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koike1970

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2014.04.10
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カテゴリ:書籍その他
 自宅近くの小さな乾物屋さんへ時々行く。職場で使う食品を調達するためである。
 毎回数百円程度の買い物である。
 私の財布には紙幣だけ入っていることが多い。小銭ができると職場のレジに回してしまうからだ。
 しばらく前のある日のこと。その乾物屋さんで例によって買い物をした。500円の品が1点。1万円札しか持ち合わせがなかった。
 「すみません。大きいのしかないのですけれど。」
 と申し出た。すると店のおばさんがこう返答してきた。
 「ウチは商売ですからおつりは用意してあります。」

 かなり高齢のおばさんである。
 私は「ウチは商売ですから…」という言い方が気になった。“これだから若い人は”のようなニュアンスがあった。
 こちらだって弱小ながら商売に身を投じているのである。それくらいわかっているぞ。だから何なのだ。黙っておつりを渡してくれれば済むのに。

   つり銭

   私は光太郎の注文で、ときおり本や薬などを買って持っていった。
  光太郎は私からその金額を聞くと、いつでも必ずきちんとその金額を
  ととのえて出した。たとえば、はしたが何円というようなこまかな金
  額でも、きちんとこしらえて出した。私の方からつり銭を出さなけれ
  ばならないような、そんな金の出し方は決してしなかった。
   これは金銭に対してもおろそかにしない、光太郎の礼儀正しい一面
  を示したものだと思う。光太郎は私から本や薬を買ったのではない、
  私に用をたのんだのだ。だから私からつり銭を出させるようなことは
  非礼だと考えていたのであろう。だからいつの場合でも、きちんとこ
  まかい金まで用意して出した。例外は一度もなかった。
   (奥平英雄『晩年の高村光太郎』瑠璃書房/三彩社 1976 p.180)


 過日購入し読了した書籍からの抜粋。
 なるほど。私はこれを読んであのおばさんを思い出した。

 先日また乾物屋さんへ買い物に行った。おばさんはいなかった。ご子息なのだろう。初老の男性がお店にいた。
 いつも買っている品は500円から600円に値上がりしていた。私は黙って財布から1万円札を出した。
 「はーい。ありがとーぅ。9,400円お返し。」





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Last updated  2014.04.10 13:14:53
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