スターリニスト中国初のノーベル理系3賞受賞者の屠呦呦氏(ノーベル医学生理学賞受賞=写真)は7日に、スウェーデンでの授賞式に出席した。
◎授賞式記念公演でも中国科学界を持ち上げたが
屠氏については、10月20日付日記:「スターリニスト中国初のノーベル賞自然科学3賞の屠呦呦氏を包む中国科学界のジェラシー、中国ではもう授賞は無理?」でも述べたように、スターリニスト中国のボス支配の学会では冷遇されていたから、屠氏の受賞に対し、中国国内では党・政府と学術界には、喜びよりも冷ややかな雰囲気が広がっていた。彼らの心境を思い測れば、「ノーベル平和賞の劉暁波氏と同様に、中国に揺さぶりをかける西側世界の陰謀」というものだろう。
この雰囲気に配慮し、屠氏は同日午後、記念講演で「私個人の栄誉ではなく、中国人科学者・団体への奨励だ」と、わざわざ触れた。
◎131人から外れるという異常
ところがこの痛々しいまでの屠氏の配慮にしっぺ返しをするかのように、この日、中国科学界では物理、生命科学、医学などの各専門分野で「院士」に選ばれた研究者131人の名が発表されたが、屠氏の名は、その中に含まれていなかった。
日本なら、ノーベル賞受賞した研究者は、まだ未受章であれば、すぐにその年の秋の文化勲章で報いるだろう。実際、今年度の屠氏と同時受賞の大村智氏(ノーベル医学生理学賞)とノーベル物理学賞の梶田隆章氏は、文化勲章を受章している。
◎今後も評価しないという意思表示
ノーベル医学生理学賞授賞が発表された時、屠氏が中国国内で院士でもなく、さらに博士号も持たず、海外留学経験さえない「3無」研究者であることが話題になった。それは、スターリニスト中国の科学界がいかに世界の科学界と異質なものであることを明白に暴露してしまった、とも言える。
スターリニスト中国にとって、屠氏は、抗マラリア剤の発見者であっても、ベトナム戦争中の国家プロジェクトの一端に携わったただの傍流研究者としか見てこなかったことを世界の最高学界から不当と批判されたようなもの、と受け取っているのだ。
屠氏を今年度の院士131人に加えなかったことは、今後も評価しないというスターリニスト中国科学界と党・政府の偏狭な考えを反映したもの、と見ることができるのである。
追記 ベネズエラ総選挙で野党3分の2超獲得、チャベス左派路線破綻の歴史的審判
12月8日付日記:「ベネズエラ総選挙でもマドゥラ与党の左派大敗、中南米左翼の退潮にさらに拍車」で報じたように、6日に投開票されたベネズエラ総選挙は、故チャベス以来の左派政権の腐敗バラマキ政治に反対してきた野党が、最終的に3分の2超の議席を獲得する大勝利となった。
野党連合は、定数167のうち112議席を獲得、3分の2超を得た。現大統領のマドゥラの与党は55議席にとどまった。
野党連合は3分の2超の議席を得たことにより、法案の可決や閣僚の解任の他、左派政権の支配する最高裁判事の解任、憲法改正も可能になる。
ただベネズエラではチャベスの「遺産」で極端に大統領権限が強い。マドゥロは、野党の可決した法案や予算案に拒否権を使って葬ることも可能だが、いずれ議会との激突でマドゥラは追放されることになろう。
注 所用で明日の日記は休みます。
昨年の今日の日記:「適度な『物価高』は悪くはない、物価下落のデフレこそ『死を迎えつつある』危険」
昨年の明日の日記:「墜ちた偶像、栃木3区の元『みんなの党』代表の渡辺喜美氏が落選の危機」