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カテゴリ:美の巨人たち
宮城県美術館にてゴッホ展が開催されていた時、ゴッホが使用していた画材も一緒に展示されていました。そのなかに絵の具もあったわけですが、それは今回登場するタンギー爺さんが販売していたものだそうです。
今回の「タンギー爺さん」という絵には、6枚の浮世絵が描きこまれています。 右上:歌川広重「五十三次名所図会 石薬師」 中上:歌川広重「富士三十六景 さがみ川」 左上:不詳 左中:歌川国貞「三世岩井粂(くめ)三郎の三浦屋の高尾」 左下:作者不詳「東京名所 以里屋(入谷)」 右下:『パリ イリュスト』誌 日本特集号 表紙 この中で、左上にある雪景色の浮世絵は、どこかで見たことがある感じがします。非常に印象深い絵であるのですが・・・。 この6枚の中で特に注目したいのが、右下の雑誌の表紙です。正確には表紙の一部を拝借したわけです。この雑誌は、ゴッホがパリに来た年に発行されたものだそうで、ゴッホがこの雑誌を手にした時、かなりの衝撃を受けたようです。 そのゴッホが浮世絵に関してこのように語っています。 日本美術を研究すると、明らかに賢く哲学的で知的な人物に出会う。 その人は、ただ1本の草の芽を研究しているのだ。 しかし、その芽がやがてあらゆる植物を移ろう四季を、そして人物を描かせるようになる。 こんな素朴な日本人が教えてくれるものこそ真の宗教ではないだろうか。 私も本物の浮世絵を目の当たりにしたのですが、浮世絵の美しさと技巧の巧みさは見事の一言に尽きます。ゴッホのみならず、あらゆる世界の画家が浮世絵から影響を受けたのも頷くことができましょう。 さて、肝心のタンギー爺さんについてですが、貧しい画家たちに絵の具を貸しただけでなく作品を店に展示したりしたそうです。時には食べ物や寝る場所も提供したことも・・・。 そんなタンギー爺さんは、逮捕されて投獄されたことがあります。1870年に勃発した普仏戦争の際にフランスは惨敗したわけですが、この時に徹底抗戦を主張するパリ市民が独自に自治政府パリ・コミューンを結成します。しかし、すぐにフランス政府軍によって制圧されてしまいます。実はこの時にタンギー爺さんも参加しており、制圧時に逮捕されてしまいます。 このような経験をしたからでしょうか。タンギー爺さんは社会的弱者を排除する世の中が許せなかったために、貧しい画家たちに様々な援助をしたのです。 いわば、画家たちにとって最大の理解者であり庇護者であったわけです。 ゴッホはアルルに移住したのですが、その生活は思うようにいかず、耳を切りつけてしまいます。しかし、その後復活しようとしました。その時に描かれたのが「包帯をした自画像」。そこには、まっさらな白いキャンバスと浮世絵が描かれていました。ゴッホ自身の「初心に帰って新たな気持ちで頑張りたい!」・・・そういう気持ちの表れがこの一枚に描かれています。 しかし、残念なことにゴッホは拳銃により自殺してしまいます。「タンギー爺さん」を描いた3年後のことです。 ゴッホの葬式の際、タンギー爺さんは弔問にやってきました。 タンギー爺さんは、純粋で孤独な画家を最後まで見届けたのです・・・。 テレビ東京系列:2016年1月9日放送 BSJAPAN:2016年2月3日放送 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.02.07 19:10:23
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