政治、現代史、進化生物学、人類学・考古学、旅行、映画、メディアなどのブログ

全5206件 (5206件中 701-750件目)

< 1 ... 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 >

• 

  エチオピア紀行（１８５）：ＮＭＥ＝古いばかりではない、６０万年前のホミニン頭蓋のボドの謎

  　これまでは数百万年前レベルのホミニンの展示だった。　各年代段階のホミニン化石が揃っているエチオピアだが、ケニアに一歩譲るところもある。　地層の関係で適当な遺跡がない、つまりケニア並みの年代の地層が河谷などで露出する所の少ないエチオピアには、目立ったホモ・ハビリス、ホモ・エレクトス化石がないのだ。​◎ミドル・アワシュで発見されたホミニン化石​　今後、エチオピアで育った古人類学者たちが本気で探せば、いずれは続々と見つかることだろう（僕がＮＭＥを訪れた４年後にエチオピアでも１００数十万年前のホモ・エレクトス化石の発見が報告されている）。​　だからパラントロプス・エチオピクスの後には、展示はずっと新しい「ボド」化石になる（​写真​）。　ボド頭蓋は、ミドル・アワシュで１９７６年に発見された。この頃、アメリカのドナルド・ジョハンソンらがハダールで展開して、ルーシーなどのアウストラロピテクス・アファレンシス化石を見つけるが、別の一隊はもっと新しい地層のミドル・アワシュで調査していた。​◎脳容量１２５０㏄のボド​　こちらの隊は、ジョハンソンらの見つけたルーシーのような目を見張るような大発見はなかったが、今では貴重な頭蓋、ボド頭蓋を見つけた。　これは、アシューリアン石器などと共に見つかり、年代は６０万年前頃だった。　この頃になると、もうアフリカにはホモ・エレクトスはいなくなった。アジアには北京原人やジャワ原人（ピテカントロプス）が残っていたのに。　おそらくアフリカのホモ・エレクトスから１００万年前以降に派生分岐したホミニンである。　ボドは、ホモ・エレクトスよりも明らかに進化していた。脳容量は１２５０㏄もあり、ここからホモ・ハイデルベルゲンシスと分類されている。​◎頭蓋に石器で肉を削ぎ取られた跡​　製作していた石器は、ホモ・エレクトスと同じハンドアックス主体のアシュール文化だが、ホモ・エレクトスのハンドアックスより薄く加工され、洗練化されていた。　ホモ・ハイデルベルゲンシスで重要なのは、彼らの一派はヨーロッパにも拡散していたが（ここからネアンデルタール人が分岐進化した）、残ったアフリカの集団から後にホモ・サピエンスが分岐進化してきたことだ。　ボドで特筆すべきは、頭蓋の一部に、鋭利な石器で肉を削ぎ取られた跡の微妙な石器の石器の切り傷が見られたことだ。　僕も、ガラスケース越しに観察したが、やはり近くで観察できなたわけではないので、その痕跡を見つけることはできなかった。​◎死者を悼む何らかの儀礼行為？​　切り傷の意味は、今も確定的な答えはない。一部には食人（カニバリズム）という人もいるが、食うためなら頭蓋よりも首から下の身体部の方が肉がある。また頭蓋なら脂肪に富む脳の方が、ごちそうだ。脳を取り出すためにこじ開けた形跡はない。だから食人とは思えない。　ちなみに顔面骨の傷は、ずっと新しいホモ・サピエンス・イダルツ（９月１７日付日記：「エチオピア紀行（１７７）：ＮＭＥ＝ホモ・サピエンス・イダルツ頭蓋；古人類の測定年代は正しいか、論争の的となったイノシシ化石」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202209170000/を参照）にも認められた。​　ホモ・サピエンス・イダルツ（写真）の場合、年代の新しい（１６万年前頃）こともあり、儀礼的行為が推定された。死者を悼み、顔面に何かの変工を加えたのだろう。​　ボドもそれだとすると、死者を悼む儀礼は、古ければボドの頃にまで遡るということになる。​昨年の今日の日記：「矛盾だらけで悪評ふんぷんの岸田『１０万円』給付」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111190000/​

