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テーマ:ニュース(99793)
カテゴリ:メディア人の憂鬱
最近「耐震データ偽造問題」が世間で話題になっています。
僕は大学の建築学科で学びました。ゼミではコンクリートを研究。「炭素繊維コンクリート」という、大学当時に流行っていた「カーテンウォールの梁に強度を持たせるための新しいコンクリート」をある企業の支援を受けて研究していました。 ちなみにカーテンウォールってのは、全面がガラス張りのビルの外壁部分のこと。外面がガラスですから、建物の周りに構造躯体(こうぞうくたい)を持たないつくりのことです。「構造躯体」っては、柱や梁、壁、床、基礎など、建物の強度を担う部分のことを指します。 今回の耐震データ偽造は、この構造躯体の部分(特に柱)を「安く、しかも弱く作った」わけです。 構造設計によって決まった部材が、重力や地震力などの荷重に対して安全かどうかを計算・確認する作業を構造計算といい、それをまとめたものが今回話題の「構造計算書」。 大学でも構造計算の授業がありましたが、これがかなりの難関。毎週のレポートに相当苦労したことを思い出します。一応、大学で構造の勉強をした僕でさえも、実際の現場で使われている構造計算書を見ても「全然」ってくらいに解からないと思われます。一級建築士の中で「構造屋」と呼ばれる構造計算に関わる建築士が1%程度しかいないという現状は、その「難しさ・複雑さ」にあるわけです。 僕は建築屋になりそこなったテレビ屋ですが、建築学科だっただけに大手ゼネコンに友人を沢山持っています。もう10年以上前のことですが、ある友人が飲み屋で語ったエピソードをひとつ。 「今手がけているのが50億ぐらいの○○なんだけど、現場で1億浮かせないといけないんだよ。(焼酎をグビグビ)そのために設計の部品を、ビスとかタイルとか、細かくランクを下げるわけ。だって1億だよkiromeru!大変なんだから!(グビグビ)」 それは確かに大変だけど、別の意味で大変なことだよ! 彼は鉄筋を減らしたわけではないと信じているが、無駄にも思える大量の鉄筋に手をつける行為は、最も安易な資材費の節約であることは明確。 とにかく問題なのは「設計上の耐震データ以上に強度が低下してしまっている建物が存在する可能性」である。審査を通過する設計であっても、現場での「偽造」の可能性があるわけです。姉歯氏、木村建設、総研などが関わった建物は、氷山の一角であるかもしれないわけです。 信頼されるべき設計に偽造データがあり、それに追い討ちをかけるように資材節約を現場が行なっていたら・・・まさしく悪夢。耐久性が建築基準の30%を下回るビルは、恐らくそうした状況が生んだものだと推測されます。 関東大震災、阪神大震災という大地震が起きるたびに、その反省を取り入れ建築基準法が改正されています。災害に対して建物の中にいる人間を守るために、建築物の安全性は近年大幅に向上しているはずなのに。 何度か日記に書いた台風による実家の床上浸水。 浸水で傷んだ壁をはがし、畳を廃棄し床下を乾かすために床板をはがした。 こんなことが無ければ見ることもなかった、自宅の基礎や壁の裏側。やはりありました、明らかなる手抜き工事。構造的には問題ないとはいえ、ツギハギの角材を発見。土台を支える柱の隙間。 これらが浸水によるものもあるとは思われるが、質の悪い木材を使っている部分などは、言い訳のきかない手抜き工事。 こんな身近に存在する資材節約行為が、その他の建築物で無いといえるはずもない。 資材費の節約。友人が手がけた物件で浮いた1億円。 それは会社の利益となり、また今回の事件の総研・内河健社長のような存在の「懐」に収まっているのかもしれません。 お金を様々な組織の間で回すことで経済を豊かにしてきた日本の縦割りシステム。その根底にはビジネスライクを受け入れられない日本的人間関係のいびつさを含む。それは政治と絡み合い、不況という外圧によって露出してきている。 元々建築業界の体質は古い。業界の中で、今回の偽造問題が「みせしめ」にしか過ぎないとするならば、問題はもっと根深い。 経済システム「日本株式会社」は、このままでは沈没しかないのか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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