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ラッコの映画生活

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2008.05.09
XML
TROIS COULEURS: BLEU
Krzysztof Kieslowski
95min
(所有VHS)

bleu07.jpg

以下は昨日のページからの続きです。『青の愛』その1から先にお読み下さい。

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ある深夜ジュリーが寝ていると、リュシールが職場のストリップ劇場から電話をかけてきた。どうしてもジュリーに会いたいから今すぐ来て欲しいと彼女は言う。最初は断るジュリーだけれど、「一生のお願い」だからと言われて、ジュリーはパリの歓楽街ピガールにある、本番ショーをやるいかがわしいストリップ劇場に出かけていく。楽屋に行くとリュシールの目は涙を流した後だった。リュシールがステージで股間を開いて演じる目の前最前列に彼女の父親がいた。出張か何かの用事でパリに出てきたのだろう。父親は疲れた様子だったけれど、女の股間だけは食い入るようにしっかりと見ていた。彼女にとってはそんな父親を見るのが辛かったのだろう。でもここでは誰も彼女の悲しみを理解してくれない。誰かに気持ちを聞いて欲しくてジュリーを呼んだのだという。何もしていないというジュリーに、彼女は「あなたは私の命の恩人だわ」と、来てくれたことを感謝した。

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全編が「青」で統一されたこの映画、このピガールのシーンだけが「赤」に染まる。それは第3編『赤の愛』を連想させるものであり、『赤の愛』のテーマである「友愛」の象徴でもある。『赤』の中で老判事はヴァランティーヌに言う。屈折して悩める弟に対して「ただ存在する(君がいる)だけで良い」と。人と人の係わりとはそんなものだ。何をするでもない、ただ存在するだけで意味があるのだ、と。他者との心的係わりを持てば、夫や娘が死んだときのように、苦しみを持たなければならない。だからそういうことから「自由」になって、関係を持たずにしようとジュリーはしていた。しかし人はやはり一人では生きられなかった。リュシールの願いを入れてこうしてピガールにやってきたこと、それだけでジュリーはリュシールの人生と深く係わりを持ったのだ。

bleu10.jpg

そしてそれはまえがきに引用した運命の形成に繋がる可能性の選択でもあった。偶然にも楽屋のテレビは、オリヴィエがパトリスの未完の「祝祭コンチェルト」を補筆完成するという特集番組をやっていた。そこではパトリスの生前の写真も紹介され、その1枚は愛人らしき若い女性と一緒の写真だった。テレビを見ない彼女は、もしここに来ていなければこの番組を見ることもなかっただろうから、彼女の知らなかったこの愛人の存在を知ることもなかったわけだ。少し上に「偶然にも」と書いたが、キェシロフスキが言いたかったのは、それは偶然ではなく必然だということだ。ジュリーがリュシールの立ち退きに賛成の署名をしなかったことは、理由が何であれ正しい選択だった。それでリュシールはジュリーに親しみを感じた。だから取り乱したジュリーをバスから見かけたとき、追ってきてジュリーを慰め、助けた。これはリュシールの正しい選択であった。この件があったからこそリュシールも深夜にジュリーを呼び出すことが出来たのだろうし、ジュリーもやってくることになる。やってきたのはジュリーの正しい選択だ。その結果として生前のパトリスの愛人の存在そ知り、映画のラストへ向けてのジュリーの行動、それも恐らく正しい選択で、こうしてジュリーの運命が必然として作られていく。

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最初に書いたようにここから先、ラストへ向けての映画の作りはどうも苦手なので、ネタバレになることでもあり書かないことにする。ずっと飛んで、三部作最後の『赤』のラスト。ネタバレになるかも知れないが、この『青』の物語の後、ドーバー海峡の事故で生存者のほとんどいないフェリーに乗っていたジュリーとオリヴィエは救助される。キェシロフスキの『神曲』三部作「天国」「煉獄」「地獄」の脚本の遺稿をもとに、ダニス・タノヴィッチ監督は「地獄」を映画化した(日本語タイトルは『美しき運命の傷痕』)。どれだけの遺稿が残っていたかはわからないし、タノヴィッチの映画自体をボクは駄作だと思うのだけれど、それでもこの映画と他のわずかな資料から想像するのは、レビューにも書いたように、キェシロフスキが描きたかった地獄とは「愛の不在地獄」だ。愛の可能性のある人々が絶望して死んでいく。一方この『青』では最後に、パトリスが祝祭コンチェルトに入れることにしていた聖パウロの『コリント人への手紙』の「愛の賛歌」が合唱がで延々と歌われる。『美しき運命の傷痕』が「愛の可能性のある人々が死んでいくという地獄」であるならば、ドーバー海峡の方舟は「愛の可能性のある人々」としてこのオリヴィエとジュリーを救ったということだ。

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Last updated  2008.05.16 03:22:49
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