赤い指
少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。
「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。 (「BOOK」データベースより)
東野圭吾の重厚な作品を読み終えたばかりですが、続けてこちらを読みました。
加賀恭一郎シリーズの1冊です。
この春テレビドラマ化された『新参者』と同じ、加賀・松宮のキャスト――阿部寛と溝端淳平のコンビで、こんどスペシャルドラマになると聞いたからです。
(教えてくれたのは溝端くんですw)
シリーズの既刊作品を読破しているガンによると、
「え~、『赤い指』…まぁ…
たしかに、いいんだけど…
でもこう、地味だし…
なんといっても、後味というか、読後が、
つらいというか、やるせないというか…あれをドラマで、かぁ…」
本当に、やるせない話でした。
住宅街で起きた幼い少女の殺人事件、それをめぐって語られるのは家族の姿です。
1つは、少女の遺体が置かれていた家の家族。
そして、松宮の家族と、加賀の家族。
それぞれの、今の姿を透かして、その過去も見えてきます。
家族というのは、薄紙を積み重ねるようにして、時をかけて作り上げた歴史そのものだと、思い知らされます。
子どもの教育のこと、年老いてゆく家族のこと。
独居老人のこと。
いかにも今、考えなくてはならないテーマが、ミステリのモチーフです。
読みながら何度も、「そうじゃない!そうじゃないでしょう!」と叫びたくなりました。
けれど、家族というものは、そうした誰にでもわかるようなズレに、
当事者が気づかない、というものなのかもしれないとも思います。
どの家族でも。
もうひとつ、この作品の副旋律として、加賀親子と、松宮の関係も語られています。
阿部・溝端のコンビでドラマを作るのには、いかにもうってつけの1冊なのですね。
私の中の恭一郎像とは違うので、ドラマ『新参者』を見始めたときには違和感のあった阿部・恭一郎ですが、あれはあれでいい味のような気もしてきていますw
こうして読み終えて、ガンの言葉を思い出すと、よけいに<家族>というものについて考えてしまいます。
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