・　「うわぁ・・・・魔族達でもこんな幼稚なことするんだねぇ・・」　「まぁ、私達はいわば総大将の仇ですからね。こんな扱いもうなづけはしますが・・・それでも実際に目の当たりにするとあまりいい気分ではないですね」　ミハイルはにっこりと怖いくらいの笑みを浮かべながら壁に貼り付けられたポスターを思いっきり引っぺがしそれをグシャグシャと力の限り丸めてたよ。 　　グルッと１階部分を全部見て回ってみたんだけど、１階部分はここにいる兵士っていうか魔族達の為の部屋ばっかりだったよ。　でも何故かそこを利用するはずの魔族達は誰１人としていなかったわけで・・　コレは何を意味してるんだろう。　ま、考えてもあれか。　そして、次に２階部分に上がった私達は１つずつ部屋をしらみつぶしに調べてみたんだけど２階はお城の城主家族の生活するスペースなのかな？　１階部分と比べると凄く整理された空間。そして置かれてる調度品もかなり高価なモノが多いよ。　でも、それでもやっぱり誰１人としてそこの場所には見当たらないわけで・・・　「どうなってんだこれ？」　「何で誰とも出会わないんでしょうか？」　「もしかして、ここは持ち主のいないお城なんですかしら？」　「いえ、ですが誰かが生活してる痕跡は沢山ありました。無人というわけではないと思います」　「とりあえず、後行ってないあの一番奥の部屋。あそこに行けばすべてがわかるはずです」　「そうだね、いこっか」　私達は最後に、２階部分の一番最奥にある一際大きく豪華な扉に閉ざされた部屋の前までやってきた。　ん・・・？何か中から声が、聞こえる？　「どうやらここの中に誰かいるみたいですね」　「そのようだね・・・」　「それでは、早速突入してみます？」　「んだな、考えてたって何も始まらねぇ！突貫あるのみだ」　「出会いがしらに魔法をぶっぱなします？」　「ううん、それはやめておこうよ。私達は戦いにきたわけじゃないんだしさ」　「わかりましたわ」　そして、大きく深呼吸をして静かに皆で拳を合わせてから、その大きな扉を静かに私達は開けたのだった。　第７５話　こんな場所にあるとか　その２．終わり　第７６話　歓迎？イブリース城　　その１．へ続く

  2017年11月18日

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• 第７５話　こんな場所にあるとか　その１．

  　ん～・・・探すとは言ったものの、ここが魔界のどの場所かわかんないしねぇ・・・　アシュタロトのお城から遠く離れた場所かも知れないし、すぐ近くかもしれない。　とりあえず辺りを見回してみたんだけどね？　ぶふｗｗｗｗ　え？ちょ！？ｗなんか目の前に建ってるしｗ　何かさ、これ見よがしに見るからに妖しいお城がですね？　私達の丁度立ってる目の前にね、すんごい高く聳え立つ禍々しいオーラを発してるお城がですね？　っていうか、うん。近すぎて今の今まで気付かなかったよ。　それは他の皆も同じで、私達の降り立った目の前にお城があることに口をあんぐりと開けて驚いた様子を見せてたんだよ。　「これ誰のお城だろ」　「案外アシュタロトの城だったりしてな」　「まさか、そんな都合よくいくわけないですよ」　「ですけれど、万が一ということもありますし」　「とりあえず中に入って確認してみる必要はありそうです」　「そうだねぇ、誰のお城かわからない以上確認はしてみないとね」　「んだんだ、それにもし違ってたとしても、だ。中にいるヤツをふんじばって無理にでもアシュタロトの城がどこにあるのか吐かせればいいだけだからな」　「和平のためにこの場にきたのですし、無闇な争いは起こしたくないのですが・・・」　「そうです、それこそここで問題を起こし、それがアシュタロトの耳に入ってしまったら、わたし達が魔界までやってきた意味がなくなってしまいます」　「うんうん、クレッシル？それはあんまりしないようにしようね？」　「何だよ何だよ、皆して。ただちょっと言っただけじゃねぇかよ」　「まぁ、そうでなくても。サタナエルを倒した私達相手に戦いを挑んでくる人はそうそういないと思うけどねぇ」　「そうですよ、わざわざ自分達の総大将を倒すくらい強い相手に勝算の薄い戦いを挑む人はそうそういないはずです」　「ふむ・・・なるほどな。確かにそりゃそうだ」　「まぁまぁ、ずっとここに居てもアレだしさ、中に入っちゃおうよ」　と、いうわけで。一回大きく深呼吸をしてから目の前に聳えたつ怪しいお城に足を踏み入れてみた。　まずお城の中に入ると大きなエントランス。　その奥には階段があって左右に顔を振ってみると沢山の扉が見えた。　なんだろう、造りとしてはお城っていうよりも大きな洋館って感じだねぇ。　しっかし、これだけ大きな場所だっていうのに人の気配が全く感じられない。　誰も・・・いないのかな？いや、というよりもね？静か過ぎるんだけど・・・　「これだけ静かだと逆に不気味ですね」　「そうですわね。わたくし達を奥へと招き入れよう、誘い出そうという風にも見て取れますわね」　「考えすぎじゃねぇのか？」　「ただ単にどこかへ出払っている可能性もありますが、それにしても静か過ぎですね」　「考えてもあれです。まずは手当たり次第怪しい場所をしらみつぶしに探してみましょう」　「そうだね、そうしようか」　私達はお城の探索を。まずは１階部分から始めたんだけどさ・・・　「ん、ここは兵士達の寝室か？」　まず最初に入った部屋は無数のベッドだけが無造作にズラッと並べられた本当に寝るためだけに使うような部屋。　「そのように見えますね」　「誰かが使った痕跡は見えますけれど、一体どこに行ったんですかしら？」　「あ、まだ布団あったかいよ！ということは、さっきまで誰かが使ってたってことだよね？」　「もしかしたら、地上世界・天上界への攻撃を仕掛ける為に準備を始めたのかもしれませんね」　　さっきまで誰かがいた形跡があることはわかったから、外に出てるのではないか、ということがわかっただけでもこの部屋に入ったのは収穫あったね。　兵士の寝室を後にした私達は次なる部屋へと向かっていった。　第７５話　こんな場所にあるとか　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年11月18日

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• 第７４話　ようこそ魔界へ　その２．

  　何だろう・・・３人は苦しそうにしてるけど、そんなにここって強い瘴気に満たされてる・・・のかな？　私は何も感じないというか、地上と同じような感じの空気だと思うんだけど？　「やはりミハイルも感じ取っておりましたか、わたしは瘴気もそうなのですが、先ほどから嫌なプレッシャーといいますか、違和感がずっと襲ってきているように感じます」　「ただこうして、この場に立っているだけで体力や精神力を消耗させられるのですし、ちょっとでも気を抜くと本当充てられてしまいそうですわ」　何だろう・・・本当ミハイル・アセト・ゲティンが苦しそうにしてるのが意味わかんないんだけど？　「ねぇ、皆？そんなに苦しいの？」　「別に渡しはなんともないんだけどな？いや、というかな？むしろなんかいつも以上に力が溢れてくるような気さえするんだが」　「だよね？だよね？私はクレッシルみたいに力が溢れてくるっていう感じはしないけど、別段いつもとそんな変わらないというか、瘴気も気にならないし、地上と同じような感じなんだけど」　私とクレッシルの言葉にアセト達がなんか恨めしそうに見てきてるんだけど？　「な、何でセラとクレッシルは……平気なんですのよ！？不公平ですわ」　「まぁあれです、クレッシルもセラも変態だった、そういうことです」　「ひど、ひっど！ゲティン酷いよ！私違うもん！クレッシルやアセトみたいに変態じゃないもん！！」　「ちょ、ちょま！？なんでそこでわたくしが出てきますのよ！？わたくしだって変態じゃありませんわよ！」　「違うんですか？アセト」　「ミハイル！？貴女何を言っておりますのよ！」　「まぁ、アセトは変態ってことで間違いねぇが、私はあれだ単に鍛え方が違うんだよ、鍛え方が」　「鍛錬でどうこう出来るレベルではないと思いますが・・・」　でも何でだろうね？ミハイル・アセト・ゲティンは苦しそうにしてるのに私とクレッシルはなんともないんだろう？　皆で何でか考えてたんだけどね？その時ゲティンが何かに気付いたのかな？　パリィ！！！　急にハッとした表情を浮かべたゲティン、そんなゲティンに私達は身を乗り出すように詰め寄った。　「何々！？何か思い当たる部分でもあったの！？」　「何ですかゲティン！」　「ほらほら、もったいぶらずに言えよ」　私達は期待の眼差しをゲティンに向けたんだけどさ・・・　「いえ、お腹が空いたなぁ・・・と」　『・・・・・・』　は？（殺気　「うがぁああああああああああ！こんな時に何を言っておりますのよゲティン！？」　ものすんごい剣幕で肩を掴んで揺らしてくるアセト。　「冗談です、ちょっとした冗談です。ほら、場の空気を和ませようと思いまして。ちょっとした天上界ジョークというものです。ですからそんな揺らさないで下さい」　「はいはい、そんな冗談はいいからさ？で、何か思い浮かんだの？」　「はい、クレッシルとセラにはあって、わたし・ミハイル・アセトにないモノが１つだけ思い当たります」　「ほほう・・・？流石ですね、それでソレは何なのですか？」　「クレッシルは魔族との合成獣（キメラ）ですよね？そしてセラは魔王サタンの息子にして、去年セラ達が倒したサタナエルの兄である、フェルナンデスの子孫」　うん？つまり、どういうこと？？？　「あ、あ～・・・なるほど？そういうことですか」　なんかミハイルとアセトは理解したっぽいけど？　「どういうこと？え？何？どういう意味？」　「つまり、セラとクレッシルは半分魔族だからここに立ちこめる瘴気の影響を受けずに普段通り行動が出来るってことなんですのよね？」　「まぁ、実際問題。セラの方はゼロスと同化したとは言え、かなり血が薄くなっていると思いますけれど、そうです。２人には闇属性が備わっているので影響を受けないと考えられます」　なるほどね、そういうことか。でも、確かにそれなら納得かも。　「ということは、何かあったら私とクレッシルが前面に出て戦えばいいってことだよね」　「そうですね・・今の私達では普段の半分の力も出せないでしょうし、戦闘になる場面がありましたら宜しくお願いします」　「へへっ、任せておきな♪」　そう口にしながらシュッ、シュッって軽やかなステップで拳を振るクレッシル。　「頼りにしてます、クレッシル・セラ」　「さて、いつまでもこんな場所にいてもあれですし、何よりわたくし達の体が持ちそうもないので、早くアシュタロトのいるところを見つけないといけませんわね」　と、いうわけで。私達はアシュタロトのお城を探すためにその場を移動しようとしたのだった。　第７４話　　ようこそ魔界へ　　　その２．終わり　第７５話　こんな場所にあるとか　その１．へ続く

  2017年11月11日

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• 第７４話　ようこそ魔界へ　その１．

  　「うわぁああああああああああああああ！？」　ベルフェゴールちゃんに思いっきり背中を押されて（蹴られて）魔界への扉である井戸の中に突き落とされた（？）私達。　その穴というか通路は凄く短くてさ？落ちたと思った次の瞬間だったよ。　ドスン！！　ドスン！！！　シュタッ　☆ミ　シュタッ　☆ミ　うん、私達は空間の裂け目から下に向かって吐き出されたんだよ。　そして、身体能力の高さっていうのかな？うん、その普段のソレがもろに出るわけで・・・　ミハイルとクレッシルは突然の落下だったにも関わらず綺麗な着地を決めたんだけどね？　アセトとゲティンは思いっきり地面に叩きつけられる形になったわけでｗ　そして、私はというと・・・　ぐにゅ！？　「ぐえっ！！」　ぐえっ？　ちゃんと綺麗に着地できたと思ったんだけど、何かを踏みつけた？？？　いや、うん。なんか踏みつけたような感触がするんだけど？　チラッと足元を見てみたらさ、哀れにも私に踏み潰されたアセトの姿がですね・・・　「ぶひゃひゃひゃひゃひゃｗナイスだセラｗ」　「わ、わわわ！？ご、ごめんアセト！」　慌ててアセトの上からどくと彼女は思いっきり両の瞳に涙を浮かべながら頬をぷぅっと膨らませ、お腹を抑えながら立ち上がったよ。　「う、うぅ～・・・酷い仕打ちですわ。わたくしが一体何をしたというんですのよ・・・」　「アセトの上に狙ったかのように着地とかナイスだセラｗ」　お腹を抱えて笑うクレッシルと蔑んだ目をアセトへと向けるミハイル。　「・・・ふぅ。惜しいですね。もう少し高度があれば間違いなくアセトを亡き者に出来ましたのに・・・本当悪運だけは強いですね」　「う、うぅ～・・・ミハイル？何物騒な事を言っておりますのよ」　「それよりも、ここが・・・魔界なのですね」　アセトのソレを無視してゲティンが辺りを物珍しげにキョロキョロと見回してたから、私達も同じように辺りを見回してみた。　なんていうんだろうね、まさに漫画とかアニメでよく見るいかにも魔界です！！っていう風景が辺り一面に広がってるんだよねぇ。　まぁ、分かりやすいっていう点ではいいかもだけどさｗ　えっと、分かりやすく情景の説明をすると　・空は夕焼け時みたいに紅く染まっている　・荒廃とした岩場というか、荒れた大地が辺り一面に広がってて近くに町とかは見当たらない　　↑こんな感じ？　「何てぇんだろうな、いかにもって感じの場所だな」　「えぇ・・・そう、ですわね」　「なんというのでしょうか・・・やはり魔界の空気と言うのです？ここで立っているだけでもその空気に充てられ、精神力をガシガシ削られていく感じがします」　「流石魔界・・・ということでしょうか。ゲティンの言う通り、ここに佇んでるだけで・・・悪の瘴気に飲まれてしまいそうといいますか・・・」　「えぇ、まさに瘴気で正気を失いそうですわね」　そう言いながら少し苦しげに表情をしかめるアセト・ミハイル・ゲティン。　「'`ｨ'`ｨ ┐(´Д｀┌ソウデスネー」　苦しいって言ってる割にはまだアセト余裕有りそうな気もするけど・・・　でもやっぱり、本当にこの３人はどういうわけか、辛そうにしているのが気になった。　第７４話　ようこそ魔界へ　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年11月11日

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• 第７３話　いざ魔界へ！　その２．

  　皆が好き勝手にベルフェゴールちゃんを若作りが凄いロリＢＢＡだとか言ってるもんだから、ずっと静かに聞いてた彼女だけど、とうとう我慢の限界がきたようだね。　「貴女達何勝手なこと言ってんの？あたしがそんな年寄りに見えるっての？殺すわよ？」　ベルフェゴールちゃんの反応を見て、流石に皆も言いすぎたと思ったみたいだね。申し訳なさそうにしたよ。　「あ、あはは・・・すまねぇ」　「でも、実際問題いくつなんですか？それを言わないから私達もこのように推測するんですよ？」　「ん～・・・わたしが思うに２２０歳くらいとかです？」　ゲティンの予測にさっきまで凄くイライラした様子を見せてた彼女は少しだけ表情を和らげたよ。　「惜しいわね、あたしは２１０歳よ」　そう答えたベルフェゴールちゃんだったけど、答えた後に首をかしげたよ。　「あれ・・・１０だったかしら？まぁ、細かい部分は忘れたわ。ってそんなあたしの歳がどうとかそんな事は今はどうでもいいでしょ！！ほら、さっさとゲートに入んなさいよ」　「そ、そうだね。まぁ、どこに出るかはわからないけど大丈夫・・・だよね？」　「はい、とりあえず野宿の用意とかはしてあるので、よっぽど辺鄙（へんぴ）な場所に出なければそこまで問題はないと思います」　「んだんだ、ここまできたんだ、後は出たとこ勝負だ」　「まぁ、なんとかなりますでしょう」　「さぁ、それでは行きましょう」　皆で井戸を囲むようにたち、ゴクリと息を一飲みした。　「何だか、いよいよ魔界に行くとなると、やはりドキドキしてきますね」　「うっし、気合は十分だ！！一気に行くぜ！」　「それで、誰からここに飛び込みますの？」　「わたしは最後でいいです。ここはリーダーであるセラからどうぞ？」　「えっ！？わ、私！？私から？」　なんかさ、皆が私の方に期待の眼差しを向けてきてるんだけど？　( ;ﾟ─ﾟ)ｺﾞｸﾘ　息を再度飲んでから井戸の中を覗き込んでみたけどさ・・・　うわぁ・・・コレ本当にどこに繋がってるんだろぉ‥‥それがわからないから、本当怖い。　う～・・・怖いよぉ。これが本当は魔界じゃなくて地獄に繋がってたらどうしよぉおおお。　中々気持ちの整理がつかなくて、井戸の前で止まってると、私をみるみんなの目がドンドンと呆れの色を帯びてきてるのが目に見えてわかるよ……　「セラ？何をやってるんですか。早くしてください」　「まさか英雄だなんていわれてるセラが怖いって言って躊躇してるわけじゃねぇよな？」　「そんなことありませんわよねぇ？セラ」　「ア、アハハ。マサカァ」　「ほらセラ。遠慮することはありません。さぁどうぞ」　皆もこの井戸が本当に魔界に繋がってるのかわからない以上怖いんだろうなぁ。　リーダーである私に先に行かせるというか、華を持たせる振りして押し付けようとしてるのが丸分かりだよ。　うぅ～・・・誰か先に入らないかなぁ・・・　「ね、ねぇ。私ってさみんなのリーダーでしょ？だからさ、ほら。皆が入るのを見守らないといけないでしょ？」　苦しい言い訳だっていうのはわかってるけど・・・わかってるけど・・・　「何を言ってるんですか。何を」　誰が一番最初に井戸の中に入るか皆でそれの擦りあいというそんな醜い争い（？）をしてた私たちだったけど。　「あぁ、もぉ！むかつくわね。誰でもいいからちゃちゃっと入りなさいよ」　そんな争いを繰り返しまったく中に入ろうとしない私達を見て、目に見えるレベルでイライラとしだしたベルフェゴールちゃん。　そして、ついには我慢できなくなった彼女は順に私たちの背中を　ドン！！　「わぁああああああああああ！！」　「きゃぁああああああああああ」　思いっきり押されて、その勢いで井戸に一斉に落とされた（？）私たちはこうして多分、きっと、魔界へと向かって飛んでいったのだった。　第７３話　いざ魔界へ！　　その２．終わり　第７４話　ようこそ魔界へ　その１．へ続く

  2017年11月11日

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• 第７３話　いざ魔界へ！　その１．

  うん、ベルフェゴールちゃんの後ろにね？隠れるようにあったのはさ・・・　さっきというか、外を回ってた時にクレッシルに対してコレはないよぉｗって散々言った井戸だったんだよね・・・　「え、え～っと……ベルフェゴールちゃん？？？」　「何よ？」　「もしかして、その後ろにあるのが魔界と地上世界を繋ぐゲート・・・なの？」　「何？あたしの言う事が信じられないっていうの？だったら別に使わなくてもいいのよ？」　私の反応がよっぽど気に障ったんだろうねぇ・・・　すんごいムッスーとした表情を私の方へと向けてきたんだよ。　「あ、あ～・・・うん。べ、別にそういう意味じゃ・・・ないよ？」　「本当かしら？」　「う、うん。ちょっと意外だったなぁ、って思っただけだから」　「しかし、本当にコレが魔界と繋がってるんですかね？これ飛び込んだが最後、どこか異空間に飛ばされたりしませんか？」　「ここから強力な魔力を感じますし、何かがあることは間違いなさそうですわね」　井戸に近付き、疑いの眼差しを向けつつ覗き込むミハイル。　それとは対照的に凄く興味深そうにするアセトの姿。　「なんだこりゃｗなんだか飲み込まれそうな感じがするな」　私も井戸の前まで移動して中を覗きこんでみたんだけどね？　外にあった井戸みたいに空洞ではなくて、なんかさカラフルな渦が巻いてたんだよ。　「なんか毒々しい感じだな」　「ん～・・・不思議な感じがするね」　「ちなみにコレ、魔界のどこと繋がっているのです？」　アセトの言葉にベルフェゴールちゃんは肩をすくめて答えたよ。　「どこだったかしら？」　彼女の反応を見る限り、知ってるけど教えないとかそういうのではなさそう。本当に知らないだけっぽい。　「ごめんなさい、あたしもこのゲートを使ったのもう２００年も前のことだし、覚えてないわ」　って、え？今、ベルフェゴールちゃん・・・２００年がどうとかって言った、よね？　つまり、そういうこと？　「ねぇねぇ、ベルフェゴールちゃん、ちょっといいかな？」　「何よ？変な質問だったら答えないわよ？」　「えっと、えっとね？ベルフェゴールちゃんってさ、すんごい若く見えるんだけど一体今何歳なのかな？って」　私の質問に明らかに嫌そうな表情を浮かべたよ。　「そんなこと聞いてどうするのよ。あたしがいくつだろうと貴女には関係ないでしょ？」　「いや、えっと。別に意味はないけどさ。たださっきベルフェゴールちゃん、このゲートを使ったのが２００年前って言ったからちょっと気になったんだよ」　「・・・はぁ」　思いっきりため息つかれたんだけど・・・めんどくさって感じにため息疲れたんですけど・・・ｗ　「で、貴女から見てあたしは一体いくつに見えるわけ？」　うわぁ・・・うわぁ・・・魔族の年齢なんてわかんないよｗ　と、とりあえずね？使ったのが２００年って言ってるんだからまず２００歳は越えてるよね？絶対に　それとプラスして、その２００年前に使ったっていうことを覚えてるんだから物心はついてるはず。　そういえば、ダークエルフのアイナノアちゃんが２１９歳だって言ってたっけ？　彼女よりは若いのかな？同じくらいかな？　「いくつだろうな、魔族・天上人・ダークエルフとかいった長命な種族の年齢なんてわかんねぇって。いくつだ？１０００歳くらいか？」　「いえ、もしかしたらですわよ？こう幼そうに見えて実のところゲティンと同じくらいなのかもしれませんわね」　「そこまでいってますかね？いえ、いってないというには判断材料が少なすぎますね」　「わたしと同じくらいというと２５００歳になりますが、あの容姿でそれだとしたらとんだ若作りになります」　「恐ろしいですわね・・・一体どういうことをしたらあんな若く保てるんですかしら？」　皆がベルフェゴールちゃんのことに対してあーでもない、こーでもないって話をしてたんだけどさ。　別に内緒で話すこともなく目の前で堂々とそれなりに大きな声でそんな話をしてるもんだからね？　みんなの話を聞いてるとベルフェゴールちゃんの表情が段々とイライラとしたものに変わっていったよ。　第７３話　いざ魔界へ！　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年11月11日