  2022.11.19

• 

  大西洋の荒波打ち付ける断崖の上に三重の石壁を積み上げた３０００年前のドン・エンガス遺跡

  ​　日経日曜版最終面のナショジオ提供の世界の景観には、なかなか行けない遺跡・名所などがいつも大画面写真で紹介され、感動させられる。去る６日付けは、「断崖の古代遺跡」と銘打った「ドン・エンガス」であった。アイルランドのイニシュモア島の大西洋に面した絶壁に三重に石壁を積み上げた巨大な半円形遺構だ（写真）。◎大西洋の荒波の打ち付ける断崖の上に半円形の石積み​​　どことなく、昔観た「チャコ・キャニオン」遺跡の約１０００年前前後に築かれた、アナサジ文化の巨大石壁遺構「プエブロ・ボニート」と似ている（写真）。しかしプエブロ・ボニートよりも年数は３倍も古いのに、保存は良さそうだ。​　しかし短い記事によると、ドン・エンガス遺跡は、３０００年前頃に築かれたものという。息を飲むのは、石を積み上げて半円形のエンクロージャー（囲壁）の残り半分は、波の打ち寄せる大西洋だということだ。しかも海面から１００メートルの切り立った断崖上にある。　石壁は、外側ほど高くなる三重に築かれている。　どう見ても、砦である。農耕牧畜の始まっていた時代だ。三重の石の囲壁は、外部からの襲撃に集落の人々が守るべきもの――家畜か穀物――のあったことを雄弁に物語っている。​◎３１００年前から建造開始​　ドン・エンガス遺跡には、訪れたことはない。地図で見ると、アイルランド本島の西岸沖に浮かぶイニシュモア島にあり、ロンドンを起点にすると、そこまで行くのに往復で３日はかかりそうだ。行ってみたいが、たぶん行けない。　それだけに興味が湧く。　調べてみると、最初に建設を開始されたのは、紀元前１１００年頃で、紀元前５００年頃には三重壁が完成したようだ。青銅器時代から鉄器時代にかけてのことだ。　ドン・エンガスを築いた人々は、堅固に守られた石壁内でヒツジを飼っていただろう。ただアイルランド沖の風の強いイニシュモア島という気候環境から、ムギを栽培できたかは分からない。後のアイルランド人の主食になるジャガイモは、まだヨーロッパには伝来していない。栽培できても、雑穀程度だったに違いない。​◎寒風吹きすさぶこんな地に​​　ただドン・エンガス遺跡より年代的に古く、より厳しい気候環境だったはずのオークニー諸島の新石器時代「スカラ・ブレ」遺跡（写真）で、部分的に大麦が栽培されていたらしい種子が見つかっており、一部、大麦が栽培されていたかもしれない。​　ドン・エンガス遺跡を残した人々は、石の囲壁内に居住していたに違いないが、生産性が極端に低かったはずのこんな気候環境下でどれだけの人が住んでいたのか、などにも連想は行く。しかしある程度の人口がなければ、石壁を積むこともできなかったに違いない。昨年の今日の日記：「立憲民主党の新代表は共産党とは手を切れない？　しかし共産党との連携は転落の道」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111180000/​

  2022.11.18

• 

  アメリカ中間選挙で敗北したのはトランプ前大統領、２０２４年の大統領復活はまず無理

  　アメリカ中間選挙は、前にも述べたように、予想外の民主党の善戦、共和党の伸び悩みとなった（１１月１１日付日記：「アメリカ中間選挙、議席減でも民主善戦という評価、共和伸び悩みでトランプ旋風起こらず」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202211110000/を参照）。​◎上院で民主党が優位を占める予想外の事態​​　注目の上院選は、１２月の再選挙となったジョージア州以外、最後まで接戦だったアリゾナ州とネバダ州で民主党候補が共和党候補を振り切り勝利した。これで、上院の民主党議席は５０議席にのり、ジョージア州の帰趨いかんにかかわらず、上院の民主党多数が決まった。仮にジョージア州で民主党が負けて５０議席対５０議席になっても、議長を務めるハリス副大統領（民主党）が最後に１票を行使できるからだ（写真＝選挙での好調に喜ぶハリス副大統領とバイデン大統領）。​　さて、予想外の共和党の伸び悩みを象徴するのが、前記の西部のアリゾナ州、ネバダ州の結果である。僅差で敗れた共和党候補は、いずれもトランプ前大統領の推薦を受けた「トランプ派」だったからだ。​◎上院接戦州でトランプ派は１勝４敗​　選挙前、政治サイトのＲＣＰが分析では、上院選では８州で民主党と共和党が接戦、拮抗だった。うち６州はトランプ氏推薦の「トランプ派」だった。うち勝利したのは、現職の再選されたウィスコンシン州だけだ。　他の５州で、ジョージア州は前記のとおりだが、東部のニューハンプシャー州とペンシルベニア州、そして前記の西部２州はトランプ派が敗退した。　接戦州でトランプ派が敗れたのは、これも冒頭に掲げた１１日付日記で述べたが、無党派層がトランプ氏への懸念から民主党に流れたからだろう。接戦では、わずかな票の移動でも、結果を左右するのだ。その証拠に、前記西部２州は一時は共和党がリードしていたのに、最後の最後に無党派層のトランプ懸念派が郵便投票が開票されたことによる逆転の民主党勝利となった。​◎下院でも予想外の接戦、崩壊したトランプ神話​　下院選でも、選挙前の共和党大勝の予想に反し、意外の接戦となっている。共和党は過半数制覇にあと１歩と迫っているが、民主党との議席差はひょっとすると１桁に落ち込む可能性がある。​​　この結果で、共和党内ににわかに反トランプの声が高まってきた。今までトランプ氏の睨みに恐れていたトランプ懐疑派の共和党議員たちが一斉に声を挙げ出したのだ（写真＝相変わらず選挙結果を認めないトランプ氏。今回も惜敗した自派候補の選挙は「盗まれた」と妄想主張）。　１４日には、前副大統領のペンス氏も、トランプ氏の選挙運動を批判し、自らの次期大統領選出馬に含みを残した（写真）。​​　トランプ氏は１５日、次期大統領選への出馬を表明したが、共和党の大統領候補の指名獲得、大統領選本選に勝ち上がるのは容易ではない。　上院選接戦州の結果から、たとえトランプ氏が大統領候補の指名争いに勝利しても、懐疑派から、大統領選本選で接戦州の代議員争いでトランプ氏が敗れ、勝利できないという可能性が意識されたからだ。　中間選挙結果は、まさに予想外の結果を生み出した。この審判によって、トランプ氏の次期大統領の芽は確実に摘まれた、と僕は見ている。​昨年の今日の日記：「ダーウィンが発見した南米の絶滅した地上性オオナマケモノと現生の樹上性ナマケモノ２種との運命の別れ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111170000/​

