冬物バーゲンもいよいよ佳境です。
先日は、肌触りのいいニットを元の値段の10分の1で買いました。
気に入ったものがあれば、今が買い時なんでしょうね。
気に入ったものがあれば、ね。
と、思いながら見始めて、「あ、こういうものもそういえば欲しかったような気もしてきた」
なーんて買い物もしちゃうのだ。
ポンと一緒に、そんな繁華街を歩きました。
「ねぇ、さっき待ち合わせの前に見たんだけど、あのお店に可愛いパンツがあったの。
ベージュ色だから、3シーズン着られそうだし」
オーバーオールの形が可愛いし、元の値段の3分の1にもなっているというところも魅力的だと。
見に行くことにしました。
ベージュのほかに濃い目の紺もあって、ハンガーを手に悩んでいるので、「両方試着してみれば?」と言うと
「試着、いる?サイズは入ると思うけどな」
「でも、着てみるとシルエットが思っていたのと違ったりすることあるじゃない?
色も、当ててみるのと感じが変わるよ?」
ポン、2着のハンガーを手に、店員のお姉さんに試着室に案内されました。
その辺の商品をぶらぶらと眺めながら待っていますと、お姉さんがドアをノック。
「ご試着、いかがですかぁ?」
「……ちょっと、まだ…」
ジーンズの上にいろいろ着込んで、コートの外に大きなショルダーを斜めがけしていましたから、試着の前にも時間がかかったことでしょう。
それにしても、時間かかっています。
「ポン!ポン!」
…
「ポン!おかーさんよ!開けなさい!」
篭城説得ごっこ、の、ようだ。
「だめ、なんだって!」
「何が?」
「これ、どのタイミングで…頭入れればいいわけ?」
「だって、パンツでしょ?履くんじゃないの?」
「でも、横にファスナーが…」
「とにかくちょっと、開けてご覧?」
「だめだって!」
「ここ、誰もいないから大丈夫だって!」
「じゃ、細く開けるからすぐに入って!すぐだよ!」
扉の隙間から身体を滑り込ませる刑事ごっこ、のようだ。
「これ、わかんない、ていうか」
「どうなってるの?」
「あのさ!これ、かぶってると、何にも見えないんだよねっ!!」
試着用の不織布フェイスカバーをかぶっているポン。
「え(笑)パンツなのに?」
「だって、お姉さんが『被りモノですから~』って」
ただの飾りに見えていたボタンをはずしたり、肩紐に手をかけてやったりして、どうにか着ることができました。
なるほど、なかなか可愛いシルエットです。
生地のやわらかさがいい按配で、ふわっとしているのに着膨れして見えません。
「うん!良くない?」
気になっていた丈も、短すぎることなくいい感じでした。
「買っちゃおうかな?」
しかし…
ちょっと待て!
「ねぇ、これ着ようと思った日は朝、今みたいに大騒ぎだよ?遅刻だよ?」
「大丈夫だって!慣れれば」
「あわててビリビリとか」
「しないよ!」
「……それに、トイレ!行くたび、この形だと大変だよ」
「!…トイレ行かないから、いい」
「んなわけにいかないでしょう?
大学に女子トイレ少ない少ないって言ってるじゃない?そこにやっとたどりついて…
で…
そして、そのあとも、今みたいに、着るんだよ?おかーさん、いないよ?
そのたびに召還されようか?
それより、鞄に入れて連れて行ってもらおっか!」
「…やめるね」
結局、別なものを捜しましょう、ということになりました。
まぁ、買わなくてもショッピングは楽しいと、そういう話でした。