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• 第７２話　嫌われてはないよね？　その２．

  　「確かにアシュタロトが大人しく話を聞いてくれて、しかも私達の話を受けてくれる可能性っていうのは限りなく低いかもしれないよ」　「わかってるなら行く必要ないじゃない」　「でもねベルフェゴールちゃん、それでも私達はそれにかけてみたいんだよ。それにやってみないことには本当に受けてくれないかどうか、それはわからないからさ」　「それで、魔界への扉というのはリヴェラ大陸のどこにあるのですか？」　「さっきからあんた達、軽く魔界の扉、魔界の扉って言ってるけど、あたし達魔族の本拠地に行くってことなのよ？それがどういう意味かわかって言ってるの！？」　「あぁ、もちろんだ！アシュタロトと話をする前に他の魔族達に襲われて、それすら無理かもしれねぇっていうのは十分理解してるし、それだけの覚悟はしてるぜ」　「でも、わたくし達は別に死ぬつもりは毛頭ありませんし、生きて帰ってきますわよ？」　「うん、私達は今回は別に戦うつもりで向こうに行くわけじゃないし、アシュタロトを傷つけることもしないし、他の魔族とも事を荒立てるつもりはないよ」　「ふ～ん・・・」　私達の言葉にベルフェゴールちゃんは静かに腕を組んで考え始めたよ。　「別に貴女達がどうなろうとあたしの知ったこっちゃないわ」　すんごい悪い顔っていうか、うん、ニヤァって笑みを浮かべてきたよｗ　「まぁ、いいわ。しょうがないから魔界の扉の場所まで案内してあげる」　そう言うとベルフェゴールちゃんは踵を返し、私達に背を向けた。　「ほら、着いてきなさいよ」　カツカツと進み出したベルフェゴールちゃん、私達はそれに静かについて歩いて行った。　「ありがとね、ベルフェゴールちゃん♪」　一瞬ピタリと動きを止めたように見えたけど、キノセイかな。　「本当、この場で出会ったのがベルフェゴールちゃんでよかったよ。きっと他の人だったら間違いなく問答無用で戦闘になったりしてたよねぇ」　「・・・ふぅ。別に礼を言われる覚えはないわよ」　後ろを振り返ることなく、歩みを止めずにそのまま歩きながら頭を左右に大きく振ったベルフェゴールちゃん。　「あたしはただ、貴女達が本当にそんな事ができるのか、少しだけ興味が沸いた。それだけよ」　そんな事を言ってる彼女だけど、なんだか照れてるようにも見え・・・ないなぁ・・・うん、最初ツンデレなのかな？って思ったけど、そんなことはなさそうだよ。　歩き出してから暫く、ベルフェゴールちゃんがその足をピタリと止めたよ。　「着いたわ。この部屋の中に魔界と地上世界を繋げるゲートがあるわよ」　移動したと言っても、広いお城の中をただとある場所に向けて進んでただけ。　ベルフェゴールちゃんが足を止めたのはお城の一番最奥にある部屋の前だった。　まぁ、そうだよねぇ・・・普通に考えたらお城の中で管理するよねぇ・・・　外にあったら誰かが使用してもわかりづらいし管理しづらいよねぇ。　それこそ、向こうから凶悪な魔族がベルフェゴールちゃん達のあずかり知らないところでやってきてもアレだしね。　その逆もしかり、か。こっちからナニカの間違いで人間が魔界に紛れ込んでしまう恐れもあるし。　部屋の中に入ったんだけど、何もないよ？　そこには大きな鏡があるだけ。　「どこにあるんだ？」　「そんなゲート的なモノは見当たらないですわね？」　「まさかこの部屋自体がゲートなんです？」　「そんなわけないじゃない」　「え？ということはですよ？もしかして、その後ろに見えてるものがそうなのです？」　「そうよ、アレがゲートよ」　辺りを改めて見回してみたけど、あるのはやっぱり鏡だけ。　いや、違う！？ベルフェゴールちゃんの体で隠れてたから見えなかったけど、別のモノが見える！？　それに気付いた皆も何の冗談だ、って感じの反応を示してるよｗ　「マジかｗｗｗ」　「え、え～っと・・・」　「本気で言ってるんですの？」　「冗談で言うわけないじゃない、というかここで嘘をついて何の得になるのよ」 　ベルフェゴールちゃんは至極真面目な表情を浮かべながらそう答えたのだった。　第７２話　嫌われてはないよね？　その２．終わり　第７３話　　　いざ魔界へ！　　　その１．へ続く

  2017年11月04日

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• 第７２話　嫌われてはないよね？　その１．

  　「貴女達？人の家に勝手にあがってきて、一体何の用なの？」　私達の前に立ち、腕組みをしながら不機嫌そうに睨みつけていた少女。　頭からは２本の角を生やし、背中にはお父さんのそれとよく似た大きな漆黒の翼。綺麗なシルバー色のセミロングの髪をしたパッと見１０歳くらいにしか見えない子。　彼女は今このお城の主であるサタナエルの１人娘、ベルフェゴール。　「あ、ベルフェゴールちゃん久しぶりだね♪」　笑顔でベルフェゴールちゃんに手を振ると、そんな私に対して目を細め、思いっきり訝しげな表情を浮かべて睨みつけてきたよ。　「馴れ馴れしい・・・」　「あ、あはは・・・」　「別にあたしは貴女のことを認めたわけじゃないし、何よりあたしはお父様を殺した貴女達をまだ完全に許したわけじゃないんだからね？」　これって所謂ツンデレというやつでは？と、勝手に解釈してみようｗ　「あれ、でも前に奇特な人間として覚えておくって言ってくれなかったっけ？」　「そんな昔の事は忘れたわ」　そう言うとベルフェゴールちゃんはわざとらしくため息を１つついてきたよ。　「で、貴女達は本当ここに今回は何をしにきたのよ」　「はい、実は今から私達は魔界に行こうかと思っていまして、それでここリヴェラ大陸に魔界へと繋がる扉があると聞いてやってきたのですが」　「けどよ、さっき城の周りをグルッと１周してみたんだが、それらしきモンが見当たんなかったんだよな」　「ねぇ貴女？ここに住んでいるのでしたら魔界への扉がどこにあるかも知っておりますわよね？わたくし達に教えてくださらないかしら」　ミハイル達の言葉にベルフェゴールちゃんは見る見る表情を険しいものへと変えていったよ。　「・・・はぁ？」　明らかに怒気を含んだ感じの声色なんだけど・・・ｗ　「確かに魔界への扉はここにあるわ。もちろんそれのある場所も知ってる、だけど今ここで私が貴女達に教える義理はないわよね？」　「お願いします、わたし達はどうしても魔界へと行けない理由があるのです。的であるわたし達に教える義理がないというのは重々承知していますがお願いします！」　「お願いだよベルフェゴールちゃん、私達はどうしても向こうに行かないといけないんだよ」　私達が頭を下げるとそれを凄く困ったように見てきたベルフェゴールちゃん。　そして、たっぷりと悩んでから深くため息を１つついた。　「はぁ・・・」　その彼女のため息には諦めのようなものが含まれてるように感じたよ。　「しょうがないわね。教えてもいいけど、魔界に行く理由って何よ？まさかお父様だけじゃなく、あたしに残された唯一の肉親であるアシュタロト叔父様まで倒しにいくわけじゃないんでしょうね？もしそうだとするなら、あたしは絶対に貴女に教えないわよ」　「ま、ままま、まっさかぁ！？」　「別に私達は戦いに行くわけではありません。アシュタロトと話し合いに行くだけです」　「あぁ、今回天上人達を裏から操ってたのがあんたの叔父であるアシュタロトだってことらしいからな」　「えぇ、それでわたし達は今回アシュタロトに直接会って、手を組み共に共存の道を歩んでいこうという話をしにいくつもりです」　「うん、だからベルフェゴールちゃん。魔界への扉。どこにあるか教えてくれないかな」　私達の言葉にベルフェゴールちゃんは今までついたものの中でも一番大きい特大のため息をはいたよ。　「ねぇ・・・貴女達本当にそんな事が出来ると思ってるの？アシュタロトおじ様が貴女達人間の言うことを聞くと本当に思ってるの？もし、そうならとんだお笑いだわ」　あ～・・・本当にそう思ってるんだろうなぁ・・・　'`ｨ'`ｨ ┐(´Д｀┌←こんな感じに手を上げるベルフェゴールちゃん。　第７２話　嫌われてはないよね？　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年11月04日

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• 第７１話　ただいまリヴェラ大陸　その２．

  「なぁ？ここなんか怪しくね？」　そう言いながらクレッシルが指差したのは、何の変哲もないただの古井戸。　えっ？ふる・・・いど？　「何で井戸を調べる必要がありますの？クレッシル」　クレッシルが何で井戸を指差したのか理解できなかったのは私だけじゃないようだ。　「何の変哲もない井戸のようにしか見えませんが？」　ミハイルにいたっては、クレッシルを残念な子を見るような瞳で見つめてるよｗ　「いや、そんな目でみんなって。あれだよ。某ＲＰＧであるじゃねぇか。井戸に入るとワープできるってやつ。あっただろ？もしかしたら、だ。コレもそれと同じなんじゃねぇかとだな」　「はいはい、何を言ってるんです？クレッシル。そんなのあるわけないです」　「ひでぇ・・・まさかゲティンにまでそんな冷ややかな目を向けられるなんて思ってもなかったんだが」　ガックリと肩を落とすクレッシルの肩にゲティンが手をポン、と乗せたよ。　「それならクレッシル？ちょっと先に下りてみてください。それで本物であるならば、わたし達も後から追いかけていきます」　「本当だぞ？ちゃんとついてこいよ？」　「もちろんです」　「そうですね、もしこれが本当にそうであればもちろんついていきますよ」　「んじゃ、ちと確かめてくる」　と、いうわけで。釣瓶がつけられてる滑車を使って下にゆっくりと降りていったクレッシル。　そして、そんな彼女を半信半疑というか、疑いの眼差しで眺める私達。　ガシャン。　ん？滑車の動きが止まった、ということは一番下についたってことだよね？　「クレッシル～？どう～？何かあった～？」　「井戸の下に向かって大声で語りかけると、下から響く声でクレッシルの返答があったよ。　「だめだ～、何もねぇ～」　「あ、あはは・・・だよねぇ」　「まったく、見ただけでわからなかったんでしょうか？ただの井戸がワープ装置であるはずがないということに」　「クレッシル、早く戻ってきてくださいまし～」　「はぁ・・コレが絶対怪しいと思ったんだがなぁ・・残念だ」　「クレッシル気は済みました？それじゃ行きましょう」　再び全員でリヴェラ大陸を怪しいところがないか確認しながら進んだんだけど・・・　「あれ、１周しちゃった？」　うん、私達はいつの間にかリヴェラ大陸を１周しちゃったんだよねぇ。　「ん～・・・外にはなかった、ということはやはりあそこ。サタナエルのいたお城の中でしょうか？」　「んだなぁ・・・その可能性が高そうだな」　「お城の中ですの・・・」　「魔物の皆さん襲ってきませんか？」　「大丈夫じゃないかな？」　「流石に去年のあれもありますし、今更私達を襲おうとする魔物はここにはいないと思いますけど・・・」　「まぁ、極力無駄な戦闘は避ける方向で行きましょう」　「そうですね、ここで体力を消耗するのは得策ではありませんし」　リヴェラ大陸中央部に位置する元サタナエルのいた、今はそのサタナエルの娘であるベルフェゴールちゃんのモノであろうお城の中に踏み込んでみたんだ。　去年は沢山の手下達がいたはずなのに、今は凄くガラーンとしてる。　本当に誰か住んでるの？そう思えるくらいだよ。　それにしても、去年は気付かなかったけど、今改めてみてみると。結構お洒落な建物だなぁ。　この壁の彫刻とか、掛けられてる肖像とか。いいなぁ。　これサタナエルの趣味なのかなぁ？　あれ・・・これって・・・・　お城の中を歩いてると私の目に１枚の絵画が入ってきたんだよ。　その絵画というのはサタナエルの家族？なのかな。　サタナエル・アシュタロトと後、知らない魔族。それと・・・・フェルナンデスの姿がかかれてたの。　「どうしたんですかセラ？急に立ち止まって」　「あ、うん。ごめん。なんでもないよ」　再びお城の中の探索をしようとした私達の後ろに近づいてくる足音。　そして、その足音は私達のすぐ近くまでくるとピタッと止まった。　足音の聞こえてきた方へ振り向いてみたら、そこにはこのお城の主と思しき人物が立ってたのだった。　第７１話　ただいまリヴェラ大陸　その２．終わり　第７２話　嫌われてはないよね？　その１．へ続く

  2017年11月04日

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• 第７１話　ただいまリヴェラ大陸　その１．

  　「ん～・・・ここに来るのも何ヶ月ぶりだろうねぇ」　「そんなにまだ日は経ってないはずですけど、何やら既に懐かしさすら感じますね」　レテ大陸を出てからどれくらいの日が経ったんだろうか。　１週間くらい？あ、違う。もうちょっと経ってるかも、まぁ、うん。それくらいの長い時間かけて私達を乗せた船は無事に目的地であるリヴェラ大陸に着いたんだよ。　適当な場所に船をくくりつけ、私達は綺麗に花が咲き誇る景色を眺めた。　「んで、魔界への扉はどこにあんだろうな？」　「そういえば、リヴェラ大陸にあるとはゼウスから聞きましたけれど、肝心のリヴェラ大陸のどこにあるか、という話は聞いていませんでしたわね」　「とりあえず島の外周をぐるりと回って確認してみます？」　「そうだねぇ、そうしよっか」　と、言うわけで。船から降りてまずはリヴェラ大陸の外周を探索することにしたんだけどね？　「ちょっといいですかセラ？」　「ふぇ？何かなミハイル」　なんかさ、眉間に皺を寄せていつも以上にものすんご～く、真面目な表情を私の方に向けてきてるんだけど？　「魔族の本拠地である魔界へ行くんです。この先何があるかはわかりません、準備だけは万全を期してください、いいですね？くれぐれも準備不足で向こうに行ったのに何も出来なかった、ということはしないで下さいよ？」　「なんだ、そんなこと？もちろんだよ♪」　ミハイルがこっちを信用ならん、って感じに見てきてるんだけど・・・　「とりあえずね？このペロキャンとチロルチョコは外せな・・・・・・」　そこまで言って私はお菓子を持つ手をカバンの方に持っていくのを止めた。　「ごめん……冗談だよ。本気じゃないから……」　うぅ～・・・ミハイルの目が怖いんだけど。　ちょっとした冗談で言ったつもりなのに、本気で・・・本気で私を睨みつけてきたんだけど！？　ん～・・・でもでも、実際問題魔界へ行くとなると何が必要なんだろうね？　っていうかさ、準備って言ってもだよ？そんなに用意するモノってナイキがするんだけど？　ないっていうのは御幣があるかもしれない、でも多分ね？いつもと同じでいいと思うんだよね。　うん、だってさ、まずね？魔界に降り立ったとして、どこに出るかわからないからとりあえず野宿するのに必要となる小物でしょ？　食料はアセトの用意してくれる兵糧丸でいいとして、後は何がいるのかな。　あ、とりあえず魔の瘴気に中てられないように天使の鈴は持っていた方がいいかもね。　そんな感じに船から降りるための準備を進め、必要最低限のアイテムだけを手に私達はリヴェラ大陸に降り立った。　「うっし！とりあえず、だ。グルッと島を１周してみっか」　「そうですね、それで怪しい洞窟や洞穴があれば１つ１つつぶしていきましょう」　面倒だけどそれが一番かもね。　「ん、わかったよ」　「それではいってらっしゃいまし、わたくしはここで待っていますわ」　「アセトは何を言ってるんですかね、何を」　「ひっ！？そ、そんな怖い顔をしないで下さいまし、冗談ですわよ、冗談」　「そう言って、ミハイルがＯＫ出したらガチでここで待ってるつもりだったんだろ？アセト」　「それはもちろん」　「あ、痛い！ちょ、ミハイルお願いですから無言でスピアでつつかないで下さいまし」　そして、自分達が降り立った船の場所から反時計回りにリヴェラ大陸をグルッと１周することにしたんだけどさ？　「ん～・・・ここでもないねぇ」　「この場所は怪しいと思ったのですが・・・」　「本当にここにあんのかよ？」　「城の中なのでしょうか？」　だけど、魔界への入り口というのは簡単に見つかるわけもなく、ただ時間だけが過ぎていった。　その時、クレッシルが何かを見つけたみたいだよ。　第７１話　ただいまリヴェラ大陸　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年11月04日

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• 第７０話　懐かしいねぇ・・・　その２．

  　「何でスピアが釣れるんですか・・・はぁ、全く。誰ですかね？こんな武器を海に捨てるような非常識な人間は・・・そんな人を見かけたら説教してやりたいです」　「流石にこれだけ錆びてると武器としては使えない、よねぇ？」　「でも、海に武器捨てるとか普通にやることだろ？」　・・・はい？クレッシルは何を言ってるのかなぁ？　「あぁ～・・・そうですわね。ＲＰＧとかやってると、たまにやりますわよね？船で海を移動中にいらない道具を整理がてら、武器とか防具とかその他アイテムをスポポーン、と投げ捨てるの」　クレッシルとアセトの台詞にゲティンがなんとも言い難い表情を浮かべてるんですが　「やるんです？そんなこと・・・やるんです？」　怖い、ゲティンのその目のハイライトのない無表情なソレで見つめられるの怖いんだけど。　「そうですか、今度作者＆画面の前にいる皆さんの中でそんな事をやったことある人達にわたしの友である海神ネプトゥーヌスから天罰を与えるように伝えておきます」　冗談に聞こえない、ゲティンの言ってることが冗談に聞こえないんだけど。　ってかさ、このスピアなんか見たことある気がするんだけどキノセイかな？　「ねぇ、このスピアなんだけどさ、どっかで見たことあるような気がするんだけど、私の思い違いかな？」　「何だろう、スピア・・・スピア・・・去年何かあった気がするし、思いだせそうな気はするんだが」　「あぁ～・・・そういえばグリーディの洞窟からレテ大陸に行く途中で何かありましたわね」　皆で釣り上げた錆びたスピアを眺めながら何かを懸命に思い出そうとしてたんだけどね？　「あ、思い出しました！！」　ミハイルが大きな声を挙げてそう言ったんだよ。　「これって、私のスピアじゃないですか？」　「え？ミハイルのスピア？何でミハイルのスピアがこんな所で釣れるのかなぁ？」　「何です？ミハイル、貴女去年ここでもしかしてそのスピアを海に投げ捨てたのです？」　「違いますよゲティン、むしろこれに関しては私は被害者です」　「被害者？どういう意味です？」　「去年、レテ大陸に向かう途中なんですが、クレッシルがですね？私のスピアを銛代わりに使って海に落としたことがあったんですよ」　「何ですそれ、本当なんです？」　「そうですよ、その時のスピアですよコレ。ほら、その証拠にここにパーソナルマークが刻まれてます」　錆び錆びのスピアの柄の先端部分には可愛らしいペンギンの絵柄が刻まれてたよ。　確かにそうだね、この可愛いペンギンの絵柄はミハイルのモノだね。　自分のスピアだとわかるとその当時のことを思い出したのかな？ミハイルの表情がドンドンと怖いくらいの笑みに変わっていったんだよ。　「そうです、思い出しました。クレッシル？あの時はよくも私の大事なスピアを銛代わりに使ってくれましたね」　「ん、んだよ！もう済んだことだろ？それに、あの時だって私のみぞおちに思いっきり肘鉄ぶちかましてきたじゃねぇかよ」　「あ、あはは・・・まぁまぁ、２人とも落ち着いて。それでそのスピアどうするの？」　「流石に今はデーモンスピアもありますし。何よりこれだけ錆びていては武器としては使えませんね」　「砥ごうにもこの場では砥ぐことも出来ませんし、このまま陸に上がるまで保管しておきます？」　「そうですね、そうしておきましょう。こうして再び手元に来るくらいですから、きっとこのスピアには不思議な縁があるのでしょう」　晩御飯は釣れなかったけど、思わぬ収穫（？）がありホクホク顔のミハイルが釣り上げたスピアを手に奥に引っ込もうとしたんだけど、その時ね？　「あ・・・・」　ポチャン♪　『あ、あ～・・・・・』　手を滑らかしたミハイルの手から逃げるようにスピアが滑り落ちていった。　そして再び海の中へ、ダーイビーン♪　「あぁあああああああああああああああああ！！」　「ま、まぁ・・・どんまいミハイル」　「なんてぇか、まぁ・・・ミハイル。元気出せ？」　「手元に戻ってきたのもつかの間、ミハイルのスピアは再び海の中へ旅立っていったのだっ・・・・げふぅ！」　ナレーションをつけようとしたアセトだったけど、言葉を言い終える前に体重の乗ったミハイルの鋭い肘鉄がみぞおちへ・・・　「げえふ、げふっ……う、うえぇええ‥‥ぐ、ぐるぢ・・・死ぬ、死んじゃいますわ・・・・」　「ア、アセト！しっかりしてください！傷は思ったよりも深いです！諦めてください」　「私のスピア・・・海の中で元気に暮らすんですよ」　顔面蒼白、今にも逝きそうなアセトを介抱（？）ううん、ごめん、看取ろうとしてるゲティン・クレッシル。　そしてそんなアセト達を放っておいてミハイルは一人黄昏てたよ・・・　私達がこんな馬鹿な事をやってる間も私達を乗せた船は着実にリヴェラ大陸へと向かって進んでいたのだった。　第７０話　　懐かしいねぇ・・・　その２．終わり　第７１話　ただいまリヴェラ大陸　その１．へ続く

