ワクチン接種が欧米よりはるかに遅れ、韓国と並んでOECD加盟国37カ国で接種率最低の不名誉をいまだに挽回できない日本の株式市場は低迷している。
24日から大規模接種センターがオープンし、順調に接種は進んでいるようだが、こちらであっても東京最大1万人、大阪最大5000人だ。
いつになったに武漢肺炎の新規感染者が衰えを見せる30%の接種率になるのか、見通せない――となれば、市場が元気にならないのも無理もないかもしれない。早春につけた日経平均3万円の奪回までは、まだしばらくかかるだろう。
◎連日の上場来高値更新、株価1万円は見えたが
この中で、一時期のIT銘柄代わって、日本の代表企業であるトヨタ自動車(写真:愛知県豊田市の本社)の株価が堅調だ。26日には、一時8998円と、またも上場来高値を更新した(終値は8906円)。
このまま堅調に推移すれば、トヨタとしては夢の「株価1万円」も期待できるかもしれない。ただ1万円載せを達成しても、長くは続かない(トヨタ自動車の源流企業である豊田自動織機は一足先に1万円越えを演じたが)。
なぜなら9月30日で、1株を5株に分割する株式分割するからだ。株価の価値は変わらないから、分割となれば株価は9月末の終値の5分の1になる。仮に1万円であっても、10月1日から2000円に逆戻りしてしまう。ここからさらに1万円を目指すとなるとさすがに非現実的と言わざるをえない。
◎個人株主を増やしたい
東証上場企業なら、経営者は誰でも株価1万円を望むだろう。マーケットから超優良企業のお墨付きを得たようなものだからだ。
なのに、トヨタはなぜわざわざ株価を5分の1に引き下げるような分割をするのか。
1つは東証からの、上場企業は個人でも1単元50万円程度で当該企業株を買えるように、という要請がある(それでも東証要請を無視するように、ファーストリテイリングの1単元で880万円も必要な株もある)。
またトヨタにしても、できるだけ多くの個人に自社株主になってほしいという希望があるのだろう。すでに償還されたが、2015年には高利率で限りなく債権的性格を持つ「AA型種類株」を発行している(15年7月16日付日記:「トヨタの新型種類株、開発・一手販売の野村證券は大成功の笑み」、15年7月5日付日記:「トヨタの新型種類株発行、そして女性役員逮捕の教訓」、及び15年6月14日付日記:「トヨタの発行予定の新型『AA型種類株』は買いか?」を参照)。
◎今の値段で5分割されたら18万円弱で買える
このAA型種類株(写真=同社からの通知)は、その後、発行する企業がなかったが、これなど株を買うのはどうも、と尻込みしがちな素人の個人に、ぜひトヨタの株主になってほしいという同社側の強い熱意の溢れた特殊な株だった。その旨味などは、前掲日記を参照されたい。
……というトヨタの強い希望が、今回の1株5分割の決定になったのだろう。一概には言えないが、個人には買いやすくなる(例えば昨日の終値で5分割されたら、1株約1780円だから、購入最低単位の1単元100株で、手数料は除いて17万8000円くらいで済む。現在の89万円超と比べれば、ボーナスでも簡単に買える)
さらに買いやすくなった分、需要を集め、株価はじり高になっていく可能性が強い。
ちなみに株価の目安を知る今期予想PERはたった10倍台、PBRも1倍台と超割安なのだ。
昨年の今日の日記:「武漢肺炎が浮き上がらせた医療費の無駄と不正」