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ラッコの映画生活

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2008.05.11
XML
TROIS COULEURS: ROUGE
Krzysztof Kieslowski
96min
(所有VHS)

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この『赤』とは無関係そうな、脈絡のないようなことから書き始めさせていただきます。『赤』ではなく『青』に主演したジュリエット・ビノシュ。この人の両親は彼女が幼い頃に離婚しているのですが、お父さんはジャン=マリー・ビノシュで、お母さんがモニック・スタランス。実はこのお母さんはポーランド生まれで、その両親はフランス(あるいはベルギー)からポーランドに移住したらしい企業家の父と、女優か何かをしていたらしいポーランド人女性。つまりは単純に考えてもジュリエットの血の1/4はキェシロフスキと同じポーランドです。実際には彼女にはフランス、フラマン(ベルギーの一部)、ブラジル、モロッコの血が混ざっているらしい。ところでその母方の祖父母なんですが、ポーランドがナチドイツに侵攻され、1939年にフランスへ向けて逃げようとした。しかしその途中、カトリックで知識階層だというのが理由ということなんですが、逮捕されウッチの強制収容所に半年ぐらい拘束される。ビノシュがパリで生まれたということは、子供だった母親がパリに逃れられたということだから、家族はフランスに行けたのでしょう。ちなみにジュリエットの姉はマリオン・スタランスで、この『赤』で獣医役で出ています。またちなみにカラックスの『ポンヌフの恋人』では主演ジュリエット・ビノシュの姉役でちょっと出ています。そしてジュリエットの役名もこの『ポンヌフ』ではミッシェル・スタランスでした。

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ウッチと言えば、戦争で破壊された首都ワルシャワに代わり、戦後ポーランドの首都にするという案もあった都市で、国立(共産国だから当然だが)の映画学校はこのウッチにあり、キェシロフスキはそこで映画を学んだ。そのウッチにジュリエット・ビノシュの母や祖父母が拘束されていたこと、あるいはもともとビノシュがポーランド系であること、そういうことをどれだけ知っていたのでしょうね、『ふたりのベロニカ』以前に。とにかくキェシロフスキは1991年にフランスで『ふたりのベロニカ』を撮るわけですが、主演はジュリエット・ビノシュを想定していたらしい。でもそれは実現しなかった。『ふたりのベロニカ』でフランスのベロニカ(ヴェロニック)の恋人役のアレクサンドルは、童話作家で、自ら人形も作るマリオネット(人形劇)つかいだけれど、ジュリエット・ビノシュの父親ジャン=マリー・ビノシュも似たような仕事をしていたらしい。だからやっぱりジュリエットを想定していたのでしょう。

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そのジュリエットの出演が実現しなかったので、キェシロフスキは代役を探すのだけれど、ルイ・マルの『さよなら子供たち』にちょい役で出ていたイレーヌ・ジャコブに目をつけた。そうしたらこのイレーヌ・ジャコブが思った以上に好演で、映画も成功する。(私見ではジャコブでなくビノシュのベロニカは想像もつかない)。そしてキェシロフスキはジャコブに惚れた。まあそれは親の娘に対する感情と、男の女に対する感情の混ざったものだったろう。その二人(自分とジャコブ)をキェシロフスキは描きたかった。そして実現したのがこの『赤』で、トランティニャンの演じる退官老判事はキェシロフスキの分身であり、映画のヴァランティーヌはイレーヌ・ジャコブそのものだ。もちろん『ベロニカ』で果たせなかったジュリエット・ビノシュとも仕事がしたかったから『青』が必要となり、途中に『白』を挟んで三部作にした。そして本来は女優がメインな仕事ではないマリオン・スタランスも出演させたかったのでしょう。

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そういう映画の構想過程(だとボクは想像する)ので、当然内容は『ベロニカ』の続き的になるし、単に『赤』の最後のフェリー事故で救出された3カップル6名の男女のシーンがこの三部作のスタート地点だというだけではなく、『赤』そのものが三部作のスタート地点であるわけです。では『ベロニカ』のテーマは何だったか。それは人が正しい選択をして、あるべき運命を獲得していくという、この三部作と共通するものだし、またその選択には他者(ヴェロニックにとってのウェロニカ)の知恵の啓示を受けるというもの。キェシロフスキの父親は結核で、たぶんキェシロフスキが15~16才の頃に死んでいるのだけれど、親子のことについて言っている。子供がある程度人生経験を積んで物事が解る年齢になったとき、親は既に老齢で、若き日のような生きる活力を失い始めている。だから望まれるような対話は成立しない。子供が若すぎるか、親が年老い過ぎてしまっている。つまり40才の親と40才の子供の対話は不可能だということだ。そのような不可能な対話をある意味で可能に描いたのが、老判事と若いヴァランティーヌの対話であり、老判事の若い頃の分身として法学生のオーギュストという人物を登場させる。

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フランスのヴェロニックは、ちょっと人生を先に進んで死んでしまったポーランドの分身ウェロニカの知恵の啓示を受けて、正しい人生を歩んでいく。老判事は選択を過ったために人生を失敗し、人間不信の孤独な余生を歩むことになったのだが、オーギュストという35才ぐらい若い分身に身を託して人生をやり直すのだ。老判事はヴァランティーヌが40才だか50才だかで幸せな人生を送っているという夢を見たと話す。具体的には朝目覚めたヴァランティーヌの隣にいる誰とはわからない伴侶とはオーギュストであるのだろうが、実はそれは判事自身でもあり、50才のヴァランティーヌとは判事の妻なのだ。しかし最後の方の劇場のシーンで語られるように、判事は恋人に裏切られて人間不信になった。それはヴァランティーヌ(のような女性)に出会わなかったからだ。でも同じ境遇のオーギュストにはフェリー事故でのヴァランティーヌとの出会いが用意されている。ヴァランティーヌ(のような女性)に出会えたか、出会えなかったか、人生とはそんなものなのである。

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キェシロフスキの分身たる男性主人公の老判事(ジャン=ルイ・トランティニャン)の名はジョゼフ。日本語ではヨゼフないしヨセフであり、聖書的には旧約のヤコブの子のヨセフか、新約では聖母マリアの夫でありイエスの養父のナザレのヨセフだ。飲食店やレストランの名にフランス語ではよく「Chez ○○」というのがある。「○○家」といった意味だ。それを文字って、ヴァランティーヌの部屋の下にあるカフェ、ヴァランティーヌが毎朝スロットマシーンでその日の運を占いに行き、オーギュスト(ジャン=ピエール・ロリ)がマールボロをカートンで買いに行くカフェ、その名は「Cher Joseph」となっている。「Cher」は「親愛なる」ぐらいの意味だ。ナザレのヨセフは、婚約者のマリアが自分のでない子供を妊娠したにもかかわらず、天使の受胎告知を信じてマリアを妻にし、イエスを育てた。いわば他者のために自分を犠牲にした人物だとも言える。ここでの判事ジョゼフも、分身ではあっても自分でないオーギュストとヴァランティーヌを結び付ける役を担っている。

そろそろネタバレになりそうなのだけれど、字数も1ページの限界に近付いてきたので、以下は次の日記にで続けます。『赤の愛』その2 へ。

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Last updated  2008.05.20 01:15:08
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