だだもれ堂筆記

中国の古代遺跡で4千年前の麺がその形を残したまま発掘された、
という記事をどこかで見たのだが、これで中国は麺発祥の地として
鼻高々であろう、と思う。
そういや中国って無闇と世界一とか世界初に拘るよなあ。
それって中国万歳富国強兵国威発揚唯我独尊体質に由来するんだろうな。


とは言うものの、じゃ中国の麺料理がうまいかって言われると…

……………（しばし無言）。

中国人って麺にコシを全く求めてないんじゃないかという疑惑がある。
漢民族の常食している麺は押しなべてコシが無い、あるいは弱い。
見た目はうどんだったりそうめんだったりパスタだったりするのだが、
日本のそれをイメージして食べるとあまりのふにゃらかさに愕然とする。


初中国。着いたその日に北京発の夜行寝台に乗り留学先に向かった。
朝、朝食を食べに食堂車に行く。
朝食は湯麺（スープそば）だけだ、と食堂車の無愛想な服務員が言う。
上等である。同じ大学に向かう連れと2人、湯麺を注文して待つ。

ほとんどお湯のような、と言うかお湯だったのかもしれないが、
無色透明に近いスープに細めの乾麺のうどんのような麺が入っている。
具はトマトと香菜がはらりと申し訳程度に乗っているだけ。

不安になったが、これはスープが塩味なのだと解釈して一口食べる。



…。

………。

……………。


……味が全っ然無い。


これじゃいくらなんでも美味しくは食べらんないよ、と
テーブルの上にあった黒い液体の入った瓶の中身をどぼどぼ投入。




…中国黒酢（号泣




史上最強に不味いインスタントラーメンもその年の冬に口にした。
硬座に座り続けること50時間以上。パンばっかりじゃ体も温まらない。
旅行の必需品であるホーローのカップにインスタントラーメンを
割り入れて、湯を注いで待つことしばし。ふやけた頃を見計らって
食してみると…


……味もコシも全っ然無い。


味が無いというのはかなり致命的で、ともすれば「不味い」に直結する。
そのインスタントラーメンはほとんど手がつけられないまま
捨てられてしまったのであった。
腹は減っていたのだが、それでもどうしても喉を通らなかった。

食べる気になれるインスタントラーメンの登場まで、
その後5年の歳月を待たねばならなかった。


北京の勤務先の大学近くに、チェーンの札幌ラーメンの店ができた。
到底日本のラーメン屋のラーメンに及ぶべくも無いが、それらしい
ラーメンが食べられるので、何度か行った。

あれは開店まもない頃だったか。相席になった中国人に連れが話しかけた。
「札幌ラーメンってどうですか？」
「いやあ美味いよ、日本のラーメンは初めてだけど美味い」と絶賛する。

…なんだ、中国人だってこういう麺が好きなんだ、と思ったのだった。
なら、自分らでそういう麺を作りゃ良いのになあ。





これが中国で真っ当に食べることができるようになった方便麺
（インスタントラーメン）の代表ブランドです。