  2022.11.17

• 

  みずほＦＧ、増配発表で配当狙い投資には魅力的

  ​　みずほフィナンシャルグループ（みずほＦＧ：写真＝同社本社が入居する大手町タワー）が１４日、年間配当を１株８５円と、５円増配を決めた。​◎配当利回り５．２６％は魅力的​　そのみずほＦＧの株価は、昨日１５日の終値は、増配を歓迎して１％強値上がりし、１６１５．５円だった。値上がり結果で計算すると、配当利回りは税込みで５．２６％になる。　これは、いかなる金融商品よりも（僕が常に推奨するＲＥＩＴの大半よりも）高利回りだ。　もっとも、相手は株だ。減配、無配になるリスク、最悪、会社倒産のリスクもある。　しかしみずほＦＧは、第３位とはいえ、日本の３メガバンクの１つである。倒産は、よほどのことがない限り、考えなくてもよいのではないか。同様に、無配転落という事態も考えにくい。むしろ減配リスクは考えておいた方がいいかもしれない。​◎資産株として配当狙いなら極めて魅力的​　ただみずほＦＧは、このところ一貫して増配してきている。減配リスクより増配期待の方が高い、と僕は考える。　そう考えると資産株として長く保有し、配当を楽しみにするのなら、極めて魅力的と言えるかもしれない。　ただ株購入で一番避けるべきは、高値づかみである。投資家のほとんどが、その陥穽にはまる。　ある株を買いたいと思うのは、力強く値上がりする局面だ。その勢いを見ると、どうしてもいったん下げた押し目で買いたいと思ってしまう。よくあることだが、それは「罠」で、結果として高値局面の一時的調整であり、いったん反発しても、さらに下げ、買値を割って、含み損になってしまう。僕が持つ株の半分近くは、買値割れで含み損だが、見事にその陥穽にはまった例である。　しかしみずほＦＧの場合は、株価の高騰は期待しづらい。同社投資は、高利回りの配当狙いと割り切るべきだ。​◎狙いは年に何度かの１５００円割れの時​　それならば、どうするか。高値づかみを避け、できるだけ安値で買いたい。​　同社株の１年間のチャートを見ると（図）、暴騰もしない代わりに暴落もせず、緩やかな右肩上がりをしながらも、微少な幅の上げ下げを繰り返していることが分かる。そして、市場が全般に軟調な時にそれにつられて１５００円くらいの安値を付ける時が時々あることに気づく。​　だから一気に買うのでなく、例えば１５００円割れしたらという条件で、最低単元（１００株）でコツコツ買っていけばいい。もし平均１５００円で買えれば、８５円配当なら、５．６７％の利回りだ。しかもこの値段なら、わずかでも含み益が出来る可能性が高い。含み益が出来れば、投資家たる者、気分がいいものだ。​◎かつては１単元を１万円台で買えたが​　かつて同社は、１単元が１万円台で買えたが、１年前だったか、１０株を１株に株式併合し、株価が１０倍になってしまった。　おかげで今は１０数万円を出さなければ１単元を買えないことになった。それでも東証上場銘柄では、１０数万円台で買える少ない銘柄である。　ネット証券には、１株から買える所もある。１０株にしたところで、小遣いの範囲で買える。安いところでコツコツと買い増ししていくのが、極意である。注　容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。　写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。​昨年の今日の日記：「雌を獲得するための表徴いろいろ：ムスリム男性の髭とオランウータンのフランジ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111160000/​

