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2017.11.03
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カテゴリ:生物学

 家畜の中でも人類に最も役立っている動物は何かと問われれば、ウシが筆頭に挙げられるだろう。
 例えば僕は毎朝、牛乳を飲む。たまの外食では、ステーキを良く食べる。これは、ポークと言うわけにはいかず、必ずビーフだ。

◎ウマとの違いは飼育の容易さ
 偶蹄目筆頭の家畜のウシは、かつては平安時代の牛車に見られたように、そして今でも途上国では農耕用に使役されているように、役畜としても使われている。
 かつては軍馬として軍事に不可欠だったウマは、今は競走馬としてしかほぼ出番が無い(途上国の一部ではなお役畜として使われているけれども。例えば6月に行ったヨルダンのペトラ遺跡では、狭いシークの観光客輸送用に馬車が大活躍していた)。
 ウマもモンゴルでは馬乳酒用に搾乳されるし、肉は今でも一部で食べられているが、ウシとはその重要性の差は歴然だ。
 その差が生じたのは、おそらく飼育の容易さに大きな差があったからに違いない(17年7月9日付日記:「ウマ=馬の盛衰あれこれ;気性が荒く去勢して初めて家畜化、家畜化されなければ絶滅した?」を参照)。

◎オーロックス、ヨーロッパで繁栄
 さて現在の家畜牛だが、その祖先に当たるのが、オーロックス (原牛 Bos primigenius) である。
 起源はインドで、およそ200万年前に進化した。その後、中東に分布を広げ、ヨーロッパに進出したのは、25万年前頃とされている。氷河期末までには、ヨーロッパ、アジア、北アフリカなどの広い範囲に分布していた。
 ヨーロッパは、オーロックスにとって楽園だったに違いない。氷河期にはステップツンドラが広がり、間氷期には広大な森林となったからだ。
 いかに繁栄していたかは、アフリカからヨーロッパに進出したホモ・サピエンス(クロマニヨン人)が、ショーヴェ洞窟やラスコー洞窟などの壁画に描いていることから良く分かる(写真;ウマも繁栄していたようでやはり洞窟壁画の主役となっている)。






◎氷河期末も生き残って
 大型動物であるオーロックスは、1頭屠れば狩猟採集民のバンド全体が肉を飽食できたため、マンモスに次いで旧石器狩猟民に好まれた標的だった。それでもオーロックスは、ホラアナライオンなど大型肉食獣と共に、マンモス、毛深サイなどが絶滅した後も後氷期を生き残った。
 気候の温暖化と共に「肥沃な三日月地帯」でオオムギやアイルコルンコムギの栽培を始め、人口を増やした新石器農耕民は、増えた人口を養うための食、特に動物蛋白質を求めていた。ヒツジ、ヤギに次ぐ、肉も多く、乳も飲め、糞を肥料に利用できる家畜動物の必要性の高まりである。
 オーロックスの家畜化は、その意味で必然だっただろう。

◎遅くとも1万年前までには家畜化
 オーロックスの最初の家畜化は、中東でなされたと考えられている。かつては7000~8000年前頃と考えられたが、最近の発掘調査でもっとさかのぼるらしいことが示唆されている。
 トルコ南東部のチャユヌー遺跡の出土骨の分析から、紀元前8300年頃にはウシの家畜化が始まっていたことが分かった。これを信じれば、1万1000年前頃には中東のどこかでヤギ、ヒツジとともにウシの家畜化が始まったと考えられる。
 現在、家畜ウシの系統は、コブウシとこぶ無しウシ(我々になじみ深いウシである)の2つがあるから、家畜化は複数カ所で始まったのかもしれない。前者は、インドから中東、そして北アフリカなどで見られる(写真=エチオピアのラリベラで)。



◎野生オーロックスは先細りに
 一方で、後氷期もしぶとく生き残った野生オーロックスは、ヨーロッパなどで農耕が発展するにつれ、次第に生息地を狭められた。
 特にヨーロッパでは、森が焼き払われ、放牧地が拡大するにつれ、居場所をなくした。また貴族の狩りの対象にもなった。
 中世にはすでに現在のフランス、ドイツ、ポーランドなどの森林にしか見られなくなっていた。16世紀には各地にオーロックスの禁猟区が設けられたが、それも貴族が自らの狩猟する分を確保するために設けたものでしかなかった。

◎1627年には最後の野生オーロックスが死ぬ
 大型動物は、出産子数が少ないから、減り始めると回復は難しい。
 最後に残ったのは、ポーランドのヤクトルフ(Jaktorów)にある保護区であったが、そこでも密猟によってオーロックスの数は減り続け、1627年には最後の1頭の死亡が確認され、オーロックスは絶滅してしまった(写真=最後の1頭のオーロックスがいたことを記念するヤクトルフ保護区の碑)。



 しかしウシ (Bos primigenius)そのものは、家畜として広く飼育されていたので、オーロックス復元の必要性など高まらなかった。
 ようやくその試みが始まったのは、1920年、ドイツ、ミュンヘンの動物園長ハインツ・ヘックの試みからで、彼はオーロックスに近い特徴を残していた家畜牛をかけあわせて32年に復元に成功、ポーランドのヤクトルフの森に放した。
 今も森には、復元オーロックスが暮らしている。また各国の動物園でも、飼育されている。

◎復元牛は真のオーロックスの蘇りではない?
 野生キツネから家犬を作り出す実験を今年7月23日付日記:「60年もの研究者人生を投じ、野生キツネを選抜育種して『犬』を誕生させた再現実験」で述べたが、ヘックの試みは逆に家畜牛から野生のオーロックス(原牛)を復元しようという試みだ。
 ただこの復元牛は、絶滅したオーロックスと異なり、体格はかなり小型だった。その意味で、真のオーロックスを蘇らせたことにはならないかもしれない(写真=ドイツの動物パークで放し飼いにされている復元オーロックスのファミリー。左が父ウシ、右が母ウシ、手前が仔ウシ)。



 なおオーロックスは、北米や北アジアの野牛、またはバッファロー(正式にはバイソンという)と呼ばれる動物とは別種である。

昨年の今日の日記:「私的共産党論③:民進に共闘を迫る共産党、悪魔の誘いに乗れば社会党のように長期的には衰退する」






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Last updated  2017.11.03 05:21:27



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