極刑空間

『あやかしびと』感想　十四尾目

---

すずルート途中。


すずのルーツの再確認と、大切な人との束の間の邂逅。

友人となり、家族となり、敵となったその果てに、ようやく二人は恋人同士になった。


この辺の流れはもっとすんなり行くと思っていたのに、思わぬ遠回りをしたな…。

認識が甘かった。


とにかく、これで一つ目のヤマは終わりだろう。

後は忌むべき日常の破壊者が訪れるのを待つのみ。



さぁ鬼でも鉄砲でも、九鬼でも薫でも何でも持って来いコノヤロー。

片っ端から焔螺子だ。

---

※以下、わたしが大事なのはね、今、一番大事なこのネタバレなの





























母である静珠の命を奪った人間という種族を嫌悪していたすずは、

神沢学園で暮らす内に、その考えを改め始める。


生徒会の仲間はいつも優しく、クラスにも友人が出来た。

人の仲間に囲まれて笑顔で過ごすことで、すずの心には人間を受け入れる余裕が生まれた。


他者との豊かな交友は、すずの感情に大きな変化を与え、

双七との関係も「姉弟」から次の段階へ変化しようとしていた。



その矢先だった。


運悪く、すずは卑劣なクズ暴漢に襲われる。

誘拐されて暴力を受け、犯される寸前で双七と愁厳に救われるが、

人間に激しく傷付けられたショックで、すずは記憶を失った。


人との交流の記憶を失い、彼女は激しい人間不信に逆戻りする。

蘇る憎しみに任せ、すずは近付いてくる双七と美羽に言霊を付かせた。


「二度と自分に近付くな」と。


その後、双七の必死の努力によってすずは記憶を取り戻す。

しかし言霊の命令は掛けた本人であっても覆せない程に強固で、

放っておけば、すずは一生双七や美羽に近付くことさえ出来ないままだ。


解決する方法は一つ、すずの妖力の源である尾を切り落とすこと。

尾さえ無くなれば言霊も力を失うが、それはすずが九尾としての力を永遠に失うことを意味する。


言霊を放置して九尾として生きるか、尾を切り落してでも人間と共に生きるか。

すずは苦悩し、やがて選択した。


人間の世界で生きるため、自らの大事な尾を切り落すことを。





これを聞いて胸を熱くする双七と俺。

良い娘過ぎる。

平凡な学校生活は双七の夢だったが、今となってはすずにとっても尊い現実になったんだな…。



事情を聞いたショタ烏は、すずに対して尾を切る前にやるべきことがあると告げる。

それは幽世にいる静珠と会うこと。


…幽世というのは妖怪専用の「あの世」のことらしい。

すずの尻尾と、ショタ烏の協力さえあれば意外と簡単に行けるものみたいだな…。

じゃあこんな事になる前にさっさと連れてってやれよショタ鳥め。



こうしてすずは、幽世で実の母と再会を果たす。

すずが今まで受けた孤独と比してあまりにも短い時間だが、

それでもすずは笑顔を絶やさなかった。


別れ際、静珠はすずに「自分を恨んでいないか」と問う。

「すずを置いて先立ち、寂しい想いをさせた自分を憎んでいないか」と。


すずは応える。





涙を流す妖狐の親子。

それを見て、必死に涙を堪える双七。


そしてディスプレイの前で男泣きするキモオタが一匹……。

すず……なんて健気なんだ。


正直、すずと静珠の再会が成るとは予想だにしていなかった。

…既に亡い人を引っ張り出すのは若干無粋な気もしたが、この親子が少しでも報われるならそれもアリだ。



幽世から戻り、尾の切断も無事終了。

長い苦境だったが、ようやく穏やかな生活が戻ってきた。


言霊の強迫も無くなり、想いを確かめ合った双七とすずは晴れて結ばれる。

良かった……本当に良かった……。

---

さて、そろそろドミニオンの連中が動きだす頃だな…。


幻咬による大規模クーデター計画「百鬼夜行」の要となる筈のすずが、

既にその力を失っていることは物語に大きく影響しそうだ。


他に気になるのは九鬼先生か。

この人は今回もきっと一奈を殺すだろうが、その前に双七と接触しないとマズいことになる。


薫ルートはそのせいで後味が悪かったから、今回は何とか救われて欲しい…。