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カテゴリ:経済問題
アベノミクスは人為的なバブル経済政策ではないのか?
黒田日銀総裁が、2年間でこれまでの約2倍の290兆円規模の金融緩和(「異次元の金融政策」)を発表した途端、東証では株価が続伸し、円安が起きているというニュースは、周知のとおりだ。 だがこの政策は、要するに、日銀が民間金融機関に大量にカネを渡して「運用してくれ」と言っていることと同じだから、適当な設備投資への融資に向かわなければ、株などの証券資産に向かわざるを得ず、実際そうなっている結果、株価が上昇しているということではないかと思われる。 つまり、円を使って株でギャンブルをやってくれと、日銀が金融機関に依頼しているようなものではないだろうか。 もしもそうだとしたら、これは企業の実態や景気の実態が良くなっての株価上昇ではないわけで、人為的に作り出されたバブル経済に過ぎない。 なお、理屈上は、他の資産(例えば、土地や金などの動産不動産)での運用も考えられるが、今のところそれらの価格は落ち着いているようだ。 ただ、20数年前のバブル経済と同じで、バブル経済であったとしても資産価格が上昇することによる利得効果が発生することは事実だから、それらのキャピタルゲインが一定の消費支出増加に向かうことはあり得ることだ。 実際、上記のニュースは富裕層で高級品への支出が伸びていると伝えている。 結局、日銀がやっているこの金融緩和は、一方で円安をもたらして輸出企業の増益を実現しながら、他方で資産バブルをもたらしてキャピタルゲイン効果によって消費支出を増やそうという(いつか来た道の)「経済政策」だということになるだろう。 俺個人は、経済学者の端くれとして、このようなバブル経済は、何かをきっかけにした国債価格の下落、金利の上昇、ハイパーインフレーション(通貨価値の暴落)によって一挙に崩壊し、スタグフレーション的な状況、ないしは、一種の恐慌的状況が出現するのではないかという危惧を抱いている。 しかも、GDPの2倍にも相当する借金残高を持つ日本の財政状況では、その可能性は十分にある。 従って、日銀が行なっている行為は、まさにギャンブルであり、ハイリスクの賭博なのではないか。 そう指摘しているエコノミストも少なくない。 だが、90年までのバブルの時と同様に、目先の利益に惑わされるのが人や世の常であるから、アベノミクスだの日銀の異次元金融政策だのも、評価される声が無くなることはないだろう(それが失敗だと分かるまで)。 いずれにせよ、この実践は経済学の中で長い間論争されてきた問題に決着を付ける良い材料であることは間違いない。 これが失敗だと分かった時には、取り返しのつかないことになってるかも知れないが。 <追記> 日銀が2年間でばら撒くとした上記の290兆円もの資金だが、無条件でそんな大金を金融機関に渡すぐらいなら、直接各家庭から資産を買い取ったほうが早いだろう。 例えば、2010年現在の日本の総世帯数は統計では5,184万戸だというから、単純に計算すると各世帯に2年間合計で560万円ずつの支給となる! この中には単身世帯もあれば、扶養家族世帯、親との同居世帯もあるだろうから、実態に合わせて、例えば子供や老人がいる世帯(約3,621万戸)には、2年間で700万円(1年間350万円ずつ)、残りの単身世帯(約1,564万戸)には、2年間で200万円(1年間100万円ずつ)、日銀が各世帯から等価値の資産を買い取ってお金を支給するとしたほうが手っ取り早いのではないか(それでも290兆円にはならないし)。 これは、各家庭に約10万円から30万円ボーナスが2年間毎月支給される!ことと同等だ。 これぐらいのあぶく銭が各家庭に突然転がりこめば、国内消費をきっと押し上げるだろう。 そして、そのほうが国民に熱烈に歓迎されるに違いない。 こっちのほうがずっといいではないか! 今回の日銀の政策は、それぐらい馬鹿げたものであるように思われる。 (各家庭に同価値の資産が無い場合(そして圧倒的多くの国民は現金以外のそんな資産など持っていない)には、国が「現金引換券」として債券を発行して各家庭に支給し、それを日銀に引き取ってもらう形となるから、債券暴落リスクはもっと高まるが。) ご賛同頂けるならクリックをお願いします。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.04.08 23:15:57
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