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カテゴリ:考古学
半世紀以上前のこと、北米の歴史を書き換える大発見があった。 カナダ、ニューファンドランド島で、ノルウェー人探検家ヘルゲ・イングスタッドと考古学者の妻アン・スタイン・イングスタッド(写真)が、1000年前の自らの祖先ヴァイキングが、新大陸に植民していたことを証明したランス・オー・メドゥー遺跡の発見である(地図)。 ◎ヴァイキングが大西洋を渡って現カナダに入植した遺跡 いくつもの住居址と道具類が見つかり、その中には当時新大陸では知られていなかった鉄の釘があり、コロンブス到達以前にヴァイキングが北米に入植していたことが確認された。イヌイットなど先住民は、鉄製品を作っていなかったのだ。 大西洋を駆け抜けたヴァイキングたちは、サガという散文物語を残していたが、それらの中の『グリーンランド人のサガ』、『赤毛のエイリクのサガ』で、レイフ・エリクソンの航海を詳しく述べ、エリクソンが大西洋の西の「ヴィンランド」に渡ったと記されていた(絵=ヴァイキング船による航海)。ランス・オー・メドゥー遺跡の発見は、サガの説話が事実であったことを確証した(写真=住居の復元された史跡公園)。 ◎西暦1000年前後のランス・オー・メドゥー さて、そのランス・オー・メドゥーの年代である。これまで多くの放射性炭素年代が測定され、ヴァイキングの同集落の定住は西暦990年から1050年までの短い期間に繁栄したと考えられていた。 このほど、西暦993年に発生した激しい太陽嵐の影響が残された痕が遺跡に残された木製品遺物で確認され、今からちょうど1000年前の西暦1021年にランス・オー・メドゥーのヴァイキング小集落の営みが確証された。イギリス週刊誌『ネイチャー』10月20日号に掲載された。 ◎ヴァイキングが木を伐りだした木片 ランス・オー・メドゥーが調査された時、住居建設や木製品製作に使用されたと見られる夥しい木片が遺跡に残されていた。それを使って、放射線炭素年代が測定されたが、考古学者たちは将来、もっと有望な方法が出てくることを予見し、それらが腐朽しないように冷凍保存された。 報告者の1人であるオランダ、フローニンゲン大学の考古学者マーゴット・クテムス氏は、その中から樹皮が付いたままのモミやビャクシンの木片を4本に注目した(写真)。いずれも、ヴァイキングが金属器(おそらく鉄器)で切り出し、住居の近くに放置していたものである。ヴァイキングの残した遺物と同一層位で見つかったうえ、金属器で加工されていたので、ヴァイキングの捨てたものに間違いなかった。 ◎激しい太陽嵐の痕跡を年輪に見つける 樹皮の付いていることも、重要だ。木の最外側の年輪が形成された時に伐採されたからで、その年輪の年代が分かれば、伐採年も分かる。そして内側に年輪をたどっていけば、途中の特徴のある年輪の年代が確定する。 4本の木片のうち3本は、西暦993年の時点で生きていた木のものだったのだ。この年に発生した太陽嵐によって放出された強烈な宇宙線は、地球に降り注いで世界中の木々の年輪に刻み込まれた。それは、「宇宙起源放射性炭素イベント」と呼ばれているが、このような現象は過去2000年間に2回――西暦993年と775年――しか発生していない珍しい現象だった。 この太陽嵐は、年輪の放射線炭素レベルを大きく変えてしまい、年代測定を約1世紀も歪めてしまうほどの「傷」を残した。この事実は、2012年になって初めて明らかにされた。 ◎1021年伐採と特定 研究チームは、西暦993年の太陽嵐によるスパイクを見つけようと、100本以上の年輪から丹念にサンプルを採取し、放射性炭素年代測定を行った。チームは上記3本の木片から、探していた「傷」を見つけたのだ。 こうなれば、後は簡単だ。外側に樹皮があれば、そこから西暦993年の太陽嵐が記録されている年輪との間の年輪を数えるだけだ。間には、28本の年輪があった。 ここから、木は遅くとも西暦1021年に伐採されたことが証明された。 つまりこの年、今からちょうど1000年前に、ヴァイキングはランス・オー・メドゥーで木を伐る活動を行っていたのだ。 ランス・オー・メドゥーは、約60年間、ヴァイキングにより居住された。その間、当然、子どもも生まれ、また孫も生まれたかもしれない。 この頃、北半球の気候は全般的に良好だったから、農作物を作り、家畜を飼育し、漁撈を行い、時には郷土まで船で往来を繰り返していたのに違いない。 昨年の今日の日記:「金融の巨人アリペイのアント・グループ、上海・香港株式市場の史上最大のIPOが上場2日前に急遽延期の驚き」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202011070000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.11.07 06:28:29
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