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2021.05.30
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カテゴリ:生物学

 アメリカ東部ニューヨーク州周辺では、今年の夏はうるさくなりそうだ。
 武漢肺炎やヘイトクライムのことを言っているのではない。今年は、17年ゼミの出てくる年に当たるからだ。

​◎オスがメスを誘引するラブコール、ジャンボジェット機そば並みの騒音​
 数十億匹ものセミが、一斉に羽化して鳴く。そのうるささは耳を聾するばかりで、ジャンボジェット機そば並みの騒音という。むろん電話の声も、テレビの音声も聞こえない。
 次の世代を生むためにオスがメスを引き寄せるためのラブコールなのだ。17年も地下にいて、やっと地上に現れられるのはたった10日ほど。音を限りのラブコールも、17年ゼミのオスにとって当たり前である。
 だからアメリカ市民は、このやかましさにも意外と寛容だという。少したてば、また静寂が戻ってくるし、何よりも17年ぶりに地上に姿を現した17年ゼミを愛おしく思っているのだ。

​◎最大のバイオマス量​
 どれほど数が多いか。ある研究によると、森の中のある一定の面積に占める17年ゼミのバイオマス量は、同じ面積の牧草地が支えられるウシのバイオマス量を上回るという。この研究者によると、大発生した17年ゼミは、自然条件下での陸生動物の記録としては最大だそうだ(写真=前回2004年のメリーランド州で大発生した17年ゼミとその抜け殻)。







 他にも、13年ごとに地上に現れ、繁殖する13年ゼミもある。アメリカでは、17年ゼミや13年ゼミのように、長期の周期で一斉に大量発生するセミが知られている。
 17年、13年は、いずれも素数の年だから、これらをひっくるめて「素数ゼミ」とも言う。

​◎素数ゼミの生まれる仮説はあるが​
 それではなぜ素数なのか。これについて、僕は過去に何度か日記で取り上げた(文末の注を参照)。
 それは、進化生物学者スティーヴン・ジェイ・グールド(故人)の卓説を紹介したもので、グールドは、素数ゼミなら捕食者と出会いにくいので、それだけ生き延びる可能性が高いだろうと指摘した。今でも納得できると思えるが、日本の生物学者、吉村仁・静岡大教授も、素数ゼミなら、同時に発生する非素数のセミとかち合う可能性がそれだけ小さくなり、交雑することによる発生周期の乱れによる絶滅を免れやすいから、と指摘する。
 ただ、いずれにしても実験で確かめられるものではなく、仮説の域を出ない。

​◎氷河期を生き延びた知恵​
 昆虫であるセミの歴史は古く、哺乳類のヒトとは比べものにならない。おそらく今から2億年前にセミが姿を現した。
 変温動物のセミは、冬には生きられないので、成虫期間はできるだけ短くし、その間に生殖を手早く済ませ、幼生は暖かい地中で植物の根の栄養を吸って長く雌伏するという生活様式が生まれた。
 それでも、数百万年前から始まった氷河時代は、セミには試練だった。氷河期を生き延びるには、さらに地中での幼生時代を長くし、地上に現れても成虫は短くしたのだろう。
 それが、北米での17年ゼミや13年ゼミの進化となった。19年ゼミも素数だが、こちらは幼生期間が長すぎて、進化しなかった。17年ゼミは、その限界だったと思われる。それが、たまたま素数だったのだ。

​◇注 過去の17年ゼミについて述べた日記​
・13年6月14日付日記:「メキシコ周遊:17年ゼミとサボテンに寄生するカイガラムシ;ジャンル=生物学、紀行」
・07年8月15日付日記:「17年ゼミの謎、未解明のまま:素数、種分化、スティーヴン・ジェイ・グールド」
・07年6月10日付日記:「北米中西部の17年ゼミが演じる進化の妙:グールド、素数、アメリカ自然史博物館」

昨年の今日の日記:「香港の自由と民主主義を殺す国家安全法をスターリニスト中国のゴム印国会が採択、香港の若者たちに生命の危険」






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Last updated  2021.05.30 05:42:39



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