  2017年10月28日

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• 第７０話　懐かしいねぇ・・・　その１．

  　「う～ん・・・今日の晩御飯中々釣れないねぇ・・」　「そうですね、ちょっと今日はいつもと比べると食いつきが悪いですね」　「もういっそのこと、船をここに止めて私が素潜りで捕まえてくるか？」　「そうだねぇ、あんまりにも釣れなかったらそれがいいのかもねぇ」　「それも良いですけれど、ここはわたくしのサンダーボルトで感電させて一気に魚を網で掬うというのもひとつの手ですわよ」　確かに・・・アセトにしては冴えてるこというね、近くに魚がいればそれは有効なのかも。　レテ大陸を出て魔界への扉があるって言われたリヴェラ大陸に向けて船を進めてる私達。　そして、そんな私達が今全員で並んで何をしてるのかと言うと。　って、一番最初で晩御飯釣ってるって言ってたっけ。　っていうかさ、いつもだったらちょろっと釣り針を落として待ってやるだけで入れ食い状態っていうのかな？すぐに魚がかかるんだけどさ、何でか知らないけど今日は全くと言っていいほど魚がかからないんだよねぇ。　これは本当に何か策を講じないとこのまま今日はおかずなしの白米だけの晩御飯になっちゃうよ……　うぅ・・・それだけは阻止しないと・・・なんとしてもそれだけは・・・　「ふわ、あぁあああああ・・・ねむぅ……」　流石に糸をたらして待ってるだけだし、その間なにをしてるわけでもない。というか、何かをすることも出来ないしただただこうしてダラダラと話をするだけだから暇なんだよねぇ。　釣りは待ってる間が楽しいというか、それが醍醐味だって言う人もいるけど、正直私は苦痛でしかない。　こうしてボーっとしてる時間、何もしない時間っていうのは苦手なんだよね。　「お、おいセラ！！」　「んぁ？」　「おきろ！起きろ！！さっきからセラ、お前の引いてるぞ」　「ふぁっ！？あ、ほ、本当だ！！」　クレッシルに思いっきり体を揺さぶられて目を覚ました私の釣竿は思いっきりひいて反応を示してた。　というか、糸が結構強く下に引っ張られる感じ、これは大物かも知れない！　そう思うと俄然やる気が一気に沸いてきたよ！！　それに、私の釣竿の異様な引きようにその場にいた全員が期待の眼差しを向けてきてる。　「セラ、わかってますね？一気に無理やり力で引き上げようとせずに、時間をかけてもいいですから、慎重に引き上げるんですよ？」　「う、うん。わかったよミハイル」　「あぁ、これで今日は白ご飯だけの晩御飯だけは避けられそうですわね」　「何のお魚でしょう。鯵かカサゴ辺りでしたら刺身にして酒肴にも丁度良いのですけれど」　皆が期待の眼差しを向ける中、頑張って私がその竿にかかったナニかと格闘すること十数分。　やっと・・・やっとその私の釣竿にかかったモノの姿が私達の目の前にお目見えしたんだけどさ・・・したんだけどさぁ・・・　「え、え～っと・・・おれ、食べられるんですか？」　「変わった魚だな？槍烏賊の仲間か何かか？」　私が釣り上げたものを見て困惑の表情を浮かべる皆、というか私が釣り上げたモノを認めたくないらしい。　というか、私もぶっちゃけこれだけ時間をかけて釣り上げたモノがこんなんだなんて認めたくない。　「何を言ってますのクレッシル・ミハイル。どう見ても食べられそうもないモノじゃありませんの」　そんな中、アセトが現実を突きつけてきたんだけど……　「というかです。クレッシル。あってるの槍の部分だけです」　う～ん、魚が釣れたと思ったのに残念。　私の釣竿にかかったものっていうのは、刃先が錆び錆びなスピアだったんだよ　第７０話　懐かしいねぇ・・・　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年10月28日

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• 第６９話　本当アセトは・・・　その２．

  はぁ・・・まぁ、でもさ？　確かにこの道を往復するのはちょっと、ううん。かな～りだるいというのは分かるよ、うん。　「ん～・・・ねぇゲティン、さっきゼウスに会った時にさ？」　「はい？」　「地上世界と天上界をもっと簡単に行き来できる移動手段を作ってもらうっていう話をすれよかったねぇ」　「そうです？そんなモノ作らずともよいのでは？」　「確かにそれはあれば楽かもしれませんね」　「えぇ、是非に作るべきですわよ」　「ですけれど、天上塔を昇って天上界までくるような人間といいますとセラ達くらいしかいないでしょうし、作る必要性がないようには思うのですけれど」　「まぁ、それはそうかもだけどさ」　「それに、普通の人間が天上界へわざわざ出向く理由も浮かびません、必要ないかとは思います」　ゲティンの言う事は最もだと思う。確かにここを通って天上塔に行く理由なんて普通の人にはないかもしれない。　「ですが、セラ達が欲しいというのでしたら、ゼウスの方には後ほど掛け合ってみることにはします」　「あぁ、頼んだぜ」　「はい、お願いしますアセト」　そんな話をしつつゆったりと休憩をした私達。　休憩も終えて再び進み出した私達、そして行きのときと同じくらいの時間。　多分、まるっと１日くらいかけて地上世界へと戻ってきた。　「ふ、ふはぁ・・・・もう嫌ですわ……もうこんな塔登りたくないですわ‥‥」　思いっきりぜぇぜぇと大きく肩で息を切らし、膝に両手を置いてごちるアセト既視感が　「何か前に、魔法の山登った時も同じような事を言ってた気がするのは気のせいでしょうか？」　「あ～・・・そいや。去年魔法の山登った時も言ってたな」　「あはは、アセトは本当進歩ないっていうか。変わらないねぇ」　「ん、何か馬鹿にされてるような気がするのは気のせいですの？」　「キノセイダトオモウヨー」　「？？？うん、まぁ。気にしないことにしますわ」　その後、天上塔を後にした私達はゲティンの後についてレテ大陸の深い森の中を進み自分達の乗ってきた船に向かってたんだけどね？　「あ・・・」　何か思い出したのか、進んでる途中ですんごい不安になる一言を・・・ね？　「ど、どうしたのかなぁ‥‥」　「いえ、何でもありません。ただ天使の涙の入ってた宝箱を開ける為の鍵をイシリオンに返すのを忘れてたな、と思っただけです」　「な、なんだ・・・そんな事ですか」　「そんな事とはなんですか。そんな事とは。とても重要な事です」　「まぁまぁ、それは後でいいんじゃないかなぁ。もし忘れるんだったら私が後で言ってあげるからさ」　「わかりました。一応忘れないように手にも書いておきます」　そう言うが早いか、早速ゲティンは手の甲に天使の鍵を忘れずにイシリオンに返す！！って書いたよ。 　っていうかさ、手に書いても意味ないっていうこと気付いて、ない？　だって、魔界まで行って戻ってくると、早くてもどれくらいかかるかわからないし、絶対にそれだけ間があけば手に書いたものなんて消えちゃうからね。　まぁ、そんな事いうのはやめておこう。　そうこうしてる間に私達が乗ってきた船に到着～♪　「さ、それではリヴェラ大陸に向けて行きましょう」　「それじゃ船出すよ～♪」　操舵室へと入った私達、錨を揚げてゆっくりと船を動かしだし、私達の乗った船はリヴェラ大陸へと向けて進みだしたのだった。　第６９話　本当アセトは・・・　その２．終わり　第７０話　懐かしいねぇ・・・　その１．へ続く

  2017年10月28日

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• 第６９話　本当アセトは・・・　その１．

  　「うぅ～・・・つっかれましたわ～……」　気だるそうにそう言いながらその場に腰掛けたんだけど・・・　「休憩にいたしませんこと～？」　はぁ・・・天上塔を地上に向けて下り始めてからこれで何回目なんだろう。　「あのさぁ・・・アセト？」　正直、緊張の糸でも切れたんだろうか？昇る時よりも休憩を取りたがる回数が増えたような気がするんだけど？　あ、違うや。ううん、むしろアレだったね。もうほらアセトもＯＢＳＮだからきっとそれだよ、うん。　後は普段不摂生な生活してて運動不足だからだよね。　いっそのことアセトだけこの場に置いてっちゃおうかなぁ……　チラッとアセトの方を見てみたけど・・・　はぁ、しょうがない。それだけは止めておこうかな。一応アレでも今まで一緒に過ごしてきた大切な仲間（家族）だし、ね？それに、アセトをこのまま世に放置するのは大罪だと思うの（　そう思ってるのは私だけじゃないらしい。　皆の方を見てみると、苦笑しつつ足を止めアセトの方へと体ごと向けたよ。　「はぁ・・・またですか？これで何度目です？」　「え～っと、わたしの記憶が正しければこれで５回目です」　「てかよ？アセト、おめぇ昇ってた時よりも休憩の頻度高くなってねぇか？」　「そうですよ？気合と体力が足りないです。体力がないのならここは気合と根性で乗り切るべきところですよ？」　クレッシル・ミハイルの言葉にすんごい嫌そうな目を向けてきてるんだけど　「以前にも言ったと思いますけれど、わたくしは生粋の魔導師ですのよ？そんな貴女方みたいな体力馬鹿と一緒にしないでいただきたいですわ」　「体力馬鹿って何だよ、体力馬鹿って・・・そんなん言ったらおめぇ、アセトなんてさしずめ歩く魔力タンクじゃねぇかよ」　「というよりもですよ？生粋の魔導師というのであれば、それはゲティンも同じでしょうに」　「ゲティンはほら、天上人ですし？わたくしと体の基本的なつくりが違うんですのよ」　「何を言っているんですアセト？天上人だからとか、地上人だから、とか。そんなの関係ないです。体の作りは同じです。これはただ単にアセトの基礎体力が低すぎるというだけです」　「う、うぅ～・・・」　まさかの仲間だと思ってたゲティンからも言われて涙目になってるんだけどｗ　「セラぁ・・・皆してイヂメてきますわ～・・・」　ウルウルと情けない表情・・・　ううん、甘えてくるような表情を浮かべながら私を見つめてくるその様子は本当、私よりも７つも年上のもうすぐ２５歳になるお姉さんとは全く思えないんだけど？　「はいはい、別にイヂメてないからねアセト？ほら、もう少しで地上に着くだろうしもうちょっとだけ頑張って歩こうよ、ね？」　「えぇ～・・・疲れるのイヤですわ～」　イラッ　☆ミ　「あぁもぉ！！」　ビクッ！？　「じゃあいいよ。アセトだけ置いてくからさ！！」　「ひ、ひぃいい！？わ、わわわ、わかりましたわ。ちょ、ちょ～っと休憩を取るのをもう少し控えますわ！！」　「セラ、セラ。主人公がしてはいけない表情になってますよ」　「こ、こえぇ・・・」((((；ﾟДﾟ))))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ　「・・・・・・」ﾁｰﾝ…_(8o｣∠)_　なんか皆が震えたり言葉を失ったりしてるんだけど。　「ん、あ。あぁ・・・ん、んっんぅ」　いけない、いけない。私としたことがちょっとイラッときちゃったよ。　第６９話　本当アセトは・・・　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年10月28日

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• 第６８話　入り口はどこ？　その２．

  　「でも、リヴェラ大陸かぁ・・・ベルフェゴールちゃん元気かなぁ」　「ベルフェゴールならそうそうくたばったりしねぇだろ」　「そうですね、彼女ならよっぽど大丈夫だと思いますが」　私達の話にゼウス達は頭一杯に？を浮かべてたよ。　「ベルフェゴール？ベルフェゴールとは誰のことだ」　「あぁ、今リヴェラ大陸にはサタナエルの娘であるそのベルフェゴールって娘が住んでんだよ」　「ふむ・・・なるほど？確かにサタナエルの娘であればそこに住んでいてもおかしくはないな・・・だが、今のそなたらの口ぶりでは実際に会った事があるように聞こえたが」　「うん、ここに来るちょっと前にリヴェラ大陸に寄ったんだけど、その時に会ったんだよねぇ」　私の言葉にゼウスは目を見開いて驚いた表情を向けてきたよ。　「なんと！？だが、サタナエルの娘からすればそなた等は親の仇。一目見れば真っ先に戦闘となり、命を狙われても仕方ないのではないのか？」　「確かに前に会った時はセラベルフェゴールに刺されてましたね」　「うぅ～・・・あの時は本当に痛かったよぉ・・・」　「でも、リヴェラ大陸だとまたベルフェゴールと会うことにもなるでしょうし、少々厄介なのでは？」　「へ？厄介？どうして？」　「いえ、その前に行った時は見逃してくれたかも知れませんが、再びリヴェラ大陸に向かい、無事に済ませてくれる保障はないですよね？」　アルマロスが本当に心配そうにそう語りかけてくれたし、他の皆も同じように表情を向けてきてる。　「そうかなぁ？渡しはベルフェゴールちゃんならまた行っても普通に出迎えてくれて、ゲートもどうぞどうぞって２つ返事で使わせてくれると思うんだけどねぇ・・・」　「どこからその自信は出てくるんですか・・・」　「ま、大丈夫だろ」　「えぇ、わたくし達は敵ではないということは前回行った時にしっかりと伝わっていると思いますし」　「まぁ、そうでなくても、そこしかゲートがないんでしたら行くしかないですね」　「んだんだ、万が一ベルフェゴールが襲ってくるようであれば、その時は戦ってちょっと眠って貰うようにするか」　「んま！クレッシルったら眠ってて貰うとか野蛮ですわね」　「まぁ、あまり彼女とは戦いたくないですが、一応その時の事も頭の隅に置いておきましょうか」　「そうだねぇ。前のあれもあるし、ベルフェゴールちゃんが私達に対して危害を加えてくることはないと思うけど」　まだ少しゼウス達は納得は出来てないように見えるけど、それ以上は何も言わなくなった。　「さて、それじゃ。魔界に繋がってるゲートの場所もわかったし早速いこっか♪」　「そうですね、善は急げです」　「気をつけて行ってくるがよい、そなたらの無事をこの場より祈っておるぞ」　「ゲティン、気をつけて行ってきてください。貴女の帰ってくるのを待っています」　「アルマロス、美味しいお酒を用意して待っててください。すぐに戻ってきます」　「わかりました、特上のを用意しておきます」　アルマロスの言葉にゲティンはニコッと微笑みかけた。　「それでは行って来ますアルマロス・マスティマ・ペネム」　「あぁ、気をつけて行ってきなよ、ゲティン」　「ゲティン、いってらっしゃい」　「宜しく頼んだぞ、ゲティン・セラフィムら四大天使の皆よ」　アルマロス・マスティマ・ペネム・ゼウスに見送られ私達はゴッドキャッスルを後にして再び地上世界へ向けて歩き出したのだった。　第６８話　　入り口はどこ？　　その２．終わり　第６９話　本当アセトは・・・　その１．へ続く

  2017年10月21日

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• 第６８話　入り口はどこ？　その１．

  　「実は魔界と地上世界とを結ぶゲートは２つあった」　「あった・・・？えっと、どういう意味かな？」　「うむ、まず１つはレテ大陸にゲートがあったのだ」　えっ？レテ大陸っていうと、あのダークエルフ達の園があって、ゲティンやサレスさんが生活をしてた真皮の泉のある場所。　天上界と地上世界の接点。というか、繋ぐ場所であるあそこに！？　２０００年という永きに渡ってその場所で生活をしてたゲティンも知らなかった事実みたいだね。　「えっ！？そんなの始めて聞きました。本当なのです？ゼウス！？」　「うむ、何年前だったろうか・・・」　ゼウスは思い出すかのように遠くを見つめたよ。　「あれは確か２０００年前だったと記憶する。サレスがオーディン様の手により天上界を追い出されるまでは確かに存在していたのだ」　「・・・はぁ？」　ゼウスの言葉に納得したのかしてないのか。そんな生返事っぽいモノをゲティンは返してたよ。　「だが、あのようなことがあったからな。それでオーディン様はそれまでずっと放置していたレテ大陸にあった魔界とのゲートを永久的に使えないように堅く封印を施したのだ」　なるほど、丁度ゲティンがこっちに来る直前に閉ざされたわけなのね、それは知らなくても仕方ないのかな。　「ゼウス？それは貴方の力で封印を解いて再び仕えるようにすることは出来ないのです？」　「すまない・・・そうしてやれることが出来れば良いのだが・・・なにぶんワシの力はオーディン様のそれにははるか及ばぬ。封印を解いてやることは出来ぬのだ」　本当に申し訳なさそうな表情を浮かべるゼウス。　う～ん・・・そこから行く事ができればかな～り、移動とか楽だったのにねぇ・・・ま、仕方ないかぁ。　「そっかぁ・・・」　「ということは、まずレテ大陸にあったというゲートが使えないということは確定したわけですが、もう１つあるのですよね？」　「そういえばそうですわね。２つあったと言われましたし、もう１つがあるんですのよね？」　「そのもう１つのゲートってのはどこにあんだ？」　「もう１つの、今も稼動しているであろうゲートはリヴェラ大陸にある」　おぉう・・・まぁ、そうだよねぇ。　普通に考えれば魔族の本拠地だった場所なわけだし、そこにあるというのは至極真っ当なものだと思う。　「え～っと・・・リヴェラ大陸。名前は聞いたことあるような気がしますけれども、どこでしたかしら？」　「おめぇ何言ってんだよ・・・」　「アセト・・・？それ本気で言ってるんですか？」　「へ？へ？」　クレッシル・ミハイルだけでなく、その場にいる全員から【お前何言ってんの？】的な視線を向けられてることに本気で焦ってるよｗ　「リヴェラ大陸といえばアレです。今から１年以上前、オファニム城を後にして世界中を当てもなくさまよっていた私は偶然立ち寄ったキャメロット城下町にあったインプ退治の立て札を見つけました、そしてその依頼を請け管理塔に行った際なのですが・・・・・・・」　「あの・・・ミハイル？その話長くなりますの？」　「そうですね、要所要所端折ったとしても半日くらいでしょうか？」　「えっと、ミハイルは今何の話をしようとしておりますのかしら？」　「え？ですから、リヴェラ大陸がどういうとこでどこにあるかという話ですよね？」　「何でそんなリヴェラ大陸がどこにあるかという話をするだけで半日もかけないといけませんのよ！地図でこの辺りです、って言えば済むことでしょう！！」　なんか２人のこのやり取り懐かしいなぁｗ去年シェミハザ村に初めてアセトを連れてった時も同じようなやり取りしてた気がするよ。　「はぁ・・・しょうがないですね。ほら、ここですよ、ここ」　大きくため息を１つついてからミハイルは世界地図を取り出しリヴェラ大陸を指差したよ。　「ついこないだも寄ってベルフェゴールに会いましたよね？」　「あ、あ～・・・そういえばそうでしたわね」　ミハイルの言葉にやっとリヴェラ大陸を思い出したと思われるアセトがポンと手を打ったよ。　第６８話　入り口はどこ？　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年10月21日

