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カテゴリ:教育
先月29日、アメリカ最高裁は、ハーヴァード大学とノースウエスタン大学の積極的差別是正処置(アファーマティブアクション)を違憲、とする決定を行った(写真=上はハーヴァード大、下はノースウエスタン大)。日本でもこのニュースは、アメリカ最高裁の保守化のもう1つの現れとして報道された。 ◎黒人とヒスパニックを入試で優遇 民主党・バイデン政権は決定を厳しく批判し、さらにはそのやり玉に挙げられた形の東部の最高峰大学であるアイビーリーグ8大学の学長もの遺憾の意を表明した。日本でも、進歩的メディアを中心に批判的論陣が展開された。 ただ僕は、最高裁の決定にも、批判派の論陣にも、強い違和感を感じた。 アファーマティブアクションは、黒人の公民権運動の高まりで全米の主要大学で導入されている措置だ。早く言えば、社会的に差別されている黒人とヒスパニックに入試で下駄を履かせ、優先的に入学を認めるというものだ。これに対して、この措置の対象外の白人とアジア系は、人種逆差別として早くから批判の声を挙げ、一部が提訴に踏み切ったわけだ。特に勤勉とされるアジア系にとって怒りの声は大きい。 ◎実は恩恵に浴すのは富裕層 しかし声明を出したアイビーリーグ8大学やアファーマティブアクションを採用する大学は、偽善的とも言える。なぜなら人種間の差別是正措置であって、人種内の格差是正措置では全くなく、格差は放置したままだからだ。 例えば前記アイビーリーグ8大学の学生は6.8万人ほどだ。一方、大学在籍者に相当する全米の18歳~24歳の若者は3100万人もいる。すなちわアイビーリーグ学生は0.2%ほどの特権階層なのだ。 そしてこれらの大学の学費は、近年の値上げに次ぐ値上げで天文学的に高くなっている。1年間の学費は、日本円にして1000万円を超す。奨学金制度があるとはいえ、これは中産階級以下の層には、事実上の締め出しに近い。 したがって、アファーマティブアクションの恩恵に与れるのは、黒人とヒスパニックの富裕層である。 これって、全然、アファーマティブアクションの理念に反していないのか? ◎スポーツ推薦の恩恵の多くは白人富裕層の子弟 しかもハーヴァード大などアイビーリーグの名門大学には、様々な優先入学枠がある。スポーツ、レガシー、学長、教職員の子弟の4つだ。ハーヴァード大の入学者の実に43%は、これら4つからの推薦者でという。日本なら、マスコミからさんざん叩かれるだろう。 例えばハーヴァード大学は、スポーツでも全米有数の強さを誇る。ボート、ラクロス、セーリング、バスケ、アイスホッケーなどは強豪校だ。 かつてオリンピックに出る選手の多くがハーヴァードの学生だったという時代もあった。これまでにオリンピックで同大生が獲得したメダルの数は100を超えるという。 こうした種目で実績を挙げられるのは、富裕層の子弟だけだ。実際、スポーツ推薦で入学するバスケの選手の65%は白人だ。プロバスケットチームのレギュラーの大半が黒人で占められているように世間一般のバスケの優秀選手は黒人、という見方と大きく異なる。 ◎トランプ前大統領の娘婿の父はハーヴァードに250万ドルもの巨額寄付 2番目のレガシー推薦とは、要するに有力卒業生の子弟の推薦入学である。エリート再生産の最たる例だが、むろんこの推薦も白人が圧倒的だ。 3番目の学長推薦とは、大学に多額の寄付をした人の子どものことだ。有名なその一例が、トランプ前大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー氏だ(写真=妻のイヴァンカさんと)。父のチャールズ・クシュナー氏はハーヴァード大に250万ドル(約3億5000万円)もの寄付をした。だからハーヴァード大は、世界1財政豊かな大学で、同大のファンドの寄金額は530億ドル(約7兆4000億円)にものぼる。 むろんこの学長推薦の対象になれるのも、ジャレッド・クシュナー氏のように富裕な白人の子弟である。 ◎極めつき、教職員子弟推薦、つまりコネ入学 4番目の教職員の子弟推薦枠も、エリート再生産の典型で、こちらも富裕な白人が圧倒的だ。呼称はいいが、つまりはコネ入学ということになる。日本なら、マスコミの好餌になる不正入試だ。 つまり、ハーヴァード大の、そして東部の名門アイビーリーグも、アファーマティブアクションとは、ただの目くらまし、もっと言えば二枚舌のようにしか思えない。世間的にかっこよく見せているが、その実は富裕層のための優先措置を何重にも設けている。 ならば、アファーマティブアクションなどやめて、優秀で勤勉なアジア系が成績に見合ってもっと多数入学できるようにした方がよほど平等である。 昨年の今日の日記:「巨大ヒグマが本州にいた時代(上):2~3万年前の化石のヒグマは北海道の現ヒグマよりずっと大きく肉食性」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207230000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.07.23 05:27:35
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