  2022.11.16

• 

  ヘルソン市にウクライナ防衛軍戻り、テロリスト政権（エストニア指定）の重罪犯徴募兵に残酷な私刑の暴露

  　ウクライナ防衛軍が１２日、ロシア侵略軍の撤退したドニェープル川右岸のヘンソン州州都ルソン市に入った。侵略軍に占領されて以来、８カ月ぶりの奪還である。多くの市民がロシア側に拉致されているが、残った市民たちがウクライナ国旗を手にしたり身につけたりして、ウクライナ防衛軍を歓迎した。​◎唯一の橋を爆破し、再侵攻を不可能にしたロシア侵略軍​　ヘルソン市を含むヘルソン州を他の南部３州と共にロシアに一方的に併合し、１０月４日に派手な式典を開いたプーチンは、無言のままだ。ヘルソン放棄を認めたくないのだろう。​　注目すべきは、撤退に際してロシア侵略軍はドニェープル川にかかるアントノフスキー橋（写真）を爆破して落橋させたことだ。同橋は、ヘルソンからドニェープル川左岸（東岸）の親ロシア派の支配地に渡る唯一の橋だ。ウクライナ防衛軍の追撃を防ぐためだろうが、これはロシア侵略軍はヘルソン市への再侵攻を諦めたことを示す。再侵攻の意図があれば、橋は迎え撃つ備えを固めたうえで、そのままにしておいたはずだ。​　ロシア侵略軍は、再侵攻は諦め、ドニェープル川を挟んで、ウクライナ防衛軍との睨み合いの態勢に入るつもりなのだろう。​◎徴募の殺人犯兵士をワグネルが私刑​　さて、刑務所で受刑中の重罪犯をいち早く侵略軍に徴募し、最前線に送り込んでいるロシアの民間軍事会社「ワグネル」が、この度、徴募した兵を「裏切り者」として処刑する動画がインターネット上で流れているという。ロシアの在外・独立系メディア「メドゥーザ」などが１３日、報じた。守勢に回るロシア侵略軍が、私刑（リンチ）によって内部引き締めを図っている。​　元の動画は、ワグネルと関係が深いとされるニュースサイト「グレーゾーン」が前日の１２日、テレグラムで「報復のハンマー」と題して公開した。頭部をハンマーで殴打されて殺されたとみられるこの男性は、「エブゲニー・ヌージン」と自ら名乗っている（写真）。５５歳というヌージン氏は、殺人罪で２４年の禁錮刑判決を受けてロシア西部リャザン州の刑務所で服役中だったが、今夏、ワグネルの勧誘に応じて傭兵になった。​​◎ウクライナ側に投降も拉致されてワグネルに連れ戻され​　ところがヌージン氏には、そもそも本気で戦闘するつもりがなかったらしく、侵略軍参加後に早々に投降し、９月にはウクライナ・メディアの取材に「ウクライナ側で戦う」と語っていた。　ヌージン氏がどのようにしてロシア側へ連れ戻されたかは不明だが、動画内では９月にウクライナ側へ寝返ったことや、１０月半ばに首都キーウでロシア側に拉致されたことなどを独白している。約１分２０秒の動画の終盤、ヌージン氏は頭部をハンマーで２回殴打されて死亡した。​◎捨て駒にされる重罪犯兵士たち​​　ロイター通信の取材に対し、ワグネル創設者のプリゴジン（写真＝傭兵部隊を見るプリゴジン）は、「この動画は『犬は犬死にする』と題されるべきだ」と語り、殺害へのワグネルの関与を隠さなかった。開き直って、法的手続きを経ずに一方的な私刑で死亡させる行為を「公正」と正当化した。​　ワグネルが徴募した重罪犯部隊は、最前線で身を隠すウクライナ防衛軍部隊のあぶり出しとして、標的としてさらされているとも言われる（１１月９日付日記：「ボロボロのロシア侵略軍、ついに戦闘する自軍後方に「退却阻止部隊」と最前線に投入される重罪受刑者」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202211090000/を参照）。​◎エストニアがプーチン政権を「テロリスト政権」、ロシアを「テロ支援国家」に指定​　最後に、第２次世界大戦前夜に武力でソビエト連邦に併合された過去を持つバルト３国の１つの エストニアの議会が１０月１８日、ロシアがウクライナ４州を一方的に併合したことを受け、プーチン政権を「テロリスト政権」、ロシアを「テロ支援国家」に指定したことを付記しておく。 ​昨年の今日の日記：「原油、天然ガスの高値の時代へ、長期的に供給源は明らかだから、これぞグリーンフレーションへ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111150000/​