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• 第６７話　これで終わり？　その２．

  　ゲティンが私達の元に来てから始まった天上人との争いもこれでひと段落ついたんだね。　でもさ、こんなにあっさり終わっちゃって本当に良かったのかな？って思うよ。　「これで今回の騒動も終わりなんですね」　「あぁ、今回は前回みたいに魔王倒すぞ！とかそんなんじゃなかったし、こういう終わり方は予測はしてたが、やっぱり何だか拍子抜けって感じだな」　「あぁ～・・・早く家に帰ってお酒をたらふく飲みたいですわ～」　ん？？？ん？？？　なんかミハイル達はもう全部が終わったみたいな感じでいない？　いや、うん。なんか忘れてる・・・よね？　ほら、あのさ？確かにゼウスもそうだけど、もっとこう・・・ゼウスよりも話をつけないといけない人物がいるような気がするんだけど？　私が一人悩んでるとね？それを見た皆が不思議そうに顔を向けてきたよ。　「ん？どうしたんですかセラ？」　「何悩んでんだ？あ、もしかして便秘か？」　「何を言っておりますのクレッシル。あの日ですわよね？ちゃんと持ち歩いてないとダメですわよ？」　そう言いながらアセトは私の手にナプキンを手渡してきたんですけど・・・　「あのさぁ・・・」　なんかアセトがわたくし間違ってました？ってキョトンとこっちを見てきてるよ。　「アセトもクレッシルも何を言ってるのかなぁ・・・全然違うよ」　「違うのか？」　「違いますの？」　「違うよ！！違うよ！そんなことじゃないよ！！」　私の言葉にミハイルは何かピンと来たみたいだね。　「あ、あぁ～・・・もしかしてセラ、まだ１つ何か引っかかる事があるんですよね？」　「そうだよ。うん、だってさ？ほら。ゼウスに私達を殺せって命令してきたのはアシュタロトだったんでしょ？」　「はい、確かにそのような事を言っていましたね」　「ということはだよ？やっぱり、今回の大元であるアシュタロトとキチンと話をつけないことには今回のこの騒動が終わり！っていうことにはならないんじゃないのかなぁ？」　私の言葉にアセトとクレッシルはポン、と手を打ったよ。　『あ、あぁ～・・・』　　「というわけで、私ちょっと魔界に行きたいなぁ、って思ってるんだけど」　「魔界か・・・」　「セラ、本当に行くのです？」　「うん、まぁでも今回のコレは私個人が勝手に行きたいって言ってることだし？何より魔界まで行くとなると今まで以上に危険だろうね。きっとそこから帰ってこられる保障なんてないし、今回のこれに関しては皆もついてこなくても・・・」　私の言葉が最後まで発せられることはなかった。ううん、正確には途中で遮られる形になったよ。　「セラは何を寝ぼけた事を言っているんですか」　「あぁ、セラが行くってんだ。私達がついてかないわけねぇだろ？」　「えぇ、そうですわよセラ。わたくし達はどこまでもついていきますわよ」　そう言ってくれた皆が冗談で言ってるようには見えない。　というか、まぁ。今更愚問だったよね。　「それでしたら、わたしもついていっていいです？」　え？今、ゲティンなんて言った？私も着いてって良いかって言った、よね？　「別にかまいませんが、ゲティン貴女までついてくる必要はないと思うのですが」　「いえ、ここまできたのです。最後までお付き合いします。別に構いませんよね？ゼウス」　「うむ、ゲティンが行きたいというのであればワシは構わんぞ」　「と、いうわけですので。まだもう少しの間だけ宜しくお願いします」　そう言ってゲティンはぺこりと頭を下げたよ。　「ん、わかったよ。改めて宜しくね、ゲティン」　「はい、宜しくお願いします」　「それじゃ、魔界に行こうか♪」　気も新たにアシュタロトのいるであろう魔界まで行こうと思ったんだけどね？だけどね？　「あのセラ・・・魔界ってどうやって行くか知ってるのですか？」　ミハイルからの鋭い突っ込み。　おぉう・・・そういえば魔界へどこから行くのとか、どうやって行くのかは知らないよ。　「あ・・・知らないや・・・」　「あはは・・・」　「ゼウス様、ゼウス様は魔界の行き方は知っておられるのですか？」　アルマロスの言葉にゼウスは静かにコクリと首を縦に振ったよ。　そして、腕を組んで少し考える仕草をしてからゆっくりと口を開いたのだった。　第６７話　これで終わり？　その２．終わり　第６８話　入り口はどこ？　その１．へ続く

  2017年10月21日

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• 第６７話　これで終わり？　その１．

  　「セラフィム・・・そして、四大天使の皆よ、この度は地上世界に多大なる迷惑をかけたことを深く反省している。二度とこのようなことがおきぬよう・・・そして、地上世界と天上界が手を取り共に共存していく道を歩んでいきたいと考えているが、どうだろうか」　最終的にはそうしたいと思っていたし、そういう流れに持っていくために話をしようとは思っていたけど。　まさか、向こうからそのように話を持ちかけてきてくれるなんて思ってもいなかったよ。　いや、うん。元々人に脅されて私達を襲おうとしてただけだし、本来は争いを由としない人なんだろう、って言う事は考えればすぐにわかるんだろうけどさ。　他の皆は口には出してないけど、それでも半信半疑というか、今のゼウスの言葉をそのまま信じてもいいのかどうか、悩んでるように見える。　それを感じ取ったゼウスは更に言葉を続けてきたよ。　「今回の騒動を考えれば確かに今のワシの言葉をそのまま聞き、鵜呑みにすることは難しいかもしれない。だが、ワシの今の言葉には嘘偽りもないしこの気持ちは本心であると誓う。今はただ・・・その言葉を信じて欲しい・・・そうとしか言えない」　ゼウスの私達を見つめるその瞳は物凄く真剣なモノだった。　「私からもお願いします。ゼウス様のお考えをどうか無下にしないでいただきたいです」　「まぁ、ゼウス様なら絶対に天上界・地上世界の両方がともに発展し、より良い関係性を築けるように尽力してくれるはずさ」　「確かに今回ゼウス様がやったことを完全に許す事は出来ないかもしれないけど、でもゼウス様は一度やるといった事は全力でやってくれる人だよ」　ゼウスに続いてアルマロス達もそう言ってくれてる。　このような言葉がスッとみんなから出てくる辺り、本当に信頼されてるんだな、って。　でも、１つだけ疑問点があるんだけど？　「あのさ、私達がここでそんな大事な事を決めちゃっていいのかな？」　「決めても良いとはどういうことです？セラ」　「これってさ、所謂天上人と私達地上人との休戦締結みたいなものだよね？そんな事を世界を代表して私達が決めちゃっていいのかな？って」　私の言葉に何故かその場にいた全員が呆れたと言いたげな表情を向けてきてるんだけど？　「セラは本気でそんな事を言っているんですか？？？」　「えっ？？？」　「今更愚問ですわね」　「んだんだ」　「別に悩まなくとも、わたくし達がここで【はい、お願いします】そう一言だけ答えてしまえばそれで済むことだと思いますけれど」　「はい、わたしもアセトの言う通りで大丈夫だと思います」　「えっ！？で、でもでも？私が言っちゃって良いモノなの？だってさ、私のその言葉で地上世界と天上界の関係が大きく変わっちゃうんだよ？」　「別に私達の世界に不都合といいますか、不利益な条件を突きつけられているわけでもないですし、気にしなくていいと思いますけど」　「それに、セラはわかっていないようですが、サタナエルを倒し一度は世界に平和をもたらした今のセラ達四大天使の発言力・影響力というのは甚大なモノだと考えます。そんなセラの決定であるならば、それにしたがってくれると思いますけれど」　「ま、そういうこった。ここはセラに任せたぜ？せっかく向こうから共に手を取り合い共存したいって言ってくれてんだ。何も深く考えず受けりゃいいと思うぜ」　「さぁセラ！ばし～っと！べし～っと！ゼウスに言ってやってくださいまし」　ゼウスをはじめ、この場にいる全員の視線が私の方に注がれてるんだけど・・・　はぁ・・・どうやらこの場から逃れられそうにないみたいだね。　まぁ、確かにゼウスは悪い人じゃなさそうだし、他のみんなも大丈夫だって言ってくれてるんだもん。そこは信じてあげないと失礼だよね。　「わ、わかったよ。元々天上人の皆とは手を取り合って仲良く出来たらな、って思ってたのは本心だし、こっちとしても良い機会だよ」　そう言って私はゼウスの方へと手を差し伸べた。　　すると、ゼウスはその手を本当に嬉しそうに両手でとってきたよ。　「ありがとうセラフィム＝ライトよ。そういって貰えて嬉しく思うぞ。まぁ、すぐにということは無理だが、少しずつ少しずつ。地上世界との係わりを持ちよりよい世界を築いていくことを約束しよう」　第６７話　これで終わり？　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年10月21日

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• 第６６話　ゼウスの秘密とは？　その２．

  　悪魔公爵バァルと美の女神であるラクシュミの子として３０００年ほど前にワシは産まれた。　だが、その生活は想像を絶するほど苦しいものであった。　魔族と天上人の恋というのは昔から破滅を呼ぶモノ、禁忌のモノとされていたからな。　そんなワシには天上界にも魔界にも居場所はなかった。　２５００年前だったか……両親が病で死に、その後地上世界の各地を転々と移動しつつ生活を始めたのだ。　どこの場所に行ってもやはりワシのようなモノは異端扱いされてな・・・　本当に泥水をすすりつつその日その日を生きていくのが精一杯であった。　だが、そんなワシに転機が訪れた。　それは世界各地を転々と移動し始め生活するようになってから２００年程経った頃だろうか。ある時、ワシはとある人物と運命の出会いをしたのだ。　それは本当に偶然の出会いだった。　レテ大陸の神秘の泉へと迷い込んだワシに、たまたま地上世界に下りてきていた当時の最高神であったセラフ様が優しく手を差し伸べてくれたのだ。　セラフ様はワシが天上人と魔族のハーフだとわかっても態度を変えることなく、優しくしてくださった。　むしろ、世界のどこにも居場所のないワシに対してセラフ様は天上界へとのぼり、ゴッドキャッスルで自分の下で働かないかと言ってくださったのだ。　もし、ワシの素性の事を知りとやかく言うモノがいれば、その時はセラフ様自身が護って下さると言ってくださったのだ。　本当にワシにとって、このセラフ様との出会いは運命であった。　そして、死ぬまで一生セラフ様に受けたこの恩義は絶対に忘れることはないし、彼女の死後もセラフ様のお心に答えるためにもワシは身を粉にして天上界の為に仕えることが恩返しだと思い行動してきた。　　「本当・・・セラフ様にはどれ程感謝しても足りないくらいだ」　すべてを懐かしみ、そして慈しむような表情を浮かべつつ天を仰ぐゼウスの姿。　そして、そんなゼウスを見てゲティン・アルマロス・マスティマ・ペネムは声もなくただただ静かにじっと彼を見つめていたよ。　「・・・・・・」　「１つ疑問に思ったんだけどよ？何で魔族と天上人の恋ってダメなんだ？」　「確かにそうだねぇ。ゼロスさんだったり、ゼウスのような子孫を残し、互いに手を取り合い幸せな生活を営むことだって出来るっていうのが証明されてるのにね？」　「何か原因があるのでしょうか？」　「ゼウスの生まれた３０００年前で既にそのような見解ですし、もっと昔からのしがらみかもしれませんわね」　「そこは昔からのことなのでなんともいえないです」　私達の疑問に対して答えてくれたのはゲティンだったよ。　「ただ、一説には１万年前に起こったジハードと言われる、天上人と魔族が地上世界をも巻き込んだ超巨大な争いが原因であり、そこからいがみ合いが続いていると聞いています」　ジハード・・・何か話には聞いたことあるし、確か書物として記録も一部残ってるモノがあるからそれをチラッと見た事はあるけど・・・実際に起こったことだったんだ？　正直、そういう神話って沢山あるし創作物のうちの１つかと思ってたよ。　というか、それが実際にあった話だとすると相当凄い争いだよこれ。　ジハードは全ての世界を巻き込んだ大きな戦争で、そのジハードによって天上人・魔族・人間。その全ての種族が絶滅の危機にまで瀕したっていう話だし。　でも納得いかないなぁ・・・本当なんで皆仲良く出来ないんだろう。　「う～ん・・・心持ち次第では絶対に仲良く出来ると思うんだけどなぁ・・・何で出来ないんだろう」　私が腕を組んでそんな事を考えてると、更にゼウスが口を開いてきたよ。　第６６話　ゼウスの秘密とは？　その２．終わり　第６７話　　これで終わり？　　その１．へ続く

  2017年10月14日

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• 第６６話　ゼウスの秘密とは？　その１．

  ゼウスが現れると、さっきまで静かだったのが一変したよ。　特にアルマロスは一歩前に身を乗り出し、ゼウスの方へと詰め寄らんとする勢い。　「ゼウス様！キュリオテスの言われていたあのことは本当なのですか！？」　まさか自分の愛する人が魔族と天上人、２つの血を引いていて、それをずっと黙ってたんだからね。　きっとアルマロスはどういうことであれゼウスにそういうことを黙ってられた、話してもらえなかったことに対して凄く悲しい気持ちなんだろうね。　「あたいもさっきアルマロスから効いたけど、信じらんないね。本当のことなのかい？」　「もし、その事が本当のことであるならば、天上界始まって以来の大問題だな」　アルマロスに続いてマスティマ・ペネムもゼウスに対して言葉を投げかける。　でも、こんな状態・状況であるにもかかわらず、全く曇りのない真っ直ぐな瞳を、この場にいる私達全員を射抜くような瞳をゼウスは向けてきたよ。　「うむ、その事は・・・本当のことだ」　『！？』　キュリオテスが言ってたことは別に私達を動揺させるためについた嘘ではなかった。それははっきりとゼウス自身の口から語られた。　「ワシは天上人の母と魔族の父の間に生まれたハーフであり、本当の名前はアバドンという」　静かに、そして。確かにゼウスは自らのことをそう言った。　多分、もっとこの場に人がいたとしたらすんごいざわつくだろうし、騒ぎ立て暴動が起きたかもしれない。　でも今この場にいる私達はただただそのゼウスからの言葉に静かに耳を傾けていた。　「意外だな。ゲティンはこの事を知れば、血相を変えてワシに掴みかかってくるものだとばかり思っていたのだが・・・」　「どうしてわたしがゼウスに掴みかからないといけないのです？」　何故掴みかかるのか、そう口では言ってるけどさ。ゲティンのゼウスを見つめるその瞳はとても深く暗いもののように感じる。　「ワシはこのような身でありながら、あの時・・・そう、２０００年前。そなたの姉であるサレスを庇ってやれなかった・・・」　「確かに最初聞いた時は、自分の素性がそうであるにもかかわらず、ゼウスは何故フェルナンデスと愛し合い天上界を追い出されたサレスをオーディンから救ってくれなかったのか。そのことに憤りは覚えました。ですが、その事も既に過去のこと。今更その事を蒸し返しても不毛なだけです」　口ではそう言ってるけど、きっと今のゲティンの心情はかなり複雑なものだと思う。　「今ここでどれだけ謝罪の言葉を述べても許されることではない事はわかっている」　「そうです、ゼウスの謝罪は今この場にいるわたし達ではなく、死んだフェルナンデス・サレス。そしてその息子であるゼロスにするものですし、その時が遅すぎたのです」　「本当にすまなかったと思っている。そしてアルマロス・マスティマ・ペネム。今までこのことを黙っており、あまつさえその事をアシュタロトにつかれ皆に四大天使の暗殺命令に地上制圧命令という意味のない命令を出し、従わせてしまい申し訳ない。ワシがもっとしっかりしていればこのようなことには・・・」　本当に申し訳なさそうに口にするゼウスだったけど、そんな彼に対してマスティマは気にした様子もなくカラカラと笑いながら答えたよ。　「なるほど、魔王に脅されたってわけかい。まぁ、別に気にする必要はないさね。あたいはあたいで地上世界でクレッシルとも手合わせすることが出来たし、結構楽しかったからね」　そんなマスティマと同じようにペネムちゃんも本当に気にしてないっていうのが分かる。　「うんうん、そのおかげで僕もオファニム城の機械人形をのんびりと触ったりすることが出来たからね、気にしてないよ」　「ゼウス様・・・誰にも言えずにさぞお苦しかったでしょう・・・御気になさらないで下さい。私はどのような事があっても絶対にゼウス様についていこう。そう決心しておりましたし、ゼウス様のためであるならば私は修羅になることすら厭いません」　そう言葉を放ったアルマロスの瞳には一点の曇りもなく真っ直ぐなモノだった。　「ただ・・・やはりゼウス様には絶対の信頼をされている、そう思っておりましたし、どのような事でアレ私に隠し事はしないで欲しかったというのが本音ではあります」　「本当にすまなかったアルマロス。お前の気持ちは知っていた、だからこそワシは逆に言いづらかった・・・」　とりあえず、話はひと段落ついた感じかな？とりあえず、今ふと疑問に思ったことを投げかけてみようかな。　「でもでも、１つ不思議なのがどうして魔族と天上人のハーフであるゼウスがここに入れたか？って所なんだけどさ、そこんとこどうなの？」　「運が良かった、とでも言えばよいのだろうか」　「運がよかった？」　「うむ、どこから話せばよいものか・・・」　ゼウスはどこか遠くを見つめる仕草を見せ、ポツリポツリと語りだした。　第６６話　ゼウスの秘密とは？　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年10月14日

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• 第６５話　なんかガッカリ　その２．

  　のんびりとした雰囲気の中、ゴッド・キャッスル目指して進んでた私達だったんだけどね？ふととある事が気になったんだよ・・・　「そういえばさ、ゲティンちょっといい？」　「はい？どうされました？」　「天上界って、あのゴッド・キャッスルしかないの？」　「ゴッド・キャッスルしかないと言われますと？」　「あ、ううん。こんなに地上世界と似た場所だっていうのにさ、その・・・町とかそういうのってないのかな？って思ってね」　「はぁ？」　「天上人って絶対数が少ないとは言ってもそれなりに人数いるんでしょ？だったら、その人達が生活する場所ってあるのかな？って」　「そうですね、確かに気になりますねそこは。別段天使や神と言っても、全員が全員。そのゴッド・キャッスルで生活しているわけではないのですよね？」　「あぁ～・・・そういうことです」　私とミハイルの言いたいことを理解したゲティンはポン、と手を打って答えてきたよ。　「もちろん待ちはあります。ただ、天上人達の絶対数というのは人間達と比べるとはるかに少ないですので、ここ天上界に存在する町は１つのみです」　「はぁ・・・１つだけなのか。すくねぇな」　「位置的にはゴッド・キャッスルから南に行った場所で、無音の祠の近くです」　なんかキャメロットの時にアルマロスさんもチラッと言ってたけど無音の祠って何？　「アルマロスさんも言ってたけどさ、無音の祠って何？どういう場所なの？」　「え～っとですね、何と言えばいいのでしょうか・・・」　歩く足を止めることなく、腕を組んで難しい表情を浮かべるゲティン。　「そうです・・・アンチマジックフォース（反魔法力）が凄まじく高い祠で、よくアルマロスが引きこもっている場所なのです」　「アンチマジックフォース？なんじゃそりゃ」　「あぁ～・・・えっと、クレッシルにも分かりやすく説明すると魔法の存在を完全否定する場所、とでも言えばいいです？」　「魔法の存在を完全否定する場所？？？」　「もっと分かりやすく砕いて説明しますと、そこで魔法を唱えても発動しませんよ。って場所です」　「はぁ・・・魔法を唱えても発動しねぇ場所、ねぇ？」　「わたくしのような魔導師には恐ろしい場所ですわね・・・」　「あんまり立ち寄りたくない場所ではあるねぇ・・・」　「まぁ、今回は立ち寄る必要はないのでは？」　「はい、今回はあくまでもゴッド・キャッスルに行きゼウスに話を聞くのが目的ですから立ち寄ることはないと思います」　そんな話をしながら進んでた私達だったけど、気付けば私達は中世ローマを彷彿とさせるような外観の神殿（？）みたいな場所。　ゴッド・キャッスルの前までたどり着いてたよ。　ゴッド・キャッスルの前には、ヤリのようなものを持った天使の門番（？）らしき人たち。　門番らしき天上人は、私達。ゲティンの姿を見ると片膝をつき、頭を垂らして跪いたよ。　「ゲティン様・四大天使の皆様。お待ちいたしておりました。皆様お待ちでございます。こちらへどうぞ」　そして、私達は天上人の門番さんに案内されてゴッド・キャッスルの最奥にある大広間へと通されたんだけど、そこには既にアルマロス・マスティマ・ペネムの姿があったよ。　「ゲティン、皆さん。お待ちしておりました」　「意外に遅かったね。あたいはボチボチ待ちくたびれてたところだったよ」　「ま、彼女達はあの塔を歩いてきたんだし、これくらいは予想の範囲内だったけど」　「あの、それでアルマロス。ゼウスは今どこに？」　「ゼウス様はもう暫くしたら見えられると思います」　大広間で和気藹々と話をしながらゼウスの登場を待ってた私達。　「皆のもの、待たせてすまなかったな」　そして、どれくらい待ったのかな？多分３０分くらい？それくらいしたところで、奥から魔族に弱みを握られ、私達を亡き者にしようとした張本人であるゼウスがゆっくりと現れた。　第６５話　　なんかガッカリ　　その２．終わり　第６６話　ゼウスの秘密とは？　その１．へ続く

