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2004年12月11日
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カテゴリ:小説『Atomic City』
    
            第1章

            第8節



カイβ.は リオナの背中にある携帯酸素ボンベに手を回し緊急上昇ボタン
を押した。
”ボン!”という鈍い音がしていきなり二人の体は 大きく膨らんだ浮き輪
の浮力で 水面に持ち上げられたのである。

海面は 吹きあがる気泡が一面に立ちこめていた。
『抜け出せた!』そうカイ.βが思った瞬間 頭上から一本の黒い手袋を
した手が差し出された。
「カイ君つかまりたまえ。戻るぞ!」
言われるがままにカイ.βは 手をつかんだ。ゴムの引き締まる感覚が伝わ
ってくる。
カイ.βは リオナをしっかり抱きかかえると同時に 水上バイクの爆音が
轟き二人の体は 水面を加速していく。

助かった。。。心のなかが安堵の気持ちでいっぱいになって行くのを
カイ.βは 感じていた。

水上船に近付くと皆が心配そうな表情で待っているのが見え水上バイクに
乗っているのが教授だということも分かった。 
水上船の後部から二人は 引き上げられ カイ.βがリオナの装備や水中
眼鏡を外す。

パルとコウタは もう船に戻っていてリオナの意識がないことに気付き
駆け寄ってきた。
「リオナ!リオナ!起きて!」パルが叫ぶ。
「パル落ち着けよ!大丈夫さ。」コウタがなだめる。 
リスティーもヘッドフォンを付けたままリオナを覗き込んでいた。

「みんなどいてくれ!」
そのとき教授が携帯医療機を持ってきて電源をON 機械がリオナの体
をスキャンはじめる。

”外傷ナシ
 臓器異常ナシ
 血圧128~76
 現在睡眠状態”

オノ教授が言った「起こしてほしいんだができるかな?」
携帯医療機の女性のボイスが答える「可能です。」
教授が言う「では頼む。」
医療機械から2本のアームがリオナの頭部左右に伸び 先端がこめかみに
当たる。
次の瞬間 リオナが眼をゆっくりと開いた。
みんなから歓声が上がりパルがリオナに抱きつく。。
カイ.βの目からは 涙が零れ出た。
この人を救えた喜びと 失わなくてすんだ喜び。
”守りたい”そう思わせる何かがリオナきっとあるのだろう。

教授が笑いながら言った。
「わたしの授業で落第者は 絶対に出させないぞ!今日の授業は ここまで!」

皆 大笑いしていたがリオナは カイ.βの手を握りしめ まばたきもせず
にカイ.βを見つめていた。
うっすら涙をにじませながら。。




小説『Atomic City』より

著作権は Kaizuに属します。




作者より

第7節をアップ後 新潟で大地震が発生した関係で小説のアップを控えました。
CD『Atomic City』は 小説連載完了後 シンクロしてアルバム発表となります。


           






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最終更新日  2004年12月11日 19時23分49秒
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