|
カテゴリ:ドラマ
「グリーンマイル」 The Green Mile 1999年 アメリカ映画 原作 スティーヴン・キング 監督 フランク・ダラボン 出演 トム・ハンクス デヴィッド・モース マイケル・クラーク・ダンカン ジェームズ・クロムウェル ゲーリー・シニーズ(カメオ出演) このブログでも、かつて紹介した「ショー・シャンクの空に」に続いて、フランク・ダラボン監督が、スティーヴン・キングの小説を映画化した作品です。 スティーヴン・キング原作の映画は、このブログでも、たびたび紹介していますが、だいたいが酷評しているように感じます。そんな中で、「ショー・シャンクの空に」は、米アカデミー賞に何部門かノミネートされていることからもわかる通り、ラストの爽快感が何とも言えない、いい作品です。 さて、この「グリーンマイル」はどうでしょうか。 実はこの映画、全く予備知識なしに、トム・ハンクス主演で、米アカデミー賞作品賞にノミネートされているということで、絶対感動する話だと確信し、観始めたのでした。 1995年、老人ホームの娯楽室で名作映画「トップ・ハット」を見たポール・エッジコムは、脳裏に60年前の記憶が甦り、それを友人の老婦人に語り始めます。 大恐慌下の1935年、ジョージア州コールド・マウンテン刑務所の看守主任ポール・エッジコム(トム・ハンクス)は、死刑囚舎房Eブロックの担当者でした。死刑囚が電気椅子まで最後に歩むくすんだ緑色のリノリウムの廊下は“グリーンマイル”と呼ばれていました。 毅然とした態度で真面目に勤め、部下や囚人たちから信頼される看守主任のポールでしたが、重い尿道炎に悩まされており、用を足すたびに地獄の苦しみを味わっていましたが、なかなか仕事を休めず、医者に行けないでおりました。 部下は副主任のブルータル(デヴィッド・モース)はじめ頼れる連中ぞろいですが、州知事の甥である新人パーシーだけは傍若無人に振る舞い、囚人に暴力をふるうなど、問題を起こしてばかりで、同僚たちに嫌われていました。 そんな死刑囚舎房に、突然招かれざる客がやってきます。それは、1匹のネズミでした。看守たちは捕まえようと追いかけますが、なかなか捕まりません。特にパーシーは目の敵にして、執拗に追いかけますが、全く歯が立ちませんでした。 そのネズミを、死刑囚のひとり、殺人と放火の罪のデルが飼いならし、“ミスター・ジングルズ”と名付け、飼いならしてペットにしているのを見て、パーシーは苦々しく思っていました。 そんなある日、ジョン・コーフィ(マイケル・クラーク・ダンカン)なる大男の黒人が死刑囚として収監されてきます。幼女姉妹を虐殺した罪で死刑を宣告された彼ですが、見た目こそ2mの巨体で、マッチョですが、「ジョン・コーフィです。飲み物と同じ発音ですが、綴りが違います。」と丁寧に自己紹介をし、言葉遣いも丁寧で、とても凶悪犯には見えない優しい男でした。 ポールの尿道炎は悪化し、その痛みから、夜満足に練れないほどになってしまいました。今日こそは、新入りを見届けたら、早退して医者に行こうと覚悟して仕事に臨んでいました。 新入りは、ウォートンという凶悪犯で、問題児という話でしたが、クスリでも打たれているのか、ボーとして、大変おとなしい様子でした。しかし、部屋に入れようとした途端暴れ出し、数人がかりで必死の思いで抑え込まなければなりませんでした。 そんな中、非常に痛そうにしていたポールを、コーフィが呼びます。ポールがコーフィの部屋の前まで行ってみると、鉄格子越しに、すごい力で体をつかまれてしまいました。 暫くつかまれていると、コーフィはいきなり手を放し、せき込んでいます。そして、彼がおもむろに天井を見上げて大きく口を開けると、彼の口から、小さな虫のようなものがたくさん吐き出されてきます。 突然放り出されて、呆気にとられているポールは、尿道炎の痛みが全くなくなっていることに気が付きます。 実はコーフィは、手を触れただけで相手を癒すという奇跡の力を持っていたのです。 長々とあらすじを書いてしまいました。しかし、実はこれで、全編の3分の1ほどです。