  2022.11.15

• 

  遅まきながら「日の丸半導体」巻き返しへ、トヨタなど有力８社が出資して次世代半導体国産化の会社「ラピダス」発足

  　一時期、世界を席巻した半導体不足と、スターリニスト中国による台湾侵略の危険性の高まりで、日本は再び半導体再興にむけて踏み出した。​　１１日、トヨタやソニーグループ、ＮＴＴなど有力８社が出資して、５年後の２０２７年に次世代最先端半導体国産化を目指す「ラピダス」を立ち上げた（写真＝発表の場で握手する小池淳義社長＝左＝と東哲郎会長）。　８社はまず計７３億円を出資する。政府も７００億円の補助金を出す。１０年間で５兆円を設備投資に充てる計画という。​◎かつて世界１の半導体王国だった日本が凋落​​　かつて１９８０年代には、日本は世界１の半導体王国で、世界シェアの５割を握っていた。それが、今は激しい凋落ぶりで、台湾積体電路製造（ＴＳＭＣ：写真＝台中の最新鋭工場）と韓国のサムスン電子のに２強に最先端半導体（回路線幅３ナノ）を制されている。​　日本のルネサスエレクトロニクスの作る汎用品は回路線幅が４０ナノ以上で、ＴＳＭＣを熊本に誘致して作る半導体も１２～２８ナノと成熟品だ。ＴＳＭＣは、熊本にはハナから最先端半導体を作るつもりはなかった。　日本が凋落したのは、日米半導体摩擦で頭を押さえつけられたこと。その間、台湾、韓国勢が隙をついて研究開発投資を行った。半導体にはシリコンサイクルで、３年に１度くらいの不況期は避けられない。日本勢は、その間、首を縮めるだけで投資をサボったが、台湾、韓国勢は、ここぞと、不況期にも投資を緩めなかった。気がつけば、日本勢ははるかに後景に退き、各社は巨額の赤字を出した。​◎めまぐるしく変わる変化と兆円単位の投資に耐えられるか​　ここに来て、やっと産業安保から、最先端半導体の国産化の重要性が官民ともに認識され、国産化に乗り出すことになった。　ただ、前途は楽観できない。冒頭でも書いたが、ラピダスの投資計画は１０年で５兆円だ。ＴＳＭＣもサムスンも、毎年、兆円単位の投資を繰り返している。投資競争に後れを取れる心配がある。　また政府が関与し、８社が相乗り、というのも、素早い投資判断に劣後する恐れがある。　かつて左前になった日立、ＮＥＣ、三菱電機の半導体事業を、最後の生き残りをかけて作ったエルピーダメモリには、政府も国の資金を注ぎ込んで「半導体戦争」に参戦したが、結局、寄り合い所帯のお上頼み体質のために競争に敗れ、１０年前に会社更生法申請に追い込まれている。この破綻で、国は注ぎ込んだ２８０億円が損失となった。​◎ＴＳＭＣやサムスンの後塵を拝して大丈夫？​　ラピダスの目指すのは、ＴＳＭＣとサムスンが２５年にも量産を計画する２ナノ品だ。ただし、計画通りに行っても２ナノ品の国産化は、その２年後になる。ＴＳＭＣとサムスンに美味しい所を取られている恐れがある。　しかし、１０ナノ未満の先端半導体の９割は台湾で作られている現実は、なおざりできない。万一、台湾有事になったら、ほとんどの製造業が半導体不足で立ち往生する。　ヨチヨチ歩きだが、何とかラピダスにはぶじに立ち上がって、力を出してほしい。​昨年の今日の日記：「南大西洋の絶海の孤島に棲み１９世紀に絶滅したオオカミ、先史ヤーガン族に舟に乗せられて孤島に連れて行かれたか、フォークランドオオカミ物語（後編）」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111140000/​

