テーマ:ミステリはお好き?(1445)
カテゴリ:本の話(日本の作家・さ行)
短劇
「本が好き!」創刊以来、連載している掌編を1冊に。著者がはじめて挑む、ときにシリアスに、ときに幻想的に、多彩で小粋な掌編集。 たとえば、憂鬱な満員電車の中で。あるいは、道ばたの立て看板の裏側で。はたまた、空き地に掘られた穴ぼこの底で。聞こえませんか。何かがあなたに、話しかけていますよ。 坂木司、はじめての奇想短編集。少しビターですが、お口にあいますでしょうか。 【目次】 カフェラテのない日/目撃者/雨やどり/幸福な密室/MM/迷子/ケーキ登場/ほどけないにもほどかある/最後/しつこい油/最後の別れ/恐いのは/変わった趣味/穴を掘る/最先端/肉を拾う/ゴミ掃除/物件案内/壁/試写会/ビル業務/並列歩行/カミサマ/秘祭/眠り姫/いて (「BOOK」データベースより) 坂木司作品は欠かさず読もうと思っているので、単行本化されて迷わず図書館に予約しました。 (迷わず書店へ、ではなくて、本当に申し訳ないです!) 紹介文によれば、これまでミステリー中心に書いてこられた著者の、初の奇想短編集とのこと。 しかし、ミステリーといっても、ばりばりの犯罪謎解き、というよりは、若い心の傷みや再生を、温かく見守る筆致で描くストーリーが多い坂木作品。 ホラーにしても独特なのではないでしょうか。 目次を見ますと、とてもたくさんの短編タイトルが並んでいます。 装丁はいつもと同じ石川絢士氏ですが、なんとなーく整列した棺とか墓碑銘とかを思わせ… いずれも数ページのごく短い掌編なので、時間的にはすぐ読めてしまいます。 とくに第1作の『カフェラテのない日』は、坂木司味そのものというようなオチがついていて、読んだ後ほっとします。 坂木さん、ホラーじみたものを書かれても、やっぱり坂木さん… ところが、読み進んでいくと、変わってくるんですね。 ミステリーぽいと思っていたのが、ブラックになり、なんだかドロドロと… かと思って構えていると、肩すかしを食うような終わり方だったり。 ぞくっとするものもあるし、はっきり申して気持ち悪くなるものも、あります。 すぐ読める長さのものながら、さくさくとは読み進めません。 かなり苦戦しました。 表紙を閉じると、再び手を伸ばすのにかなりエネルギーを要します。 ショートショート集としては、そのイロイロ感がいいのかもしれません。 でも、ちょっと持て余してしまって、全編堪能することができませんでした。 優しく甘い歌を作る歌手でも、ときに暴力的な歌を作ることがあります。 突然ボディブローを入れられたような感じがしますが、しばらくすると、再び優しい歌を歌ってくれます。 たとえば若い頃の、大江千里とか、KANとか、槇原敬之とか… そしてこんどは、優しくてもどこか強くて、安心して切なくなれるような歌、になるのです。 なんだか、そんなことを思いました。 1作ずつ進化してゆく坂木司作品。 その道程で、いろいろな思いを吐き出されるように書かれるのだろうと思います。 この手のものは苦手、でしたが、次の坂木作品は、なお楽しみであります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.07.14 17:06:14
コメント(0) | コメントを書く
[本の話(日本の作家・さ行)] カテゴリの最新記事
|
|