やっぱりこの映画の1番のミソである、コーフィの不思議な力が出てくるまで書かなければならないと思い、こんなに長くなってしまいました。 死刑囚ばかり収監されている、刑務所の話であり、それぞれ登場人物を紹介し、死刑の執行をしている様子を映し出し、パーシーという問題児の看守、ウォートンという凶悪犯“ミスター・ジングルズ”の登場と、役者がそろったところで、いよいよ物語の核心に入っていくのです。結局、ここまでで1時間ほどかかっています。 ポールたち看守がパーシー以外いい人ぞろいだし(はっきり言って、刑務所の看守がいい人という映画は珍しいです。だいたいが、パーシーみたいに囚人を人間扱いしない看守ばかりです。)、気は優しくて力持ちタイプのコーフィは、どうやら無実らしいし、まだまだ人種差別の残るアメリカ南部の田舎町が舞台だし、無実の罪を着せられた黒人を、いい人ぞろいの看守たちが助けるという、人種差別がらみの感動のお話なのかなあ、と思って観ていたのです。 ところが、刑務所の情景を丁寧に映し出しているなあと思った矢先、いきなりの超常現象で、「えっ、えっ、えっ!!!」というのが、ここまでの正直な感想です。 はっきり言って、人種差別がらみの社会派ドラマだと勝手に思い込んでいた僕がいけないのですが、この時点で、多大なる違和感を持ってしまったので、この後、彼の超能力がらみの感動的な展開になっていくのですが、実はあまり感動できなかったのです。(スピルバーグはこの映画で4回も泣いたそうですが。) しかし、このコーフィの超能力こそが、この映画のミソであり、この超能力なしに、この物語は成り立ちません。 何でかはよくわからないが、超能力を持った心優しい大男がおり、ちょっとその周辺の人々をその超能力で救って、そして旅立って(結論、コーフィはやっぱり死刑になります。)行ったんだよ。というちょっとしたファンタジーだったのです。 刑務所、死刑囚、大男、あまりにもファンタジーに不釣り合いな舞台設定ですが、ポールという老人が語る、ちょっといい話(とても1分間では語れませんが。)ということで、僕のようなひねくれ者ではない、一般の皆さんは、素直に感動できる話ではないでしょうか。(でもやっぱり、コーフィが黒人で、そこがアメリカの南部でなければ、死刑にはならなかったのではないだろうかと考えると、そのあたりをもっと深く突っ込んでほしかったなあと思ってしまいました。) 余談ですが、トム・ハンクスと「アポロ13」や「フォレスト・ガンプ」で共演している、名脇役のゲーリー・シニーズが、ポールがコーフィのことを調べるため、訪ねて行った弁護士の役で、カメオ出演しています。もちろんトムと仲良しということでのカメオ出演なのでしょうが、この弁護士、犬と黒人を同列に考えて、コーフィの凶暴性を語るなど、当時のアメリカ南部ではごく普通の人物なのでしょうが、非常に嫌なヤツでした。僕の好きな役者のひとりなので、非常に残念でした。 また、コーフィ役の大男マイケル・クラーク・ダンカン(今年、急逝されたそうです。ご冥福をお祈りします。)ですが、本当にでかくてびっくりしてしまいますが、刑務所長役のジェームズ・クロムウェルと並んでいるシーンがあるのですが、2人ほぼ同じ高さでした。 このジェームズ・クロムウェルという人、「アイ・ロボット」での自殺してしまう博士など、老科学者役とか、組織のえらいさんなどでよく見る名脇役さんですが、ヒョロッとして大きい人だなあと思っていたのですが、こんなにでかいとは思いませんでした。調べてみたら、2人とも2mぐらいあるんですね。 フランク・ダラボン監督は、その監督作こそ数本なのですが、そのどれもが、感動できるいい作品ばかりです。以前「マジェスティク」というジム・キャリー主演の感動作を取り上げさせていただきました。映像化の難しい、スティーヴン・キングの小説を感動作に仕上げることができる、素晴らしい監督です。あともう1本「ミスト」という作品があります。また、いつか記事を書かせていただきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|