  2022.11.14

• 

  山際氏、そして葉梨氏と大臣辞任ドミノに見る岸田グズのアタフタぶり、３年もつのか？

  　岸田グズは、本当にグズだ。しかも子分議員にとって、自分を最後まで守ってくれない薄情な親分でもある。不用意発言で法相を棒に振った葉梨康弘氏は、きっとそう思っているに違いない。​◎朝、死刑に押印したのが昼にニュースになるだけ、とジョークが命取りに​　発端は、葉梨氏が９日夜、同じ岸田派議員のパーティーで、「法務大臣は、朝死刑のハンコを押して、昼のニュースになるのはそういう時だけという地味な役職だ」と発言したというもの。それを、音声と共に録画されて、翌日、各紙に載った。　録画を観る限り、くだけた雰囲気のパーティーで、笑いを取ろうとジョークを言ったようにしか思えない。悪気はあったわけではない（ただし、法務省の役人や職員は、あまり気分良くは受け止められないだろう）。それに、現実はその通りだし。　これが、１０月２４日に旧統一教会との関係が相次いで明らかになって経済再生相を更迭された山際大志郎氏の「次」を狙っていたマスコミと野党に食いつかれた。​　葉梨氏は、翌日、さっそく記者会見で謝罪と説明を行ったが（写真）、それから過去にも同じ発言をしていたことなどが明らかになり、ついに２日後の１１日夕方、引導を渡されたうえで辞表を出した。​◎今回も露呈、決断力の無さ​　この経緯を見ていて、僕には岸田のなんと判断力、決断力がないのか、と改めて痛感した。発言のＴＰＯを見れば、ふだんは笑い話で済む話だ。せいぜい「発言には気をつけろよ」で済むだろう。​　だから岸田も、最初はそう思い、葉梨氏を擁護して法相続投を明言していた。ところが、だんだん野党の声が大きくなり、国会審議にも影響が及びそうになると、とたんに腰砕けとなった。１１日朝、葉梨氏と電話で話し、そこで辞表を出させることに決まったようだ（写真＝葉梨氏辞任を発表する岸田）。​　その日の朝まで、岸田グズは葉梨氏続投を明言し続けていた。　それが、一転、引導渡しである。「人の言うことをよく聞く」のだろうが、決断力の無さが、今回も露呈した。​◎次は寺田氏？　もう後がない岸田​　逃げるように、岸田は東南アジアに飛び立ったが、これでまたも支持率は低下する。せっかくバラマキ大型補正予算で人気を釣ろうとしたのに、もはや威力はない。​　次は、政治資金問題でやり玉にあがっている寺田稔総務相が、ヤバい。野党とマスコミは、次の「人身御供」として、寺田氏に照準を当てている（写真）。寺田氏が、岸田派だということも、狙い目だ。​　寺田氏まで辞任となったら、岸田グズに後はなくなる。昨年の総選挙の勝利で、「黄金の３年間」を手に入れたと言われていたが、へたをすると来年春の解散総選挙も無い話ではなくなったと思う。​昨年の今日の日記：「南大西洋の絶海の孤島に棲み１９世紀に絶滅したオオカミ、先史ヤーガン族に舟に乗せられて孤島に連れて行かれたか、フォークランドオオカミ物語（前編）」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111130000/​

  2022.11.13

• 

  ロシア侵略軍、ヘルソン市から撤退へ；核兵器は使えない

  　ロシア侵略軍が、軍事侵略して占領したウクライナ南部、ヘルソン州の州都ヘルソン市から撤退する。ウクライナ防衛軍の攻勢を受け、ドニェープル川右岸（西岸）から左岸（東岸）に逃避する。​◎右岸の兵士たちを安全に待避させるため、というが​​　ロシアの国防相ショイグが９日、侵略を統括する総司令官スロビキン（写真＝１０月に任命されたばかりのスロビキン）の提案を受け入れる形で撤退を認めた。ヘルソン市内と周辺に、約１０００人のロシア侵略軍兵士が残っていると見られ、孤立してウクライナ防衛軍に殲滅させられることを防ぐために逃亡する。　この意味は、大きい。　ヘルソン市を含むドニェープル川右岸は、１０月初めにプーチンがウクライナ南部４州の併合の文書に署名し、正式に「ロシア領」とした所だ。　ロシア領だから、そこを攻撃され、占領されれば（ウクライナから見れば、奪還だが）、領土防衛のために核兵器使用も辞さず、とプーチンが威嚇してきた。​◎「核」を使えば黒海艦隊全滅​​　ところがその舌の根も乾かないうちに、その「ロシア領土」の一部を、あっさりとウクライナに明け渡す。死に物狂いの防衛戦をするだろうと警戒していたウクライナ防衛軍にはやや拍子抜けに近い対応だろう（写真＝侵略軍に向けて砲撃するウクライナ防衛軍、ヘルソン州で）。​　さんざん威嚇した戦術核兵器を、撤収に際して使わないのは、事実上、その使用が封止されていることを示すのかもしれない。ＮＡＴＯなどは、いざ戦術核兵器が使われた場合、ＮＡＴＯ軍を動員してロシア黒海艦隊を壊滅させることを想定している。　ロシア侵略軍がこれに反撃すれば、ロシア侵略軍対ウクライナ防衛軍の戦いが、ロシア侵略軍対ウクライナ防衛軍＋ＮＡＴＯ軍に拡大する。こうなれば、ロシアはひとたまりもない。冷静に考えれば、とうてい戦術核兵器は使えないのだ。​◎損耗の激しいロシア侵略軍​　しかし、それほどロシア侵略軍の損耗は激しいのだろう。僕はこの間、外電などから、ウクライナ派遣のロシア侵略軍に、前線で戦う自軍の退却を防ぐための「阻止部隊」の設置や、にもかかわらず最前線の侵略軍部隊に戦闘拒否の動きが広がっていること、そしてついに足りない兵士の補充のために国家自らが重罪受刑者の徴兵と前線送りを決めたことなどを述べてきた。その最中に、デタラメな部隊運用で一個大隊の９割の５００人以上を戦死させるなどの失態も続いている。　チェチェン軍事侵攻で勇猛をはせたスロビキンにしても、あまりにも体たらくな自軍侵略軍を頼みに足らずと呆れているに違いない。​◎雑多な兵士たちで統制取れない？​​　ロシア侵略軍には、正規軍以外に、ラムザン・カディロフ率いるチェチェン人私兵部隊（写真＝私兵部隊を従えて演説するカディロフ）、民間軍事会社「ワグネル」の囚人を含めた徴募兵部隊、シリアなどから募兵したイスラム外人部隊などが入り乱れていて、互いに協調・統制を取れていないと言われる。​　ドニェープル川左岸に逃げたとしても、いずれウクライナ防衛軍がやって来る。侵略者に未来がないことは確かだ。​昨年の今日の日記：「関西スーパー株の投資家の見た暴騰と暴落劇を分けたわずか４６００株」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111120000/​

