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源氏の君は、優雅な香りを漂(ただよ)わせていました。それは、遠く離れた所からも源氏の君とわかる香りでした。
源氏の君の子息・薫の君も「薫中将」と呼ばれる通り、いつもほのかな香りを漂(ただよ)わせていました。 でも、二人の香りの中身は違います。 源氏の君の香りは、多くの唐櫃(からひつ)の中に収められている花や香木などの木々の香りが衣(ころも)に移った人工的なものでした。 今で言えば、香りの「移り香」のようなものです。 しかし、薫の君の「香り」は、身体(からだ)から発する「人香(ひとが)」と呼ばれる「芳香(ほうこう)」でした。 薫の君の身体から発する「芳香」は、「百歩離れた場所からもわかるようだ」と「匂宮(におうのみや)」の巻に記されています。 下の原文の写真1行15字目から2行9字目まで。 「まことに、百ぶ(歩)のほか(外)も、かほ(香)里(り)ぬべき心ちしける」 原文の現代語訳は次の通りです。 「薫の君の人香(ひとが)の芳香(ほうこう)は、ほんとうに百歩離れた所まで香るように感じられる」 薫の君の身体から発する芳香(ほうこう)は、薫の君がどこにいてもわかるほどなので、あえて草花のような「香物」を使用してはいません。 つまり、薫の君にとって、香水などは不要ということです。下の原文の写真4行6字目から6行末尾までにおいて、そのことが記されております。 「ひと(人)にまさらんとつくろひ用意すべかめるを、 かくかたはなるまでうち忍び立(たち)よ(寄)らんも、 物のくま(隈)も志(し)るき ほのめきかくれあるましきに」 原文の現代語訳は次の通りです。 「薫の君は、人香(ひとが)の芳香を漂わせているので、 忍んで歩いてもどこにも隠れようがない。 そのことをわずらわしいと思っているから、 あえて香(こう)をたきしめることもない」 備考:唐櫃(からひつ)は、衣(ころも)入れる大きな衣装箱です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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