  2017年10月14日

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• 第６５話　　なんかガッカリ　　その１．

  　「え、え～っと・・・」　天上塔から外に出た私達の目の前に広がっていた景色は・・・　「ね、ねぇゲティン？？？ひとつ聞きたいんだけどさ、ここって本当に天上界、なの？」　思わずそんな疑いの言葉が出ちゃうくらいには見慣れた風景が広がっていた。　私達の今眼前に広がる風景は、っていうとね？　木や草花が辺り一面に咲き誇り、とても落ち着いた雰囲気が広がってたんだよ。　なんていうんだろうね？本当、この景色をどう表現すれば一番しっくりくるんだろ。　アルプスの少女ハイ○の舞台になってそうな場所、って言えば分かりやすいかな？　っていうかさ、てっきり天上界っていうからね？私としては辺り一面真っ青な青空だけが見え、草木なんて全く生えてなくて、すんごいふわっふわでもっこもこな雲で地面が出来上がってる。　ねっころがると思いっきり体がその雲の地面に沈みこんで凄く心地よい睡眠を提供してくれるような場所だって思いこんでたんだけどさ。　まさかこんな現実感が漂いまくる・・・ううん、私達が普段生活してる地上世界と対して変わらない景色を前にして私だけじゃなく、他のみんなもガックリと肩を落としてたんだよ。　そして、そんな私達の反応を見て苦笑を浮かべるゲティンの姿。　「ですから、先ほど言いましたよね？わたし達の住む天上界は地上世界とそれほど変わらないと。ですけれども、ここも暮らしてみると地上世界と同等かそれ以上に過ごしやすい土地だと思います」　「まぁ、確かにちょっと想像と違って残念ではあるが、逆にこうして普段からも見慣れたような光景が広がってるのを見ると、逆になんか妙な安心感はあるよな」　「あ、あ～・・・それはあるかもねぇ」　「景色云々はいいんですけれども、何だかここ空気薄くありませんこと？」　ちょっと息苦しそうにそう言ってきたのはアセト。　「アセト？普段私達が生活してる場所と比べると高い場所にいる。そう思い込んでいるからそう感じるだけではないんですか？」　「別に私はそんな空気が薄いとかは気にならないけどなぁ」　「んだんだ、別に私も気にならないぞ？」　「んむむ～・・・わたくしの考えすぎですかしら？」　天上塔から外に出た私達は改めてグルグルと辺りを見回してみたんだけどね？　え～っと・・・これはどの方角って言うんだろう。　どこを基点に東西南北を考えればいいのかはわからないけど、とりあえず私達が出て来た出口の扉があるのが南ということにしておくと、北西の位置になるのかな。　その北西の位置のはるか遠くにね？うっすらとお城っていうか宮殿っぽいものが見えるんだよね。　「ねぇねぇゲティン、あのさ、あそこの奥にうっすらと見えるのがゼウスのいるゴッド・キャッスルって場所でいいのかな？」　「はい、そうです。あの奥に見えるのがゴッド・キャッスルです」　「なるほど、じゃあとりあえずあそこに向かえばいいってことだよね？」　「そうです、道は基本的に一本道なのでお城を目印に進めば迷うことはないはずです」　「わかりました。それでは、早速そのゴッド・キャッスルへと行きましょう。既にアルマロスもマスティマもペネムも待っているでしょうし」　「そうですわね」　「あぁ、んじゃ。サクッと行くとすっか」　ゴッド・キャッスル目指して進んでた私達だったけど、本当のどかな場所だねぇ。　道行く私達の近くを小鳥達が飛び交い、とても楽しそうに地上からの客人である私達に対して歌を歌ってくれてるかのようなさえずりをあげてるよ。　第６５話　なんかガッカリ　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年10月14日

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• 第６４話　高い・・・高すぎる　その２．

  　皆からの痛い視線なんてモノに全く気付いてない・・・ううん、気にした様子を見せないアセト。　その鈍感さというか、図太さはある意味羨ましいよ・・・　「空を飛んでいけば、かな～り早く行けると今ゲティンが言われましたわよね？」　「はぁ？確かにそう言いましたけれど」　「それでしたら、翼を有しているゲティンとセラの２人で分担してわたくし達を担いで飛んでもらえばいいんじゃありませんこと？」　やっぱりろくでもないことだったよ！！　「はぁああああああああああああああ！？アセトは何を言ってるのかなぁああああああああああ？」　「セラ？考えても見てくださいまし。そうすることによってわたくしは歩かずに済み楽を出来ますし、何より空を飛んでいけば歩くよりも早く着けると今しがたゲティンも言っておられましたわよね？つまり、これはまさしくＷｉｎＷｉｎの関係じゃありませんこと？」　アセトの駄人間発言にゲティンは今まで見たこともないくらいに大きなため息をついたよ。　「何を言っているのですアセトは……自分１人で飛ぶ分には確かに歩くよりは遥かに早いです。ですが人を抱えて飛ぶとなると、それこそ体力の消耗がマッハで休憩も今まで以上に取らないといけなくなりますので、正直歩いて行ったほうが早いです」　「っていうかさ、それって楽なのはアセト達だけじゃん？皆を抱えてく私とゲティンはかなりしんどいよねぇ？」　「大丈夫ですわよ。セラとゲティンが疲れてスピードが落ちてきたようでしたら、わたくしが頃合を見計らってケアの魔法を唱え体力回復してさしあげますから」　「何を言っているのです・・・何を・・・ケアは傷の治癒の魔法であって、そうした消耗した体力を回復させる効果は持ち合わせていません」　「えぇ～・・・でも～・・・もうわたくし歩きたくないんですのよ～」　「何を言っているんですかアセト・・・見苦しいですよ？もうここは素直に歩くしかないです」　「んだんだ、今こうして喋ってる時間でちっとは体力も回復しただろ？」　「うぅ～・・・仕方ないですわね。とりあえず、もう少し休憩しても宜しいですかしら」　「はいはい、わかったよ。それじゃ、もう少しだけだからね？」　ちょこちょこ休憩を挟みつつ、グルグル、グルグルとずっと同じ景色。　螺旋階段をずっとあてもなく登り続けた私達。　正直同じ景色が続くもんだから、本当に私達は先に進んでいるのか不安になってくる。　登り始めてからどれくらいの時間が経ったんだろうか・・・　途中、夜空が見えた気がするし、多分ね？まるっと１日はかかってるんじゃないのかなぁ・・・　それだけ登って私達はやっとの思いで天上塔の最上階と思しき場所までたどり着いた。　「ふはぁ・・・やぁっと、最上階に着いたみたいだねぇ」　終わりが見えると途端にさっきまでの疲れも一気にどこかに消え去った感じ。　「そうですね、辺りを見回してみても階段も見当たりませんし、奥に扉らしきものが見えるだけですからね」　「って、ことはだ？ここが最上階で良いってことなんだよな？」　「はい、皆様お疲れ様です。あそこから外に出ると天上界です」　ニッコリと微笑み私達の方を見てきたゲティン。　「や、やっと着きましたのね・・・」　「外から見た時も、てっぺんが見えなかったくらいだしさ、かなり高いんだろうなぁ・・・とは思ってたけどさ。まさかここまでとはねぇ」　「さて、それでは早速外に出ますか」　「そうだねぇ、私。天上界ってどんなところかすっごい楽しみだったんだよ♪」　「別に期待するほどのものでもないですよ？地上世界とそんなに変わらないと思いますけど」　私が期待に胸膨らませ発言してると、そんな夢も何もないことを言ってきたよ・・・　はやる気持ちを抑えて、私達は天上塔の出口にあたる扉を思いっきり開放した。　だけど、そこで私達の目に飛び込んできた光景っていうのは・・・　第６４話　高い・・・高すぎる　その２．終わり　第６５話　　なんかガッカリ　　その１．へ続く

  2017年10月07日

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• 第６４話　高い・・・高すぎる　その１．

  　ゼウスのいるゴッド・キャッスル目指して一歩、また一歩と着実に歩みを進める私達。　レテ大陸の西に位置する天をも貫き先が見えないほど高い塔にして、私達地上世界とゲティン達天上人の住む天上界を結ぶ唯一（？）の手段である天上塔。　それを登り始めた私達だったんだけどさ・・・？　「つ～か～れ～た～～～～～～～」　「ぜぇ……ぜぇ……や、やけにこの塔・・・高くありませんこと？」　そんな事を言う私とアセトに対して何言ってんだコイツ、みたいな表情を浮かべるミハイルと、笑いながらこっちを見てきてるクレッシルの姿。　「全く・・・セラとアセトは何を言ってるんですか・・・」　「まぁ、これも鍛錬の１つだと思えばいいと思うぜ？」　「鍛錬？こんな鍛錬に意味があるとは思えませんわ」　「何言ってんだよアセト。おめぇは普段酒かっくらってダラダラしまくってるからな。その腹の贅肉落とすのに丁度いい機会なんじゃねぇの？」　「ちょ、ちょま！？何触ってやがりますのよ！！」　「触ってねぇよ？つまんでんだよ」　「というかですわよ？わたくしのどこに無駄な贅肉があるというんですの？」　「ん～・・・ならよ、この今私がつまんでる部分はなんだ？」　「・・・・・・」　アセトの横腹をつまみながら鬼の首でも取ったどぉ！！　なんて言いたげなクレッシルと、そのクレッシルにお肉をつままれて言葉も出ない汗とは放っておくとして、と。　「それにしても、確かに見た目どおりというのでしょうか？かなり高い塔ではありますね」　「ねぇゲティン？まだ天上界には到着しないの？」　私とミハイルの言葉を聞くと腕を組んで思案し始めたゲティン。　「そうですね、まだ半分くらいというところです？」　「うっへぇえ・・・こんなに登ってまだ半分くらいなのぉ？」　「まぁ、いわば天使や神の住む世界ですし？私達人間の住む地上世界と近い場所にあって簡単に行き来できたら、それはそれで大問題でしょうけれど・・・」　「ゲティン、何か簡単に登れる方法とかはありませんの？実は塔の横に超高速エレベーターが備え付けられている、とか」　「何を言っているのです・・・そのような類のモノは一切ありません。というか、わたし達天上人は普通に翼を使って飛んでいくのでそういうのは必要ありませんから」　だよねぇ・・・空を上に跳んでいけば着くんだし、そういうのは必要なさそうだよねぇ。　でも、だったら何でこんな天上塔なんてものが存在するんだろうか・・・　もしかして、昔は人間と天上人で交流があったとか？　まぁいいや、考えるだけアレかな。　「なぁ、そういえばよ？」　と、そこでクレッシルがゲティンの方を向いたよ。　「マスティマとペネムは上に向かって翼で飛んでいったけどよ？空を羽ばたいていくとどんくらいで着くんだ？」　「そうですね・・・一度ノってしまえばかなりのスピードが出せますし。それこそ、ここまで歩いてきたのと同じくらいの時間で天上界には到着していると思います」　「半分以下の時間でいけるのですか・・・」　「うらやましい限りだぜ。あ～あ、私達にも翼がありゃ楽できたのによぉ」　ガックリと肩を落として残念がるクレッシルだったけどさ？　パリィ！！　「閃きましたわ♪」　な～んか、妙に自信満々なアセト・・・正直こういう時のアセトって・・・　みんなもどうせアセトなんだし、ろくな事を考えてないんだろうな。　っていうのがわかってて。目を据わらせて、蔑むような感じにアセトを皆して見つめたよ。　第６４話　高い・・・高すぎる　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年10月07日

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• 第６３話　いざ天上界へ　その２．

  　「ん～・・・ん～・・・なるほどね……」　そう言いながら腕を組みつつ、私達の周りをグルグルと回るペネムちゃん。　「アルマロスもわたし達と一緒に手を組んでくれます。そして彼女はわたし達より一足先に、ゴッド・キャッスルへ戻っているはずです。もし宜しければ２人もその席に一緒に参加しませんか」　「そうさね・・・あたいもちょいとそのゼウス様に確認したいことっていうのは、どんなものか気になるし、それを聞かせてもらえるならそれだけでも参加する意義はありそうだね。うん、あたいも参加させてもらおうかね」　「ん、決めた。マスティマお姉ちゃんが行くなら僕も一緒に参加しようかな」　「ん？ということはですわよ？ここは一旦ひいてくれるということで宜しいんですのよね？」　「うん、本当はもうちょっと戦闘データとか集めさせてもらいたかったけど、仕方ないね。それにこれ以上やるとマスティマお姉ちゃんが怖いし」　「誰が怖いだって？誰が？あんたがちゃんと言う事を素直に聞いてればあたいだってそんな怒ったりしないさね」　「ひ、ひぃ！？そんな睨まなくてもいいのに・・・」　ペネムちゃんはちょっとだけ肩を落としてリルルンＺの腕をポンポンと軽く叩いて「もういいよ。ありがとリルルンＺ」そう口にしたよ。　「カシコマリマシタ、セントウモードカイジョイタシマス」　「ありがとうございますペネム」　「ううん、その代わりと言ってはなんだけど。全ての事が終わったらさ、もう１回、もう１回だけリルルンＺとお姉さん達手合わせしてもらってもいいかな？やっぱりお姉さん達は強いし、戦闘データを集めるには丁度いいから」　「ははっ、何だそりゃ。いや、まぁ私達でいいって言うんならいつでも協力してやるぜ？」　「えぇ、全てのことが終わって暇になったら、ですといつになるかはわかりませんけれども、約束はいたしますわよ」　「そうですね、リルルンＺとの戦いは良い鍛錬になりそうですし、私も構いませんよ」　「うんうん、それまでちょっと待っててね」　「ふふ、約束だよ♪」　そう言ってニッコリと笑顔を浮かべたペネムちゃんのその姿が本当私達の何十倍、下手したら１００倍近く生きてる子には思えない程可愛らしいものだった。　「じゃあ指きりしようか」　一時、戦闘を休戦させるかわりに全て終わった後、再びリルルンＺと戦うことを約束した私達。　「さ、それじゃ。あたいとペネムは先にゴッド・キャッスルに行くとするさね」　「それじゃ、また後でね。お姉さん達」　ペネム・マスティマが翼を羽ばたかせ、空高く飛び上がりはるか上空に飛び去っていったのを私達は見送った。　「さ、それではセラ。今から扉を開けます」　「あ、うん。わかったよ！お願いねゲティン」　ゲティンが神秘の泉から持ってきた天使の涙を天上塔の入り口を塞いでる門にある窪みに差し込んだ。　それと同時に扉からまばゆい光が放たれ、そしてゆっくりと扉がひらいていったよ。　「ごか～いちょ～」　「何を言ってるんですか・・・何を・・・」　「何ですのよその変なテンションは」　「でも、セラの気持ち分かるぜ。私もこうした大きな扉が開くの見るとワクワクするからな」　「だよね？だよね！！」　「だが、今のセラみたいな台詞はどうかと思う。せっかくの気分が台無しだ」　「あぅあぅあぅ・・・」　ナニコレ、ナニコレ？何で私皆からディスられてるの・・・　私のグラスハートはブロークンハート寸前なんですが。　そんな私達のやり取りをゲティンは苦笑を浮かべながら眺めてたよ。　天上塔の入り口を塞いでた扉が完全に開くと、その奥には螺旋階段の姿が見えた。　「さぁ、コレで天上界への道は開かれまし。後は前に進むだけです」　「ゲティン達天上人の住む世界かぁ、どんな場所か楽しみだなぁ」　「確かにどんな場所か楽しみですわね」　「それでは、行きますか」　大きく開かれた天上塔の扉を潜り、私達は天上界へ向けて階段を上り始めたのだった。　第６３話　　いざ天上界へ　　　その２．終わり　第６４話　高い・・・高すぎる　その１．へ続く

  2017年10月07日

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• 第６３話　いざ天上界へ　その１

  　「マスティマ？どうして貴女がここに・・・！？」　突然現れ私達を助けてくれたマスティマの登場に正直事態が飲み込めず困惑していたところに、彼女はニッコリと微笑みかけてきてくれたんだよ。　「ん、ゲティン達なら絶対にここに来ると思ったからね。間に合ってよかったさね」　「ありがとな、マスティマ♪でもよ？何で天上人であるあんたが私達を助けてくれたんだ？」　クレッシルの言葉にマスティマはキョトンとした表情を浮かべてきたんですが？　「ん？？？別にあたいは端っからあんた達の敵になった記憶はないさね」　・・・え？　いや、まぁ。確かに彼女のしてきた行動だけ見ればそれもそうかも。　「それにだ？ゼウス様・アルマロスのあの演説があったんだ。絶対にセラ達はここから天上界へと上がると思ってね、それでかけつけたってわけさ」　マスティマが私達のピンチに駆けつけ助けたからなのかな？　ペネムちゃんはすんごい不愉快そうな表情をこっちに向けてきてるよ。　そして、再度攻撃に移ろうとしていたリルルンＺを右手で静止させ、つかつかと怒り肩でマスティマの方へと詰め寄ってきた。　マスティマ・私達の前まで移動してきたペネムちゃんは膨れっ面でぷんぷんと怒りながら口を開いてきたよ。　「ちょっと？ねぇマスティマお姉ちゃん？どうして邪魔してきたの」　「すまないねペネム。あたいはどうしてもここでセラ達にやられて貰っちゃ困る、そう思ってるんだ。それでちょいと横槍を入れさせて貰ったよ」　マスティマの言葉に納得できてないんだろうね。ペネムちゃんはイライラとした様子を見せてるよ。　「どうして？何でマスティマお姉ちゃんがゲティンと地上人の手伝いをするの？そんなの絶対におかしいよ。理由が分からない」　マスティマは軽く嘆息してから子供を諭すように語りだしたよ。　「いいかペネム？今は天上人・地上人で争ってる場合じゃないんだよ。むしろ逆に手を取り合い、協力しないことにはそれこそ魔族。アシュタロトの思う壺さ」　「協力しないと何？別にアシュタロトの思うようにやらせてあげればいいんじゃない？地上世界が滅びる？天上界がのっとられる？そんなの僕には関係ない。僕はただアンドロイドやロボットの研究が続けられることが出来れば世界がどうなろうと関係ないんだから」　おぉう・・・この子は何を言ってるのかなぁ・・・　「関係ないことないだろ！？」　流石にペネムちゃんの言葉にマスティマはイラッとしたみたいだねｗ　「天上界・地上世界が魔族達にのっとられちまったら、ペネムの研究も続けられるわけないし、そんなの明白の事実だろ！？そんな事も分からないのかい？この馬鹿は」　「む、むぅううううう！！馬鹿って言った！！マスティマお姉ちゃん馬鹿って言った！！馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ！！」　「あぁ、そうさ。あたいは大馬鹿ものさね。だって、ゲティン達に協力しようとしてるんだからね。でも、あたいはその判断は間違っちゃいないと思ってる。だからペネムも、そんな物騒なもんはしまってここで大人しくセラ達を通してやってくれないかい」　「お姉ちゃん達を天上界に行かせることで、何かが変わるって思ってるの？マスティマお姉ちゃんは」　「あぁ、もちろんさね。そうじゃなかったら、あたいだってペネムにそんなお願いしないさ」　マスティマの言葉を聞くとペネムちゃんは首を傾げつつこっちの方へと振り向いてきたよ。　「ねぇ、お姉さん達は天上界に行って何をするの？さっき言ってたゼウス様に確認したいことって何なの？」　「ん～、ここで今はっきり言うことは出来ないけど。それは間違いなく、これからの私達の行動に大きくかかわってくることだよ」 　「はい、天上人達。ゼウスと手を組んで魔族と戦うことになるのか。どうか、という重要な事を考える材料にするつもりです」　私達の言葉を聞くとペネムちゃんは腕を組んで、う～ん・・・何て唸り始めた。　第６３話　いざ天上界へ　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年10月07日

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• 第６２話　出撃！リルルンＺ　その２．

  　「オーバードライブ！クイック！もひとつ、マジーオーバーです！！皆さん、頑張ってください」　「ありがとゲティン♪よーし、一気にいくよ！」　リルルンＺが一気に私達との距離を縮めてきたと思ったらね？そのまま右ストレートを繰り出してきたよ。　「へっ！そんな遅い攻撃喰らってやる義理はねぇな」　クレッシルは手早くリルルンＺの攻撃をさばいてから、ドラゴンクローをはめた右手で彼女に対して攻撃を仕掛けた。　ガシャーン！！！　大きな音を立て弾かれはしたけど、ダメージ自体は一応通ってはいるみたいだね。　更にミハイルがデーモンスピアでリルルンＺに対して攻撃を仕掛け、そこに私も一緒になって続けて攻撃をしかけてみたんだけど・・・　何で私の攻撃が当たる直前でバックステップで距離をとってきたんですかねぇ・・・　「ターゲットノコウゲキソクド・ハンノウスピード・コウゲキリョクカクニン。キケンレベルＶトニンテイ、ジェノサイドモードニキョウセイヘンコウイタシマス」　ジェノサイド・・・モード？　さっきまでよりも早いスピードで私達との距離を縮めてきたよ。　「イキマス」　両手を前に突き出し攻撃をしかけてきたからそれを剣の腹で受けたんだけど・・・　攻撃を受けると同時に彼女から電撃が流れて、それがゴッド・オブ・デスを通じて私の方に・・・　「あばばばばばばばばばばば」　し、しびびびびびびびび　急いでその場から離れようと横にステップをとると、それにあわせて彼女から拳が振るわれ、その直撃が・・・　「くぅ・・・」　重い・・・前回戦った時よりも確かに火力は上がってるかも。　「いっくぜぇえええ！」　私の方に気がむいてるリルルンＺに対してクレッシルが背後から得意の上段回し蹴りを放ったんだけどね？　後ろにセンサーでもあるのかな？　見ることもなくそれをスッとしゃがんで避けたんだよ。　「甘いです！！」　そのクレッシルの攻撃をしゃがんで避けた先へミハイルの突き攻撃がささり、少しバランスを崩したリルルンＺ。　「いきますわよ！フリーズ！！」　アセトのフリーズが発動して、リルルンＺの周囲を凍えるほど冷たい冷気が包み込み、そして彼女をも一気に凍りつかせていった。　「いきます、ライトニング・スピア！」　凍りついたリルルンＺへ対しゲティンの放った光の矢が飛んでいった。　ゲティンの放ったライトニング・スピアは彼女の氷を砕いただけで、本体にまでダメージが通ったようには見えない。　「イマノママノセンジュツデハコチラノショウサンハ０．９％。スベテノターゲットニタイシテサイダイカリョクデイッキニコウゲキヲシカケマス」　いきなりリルルンＺの背後からどうやって飛ばしたのか謎なくらいにさ、大量のミサイルが現れてね？私達のほうに向かって飛んできたよ‥‥　「うわわわっわ！！これだけの数一気にさばけないよぉ！」　「くっそぉお！どうすりゃいいんだよ」　「わたくしに任せてくださいまし！フリーズ！！」　アセトのフリーズが発動し、私達の方へ飛んできてたミサイルが全て凍りついて、その場にボトボトと音を立てて落ちていったよ。　「おぉ！？流石ですねアセト」　でも、喜んだのもつかの間だったよ。　「レーザーアイハツドウ」　リルルンＺの瞳から光線が放たれ、それは落ちたミサイルに次々と当たり、そして爆発したんだけど。　その爆発によって、他のミサイルも誘爆を起こしたんだよ。　「え！？ちょ、ちょ！！」　そのミサイルの爆発で飛ばされないようにしっかりと腰を落として耐えてたんだけど、そこへ彼女が一気に距離を縮めてきた。　そして、ある一定の間合いまで近づくとリルルンＺはクレッシルに対して拳を振り上げた。　「げげっ！ま、間に合わねぇ！！」　ミサイルの爆発に対して気を払ってたクレッシルはリルルンＺの攻撃に対して防御行動を取るのがちょっと遅れてしまい、彼女の拳はクレッシルの顔面まで近付いていた。　「気孔弾！！」　そんな短い掛け声とともに、青白く光る光球が横から突如現れ、それはリルルンＺを吹き飛ばしたよ。　「テキエイ１キゾウインカクニン。ジョウホウコウシンシマス」　「危なかったね、大丈夫かい？」　そう私達に言葉をかけ、ニカッと白い歯を見せてきたのは、頭から獣耳を生やしたクレッシルとジブリール帝国のキュロス城格闘技大会で戦ったマスティマの姿だったよ。　第６２話　出撃！リルルンＺ　その２．終わり　第６３話　　いざ天上界へ　　その１．へ続く

