カテゴリ:本
オノナツメのイラストが目を引く一冊。
色々な賞にノミネートもされていた一冊でもある。 天下統一を目指す豊臣秀吉の軍勢が唯一、落とせない城があった。 武州・忍城。 北条氏に協力体制を見せつつも、秀吉軍へ転ぶ密約を交わしていた城主・成田氏長は小田原へ。 留守を預かる父・泰季が病死後、城主代理となった成田長親(城主の従兄弟に当る)。 彼は領民から「のぼう様」("でくのぼう"から)と呼ばれるほど、 なにも出来ない鈍臭さのある体の大きな男。 だが、彼が城主の命に背いて開戦した時に、家臣・領民が選択した道は、 彼を助けるため戦う事だった― 一方、忍城担当となったのは、秀吉に心酔する石田治部少輔三成。 密約があることを知らない彼は、他の簡単に落ちる敵方に落胆し、 忍城の者たちへの挑発の策をたて、望みどおり戦うことになる。 大軍対わずかな軍の戦いの行方は― 成田軍の登場人物が魅力的というか、分かりやすくキャラ立ちしている。 長親の静かな存在が気になる。 ~ネタバレメモ~ 何にも出来ない長親だが、人をひきつける魅力があり、 曲者ぞろいの家臣や、何も出来ない「のぼう様」だからこそ力を貸さねばと思う領民たちが 彼を支える。(足手まといになるので、長親は戦いに参加せず) 忍城側の軍、それぞれが勝利するも、三成の水攻めに合う。 そこへ、舟の上で田楽を踊る長親が現れ、彼が三成の命じる鉄砲に撃たれたため、 三成側に協力していた農民達が水攻めのための堤防を決壊させる。 そこで、正式に成田氏長が豊臣側に下った知らせがあり、忍城は開城(豊臣側に城を明渡す)ことに。 正木丹波守利英:成田家一の家老。槍の使い手。長親と同じく40代。 ダメダメな長親の面倒を良く見る一方、彼に将器を感じている。 使者として忍城を訪れ、態度の大きさやふるまいから、開戦にさせた張本人・ 長束大蔵大輔正家の軍と対戦し、勝利。 酒巻靭負 :家老になって一年足らずの22歳。自らを天才と鼓舞するが、軍の経験は無かった。 三成の軍と年老いた兵で対戦するも、軍略により勝利。 柴崎和泉守 :成田家家老。一の家老である丹波をライバル視する豪傑。 三成同様、秀吉に目をかけられている大谷刑部少輔吉継の軍と対戦し、勝利。 彼らのその後が、長親を除いてほとんど残っていないという。 歴史に埋もれる戦いかもしれないが、三成の初戦を敗戦に追い込んだと言う一点において、 また、北条家の戦いで勝利したたった一つの城として名が残り、 こうして小説となって(歴史家だけではないところで)日の目を見たのは幸いかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 13, 2008 12:35:56 AM
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