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経堂界隈

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July 3, 2012
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カテゴリ:6年3組
週末、小学校同級生甲斐さん主催の朗読会へ出かけた。
「怪談」と聞いていて、愉しみに。

***

「どうだった?」
うん それがねぇ...存外怖くなかった...
感性が退化しつつあるのかなぁ


1.「幽霊見参記・僕はハッキリと感じた」 遠藤周作

友人の三浦朱門とふたり、熱海で役者の家だったという旅館に泊まった遠藤。
案内された離れの寝室で、深更「私はここでくびをつりました」という声に三度目覚め、三浦を呼ばわると「お前もか!」
土地が変われば、幽霊はついてくるまいと、翌日、伊豆熱川へ転じ、泊まった旅館で通された離れが、前日の熱海と寸分違わず
「幽霊は僕らについて来た」

「そりゃぁ怖くないわ」
どうして?

「あなた遠藤周作読まないじゃない」
そうね...ほとんど読んだ記憶がない

「遠藤周作は、幽霊なんか信じてない。
頭で考えて作った怪談だから怖くない。
翌日、三浦朱門と一緒に泊まった宿が、前の日と同じだったなんて...
あの連中を多少読んだことあれば
怪談はシャレで書いた作品だよ」

そうなの?

「遠藤ってクリスチャンでしょ
クリスチャンは、日本の幽霊信じない」

なーにそれ?遠藤周作って中国系アメリカ人だったの?

「???.... ばかもの、クリスチャンはキリスト者だ! 」

「遠藤を読んでない人が、ぽっと、いきなりこの怪談だけ聞いても怖く感じないっていうところもあるかな。
特に怪談なんかがそうだと思うけれど、状況設定とか、説明に、文章を割かなきゃならない作品の朗読は、聞く人が作者の文体にある程度慣れていないと、そっちの理解に頭がいってしまって、作品に集中しない」
ふーん

僕は、昔の旅館とか、離れとかの感覚を、もう僕らの世代が共有していないからかなぁって思ったんだけど。
あとねぇ
やっぱり時代を共有してないってわかるのは、
途中に夜汽車の音が聞こえた ってところがったんだな

「夜汽車ももうない」

そうじゃなくて、
あれはたぶん朝の寝台特急じゃぁないだろうなぁ。12時東京発の大垣行きだから、熱海は2時ぐらいかなぁ
とか思って。

「そんなこと考えるから、お話に集中できない」

「現代の現実のほうが怖いね」

毎日朝の電車で「〇〇駅で人身事故があり、電車が遅れております」って聞かされる。
一年に3万人も自殺者がいるのに、減らそうっていう努力を聞かない。
一日 100人


2.「お願い」 ロアルド・ダール 田村隆一

アーケードにできた新しい歩道のモザイク。赤いところは火、黒のところは蛇がうごめく 広がる少年のイメージ。踏んではいけない場所を避けてあるくが、つまずきそうになって、遠回り。

これはねぇ すごくよくわかった。だから怖くなかった っていうか、怖い話ではないな。
007とかチキチキバンバンの脚本家で、宮崎駿もファンで...
僕が接したそっち方面の文化にきわめて近い
傲岸不遜にいえば、感覚がほとんど共有できる。

僕は小さいころ病気がちだった。
重い病気も多かったみたいだ。
一日中寝室で寝てる。本読んじゃいけないって言われて、しょうがないから天井の木目を追いかける。一日中。
いろんな模様があってね。
剣、拳銃、帽子、川の流れ、灰皿、明るいところ、暗いところ...
暗くて、木目でストーリーが作れないところへ行ってはいけない。そこに行くと次の眠りにはいり、僕はそのまま死んでしまう。


3.「雪女」 小泉八雲 上田和夫

これも怖くなかったなぁ。
昔聞いたときは、もう少し怖かったような記憶があるんだが...
雪女は、すべてを覆いつくす雪。仲間を、家族を奪っていく、白く美しい雪のシンボルだ。
冬でも暖かい現代からは、雪の寒さ、厳しさへのイマジネーションを僕らから奪ってしまっている。ラフカディオ・ハーンは、アイルランド系だから、日本の怪談の怖さを理解してると思うんだ。

「でも、翻訳だからねぇ」
えっ そうなの
「知らなかったの?」
本人が日本語で書いたんだと、今の今まで思ってた。

「しかも、この翻訳、あなたが聞いたり読んだりしたものではないかもしれないわ。上田さんはもっと新しい年代の人だもの」
はぁ

「読み手の問題ってのもあるかもよ」
聴かしてもらって、そうはいえない
それどころか、この作品を読んだ方には、数年にわたり何回か聴かせていただいていて、毎回人並み以上の力量を感じる
でもねぇ、皆さん最初のころより落ち着いてしまい、あのころの「あやういバランスの迫力」を感じない。

「そうね。
少なくともお上手とか、下手ってことではないの。
岸田今日子さんて朗読お上手って言われてたでしょ」

そういうおぼろげな記憶はある。

「私はだめだったの。
朗読は、自分が表に出てくる人は読み手には合ってないような気がするの。
枯れたかんじっていうのかな。
竹下恵子さんは聞けるけれど、大竹しのぶだと、自分が前に出てきてしまう。
岸田さんとか大竹しのぶは自分が前に出るタイプの女優さんなのね。
NHKのアナウンサーだった加賀美さんは、文章を読むのはとてもお上手。
だけれど、しょせんアマチュア。
女優さんたちとは逆に、文章をいきいきと再生したのを聞いたことがない。
もっと豊かなはずの彼女の感情が、いつも始まってすぐ、抑制に占領されて、死んでしまう。
それを乗り越えようと、おつくりになるのだけれど、それもお上手なだけに、とてもお気の毒」

???

「男の人で、朗読にあってる人は少ないわぁ。
歳とってからの森繁久弥なんかいいわねぇ。
宇野重吉は私はだめ。演技は作れたけれど、肩に力がはいってしまった声は、最後までコントロールできなかった。
奈良岡朋子さんは、とっても朗読にあってるって感じるわ」

「電話の仕事をずっとしてきたでしょ。お客さまの声だけが頼り。
電話でご自分の言いたいことをきちんと言える方は少ないの。
いろいろな人の話しぶりを聞いていて、ご自分が表に出ているときには、男の方は十分に表現できない方が多くて、女の人は本当のことを言わない。
朗読もね、聴いていると、わかるところがあるの」

ふーん
じゃあ僕がウソついてるなんてのは、すぐわかっちゃうんだ。


<intermission>


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Last updated  July 4, 2012 08:53:14 PM
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