3461432 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

政治、現代史、進化生物学、人類学・考古学、旅行、映画、メディアなどのブログ

政治、現代史、進化生物学、人類学・考古学、旅行、映画、メディアなどのブログ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

自費出版のリブパブリ2010

自費出版のリブパブリ2010

Keyword Search

▼キーワード検索

Freepage List

Rakuten Card

Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

farr@ 相互リンク 突然のコメント、失礼いたします。 私は…
くーる31@ 相互リンク 突然のコメント、失礼いたします。 私は…
背番号のないエース0829@ 婿入り 現在井上ひさし「吉里吉里人」を読書中な…
自費出版のリブパブリ2010@ ありがとうございました。 京都ヒストリカ国際映画祭事務局さん …

Headline News

2017.05.27
XML
カテゴリ:考古学

 13万年前頃、種不明のヒトがアメリカ大陸にいたことを確認した、とアメリカのサンディエゴ博物館などのチームが、「アメリカ、カリフォルニア南部の13万年前の考古遺跡」と題してイギリスの科学週刊誌『ネイチャー』4月27日号に報告した。

◎マストドンの骨をハンマー石と台石で処理
 チームの報告したのは、マストドンの牙や歯、脚の骨などの化石の、後期更新世初期の考古遺跡セルッティ・マストドン(CM)遺跡の原位置で残された1頭分のマストドンの骨の破片と共伴するハンマー石と台石。
 サンディエゴの南東約10キロの露頭で1990年代に認識されていたCM遺跡からは、スパイラル剥離されたマストドン骨と臼歯片が発見されたが、これは骨などが新鮮なうちに破砕されたことを示しているという。また破片のいくつかには、打撃を加えられた証拠も残している。骨、臼歯、再加工された石器の散らばり具合を吟味した結果から、加撃はこれらの埋まった場所で行われたことを推定させるという。
 CM遺跡の骨層にあった5点のハンマー石と台石には、使用痕と加撃跡が見られ、緩やかな水に流されて生じたものとは異なるという。
 したがってチームは、これはヒトがここでマストドンを解体し、また骨を割って骨髄を取っていたものと推定した。

◎年代は最終間氷期のMIS5e期
 年代だが、骨には放射性炭素年代を測定できるコラーゲンがほとんど残っておらず、そのため光刺激ルミネッセンス年代測定法で6~7万年以上、またウラン/トリウム法で13万0700年前±9400年と導き出された。
 こうしたことからチームは、最終間氷期のMIS5e期(約 12.4万~11.9万年前)にCM遺跡に種不明のホモ属がいたことが確認され、彼らはハンマー石と台石を操作し、骨髄を抽出し、また骨器製作の原材料を得る目的で、マストドン四肢骨を処理していたことが分かった、と述べている。

◎原位置で遺物の残された北米最古の人類遺跡
 研究チームは、上記の知見を基に、CM遺跡は原位置で遺物の残された、保存良好な北米最古の考古遺跡だとし、したがってアメリカ大陸へのヒトの渡来の時期を根本的に改定することになったと結論づけている(写真=丸石と共に見つかったマストドンの骨の化石。画像上部の2つの大腿骨頭は破壊のされ方は同じだが、一方は上向きで他方は下向きと、不自然な配置で見つかった。左上に斜めに横たわっているのは肋骨)。

◎これまでの常識から逸脱する報告
 上記までは、研究チームの報告をそのまま紹介したが、よくぞ『ネイチャー』査読者はこの論文をそのまま通したものだ、というのが、本音だ。
 それは、これまでのアメリカ考古学の常識を破り、これまでの知見から大きく超えたものだからだ。
 考古学や古人類学の発見は、他分野の科学的発見と同じく、それまでの知見を積み上げ、類例を固めて、初めて正誤が判断される。従来の知見と全く一致しない、あるいは外れた突拍子もない「発見」は、これまで多くが発表されたが、その後すべてが消えていった。極端な例では、20世紀末に日本旧石器考古学を席巻した藤村旧石器が端的な例だ。

◎途中が空白のままで、数多くの疑問が残る
 今回の報告も、2~3万年前、あるいは5万年前前後の遺跡例が空白に近いままにすっ飛ばされ、いきなり13万年前のホモ・サピエンス以前の人類遺跡の発見と報告された。
 年代からすると、その人類はホモ・エレクトスかデニーソヴァ人ということになる。
 報告者の言うとおりだとすれば、ユーラシアからの移住の途中にあるシベリア東部にこの時代の遺跡がなぜ見つかっていないのか、そしてその人類は、ベーリンジアをいつ、どのようにして突破したのか、さらにアラスカに到達した人類はローレンタイド氷床とコレディレラ氷床の間の無氷回廊(写真=現代の無氷回廊の南側)をいつ、どのようにして通過したのか、説明されなければならない。

◎過酷な極北環境に適応するテクノロジーがあったのか
 そしてこの途中ルートに、この時代に近い確実な遺跡は、全く見つかっていない。
 そもそもサピエンス以前の人類に、このような過酷な極北の環境を制するテクノロジーがあったのだろうか。
 したがって今回の報告は、骨と石器の共伴が正しいのか、出土層位の判定に間違いはないのか、年代測定は正しいのか、破砕とされたマストドン骨は人為的なものと言い切れるのか、など、多くの疑問を否定できない。

◎キャリコ・ヒルズとどう違うのか?
 東アフリカ、オルドゥヴァイでの猿人ハンターとして著名なルイス・リーキー(写真)らが、かつて半世紀ほど前、同じカリフォルニア南部砂漠のキャリコ・ヒルズでヒトの作った「炉址」や「石器」群を発掘し、やはり最終間氷期のものと喧伝されたが、今は自然生成物とみなされ、全く顧みられていない。



 また今回の調査チームの報告したスパイラル剥離された獣骨例も、かつて両米大陸各地で3万~5万年前とされる例が多数の報告されていたが、キャリコ・ヒルズと同じ運命をたどっている。

昨年の今日の日記:「シリア、イラクで一斉にISIL(「イスラム国)掃討の地上作戦開始、黄昏のテロリスト『国家』」






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017.05.27 05:16:23



© Rakuten Group, Inc.