  2017年09月30日

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• 第６２話　出撃！リルルンＺ　その１．

  　天使の涙を手にして神秘の泉を後にした私達。　ゼウス、天上人が生活するという天上界へと向かう為に天上塔の麓までやってきたんだけどね？　「久しぶりだね、お姉さん」　うん、天上塔の大きな入り口の門のところに立って人懐っこい笑みを浮かべながら手を振ってきた人物がいたんだよ。　天上塔の前にいたのは、毛先がくるんとした青色のロングヘア。パッと見とても幼く見え可愛らしい風貌の子。うん、前にオファニム城で戦ったペネムだったよ。　「ペネム？どうして貴女がここにいるのです？」　まぁ、ゲティンがそう思わず口にするのも頷ける、というか私もやっぱり不思議に思ったもん。何でいるのか。　「ゼウス様とアルマロスの演説を聴いたお姉さん達は絶対にここから天上界に行くと思ったからね」　おぉう、完全に行動を読まれてのそれだったんだね。　まぁでも、普通に考えたらそういう風に動くっていうのはわかることか。　「でもでも、まさかこんなに早くここにお姉さん達が訪れるなんて思ってもなかったよ」　「つまり、貴女はどういう意図かは知りませんが、私達を待っていたということですか？」　ミハイルの言葉にペネムは屈託のない笑顔で応えたよ。　「うん、そうそう。お姉さん達にはオファニム城での借りもあるしね。その落とし前をつけにきたんだよ」　むぅ・・・つまりペネムは戦う気満々でこの場にいるってこと、だよね？　今は天上人と人間で戦ってる場合じゃないっていうのに・・・　「わたくし達は、今貴女と戦うつもりはありませんわ。そこをどいていただけませんかしら」　「あぁ、私達は急いで天上界に行って急いでゼウスに確認しないといけない事が出来たからな。それを聞くためにここを通らないといけねぇんだ」　「ふ～ん？ゼウス様に確認したいことねぇ？」　「うん、そうなんだよ。だからさ、お願いペネムちゃん。ここを通してくれないかな？」　「ごめんねお姉さん？通してあげたいのは山々なんだけどね？それは僕を倒してからにして貰ってもいいかな？」　「ねぇ、何で君はそんなに私達と戦う気満々なのかなぁ？」　「今私達がやりあうこと自体無駄なことだとは思わないのですか？」　「ん～・・・別に無駄だとは思わないよ？そう思ってたら、僕だって暇じゃないしさ、こんな場所でわざわざ待ってないよ」　「かぁああああああ！あぁ、もういい！私達の邪魔をするってんなら、その障害を取り除くまでだ」　「戦闘せずに済ませられると思わないことだよ」　「はぁ・・・しょうがないですわね……」　「あまりペネムちゃんとは戦いたくなりけど・・・仕方ないのかもしれないね」　私達が諦め戦う決断を下したことにペネムちゃんは嬉しそうにしてるよ。　「ふふ、そうこなくっちゃ。ここでお姉さん達が来るのを待ってたのは新しい子のテストをする為だったからさ」　自信たっぷりな感じに含み笑いを浮かべてから右手を上げて叫んだペネム。　「かもーん、リルルンＺ♪」　すると、ペネムの背後。天上塔の門の影から以前オファニム城で私達が戦ったピンク色のショートカットでメイド服を身にまとった、リルルンっていうロボットと全く同じ容姿に見えるロボットが出てきたよ。　「ミナサマ、ハジメマシテ。リルルンＺトモウシマス」　「この娘、リルルンＺはオファニム城でお姉さん達と戦った時のデータを元に最初から戦闘用に作ったアンドロイドなんだよ。前と同じだと思ってかかると痛い目見るから、全力できてねお姉さん」　ペネムちゃんはすんごい嬉しそうに言ってきてるよ。　前も硬くて苦戦を強いられてたのに・・・更に強くなってるとか。骨が折れそうだなぁ。　「ふぅ・・・本当ペネムはしょうのない子ですね・・・」　「むぅうう、ゲティン！？」　「皆さん、すみません。適当に相手してあげてください」　「適当にって何かな！？そんな片手間に戦える性能じゃないよ！？本気で来ないと酷いんだからね」　ゲティンの言葉にプリプリと怒りを見せたペネムちゃん。　「もういいよ！リルルンＺ、やっちゃって！」　「イエス・ユア・マジェスティ」　ペネムちゃんの号令にあわせリルルンＺがこっちに向かってやってきたのだった。　第６２話　出撃！リルルンＺ　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年09月30日

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• 第６１話　こんなんだっけ？　その２．

  　「あった！あった！ありました！見つけました！！」　生活用品とかが大量に置いてある場所から目当てのモノが入ってると思しき、古びた小さな宝箱を誇らしげに取り出した彼女は、それをテーブルの上に置いたよ。　「この箱の中に天上塔の鍵が入ってるんだね？」　「はい、ここの中に天上塔の扉を開くアイテムである天使の涙が入ってます」　早速ゲティンがさっきイシリオンさんから預かった鍵を使って宝箱を開けた。　箱の中からはゲティンが言った通りの形をした、雨粒のような形の小さな宝石を取り出したよ。　そのゲティンが取り出した鍵がとても綺麗で本当に鍵には思えない。　「ふむ・・・これだけ綺麗なものでしたら、鍵としての用途もそれですが、普通に美術的価値のある宝石にしか見えませんね」　「そうですわね、鍵というよりはネックレスにしたら丁度良さそうな宝石のようですわね」　私達の反応がよっぽど想像した通りだったんだろうね、ゲティンは嬉しそうに微笑みかけてきたよ。　「ふふ、確かに一見鍵には見えないかもしれません。ですが、これはれっきとした鍵で、これがないと天上塔の扉を開け放ち、登る事ができません」　本当・・・何も知らなければ、これタダの綺麗な宝石だよねぇ。　「いいなぁ・・・これ、ずっと手元においておきたいくらいだよ」　「そうですね、私もこれだけ綺麗なモノは見たことがありません」　そんな話をしてる時だったよ・・・　ピーン！！！　何か思いついたのかな？　「なぁ、ちょっとそれ貸してくんねぇか？」　「はぁ？別にかまいませんが」　なんかさ、にししししし、って笑いながらクレッシルはゲティンから天使の涙を受け取ったんだけどね？　「なんかあれだな、こうすると鼻水みてぇだよな」　そう言いながらね？　こともあろうことか、大事な天上塔を登るために必要な鍵である天使の涙を自身の鼻先へと持っていったんだけど……　正直、クレッシルの突然のそんな幼稚な行動に言葉が出なかったよ・・・　特にゲティンなんてね？まさか重要アイテムである天使の涙がそんな扱いをされるとは思ってなかったみたいでね？　相当ショックだったのか、口を大きくあんぐりと開けて固まっちゃったよ。　「クレッシル・・・一体誰がドラクエ４コマ漫画劇場の柴田亜美先生のネタを知ってるというんですか？というか、何年前のネタだと思ってるんですか……」　「まぁまぁ、そんな細かいことはどうだっていいじゃねぇか。こんな形したアイテムみたらこうしたくなるのは、普通だろ？」　「はいはい、早くそれをゲティンに返してあげてください。そうしないとクレッシルの事は今後『もりそば』って呼びますよ？」　「ぐふｗそれは勘弁してくれ」　「はっ！？わたしとしたことが、あまりの事に少し意識が飛んでしまいました」　「お帰りなさいまし。ゲティン」　「しかし、まさかクレッシルが神聖なアイテムをそのように扱うとは思ってもいませんでした・・・」　「ははは、わりぃわりぃ。この形を見てピーンと来ちまって、つい、な」　「はぁ・・・まぁ。クレッシルの事は放っておいて、これで一応用事は済んだんですよね？ゲティン」　「はい、それでは早速天上塔へと向かいましょう」　「おっけ、それじゃ。れっつゴー♪」　ゲティンが天使の涙を鞄へとしまうのを確認した後、私達は神秘の泉を後にして、そこから西に見える点をも貫く高さの天上塔へと向かい歩き出した。　第６１話　こんなんだっけ？　その２．終わり　第６２話　出撃！リルルンＺ　その１．へ続く

  2017年09月30日

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• 第６１話　こんなんだっけ？　その１．

  　パンゲアで鍵を受け取り、そこをでてから少し。　ゲティンの後について普通に歩いてたら迷いそうな森の中を（多分）北上してた私達の目の前の景色が突然開けた。　その開けた場所を見た瞬間１年前のことを思い出したよ。　中央部分にある泉の横には以前マルミアドワーズを抜くために足を踏み入れた祠が見える。　「懐かしいねぇ。なんか去年初めてこの場所に来て、ゲティンと出会った時の事を思い出すようだよ」　「そうか？私はマルミアドワーズを抜いた後のあれの方が印象に深いんだがなぁ？」　すんごいニヤニヤとしながらクレッシルが見てきてるんだけど・・・？　「あ、あぁ～・・・泉に入りましたわね」　「あぁ、アレのことですね、確かにあれは・・・」　なんかクレッシル・アセト・ミハイルは思い当たる節があるのかな・・・？　なぜか３人して私の方を見てきてるんだけど……一体何のことなんですかねぇｗ　チラッとゲティンの方へと視線を向けてみると、そんな私達を見て苦笑してるんだけど？　「さて、久々にここへと戻ってきましたしのんびりとしたいところではありますけれど・・・」　そう言いながらゲティンは祠の方へと視線を向けたよ。　「早速目当てのモノを探して天上塔へと向かいましょう」　探・・・す？いや、うん。まぁ今のは聞かなかったことにしよう。　とりあえず皆でゲティンについて泉のわきにある祠の中へと入っていった。　それでね？ゲティンはマルミアドワーズが以前突き刺さっていた岩の近くに歩みを進めたんだよ。　「少し待っていてください。え～っと・・・確かこの辺りだったかと……」　そう言ってガサガサと漁り出したんだけど・・・　っていうかね？前に来た時は全く気付かなかったんだけどさぁ・・・　「ねぇ、この祠ってさ？こんなに生活感丸出しだったっけ？」　「さぁ？前はマルミアドワーズにしか気が向いていなくて気付けなかったから、ってだけなんじゃねぇの？いや、わかんねぇけどさ」　「しっかし、散らかってますわねぇ・・・」　アセトの言葉を聞くとガサガサと漁ってた手を止めて、振り返ってきたよ。　「散らかってないです！！これが一番モノを取り易いべスポジなんです！！」　「べスポジってｗｗｗ」　「整理整頓できない人が言いそうな台詞ですね・・・」　「いや、というかさ。ゲティンの掃除６段設定どこいったのさｗ」　「そんな昔のことは忘れました」（キリッ　いや、まぁ。ゲティンが掃除得意で掃除６段とか豪語してた過去はどうでもいいとして。　マルミアドワーズの刺さってた岩のそばには色々な小物、テーブル。タンスetc.etc.　ここでゲティンが本当に生活していたっていうのが、わかるよ。　「う～ん・・・どこにしまったのでしょう・・・」　ガサゴソガサゴソｗ　「なぁ、一体何をさがしてんだ？」　「天上塔の門を開く鍵です」　「それってどういう形のものですか？」　「形は涙を模ったモノなのですけれど、それは小さな宝箱に入れてあるのです」　「ふ～ん、ま。私達が勝手にいじくって探すよりはここは任せたほうがいいかもな。だけど、そんな大事なもんだったらどうしてそんな他の物と一緒の場所に置いたんだよ」　「別のキチンとした場所に安置したほうがいいというのはわかっているのですけれど、どうしても目のつく場所にないと、いざという時にこまりますから」　何でそこで胸を張っていえるんだろうね・・・　「いや、今がそのいざという時でしょうし、そして見つけれてないじゃありませんの・・・」　「でも、何だかわかるなぁ。どうしても大事なモノほど自分の目のつく手元に置いておきたくなるよねぇ」　「あはは・・でも、他の物と同じ場所においてそれで混ざってどっかいってたら意味無いですよね」　うぅ・・・ミハイルの言葉に耳が痛い。　と、その時だったよ。どうやら目的のモノを見つけたようで、ゲティンは嬉しそうに声を挙げた。　第６１話　こんなんだっけ？　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年09月30日

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• 第６０話　変わってないねぇ　その２．

  　ミハイルはゲティンからの視線から逃れるように前方を見つめたよｗ　「さ、さぁ。時間は待ってくれません！急いでパンゲアへ行きましょう！！うん、それがいいです！さ、ゲティンお願いしますよ！！」　ミハイルの言葉にゲティンはわざとらしく大きくため息をついたよ。　「はぁ・・・まぁ？別にわたしはどう思われていようともいいんですけどね？」　「あ、あはは・・・」　ゲティンの先導の元、私達はレテ大陸中央部にあるダークエルフ達の棲家であるパンゲアまで迷うことなく無事に到着できたよ。　パンゲアまでやってきた私達だったんだけどね？　去年の凄く険悪というか、様子を窺うような感じは全くなくて、そこに住む皆が凄く暖かく私達を出迎えてくれたよ。　そんな暖かい雰囲気を感じながら私達はパンゲアの長であるイシリオンさんとその娘であるアイナノアちゃんの住んでいるログハウスへと入って行った。　ログハウスの中には、褐色の肌。尖った耳で相変わらずぺたん娘で安心するダークエルフのアイナノアちゃんの姿と、その横にはイシリオンさんの姿があった。　「あ、お姉さん！！お久しぶりです♪その後、元気にやられてますか？」　「よく訪ねてくれた。久しぶりだなライト達よ」　突然の訪問にも関わらず暖かく出迎えてくれた２人だったんだけど、私達と一緒にいるゲティンの姿を見かけると２人は深々とお辞儀をしてきたよ。　「お久しぶりでございますゲティン様」　「どうも、久しぶりですイシリオン。ここの様子を見る限り、わたしがいない間もキチンとレテ大陸、パンゲアを管理していたようですね」　「もったいないお言葉でございます、ゲティン様」　ゲティンとイシリオンさんが挨拶をしてる横で・・・　「同士よ～♪」　「ミハイルお姉さ～ん！」　去年、神秘の泉で貧乳同盟なんてモノを組んだミハイルとアイナノアちゃんの２人だったんだけど、これまだ健在だったんだね・・・　互いに、その体の一部に成長が認められないことに安心したのか、嬉しそうに（？）抱き合って再会を喜んでるよ。　まぁ、とりあえず。この２人はスルーしておくとして～っと。　「そういえばさ、ここはゼウスたちの攻撃は受けてないの？」　「あぁ、ここには天上塔があるからな。そのような場所で無駄に戦闘を行えば、それに被害が及んでしまう。そう考えたのだろう」　「なるほどな、ま、無事で何よりだ」　「それでライト達よ。ただ顔を出しに来てくれたわけではないのであろう？ゲティン様が一緒に見えるということから、並々ならぬ理由だとは思うが」　「はい、実は今から天上塔を登り天上界へ行こうと思っています」　「天上塔を？別にあそこを通らずともゲティン様であれば翼を使えば天上界へお戻りになれると思うのだが」　ゲティンの言葉にイシリオンさんは驚いた表情を浮かべてるよ。え？飛んでけよ？ってｗ　「わたしだけならいいのですが、セラ達は翼を持っていませんので」　「なるほど、どのような理由かはわからんが、ライト達も一緒に天上界へと行くということなのだな」　「はい、それでイシリオン。あれを持ってきてほしいのです」　「わかりました。それであるならば少しお待ちください」　奥へ引っ込んだイシリオンさんだったけど、すぐに１つの小さな宝箱を手に戻ってきたよ。　そして、その宝箱を開けて中から小さな鍵のようなものを取り出し、それをゲティンに手渡した。　「ありがとうございますイシリオン」　「それでは、わたくし達は先を急ぎますのでこれで失礼いたしますわね」　「む、何だもう行かれてしまうのか。まだ茶も飲んでおらんというのに」　「ごめんね、イシリオンさん。お茶はまた次来た時にでもごちそうになるからさ」　「ほれ、ミハイル。もう出るぜ」　「それではアイナノア。また会いましょう」　「うん、ミハイルお姉さん、皆さんいってらっしゃい」　そして、イシリオンさんの家を後にした私達はその足で北上しゲティンの案内の元神秘の泉へと向かったのだった。　第６０話　変わってないねぇ　その２．終わり　第６１話　こんなんだっけ？　その１．へ続く

  2017年09月23日

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• 第６０話　変わってないねぇ　その１.