  2022.11.12

• 

  アメリカ中間選挙、議席減でも民主善戦という評価、共和伸び悩みでトランプ旋風起こらず

  　８日行われた注目のアメリカの中間選挙は、日本と違ってすぐには最終結果が明らかにならない。州によって、開票制度も様々で、中には南部ジョージア州のように過半数を取った候補がいない場合は決選投票を行うという再選挙制度を設けている所があり、ここでの上院選は民主党と共和党の２人が伯仲し、いずれも過半数を取れないことが確定し、来月回しになることが決まった。​◎選挙前はインフレで民主退潮予測​　日本時間の１０日午後現在、非改選議席を含めて決まったのは９７議席で、民主党４８議席、共和党が４９議席で伯仲している。　ただ現時点で、アメリカメディアを含めてほとんどが「民主党の意外な善戦」、「共和党の伸び悩み」と伝える。僕も、やはり意外に思っている。　選挙前の世論調査で、下院は共和党が勝利し、民主党は過半数割れと見られ、一方の上院は、民主党と共和党の接戦とされていた。　今のアメリカの最大の経済課題のインフレが収まる気配が見えず、共和党はバイデン大統領の失政が原因と攻撃し、それがある程度、共感を呼んでいたからだ。​◎バイデン大統領は上機嫌、トランプ氏は激怒​　上院選の現時点の結果はそのとおりだが、共和党が過半数の５１～５２議席は取りそう、という感触からすると、民主党が巻き返しているように見える。下院の共和党勝利は間違いないようだが、議席差は事前の予想よりも縮まっている。​　この結果は、両党のトップの選挙票からもうかがえる。民主党のバイデン大統領は、開票直後から共和党が民主党に議席差をつけているのに、「昨日（８日）は良い日だった」と上機嫌で（写真＝翌９日のホワイトハウスでの記者会見で）、共和党の「影の党首」の感のあるトランプ前大統領は、伝えられるところでは結果に激怒しているという。自分が推薦した共和党トランプ派が意外に伸び悩んでいるからだ。​​◎共和党内にトランプ氏支持への躊躇いの動き​　このようにやや予想外の結果となりつつあるのは、無党派層の動向である。出口調査によると、無党派層の有権者の４９％は民主党に投票し、共和党は２ポイント少ない４７％だった。この微妙な差が、接戦州・選挙区で民主善戦・共和伸び悩みの原因となったと思われる。おそらく無党派層の有権者は、共和党、特にトランプ氏の推薦する候補に勝たせることで、２年後の次期大統領選に出馬予定のトランプ氏を鼓舞することに躊躇ったのだろう。​　この結果は、１５日にもと予想されているトランプ氏の大統領選出馬表明に影響を与えるかもしれない（写真）。結果を見て、共和党内部ではトランプ氏への嫌気から票が伸び悩んだと考え、トランプ氏支持を躊躇う動きが出ているからだ。​　共和党を支持する僕は、できればトランプ氏に与しない候補が共和党大統領候補になることが望ましいと思う。　トランプ氏の前回の大統領選の結果を認めない、デマをまき散らしての「潔くない」態度は、やはり民主主義にとって容認できないと思うからだ。​昨年の今日の日記：「第２次岸田内閣発足、またしても１０万円給付！　ふざけるな、いいかげんにしろ！　岸田にNoを！」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111110000/​

