メキシコで、またも大量のマンモス(大型種のコロンビアマンモス)骨集積が発見された。
メキシコ国立人類学歴史研究所は、首都メキシコシティー郊外スンパンゴの新空港の建設現場で、約60頭のマンモスの骨を発見したと発表した。太古には湿地だった場所で、体重の重いマンモスは抜け出せなくなったようだ(写真)。
◎尖頭器や骨のカットマークを探索中
現生のゾウは、群れで行動する。マンモスもそうだったと思われるので、一時期の集中したものかどうか分からないが、群れが一時に湿地に入り込み、抜け出せなくなったらしい。
ただ、ここに人類の影が認められるかどうか分からない。
北米でマンモスハンターだったのはクロヴィス文化人で、彼らは北米各地でマンモスを狩っていた。
同研究所は、現在、30人の考古学者を動員し、調査している。骨にクロヴィス尖頭器が埋まっていたり、カットマークが残っていれば、その可能性が高まる。
◎大量の肉を1度に得られるマンモスは狩猟民の絶好の標的
発見地近くは、比較的マンモスの個体群が濃密だったらしく、昨年11月にも今回の発見場所に近いメキシコ州トゥルテペックで、大穴に追い落としたと見られる少なくとも14個体分のマンモスの骨が発見されている(19年11月23日付日記:「北米マンモスハンター、大穴にマンモスを追い込み狩猟した跡をメキシコで発見」を参照)。
マンモスは1頭仕留めれば、何トンもの肉が1度に手に入り、バンドと呼ばれる30人~50人のハンターの群れが何日も食べられただろう。
◎35万年前のスペインのトラルバ、アンブローナ遺跡には人類の影
スペインの中期更新世(35万年前頃)遺跡のトラルバとアンブローナ(写真=アンブローナ遺跡でのマンモス骨の集積を復元した博物館の展示)でも、かつて大量のマンモス骨の集合が発見され、アシュール文化人類が湿地などにマンモスの群れを追い込み仕留めた、とする大量キルサイト説が調査者から出された。
その後の研究で、数十頭分もの骨は見かけだけで、1頭か数頭のマンモスをハンターが殺した跡が積み重なっただけという考え方も提出されている。
トラルバとアンブローナでは人類遺体は見つかっていないが、年代から考え、襲ったのはホモ・ハイデルベルゲンシスだろう。
メキシコ、スンパンゴのマンモス骨の集積が人類によるものだとしても、これは彼らよりずっと進歩したホモ・サピエンスである。もし1度に60頭ものマンモスを殺したとすれば、人類の進歩のほどが分かるが、こうした乱獲は逆に北米でのマンモスの絶滅へと導き、クロヴィス人の首を絞めることにつながったに違いない。
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