「小さいおうち」
今日は映画の日。1,000円で映画がみれるのだ。何を見るか・・・と考えて「小さなおうち」にした。山田洋二監督でベルリン映画祭で黒木華が最優秀女優賞を獲ったので、見に行くべきでしょう。さて、その感想はというと。過去を遡る作品としては、良く出来ていたと思う。片岡孝太郎がやや浮いてるように見受けられたが、それ以外は中盤まで良かった。クライマックス、そして終盤となり、ちょっと落胆した。それは、あまりに言葉にしすぎたことである。映像作品である映画は絵で見せることができる。しかるに、ラストは言葉で語りすぎた。そして、その言葉も良くないものだった。ネタバレになるかな・・・。知りたくない人は読み飛ばしてください。(オブラートに包んで書くけど)それは、奥様がタキに託した手紙に関してである。開封していない手紙が出てきた時点で、すべてを物語っている。にもかかわらず、その内容を知ろうとした(開封した)。『不倫』という言葉が出てきたこと。『不義密通』や『不貞』にするか、さもなくば『道ならぬ恋』などと詩的に表現してほしかった。現代的な言葉として『不倫』を使うことによって、普通な、また低俗な作品に成り下がってしまった気がした。この『不倫』という言葉を使ったシーンはセリフなしで十分成り立つと思った。セリフなしの方が印象的でより心情的な思いを伝えられたんじゃないかと思う。作品としても薫り高い作品になったと思う。言葉で表現したのは、観客に100%わかってもらいたかったからなのだろうか。これほどわかりやすい内容を観客は感じ取れないと思ったのだろうか。監督は観客を馬鹿にしたと思えるし、また、誤解をされたくなかったともいえる。手紙の件も同様。未開封の手紙を見ただけで万事わかった。それが今までの崇高な映画作品だったと思う。しかし、それをしなかったのは、そこまで説明しなければわかってもらいないという、今の世代に対しての危惧がそうさせたのだろうか。情けない説明のシーンとなってしまった。それゆえ作品としての出来映えはいまひとつに思えた。しかし、その後、二人(木村文乃、妻夫木聡)して車いすを押すワンカット(車いすの押す握り手のカット)はとても印象的で素晴らしかった。(言葉はない)、このようなシーンに手紙も不倫もしてほしかった。夏川結衣、木村文乃、妻夫木聡と私の好きな俳優が出演しているのは嬉しく、松たか子の若奥様役はお似合いだった。ショートリリーフで力量ある役者たち(橋爪功、吉行和子、室井滋、松金よね子、笹野高史)を使っているのは見事で、男装の令嬢っぽい中嶋朋子は秀逸だった。黒木華の女中ぽさも良かった。女中というのは花嫁修業としての立派な職業で奴隷みたいにみないでというセリフは勉強になったなぁ。寅さんのさくら(倍賞千恵子)が、ばあさんになってとてもショックだった。2014年/日本/136分/G監督:山田洋二出演:松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子、橋爪功、吉行和子、室井滋、中嶋朋子、林家正蔵、ラサール石井、あき竹城、松金よね子、螢雪次朗、市川福太郎、秋山聡、笹野高史、小林稔侍、夏川結衣、木村文乃、米倉斉加年お薦め度「小さいおうち」★★★★(80%)