テーマ:おすすめ映画(4026)
カテゴリ:カテゴリ未分類
2004年、日本、横山秀夫原作、佐々部清監督、寺尾聡。
************* 元捜査一課の警部で現在は警察学校の教職に就く梶聡一郎(寺尾聡)が、妻・啓子を殺害したと自首してきた。 夫妻は7年前に白血病で息子をうしっているのだが、アルツハイマー病に苦しむ妻から「息子を覚えているうちに死にたい。殺して!」と半狂乱で嘆願され、止むに止まれずに首を絞めたという。 だが謎が残った。梶が出頭したのは事件の3日後だった。 空白の2日間に何があったのか? 梶は頑なに黙秘、そして否認を続ける・・・・・。 ************** 2002年のミステリー・ランキングを総なめにし直木賞の候補にもあがった、横山秀夫氏の傑作小説を映画化したもので、俳優陣は豪華です。 俳優陣が豪華なのには理由があります。 刑事、検事、新聞記者、弁護士、裁判官たちが、各々の立場から梶の行為の謎を自問自答し、解答を見出そうとするわけですが、立場が違えば、与えられる情報の質や内容もいろいろで、解釈も異なり、彼ら独自の苦悩を深いものとして表現する演技力が必要とされたからです。 梶が関係者たちに投げかけた最大の謎は「高潔な人格の梶が、なぜ、自殺を思いとどまったのか?」ですが、裏を返せば「子供も妻も失った梶は、何のために生きているのか?」ということになります。 この謎を解くために、皆、自分自身の内面に向かって問いかけることになります。 「自分は、何のために生きているのか?」と。 しかし、皆、「自分のため」という、ある意味消極的な答えしか思い浮かんできません。 「自分のため」という答えが”悪い”と言いたいのではありません。 ただ、単に「自分のため」という理由のみでは、自殺を思いとどまって敢えて生き恥をさらしている梶の行動が説明できないのです。なぜなら、梶という人物は、エゴイズムとは最も縁遠い人間なのですから。 生きることには確かに価値があります。 しかし、すべてを失って、生きることが無意味となった、否、それどころか(妻を殺害したのに、自分は自殺を思いとどまって)生きのびていること自体、恥辱に他ならない・・・・・あの高潔な梶が、なぜこの屈辱に耐えているのか? 登場人部も観客も、終始この謎に惑わされることになります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|