  キャメロット城を後にしてから１日ちょっと。　私達はレテ大陸へとやってきていた。　「ここも凄く久しぶりだよねぇ」　「はい、前に来たのは。え～っと・・・グリモア光の書と神秘の泉へマルミアドワーズをとりに行った時ですから。そうですね、１年くらいでしょうか？」　「もうそんなに経つのですわね」　「アイナノアとイシリオンは元気にしてっかな」　船を適当な岩場にくくりつけて、レテ大陸に降り立った私達は懐かしげに辺り一帯を見回してたんだけどね？　すんごい重大なことに気付いちゃったんだけど・・・　「ねぇ、皆？１つ聞いてもいいかな？」　「何ですかセラ？」　「あのさ、誰かパンゲアまでの道って覚えてる？」　私の言葉にゲティンを除くその場にいた全員の表情が一気に笑顔から困惑。　ううん、なんていうか、もう本当に「え？私覚えてないよ？誰かが覚えてて案内してくれんじゃないの？」って言いたげなものに見えるよ。　うん、その証拠にさ・・・　「私はもちろん覚えてねぇぞ？」　「わたくしに期待されてもダメですわよ？」　「え～っと・・・もしかして、セラ覚えてないんですか？」　「いや、うん。だってさ？ほら、去年ってダークエルフの人の後ろに着いて歩いてったり、帰りもアイナノアちゃんに案内してもらったでしょ？」　「ま、まぁ・・・確かにそうですけど」　「それにさ？１年前にたかだか１回だけ来たことあるような場所の道を覚えてるわけないじゃん？しかも、こんなに入り組んだ森の中だよ？」　「マ（ジ）？」　「マ（ジです）」　「え、え～っと・・・まさかここで迷子になる可能性が出てくるとは思ってもいませんでした」　「と、ととと、とりあえずあれですわよ。・ほら、あそこ、視界の奥に見える天上塔を目指して歩いていけばいいんじゃありませんの？」　「それはそうかもですが、無闇に動いて道に迷いでもしたら目も当てられませんよ？」　「う、う～ん・・・」　どうしよう。このままここで誰かパンゲア住人であるダークエルフの人に気付いて貰えるのを待ってるとしても、いつ気付いてくれるかわかんないしなぁ・・・　皆で頭を抱えて身悶えてたらね？　ゲティンがものすご～く、言い辛そうに、というか。　申し訳なさそうに、そろ～っ・・・と、手を挙げてきたんだよ。　「あ、あの～・・・皆さん申しあげにくいのですけれど・・・」　「ねぇ、ゲティン？ゲティンもどうすればパンゲアまで迷わずにたどり着けるかちょっと考えてよ」　「あの、いえ。その～・・・」　「なんだぁ！？なんか言いたいことあんならはっきりいえよな！」　「ひ、ひぃ！？す、すみません。すみません」　「で、何かなゲティン？」　「いえ、パンゲアまでの道なら、わたしわかりますよ？」　！！？　「ね、ねぇ！？ゲティン、それ本当なの！？本当なの！？嘘じゃないよね！！」　「ちょ、や、やめ！セラ、そんな揺らさないで下さい。本当、本当です。本当に知ってます」　「しかし、本当意外ですわね・・・まぁ、でも知っているというのであれば？ここはゲティンに先導をお任せいたしますわ」　驚く私達にゲティンは目を据わらせてこっちを見てきてるよ。　（エ　エ）一体何年、ここレテ大陸に住んでると思っているのですか　「ん、かなりなげぇのか？」　「はい、サレスが天上界を追放されて、その直後からサレスの代人としてここの管理を任されていましたから。そうですね・・・」　右人差し指を顎に軽くあて、天を仰ぐようにしながら考え込んだゲティン。　「もうかれこれ２０００年というところでしょうか？ここレテ大陸はいわばわたしの庭みたいなものです。任せてください」　そういってから自信満々に自身の胸を叩いたゲティンだったけど、その時ね？ぽよん♪って・・・ぽよん♪って揺れたんだよ・・・・　「しかし意外ですね。ぽわぽわしてるように見えるゲティンがパンゲアの道を知っているとは・・・」　「あの、ミハイル。わたしは一体どういう認識を受けていたのでしょう」　目を据わらせて、じと～って絡みつくような視線をミハイルに投げかけるゲティン。そして、そんなゲティンの視線にちょっと慌てたようにするミハイル。　第６０話　変わってないねぇ　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年09月23日

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• 第５９話　次なる目的地は・・・　その２．

  アルマロスとお兄様が飛び立ったのを見送った後、お父様がこっちに振り返ってきた。　「セラ、皆の者はこれからどうするつもりなのだ？」　「私達もお兄様達が向かったのと同じ天上界へと向かうつもりだけど・・・どう行けばいいのかな？」　「そういえば、私達はその天上界でしたっけ？それがどこにあるかすら知りませんですね」　「なぁ、ゲティン？天上界ってどこにあんだ？」　「ん～・・・」　クレッシルの言葉に腕を組んだゲティン。　「そうですね、天上界は分かりやすくいいますと、雲の上です」　雲の・・・上？　え？どういうこと？？？　「雲の上なので皆は翼を羽ばたかせ上空へ向かって飛んでそこへ向かいます」　　「わたくし達はゲティンやセラと違って普通の人間ですもの。翼なんて持ち合わせておりませんし、空はもちろん飛べませんわよ？」　ん、ちょっと？今何気にアセト私のことも普通の人間じゃないって言った、よね？　いや、確かに魔族の血は流れてるよ？流れてるけどさ・・・でも私は普通にみんなと同じ人間のつもりで今までこの１７年間生活してきたんだけど・・・　「かと言って、私達は飛行船も持っていませんし」　飛行船、ねぇ・・・確かにあれは高いモノだからねぇ……　まぁ、それでなくても。飛行船程度でそんな、天上界へと行けるくらいの高度に達するかどうか。妖しいところではあるけどさ。　「どうすんだよ。それじゃああれか？天上塔へ行けるセラとゲティンに任せて、私達はセラの対談が終わるまでここで留守番ってことになるのか？」　「いえ、皆さんも一緒に行きますよ？」　「でも、どうやっていきますの？」　「えぇ、私達は翼を持ち合わせておりませんし」　「皆さん、レテ大陸の西側に天をも貫く程巨大な塔が聳え立っているのは覚えています？」　え？そんなのあったっけ・・・？　「そんなんあったっけか？」　そんなのあったっけ？私とクレッシルが頭に？マークを一杯に浮かべてるとね？　それを見たミハイル・ゲティンが大きくため息を１つついてきたんだけど……　「セラ、クレッシル・・・本当に覚えてないんですか？私はちゃんと覚えてますよ？あれは本当インパクトが凄かったですから」　「えぇ、わたくしも覚えておりますわ。確かにありましたわね」　「思い出せないんですか？ほら、パンゲアの近くにあったじゃないですか」　パンゲアの近く？？？　そう言われてもダメだ、思い出せない・・・　「まぁ、そのレテ大陸西部にある天上塔という場所からひたすら上に登れば皆さん方、地上人でも天上界へ行くことが出来ます」　「ふんふん、ということは。次はレテ大陸に行けばいいんだね」　「レテ大陸といえば、アイナノアは元気にしてますかね」　「あぁ、その天上塔っていうのか？そこにいくついでにパンゲアによってイシリオンとアイナノアの顔を見てくのもいいな」　「パンゲアには天上塔を登る為に必要となるアイテムを取りによりますよ」　「あ、そうなんですのね」　「それでは、私達も行きましょうか」　「うん、それじゃ。お父様・キャメロット王。行って来るね」　「皆のもの、気をつけていってきてくれ」　「あぁ、去年の時もそうだったが、世界の命運は皆の肩にかかっている。頼んだぞ」　「任せてよ♪」　手を大きくブンブンと振ってお父様・キャメロット王に別れの挨拶をしてから私達はキャメロット城を後にしたのだった。　第５９話　次なる目的地は・・・　その２．終わり　第６０話　　変わってないねぇ　　その１．へ続く

  2017年09月23日

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• 第５９話　　次なる目的地は・・・　　その１．

  　「セラ・ロック。共に戦ってくれてありがとう。王に代わって礼を言おう」　私達の方へ安堵の表情を浮かべながらお礼の言葉を述べてきたお父様。　「間に合って本当良かったよ。被害もこれだけですんだしさ」　「俺は何もしてません・・・」　お父様に対して凄く申し訳なさげな表情を浮かべたお兄様。　「それよりも父上・キャメロット王。今回は正義のためだと言い、城を落とそうとしてしまい、本当に申し訳ありませんでした・・・」　肩を落としそう言ったお兄様に対して、その事に対しては別段なんとも思ってないんだろうね。キャメロット王とお父様は暖かい笑みを向けてきたんだよ。　「よいよい、気にするでないぞロック。そなたにも色々と思うところはあるのだろう？」　「うむ、それにだ。結果として今回はお前にも助けられたからな。逆に礼を言いたいくらいだ」　っと、その時だったよ。お兄様が私の方へ体ごと向けてきたよ？　「それでセラ？１つ聞きたいんだが、お前の背中から生えていたあの翼。あれはなんだったんだ」　お兄様の言葉にキャメロット王もお父様もすんごい興味津々って感じにこっちを見てきたよ。　「セラがこの場に現れた際、本当に天使のようだったぞ」　「うむ、まさかお前も天上人によって英霊として呼ばれた口なのか？」　「違う、違うよ。え～っと・・・どこからどうやって説明したらいいのかなぁ・・・」　　お母様の生家、ザイート家のご先祖様に魔族と天上人のハーフであるゼロスさんがいること。　そして、そのゼロスさんと実際に会い、彼の力を分け与えて貰ったこと。　そのゼロスさんは今私の持っている大剣、ゴッド・オブ・デスとなったことを掻い摘んで話した。　「ふむ・・・なるほどな。そんなことがあったのか」　「しかし、凄まじい力だな。今こうして目の前にいるだけでもセラのその力に中てられそうだ」　私達がそんな話をしてる横でゲティンとアルマロスは何か別の話をしていたよ。　「アルマロス。これから貴女はどうするつもりなのです」　「天上界に戻りゼウス様に先ほどキュリオテスが言っていた事の真偽を確かめに行ってきます」　「それでしたら、一緒に天上界に行かないです？わたし達もこれから天上界にいくつもりでいましたし」　パァッと笑みを浮かべそう提案したゲティンだったけど、何故かアルマロスさんは少し申し訳なさそうな表情を浮かべ答えていた。　「いえ、誘ってもらえるのは嬉しいのですが、ゴッドキャッスルへ行く前にやらなければならないこともあるので別行動をさせてください」　「やること・・・です？」　「はい、無音の祠へ寄ろうかと思ってます」　「あ～、あそこですね。わかりました。それでは残念ですが、ゴッドキャッスルへは別々に向かうということで」　「それよりも、ごめんなさいゲティン。親友である貴女に手を上げるようなことをしてしまって・・・・この事は本当に許されることではありませんよね」　「ふふ、気にしないで下さいアルマロス。わたしはそれしきの事は全く気にしませんし、アルマロスの事を信じていましたから」　伏目がちに申し訳なさそうに口にしたアルマロスだったけど、そんな彼女に対してゲティンは頭をポンポン、と叩きながら微笑みかけたよ。　「ありがとうゲティン、全てが終わり。落ち着いたらまた一緒にお酒を飲みましょう。その時は秘蔵のワインをあけますよ？」　「その時を楽しみに待ってます。それではまた、アルマロス」　「ロック、別れの挨拶は済みましたか？さぁ、参りましょう」　「む、わかった。それでは父上・セラ・キャメロット王。そして皆。またどこかで会うこともあるだろう、その時までさらばだ」　お兄様・アルマロスはテラスの隅の方まで移動してからぺこりと軽く頭を下げ、そしてふわりと翼を羽ばたかせて北西の方へ飛んでいったよ。　第５９話　次なる目的地は・・・　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年09月23日

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• 第５８話　炸裂！必殺のカイダ・ルス　その２．

  うん、今私が払い落としたキュリオテスの投げてきたものっていうのがね・・・？　「えっ？石？？？」　私、ゲティンがキュリオテスの投擲した石に気をとられてた間に彼は一気にカイダ・ルスの詠唱に集中してるある間ロスの方へと間合いを詰めていってたよ。　「く、やられました！」　「し、しまった！？」　ゴッド・オブ・デスをアルマロスへ攻撃をしかけようと剣を振り上げたキュリオテスに対して思いっきり投げつけた。　「えーい、間に合って！！」　そして、それと同時に私自身も全力で地面を蹴ってキュリオテスの方へと向かって間合いを詰めた。　　アルマロスへ対して振り下ろそうとした剣をとめ、自身に向かって一直線に向かってきてる私の投げたゴッド・オブ・デスを払い落とした彼の胸部へ、私の強烈な飛び蹴りが炸裂し、後方へ大きく吹き飛んでいったよ。　「まさか一度の戦闘で３度も蹴ってくるとはな・・・足癖の悪い女だ」　すんごいイライラとむかついてるのが容易に読み取れるくらいに態度に出てるよｗ　「悪くないよぉ？それにさ、戦いの時に足技を使っちゃいけないって、剣だけで戦わないといけないっていうルールもないからねぇ」　「ふん、まぁいい・・・それにしても、だ……」　キュリオテスがチラッと辺りの様子を見たから私達もそれを一緒になってみてみたけど、ミハイル達の方も大丈夫そうだねぇ。　「使えないな・・・上級魔族が５体も揃って人間相手に何をやってるんだ」　最初キュリオテスが呼び出した上級魔族が５体いたんだけどね？もう向こうもラスト１体って所まで減ってたんだよ。　これならもう全滅させるのも時間の問題だね。　「準備が整いました。いつでもカイダ・ルス撃てますが、チャンスは１度のみです」　「１発あれば十分だよ」　「はい、アルマロスはそこでタイミングを見計らっていてください」　「氷の精霊達よ、私にその力を貸し給え」　手に握るゴッド・オブ・デスに冷気が集まり、刀身の周りに氷の刃を形作っていった。　「魔法剣・・・ですか？それは」　「うん、私の魔法剣はただ剣に属性を付与させるだけじゃないんだよ」　「ほほう・・・？」　私の魔法剣に興味深々なアルマロス。　「セラの魔法剣久々に見ました」　「魔法剣か、だがそれで俺をどうするつもりだ」　「こうするんだよ？」　ゴッド・オブ・デスを振り上げると、剣先から氷の矢が数本、キュリオテス目掛けて発射された。　それをサッと横に避けたキュリオテスの元へ、更に私はその場で剣を振り氷の矢を彼に向けて撃ち続けた。　「ちぃ・・・何だコレは。うっとおしい！！」　私の執拗な攻撃にイライラを募らせたキュリオテス。　我慢の限界が来たようで、私の方へとまっすぐ向かってきたよｗ　「きたね」　待ってました。キュリオテスがこっちに向かってきたのを見て、私はアルマロスの方へと視線をむけ、それを見たアルマロスはコクリと小さく頷いたよ。　「いきますよ、全ての悠久の時を生きとし生ける者よ。その身を無へと還せ！カイダ・ルス！！」　アルマロスの右手から一筋のキラキラと光り輝く矢が放たれ、それは一直線にこっちに向かってきてたキュリオテスの胸元を貫いていった。　「ぐ、うぅううう・・・セラフィム＝ライトの方に意識を集中させすぎてしまったか・・・」　キュリオテスは口と胸元から大量の血を流しながらその場にドシャッと崩れ落ちるように倒れたよ。　「・・・ふぅ。勝負あったようですね」　「気をつける、ことだな。俺を倒したことが他の者達に伝われば、きっと。魔族の仲間達が放っておかないだろ・・・その時は、くくく、地上世界も巻き込んだ聖魔戦争（セイクリッド・ウォーズ）の再来だ」　そう口にしたキュリオテスの表情は凄く楽しそうなものだった。　この世界に戦乱が渦巻くその様子を考えたんだろう。　「聖魔戦争は起こさせないよ。絶対に」　「ふん、戦うしか能のない貴様らに何が出来るというのだ。せいぜいもがき苦しみ死んでいくがいい。俺は先に、地獄で待っているぞ」　そこまで言い切ると、キュリオテスは瞳を閉じて息を引き取り、それと同じくしてどうやらミハイルたちもキュリオテスが呼んだ眷族を倒しきったみたいだった。　第５８話　炸裂！必殺のカイダ・ルス　その２．終わり　第５９話　　次なる目的地は・・・　　その１．へ続く

  2017年09月16日

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• 第５８話　炸裂！必殺のカイダ・ルス　その１．

  「喰らえ！！」　私達の方へと近付いてきたキュリオテスは手に持った剣を横に振り薙ぎ攻撃をしかけてきたよ。　「そんな攻撃じゃ当たらないよ！！」　ゴッド・オブ・デスでキュリオテスの剣を受け、そのままの体勢で彼に対して蹴りを放った。　「でぇえい！」　「喰らいなさいキュリオテス！ライトニング・ボール！！」　キュリオテスのお腹に私の蹴りがぶち当たり、そのインパクトの瞬間、彼は衝撃を和らげるために距離をとった。　そんな彼のもとへゲティンの放った聖なる光球が襲い掛かる。　「そんなもん当たるか！」　ゲティンのライトニング・ボールをすんでのところで回避したキュリオテスへ、私は更に間髪いれず攻撃をしかけた。　「えいっ！」　ライトニング・ボールを避けたキュリオテスに対して更に蹴りを放った。　「くっ・・・」　腹部に蹴りが突き刺さり、苦悶の表情を浮かべたキュリオテスに対して続けざまにゴッド・オブ・デスで斬り付けたんだけどね？　ん～・・・流石にこれは当たらないか。　斬撃は流石に避けられちゃったよ。でも、完全に避けきることは出来なかったようで、キュリオテスの胸の辺りを掠めていった。　「ちぃ・・・小ざかしい」　きりつけた部分から血がポタポタと滴り落ち床を赤く染め上げていってる。　「まだまだ攻撃の手はこれくらいでは止めません！ホーリー！」　「いくよ！！ベーゼヴィント！！」　無数の聖なる光球をその場に踏みとどまりしっかりと受けるキュリオテスへと向かって、私の放った闇の遺志を持ったカマイタチが襲い掛かった。　ベーゼヴィントのカマイタチがゲティンのホーリーを踏ん張り一身に受け止めるキュリオテスの体を掠めていき、無数の切り傷をドンドンと作り上げていく。　「ぐぅ・・・まさか魔族の力を得てパワーアップしたこの俺様がこれほどまでに苦戦するとはな・・・」　「キュリオテス！尻尾巻いて逃げるならまだ間に合うよ！」　私の言葉に苦しそうにしながらもしっかりと答えてきたよ。　「逃げる？逃げるわけないだろ！！ここで戦果の１つでも挙げてアシュタロトの元へと持っていってやらないと示しがつかないのだ」　「力の差は歴然のはずです。キュリオテス、貴方に勝ち目などないです。諦めなさい」　「誰がおめおめとここで逃げ帰るものか！！勝負はまだこれからだ！」　ゲティンの言葉に激昂し叫ぶキュリオテス。そんな彼を横目にゲティンはアルマロスの方へと視線を向けた。　「アルマロス、まだ時間はかかりそうです？」　「もう詠唱は半分以上終わりました。後少しだけ時間を稼いでください」　「おっけ」　私達が話をしているのを見たキュリオテスは何かに感づいたのか、ピクリと反応を示したよ。　「なるほどな……そういうことか」　「な、何がなるほどなのかな・・・」　マズイ、キュリオテスにばれちゃった？　「何故さっきからアルマロスが攻撃に参加していなかったのはそういうことか」　ボソボソと何かを呟くキュリオテス。　「行くぞ！！」　不敵な笑みを浮かべてから三度私達の方へ近づいてきたキュリオテス。　「なんだろう‥‥何を狙ってるんだろう」　「彼が何を考えていようと、関係ありません。返り討ちにするだけです」　ゴッド・オブ・デスを握りなおしキュリオテスの攻撃に備えて身構え、ゲティンも魔法の詠唱に入ったんだけどさ・・・・　「コレでも喰らえ！」　「！？」　キュリオテスがこっちに向かって何かを投げてきたからそれをゴッド・オブ・デスで払い落とした。　第５８話　炸裂！必殺のカイダ・ルス　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年09月16日

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• 第５７話　対決！キュリオテス　その２．

  「さぁ、これで準備は整った」　上級魔族５体かぁ・・・どうなんだろう。　「セラ、眷属の相手は俺に任せろ。お前はキュリオテスと言ったか？敵のリーダーを頼む」　オートクレールを強く握り締め、そう言ったのはお父様だった。　「あぁ、俺と父上では奴と戦うのに足手まといになるだろう、それくらいしか出来ないが周りの雑魚は任せてくれ」　「それなら、私も警護隊長殿の方へと加勢いたします」　そう言ったのはミハイルだったよ。　「もう少し人数も欲しいでしょうし」　「そうですわね。上級魔族５体相手では、流石のセラのお父上でも厳しいかもしれませんものね。わたくしもそちらへと加勢いたしますわよ」　「ん？アセトもそっちに加わんのか？なら私もそっちの手伝いをするか」　結局、私・ゲティン・アルマロスの３人でキュリオテスと戦うことになり、他の皆はキュリオテスが呼び出した眷属の相手をすることになったよ。　「行くぞ、バースト！！」　お兄様の放ったバーストの魔法が開戦の合図となり、戦闘が始まった。　お兄様が右手を前に突き出し魔法を唱えると、地の底から雷の球のようなモノが現れ、そして上空で破裂し、無数の雷の矢がキュリオテス達目掛けて放たれた。　「オーバードライブ！マジーオーバー！！皆さん、頑張ってください」　ゲティンの補助魔法を受けると体中から力がみなぎってくるよ。　バーストの雷の矢を凌ぐキュリオテス目掛けて私は一気に飛び出した。　「セラフィム、援護します！！フリージングアロー！」　私の横を猛スピードで駆け抜けていったアルマロスの放った氷の矢。　「ちぃ、小ざかしい」　アルマロスの放った氷の矢を手に握った剣で払い落としたキュリオテス。　そんな彼へ対して私はゴッド・オブ・デスを思いっきり振り下ろした。　「もらったよ！！」　キーン！　あはは・・・流石に駄目かぁ。　私の振り下ろしたゴッド・オブ・デスはキュリオテスに当たる直前で受けられちゃったよ。　いけると思ったんだけどなぁ・・・　でも、それでもキュリオテスもかなりギリギリだったみたいで少し驚いた表情を浮かべてる。　「ヴァイデヴィレッジで対峙した時とは比べ物にならないスピード・パワーだな。こんな短期間の間にこのような力を・・・一体どのようにして手に入れたというのだ」　「ふふ、どうやってこの力を得たかは秘密だよ。今の私をあの時と同じだと思わないことだね」　ギリギリと互いの剣をあわせ力比べをしていると、その後ろから２つの声が聞こえてきたよ。　「いきます、ホーリーレイ！！」　「セラフィム、離れてください。サンダーボルト！！」　キュリオテスの剣を強く弾いてから、アルマロス・ゲティンの方へと後退すると、剣を強く弾かれたことによって体勢を崩した彼に光の光線とタリスマンの力を借りたアセトのそれと比べても更に大きなアルマロスのサンダーボルト、落雷が炸裂したよ。　「やった？」　「いえ、まだみたいです」　「キュリオテスがこの程度の攻撃で倒れるとは思えません」　「くくく、さすがだな。地上世界最強の戦士であるセラフィム＝ライトに天上界最強の魔導師であるアルマロス。それにプラスでゲティンという最高のトリオがこれほどまでに危険だとは思ってもいなかったぞ。流石に一筋縄ではいかないか」　「ね、ねぇ、何かぴんぴんしてるように見えるんだけど・・・」　「う～ん・・・生半可な魔法、攻撃では通用しませんか」　と、その時だったよ。アルマロスが口を開いてきたよ。　「あの魔法ならば・・・いけると思います」　そのアルマロスの言葉にゲティンは酷く困惑した表情を浮かべたよ？何があるの？　「アルマロス、まさかあの禁忌魔法を唱えるというのです！？」　「禁忌魔法・・・？」　「はい、術者の精神力を尋常じゃないほど消耗させる代わりに現存する魔法の中でも最強クラスの攻撃力を誇る、カイダ・ルスという魔法があるのですよ」　「確かにアルマロス程の魔力のキャパがあるならば、あの魔法を唱えるのは容易でしょうし、キュリオテスを倒せるとは思いますが」　「ただ、問題は詠唱にかなり時間がかかるということです」　「なるほどね、その間の時間稼ぎをすればいいんだね？」　「はい、お願いできますでしょうか？セラフィム・ゲティン」　「任せてよ♪」　「全力でアルマロスの詠唱の援護をさせていただきます。わたしに任せてください」　「何をブツブツと話しているのだ、そちらからこないのであれば、こちらから行くぞ」　剣を握りなおしたキュリオテスが私達の方へ向けて迫ってきたのだった。　第５７話　　対決！キュリオテス　　　その２．終わり　第５８話　炸裂！必殺のカイダ・ルス　その１．へ続く

