|
カテゴリ:気象・気候
内戦が続き、事実上、国家が分裂状態の北アフリカのリビア東部で、洪水が発生、死者5000人超、行方不明者も1万人を越えると報じられている。 ◎確かに異常気象だが、それだけではないリビアの洪水 人口約12万5000人の東部デルナの1地区で1700人、別の地区で500人が死亡したとも言われる。 同地域を支配するリビア国民軍(LNA)の当局者は、これまでに1000体以上の遺体が収容されたと明らかにし、「町の25%が消失したと言っても過言ではない。多くのビルが倒壊した」と述べた。 確かに大洪水だったのだろう。地球温暖化で、豪雨をもたらす低気圧などが発達する傾向があり、気象災害はどこでも起こり、また被害も大きくなっている。記憶の新しいところでは、ハワイ、マウイ島の大規模な山火事では、広大な住宅地も焼け野原になり、100人以上の死者が出ている。これも、長く続いた異常な乾燥気候が遠因とされる。 ◎国土の森林面積はたった0.12%のリビア さて、リビアの洪水に立ち戻れば、僕にはまさに「異常」としか思えなかった。 まずリビアは広大なサハラ砂漠の北部にあり、全国土はほぼ砂漠である。2020年の世界の森林面積率では、リビアは233カ国・地域のうちワーストに近い222位で、森林面積は国土のたった0.12%しかない。 実際、Google地図で、リビアを見てみた。全土がほとんど茶色で、北東部の地中海に突き出た半島部の山岳部だけがわずかに森林が残っている。冒頭のディルナはこの辺りであり(↓を付けた所)、それでも大洪水に見舞われた(写真)。 ◎雨の降らない砂漠でも何十年に1度かは大雨 リビアはほとんど全土が砂漠と言っていい。隣国のエジプトは、ナイル川流域に森が広がっているのでまだ救いようがあるが、リビアのようにこれだけ緑地がないと、土地の保水率はゼロに近く、ちょっとした大雨でも、低いワジ(枯れ川)に水が流れ込み、鉄砲水となる。 砂漠は、降水量が極端に少ないから形成される。しかしそうした砂漠でも、稀に、例えば何十年に1度か大量の雨が降ることがある。その時が、危ないのだ。 よほどの機会が無いと砂漠を歩くことはないだろうが、時々旅行で砂漠を行くことがある。アメリカ、モハーヴェ砂漠やエチオピア、ダナキル砂漠、中東などだ。 ◎森は命を守る自然のガード役 以前に行ったヨルダンの世界遺産ペトラは、まさにそんな土地で、有名なエル・ハズネに向かう、両側を断崖に囲まれた狭い回廊シークを行く時、雨が降らないことを祈ったものだ(写真)。 実際、ここを濁流として流れ込んだ鉄砲水で、観光客が2桁の単位で亡くなる水難事故が起きている(18年11月11日付日記:「世界遺産のヨルダン、ペトラ遺跡での大激流と砂漠景観のワディ(涸れ川)の危険性、320万年前のヒト族の犠牲を例に」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201811110000/、及び17年8月4日付日記:「イスラエル・ヨルダンの旅(9);先史時代ペトラの集中豪雨禍、砂漠のワジに 『トンネル』建設で洪水を排水・分流した工夫」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201708040000/を参照)。 森は貴重だ。それが無いか失われた地域では、水害の備えが欠かせない。 昨年の今日の日記:「エチオピア紀行(176):外観だけ参観の聖ゲオルギウス大聖堂と次のエチオピア国立博物館へはやる心」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202209140000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.09.14 05:39:28
[気象・気候] カテゴリの最新記事
|