北部大西洋に浮かぶ火山と氷雪の国アイスランドは、その地政学から長く外界との交流の少ない遺伝子構成を持っていることで知られる。
◎世界一均質な人類集団のアイスランド人
ヴァイキングとケルト人が9世紀に入植して混血して以降、アイスランドは驚異的なまでに均一な集団を維持してきたので、アイスランド人には遺伝的変異が少ない。つまり遺伝的変異を特定する際に、邪魔となるノイズが少ない。人口も35万人程度と少ない(写真)。
そのため製薬企業などが新薬創薬のために、アイスランド人のゲノム情報を集めていることも知られる。
◎現生アイスランド人のゲノムに残る旧人由来の遺伝子
ところで我々非アフリカ人ホモ・サピエンスのゲノムに、かつて中東のどこかでネアンデルタール人と交雑したことを示す約2%の遺伝子が含まれていることはすでによく知られている。その交雑は、アフリカからホモ・サピエンスが中東に入り込んだ何波かの移住の行われたうち5万~6万年前に起こった。
このほどアイスランドの研究者が中心となった国際研究チームが、最も均質な人類集団であるアイスランド人の10%近い2万7566人のゲノムを分析し、旧人由来と推定される1440万片の染色体断片を見つけ出し、詳しく調査している。
イギリスの科学誌『ネイチャー』の6月4日号でその成果が報告された。
◎旧人由来の遺伝子の大部分はネアンデルタール人
既に全ゲノムが解読されているアルタイのデニーソヴァ洞窟とヴィンディヤ洞窟(写真)のネアンデルタール人などとの類似性を基に、研究チームは84.5%は前記ネアンデルタール人起源であり、3.3%はもう1つの旧人集団であるデニーソヴァ人起源と特定した。残りの約8分の1の12.2%は起源が不明だった。おそらくまだ見つからない人類集団から受け継いだものなのだろう。
昨年の今日の日記:「韓国からも見限られるスターリニスト中国の基幹工業、サムスン、現代自など撤退が相次ぐ」