  2017年09月16日

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• 第５７話　対決！キュリオテス　その１．

  一触即発。　今にもお互いに飛び掛りそうな状態、戦闘がいつ始まってもおかしくないその空気を打ち破るように、私達の背後。　謁見の間の入り口の辺りから声が聞こえてきたよ。　「すみません、お待たせいたしました！！」　そう言いながら謁見の間に入って私達の方へと駆け寄ってきたのはミハイル・クレッシル・アセトだったよ。　「へへっ、待たせたな♪で、どいつを殺ればいいんだ？」　「はぁ・・・クレッシルは元気ですわねぇ……わたくしなんて、さっきまでの戦闘でもうクタクタだと言いますのに・・・」　「そういえば、ここにくるまでに結構時間かかってたみたいだけど、どうだったの？」　「えぇ、実は城内には天上人以外にも、何故か魔族達の姿もあったんですよ」　魔族はキュリオテスが連れてきたのかな？まぁ、そうとしか考えられないよね。　「なので、天上人と一緒に魔族達も倒しつつ向かっていたので思った以上に時間がかかってしまったのです」　「なるほどなる、そういうことなんだね」　ミハイル達が到着して全員この場に揃ったところでキュリオテスは不敵に笑いかけてきたよ。　「ふ、どうやら役者は揃ったようだな」　「キュリオテス・・・？」　その場にいるキュリオテスの姿にミハイルは険しい表情を浮かべ、そしてクレッシルとアセトは？を浮かべながらキュリオテスの方へと視線を向けた。　「なぁセラ、あたい達の敵は誰だ？」　「そちらのアルマロスでしたかしら？彼女・・・と戦っている様子は見えられませんけれど？」　「あ、うん。さっきまで戦ってはいたんだけど、今は訳あって共闘状態だよ」　「ほほう？？？」　「それで、あそこにいる天上人崩れの魔族、キュリオテスが今私達が倒すべき相手だよ」　「なるほど、わかりました。そういうことですね」　「はぁ？よく事情はわかりませんけれど、彼女はわたくし達の敵ではないということだけは確かなようですわね」　「ま、何だっていいさ。味方だっていうんだったら宜しく頼むぜ？」　「はい、皆さん。宜しくお願いいたします」　「しかし良かったですね。ゲティンの親友である彼女との戦いでどちらも傷つくことにならずに」　ホッと胸をなで下ろしながらそう言ってきたミハイルだけど・・・　まぁ、確かにそれはそうかもね。ゲティンの体力はちょっと削られてるけど（　「さぁ、キュリオテス！これでこっちは８人になりました。流石の貴方といえど、この人数相手では厳しいのではないですか？」　確かに今のこの状態だけ見れば私達の方が圧倒的に有利そうではあるけど。　でも、何故か今のこの状態を見てもキュリオテスは余裕の笑みを浮かべながらこっちを見下すような感じに見てきてるんだけど？　こっちは私・ミハイル・クレッシル・アセト・ゲティン・アルマロス・お兄様・お父様の８人。　１人１人の個々人の力だけ見てみても、この世界でもトップクラスの実力者達ばかり揃ってるし、いくら魔族の力を得て強くなったとは言ってもキュリオテス１人じゃ手に余ると思う。　といういよりもだよ？片や向こうは、キュリオテスの１人だけで他に仲間を引き連れていない状態だからねぇ。　「そうだな、流石にこの人数差では俺も厳しいかもな。それならば、少し援軍を呼ばせてもらおうか」　援軍？？？さっき城内に魔族達がいたってミハイルが言ってたけど、それ以外にも連れて来てるってこと？　キュリオテスが指をパチン♪そう鳴らすと、彼の周りの空間がゆがみ、そこから５体もの上級魔族が現れたよ。　第５７話　対決！キュリオテス　その１．終わり　　　　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年09月16日

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• 第５６話　本当の敵は　その２．

  　「なっ！？そ、そんな・・・そんなことが・・・」　「何故ゼウス様が魔族などと言う下劣な存在の言う事を聞かないといけないのですか！？そんなの嘘に決まってます。そのような嘘をつき、私を騙そうとしても騙されませんよ！！」　アルマロスが激高する中、キュリオテスは余裕の笑みを浮かべてるように見える。　「ククク、信じたくない。その気持ちはよくわかるぞ。何せアルマロス、貴様はゼウスの事を心の底から想い慕っているようだったからな。だが残念ながらこの事は事実なのだ」　「か、仮に本当のことだったとしてもです。ゼウス様が魔族の戯言に耳を貸す理由がわかりません！」　「俺も直接本人から聞いたわけではないからな。アシュタロトから聞いただけだから確証があるわけではないが、どうやらゼウスの過去に問題があるらしい」　「過去・・・？どういう意味ですか」　「今でこそ、最高神としてその手腕をふるっているゼウスの体にまさか魔族の血が流れていたとは、本当。俺も初めて聞いた時は驚いたぞ」　！？　『魔族！？』　「あぁ、そうだ。どうやらゼウスは天上人と魔族の間に生まれたハーフらしいのだ。そして、その事を知っているアシュタロトにばらされたくなければ従えと脅迫されたらしいな」　自分の想い人に魔族の血が流れている。その事を信じたくないんだろう、アルマロスは我を忘れ更に激高し、叫びだしたよ。　「そんなの嘘です！！嘘だ、嘘だ、嘘だ！！嘘に決まってます！！」　頭を大きく左右に振ってキュリオテスから放たれた言葉を必死に否定し、忘れようとするアルマロス。　「お、おのれ、キュリオテス！！ゼウス様のうちに魔族といった穢れた血が流れているなど、そのような嘘を・・・そのような事を言ってタダで済むと思わないことです！！」　「まぁ、信じられないだろうな。だが、これは事実なのだ。サレスがフェルナンデスといった魔族のプリンスと恋に落ち、その子を身ごもったという前例もあるからな。全くのデマだと言い切ることは出来まい？」　「ゼウスが本当に・・・本当に天上人と魔族のハーフだったとして・・・だったら何故、何故あの時・・・サレスを庇ってくれなかったのでしょうか・・・」　「そんなもの理由は簡単だ。下手にサレスのことを庇い、また自身も天上人と魔族。両方の血が流れているということが露呈されるのを恐れたのだろう？」　「そ、そんな・・・ゼウスの自身の保身のためだけに・・・それだけの為に、わたしの姉サレスは・・・見殺しに、人身御供にされたというのですか」　ゲティンからは怒りとも呆れともわからない表情、感情が見え隠れしてるように思える。　「今言った事は、全て俺の独り言だ。信じる信じないは個人の自由」　「私はゼウス様、ご本人の口からそのことが事実であると聞くまでは信じません！！そのためにも、キュリオテス。貴方を倒して天上界に戻ります」　アルマロスの瞳には強い意志が浮かんでるのが見える。　「そうです！貴方の言葉だけを聞きそれを鵜呑みにするなど愚の骨頂！そうした事を言い、わたし達を惑わせようとしてもそんな手には乗りません！！キュリオテス。貴方にはここで消えてもらいます」　ゲティンもやる気満々だよ。　普段戦闘に消極的なゲティンが凄く戦う気満々というか、やる気を見せてる。　たとえ今の話が嘘でも本当でも今の私には正直関係ない。　もしそれが本当であるなら事実確認を行い、天上人と魔族による意味のない争いをやめさせる口実に出来るのかもしれない。　でも、このままキュリオテスを野放しにしておくわけにはいかないよね。　「そうだよ！仮に今の話が本当だとすると、私達が真に倒すべき、ううん。話をつけるべき相手は、アシュタロトってことになるしね、その確認に行くためにも。ここで時間を無駄にする暇はないんだよ！！」　「さぁ、キュリオテス。わたし達が相手になってあげます！」　第５６話　　　本当の敵は　　　その２．終わり　第５７話　対決！キュリオテス　その１．へ続く

  2017年09月09日

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• 第５６話　本当の敵は　その１．

  　声の聞こえてきた方へと私達は体ごと向けてみた。　するとそこには右目を眼帯で隠し、背中の左側からだけ白く美しい翼を生やした金髪の天上人、キュリオテスの姿があったよ。　「キュリオテス・・・突然姿をくらませた貴方がよく私の前に再び姿を現せましたね」　ゲティンへと向けていた以上の不快感を露にしてキュリオテスを睨みつけるアルマロス。　「そして、再び現れたと思ったらいきなりご挨拶ですね」　ククク、何て不敵な笑みを浮かべながら私達の元へと降り立ったキュリオテス。　何だろう・・・今の彼からは以前のそれとはまた違うオーラ？うん、なんか不思議な感じを受ける。　「久しぶりだな、アルマロス・ゲティン。そして、セラフィム＝ライト。特に貴様には会いたかったぞ・・・殺したいほどにな」　「どうやら見たところ、私の応援で来てくれた、ということでもなさそうですが・・・」　「キュリオテス？ココへ貴方が来た目的はなんなのです？いきなりアルマロスを狙撃するとは卑怯です」　ゲティンの言葉にキュリオテスは嘲笑にもにた表情を浮かべながら答えてきたよ。　「目的？そんなものただ１つだ。ここに来れば俺様にこの傷を負わせてくれたセラフィム＝ライト。それと天上界で俺様を散々侮辱してくれたアルマロスの２人を処分できると思ったからだ」　「えっと・・・つまり？君はここにいる全員を１人で相手する為に来たってことでいいんだよね？キュリオテス」　「そういうことだ。そして、貴様達の相手など、今の俺様ならば１人で十分だ」　「百歩譲って、まだセラを襲うのはわかります。ですがキュリオテス、貴方がアルマロスを攻撃する理由がわかりません。先ほど言ったくだらない理由だけで、同士討ちをするつもりでいるのです！？」　ゲティンの問いかけに対してキュリオテスはたっぷり時間をかけてもったいぶってから口を開いてきたよ。　「同士討ち？違うな、俺は天上界。ゼウスに見切りを付け、俺と同じ目的の為に行動しようとしている魔王アシュタロトの元に下ったのだ」　アシュタロト・・・魔族の・・・下に？そんな、そんなこと許されると思ってるの？　というか、あのアシュタロトが何も考えなしに自分の下へ天上人を迎え入れるとは到底思えない。　まぁ、それはキュリオテスも分かってるんだろうけど、自分がただただ利用されてるだけ、っていうのは。　「そ、そのようなことが・・・・そのようなことが許されると思っているのですか、キュリオテス！！」　「くくく、なんとでも言うがいい」　「アルマロス、ここは手を組んでキュリオテスを叩きませんか」　「そうですね、そこの愚か者にはきついお灸が必要でしょうし、ゲティン・セラフィム＝ライト。ここは一時休戦です、一緒にキュリオテスを倒しましょう」　「わかったよ」　私達が３人で戦いを挑むことを理解すると不敵に笑い出したよ。　「新たに魔族の力を手にした俺様に３人でかかれば敵うとでも思っているのか。愚かな、いいだろう。３人まとめて相手をしてやる」　ゴッド・オブ・デスを強く握りなおし、アルマロス・ゲティンが身構えるのを見ると、キュリオテスは更に口を開いてきたよ。　「そうだ、戦う前に１つお前達に冥土の土産に面白い話を聞かせてやろう」　「面白い・・話？」　「今はそんな話を聞くつもりはありません」　「まぁ、そういうな。特にアルマロス。貴様に聞いてもらいたい話なのだ」　「私に・・・？」　「一番最初、俺達天空の大天使はゴッドキャッスルに集められ、ゼウスよりセラフィムの抹殺依頼を受けたのは覚えているな？実はそれはアシュタロトの引き金だったのだ」　キュリオテスの言葉に、ゲティンとアルマロスの表情が一気に凍りつき、その場に固まった。　第５６話　本当の敵は　その１．終わり　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年09月09日

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• 第５５話　女の闘い！　その２．

  　アルマロスが左手を前に突き出すと同時に、強い衝撃波がゲティン目掛けて襲い掛かっていった。　「マジーオーバー！！そして、マジックバリアです！」　対魔法抵抗力＆魔法の威力を高めてから更に魔法障壁を自身の前に張りアルマロスの攻撃に備えたゲティンだったけど・・・　「ふふふ、ゲティン程の魔力で私の魔法を防げるはずがありません」　アルマロスのショック・ウェイブはゲティンの張った魔法障壁をいともたやすく破っちゃったよ。　「ぅ・・・く、くぅ・・・」　魔法障壁を張り、対魔法抵抗力を高めたはずのゲティンがかなりダメージを負ったように見える。　「ゲティン！？」　「だ、大丈夫です。まだ・・・まだ大丈夫ですセラ」　「ふふ、いつまで耐えられますかね。ゲティン？さぁ、次行きますよ。フランメ・ヴィアベル！」　今度はアルマロスが両手を突き出すと、そこから炎の渦がゲティン目掛けて一直線向かっていく。　「流石にこれは防げない・・・ならば、こちらも魔法を撃って打ち消すまでです。ホーリーレイ！」　聖なる光線がゲティンの手から放たれ、それはゲティンに目掛けて発射された炎の渦とぶつかると大きな音を立てて、バチバチと衝突をした。　アルマロスのフランメ・ヴィアベルとゲティンのホーリーレイがバチバチと音を立てながら衝突してたんだけどさ？　その力は互角？ううん、ちょっとゲティンがおされ気味かも。　アルマロスのフランメ・ヴィアベルを受けるゲティンは凄くつらそうな表情を浮かべてるのに対して、アルマロスはまだまだ余裕そう、涼しげな表情を浮かべてるもん。　光・補助魔法のエキスパートにして、それなりの魔力のキャパを有してるゲティンのはずなのに・・・そんなゲティンが魔法の打ち合いでこんなに辛そうに・・・　よっぽど彼女、アルマロスの魔力のキャパが高いんだろうね。　「ふふふ、どうしたんですかゲティン？私はまだ全力を出していませんよ？」　そう口にした次の瞬間、一気にフランメ・ヴィアベルの炎の渦がゲティンの方へと迫り、その直撃を受けたゲティン。　「きゃあ」　「ゲティン？貴女が私に勝てる可能性は０です。大人しく自身の負けを認め、ともにゼウス様の為に尽力いたしましょう。そうすれば命だけは助けてさしあげますよ？」　「断ります！！絶対にそれだけはしません！わたしは負けません！」　ゲティンの言葉に見下げた表情を浮かべ彼女をにらみつけた。　「はぁ・・・いいでしょう。ならば、二度と私に歯向かう気力が出てこなくなるまで、徹底的にいたぶって差し上げますよ」　ゲティンとアルマロスの力の差は歴然だったし、その後の展開は本当一方的だった・・・・　ゲティンはアルマロスの放つ魔法をただただ、マジックバリアで防いだり、避けたりしてる。防戦一方。　「はぁ・・・はぁ・・・・はぁ……」　「しぶといですね、ですが。次で終わりにして差し上げます」　アルマロスが魔法の詠唱に入った時だったよ。　何か矢のような物が猛スピードでアルマロスの方へと向かって・・・　魔法詠唱に集中していてそのどこからやってきたかわからない攻撃に気付いてないアルマロス。　そして、そんな彼女の元へ動いた人物がいた。　「アルマロス、危ないです！！」 　　ドン！！　急いでアルマロスの元に駆け寄ったゲティンがアルマロスを突き飛ばしたんだよ。　アルマロスが元いた場所に矢が勢いよくつきささった。　状況を理解し、困惑した表情を浮かべながら少し離れた場所に尻餅をつくアルマロス。　「ゲティン・・・何故私を助けたのですか」　「アルマロスはわたしの親友だから、ただそれだけです」　「そんな、私は・・・私はゲティンを本気で殺そうとしたのですよ？そんな私をまだ親友だと！？」　「当たり前です。どのような事があってもわたしは絶対にアルマロス。貴女の事を嫌いになんてなりません」　「ゲティン・・・・・」　「ふん、もう少しで邪魔なアルマロスを片付けられると思ったのだが・・・」　突然聞こえてきた男の声、皆でそっちに顔を向けるとそこには意外な人物が立っていたのだった。　第５５話　女の闘い！　その２．終わり　第５６話　本当の敵は　その１．へ続く

  2017年09月09日

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• 第５５話　女の闘い！　その１．

  「えぇ、私の想い人・・・いいえ、違います。私がその命を課してでも添い遂げたい、そう願うその相手とはゼウス様です」　「やはり・・・やはりそうでしたか」　何となくわかってはいたことなのだろう。ゲティンはそこまで驚く事もなく、アルマロスの言葉をすんなりと受け入れていた。　「ゼウス様のためであるならば、私はどのような汚いことでもやりましょう」　アルマロスが冗談を言っているようには見えなかった。至極真面目にそんなことを言ってきたよ。　「ゼウス様が望むのであれば、私は自ら喜んでこの命を散らしましょう！」　盲目、妄信。そんな言葉が似合うくらいにゼウスの事を思ってるんだね。　「そんなの・・・そんなの絶対に間違ってます！！アルマロス！？貴女はゼウスにいいように使われているだけです。目を覚ましてください！」　「たとえ本当にただ単に便利な道具として見られている。そうだとしても私は別に構いません。たとえ仮初だとしても、道具としてでもゼウス様からの寵愛を独り占めできるのであれば、私は喜んで鬼や修羅にもなりますし、茨の道を進みましょう」　恋は盲目って言うけどさ・・・これはその最たるって感じだよ。　「ゲティン、私には逆に貴女が信じられません。どうしてそこまでしてゼウス様の言う事を否定し邪魔をするのですか」　「それは、ゼウスが間違った行動をとっているからです。突然セラ達四大天使が天上界へ攻め入ろうとしているという嘘をつき、抹殺命令を出したり。魔族が天上界へと攻め入ろうとしている、という情報を流し、あまつさえそれを地上世界に戦火を持ってこうとしているのですよ？」　ゲティンの言葉にアルマロスはすんごい苛立ちを見せてるよ。　まぁ、そうだよねぇ。自分の想い人のことを悪く言われればそんな風になるとは思うけどさぁ。　「何を言っているのですかゲティン！！ゼウス様が嘘を仰られるはずがありません！！でたらめな事を言っているといくらゲティンといえど、容赦いたしませんよ！」　「嘘かどうかは己が目と耳で確かめてみるといいです」　「己が目と耳で・・・」　そう言いながら私の方を見てきたアルマロス。　「私は別にそんな、ゼウスを襲って倒そうとかそんなこと全く考えてなかったよ？」　私の言葉を半信半疑に聞いているアルマロス。　「本当だよ！？ゲティンが地上に来てさ、そんな理由をつけて私達を抹殺しにかかってくるって聞いた時は、本当寝耳に水だったしびっくりしたもん」　「ふ、ふふふ・・・ふふふふふふ・・・私は騙されませんよ。貴女がたがどのような嘘をつかれたとしても、絶対に騙されません！ゲティン、本当に残念です。貴女とはとてもよい親友だと思っていたのですが・・・それも今日、今この時点までのようですね」　「目を、目を覚ましなさいアルマロス！！」　「私はもとより正気ですよ。ゲティン、ゼウス様を侮辱した罪、その命で償って貰います！！」　アルマロスの言葉を聞き、それに大きくため息を１つついたゲティン。　でも、そのゲティンの瞳には何やら覚悟が見えるように思えるよ。　もしかして、これ以上話をしても無駄、そう感じ取って戦う覚悟を決めたのかな？　「いいです！アルマロス、わたしが貴女を正しい道に誘導してさしあげます」　「ゲ、ゲティン。落ちついて、落ちついて！！」　「大丈夫ですセラ。わたしはこれ以上ない程に今落ち着いてます。アルマロスとの決着はわたしがつけます、絶対に手を出さないで下さい」　美しい青色の長髪を紐で軽く結ってから、普段は絶対に見せない鋭く真面目な目を私のほうに向けてきたよ。 　今までずっと一緒に旅してきたけど、戦闘に参加することをほとんどしなかったゲティンが、今は凄くやる気満々だよ・・・　アルマロスのその力は未知数・・・一体どんな勝負が行われるんだろう・・　「いきますよアルマロス！！」　「ゼウス様の為に、死んでくださいゲティン！ショック・ウェイブ」　アルマロスが左手を前に突き出すと同時に、強い衝撃波がゲティン目掛けて襲い掛かってきた。　第５５話　女の闘い！　その１．終わり　　　　　　　　　　　　その２．へ続く

  2017年09月09日

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