  2022.11.11

• 

  一個大隊の９割、５００人以上が一瞬に戦死、ロシア軍動員兵は犬死にの「惨」

  ​　最悪だ！　いくらなんでも、これは酷い！　まるで旧日本軍が戦争末期に成算も無く強行した牟田口廉也指揮下のインパール作戦（写真）ロシア版ではないか。​◎スコップ無しの手掘りで攻撃の標的、５００人以上が戦死​​　複数の独立系メディアに生存者や兵士の親族が語った証言によると、ウクライナ東部ルハンスク州マキイウカ方面に配置された一個大隊がほぼ全滅、５００人以上がいっぺんに戦死したという（写真）。この部隊はロシア南西部ボロネジ州から動員された予備役兵らで編成されており、装備はきわめて貧弱だった。​　部隊は今月１日、ロシアが一方的に併合を宣言した東部ルハンスク州マキイウカ方面に配置され、塹壕を掘るよう命じられた。それなのに、スコップは「３０人に１本」しかなかった。だから塹壕を掘るのに、兵士は手作業で（！）やしかなかった。当然に、地上に身体を晒す。　その手掘り作業を観ていたウクライナ防衛軍から集中砲撃を受け、大隊５６０～５７０人いた兵士のうち５００人以上が戦死したという。死亡率９割の、壊滅である。​◎犬死にとなる動員兵​　砲撃の前に、指揮官らは兵士に「君たちは『肉』となるために連れてこられた。どうせ皆殺しにされる」と述べ、食料調達の名目で、自分は前線から離れていたという。　プーチンがろくな準備も成算もなくイージーに始めたウクライナ侵略戦争。それは、インパール作戦のように、じきに破産した。​　そのあげく、これも大した成算もなく始めた予備役の部分動員令（写真）。詳細なプランも無しだから、女性や障害者などの対象外の者たちにデタラメな召集令を渡し、あちこちで悶着を起こした。​　そして召集され、ろくな訓練も施されず、ちゃんとした武器・装備も持たされずに前線に派遣された兵士たちは、無責任な上官の命令で、ウクライナ防衛軍の標的にされて犬死にする。​◎補償金惜しさに遺体も回収されず​　僕がこれまで接したロシア侵略軍の戦いの記事の中で、最も「悲しい」報である。　しかも、ルハンスク州のハイダイ知事（ウクライナ）の６日のＳＮＳへの投稿によると、戦死したロシア兵５００人の遺体は、「遺族に補償金を支払う必要が生じるため、ロシア軍は遺体を回収していない」、つまり戦場に放置されたままだったという。むろんウクライナ防衛軍が認識票を記録した上で、手厚く葬るだろうが。　犬死にした家族・恋人たちは、このデタラメを知らされることがあるだろうか。​昨年の今日の日記：「内紛、ゴタゴタで、顔色冴えないバイデン大統領、バージニア知事選では民主候補が共和党に苦杯」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111100000/​

  2022.11.10

• 

  ボロボロのロシア侵略軍、ついに戦闘する自軍後方に「退却阻止部隊」と最前線に投入される重罪受刑者

  　ロシア侵略軍で新たに動員された新兵たち。予想されたように、相当に士気が低そうだ。大した訓練もされず、ぼろや役立たずの装備と武器を与えられ、いきなり前線に投入されては戸惑うばかりだろう。​◎戦闘する部隊の背後に「退却阻止部隊」​　ウクライナ防衛軍から攻撃を受ければ、自分の命を守るために逃げるしかない。　ところが、独ソ戦争で、ソ連国内不覚にドイツ軍に攻め込まれたソ連のスターリンがやったように、プーチンのロシアも、最近、最前線で戦う部隊の後方で、銃を構えて監視する「退却阻止部隊」の配備を始めているという。イギリス国防省筋が４日、明らかにした。　独ソ戦争の緒戦で、攻め込むナチ・ドイツ軍の士気の高さに比べ、赤軍大粛正で大痛手を受けて士気の上がらないソ連軍は、ドイツ軍に攻撃されればほとんど抵抗もせず、逃亡した。あまりの自軍のふがいなさに怒った独裁者スターリンは、「一歩もひくな」をスローガンに、最前線の自軍の後方に「退却阻止部隊」を置いた。当時のソ連軍は、味方にも撃たれることがあったのだ。　プーチンのロシアも、その手法を導入しなければならないほど、追い込まれているようだ。​◎広がる戦闘拒否​　また動員された新兵の間には、戦闘拒否も広がっているようだ。上官から射殺するとの脅迫を受けながらも抵抗する様子が、親族を経由してＳＮＳで伝えられている。　「お前らを撃ってまとめて穴に放り込み、親族には行方不明だと伝える」。　ウクライナ東部ルハンスク州で地下室に閉じ込められた動員兵たちが上官らにこう脅されたと、ロシアの独立系ネットメディア「アストラ」が５日、複数の動員兵の親族の話として伝えている。　地下室に閉じ込められたのは、動員兵らが戦闘に参加することを拒否する上申書を提出したことによる。上官が現れ、自らの名前や肩書も名乗らず、説得が無理だと分かると、「射殺」の脅迫を始めたという。　ある動員兵の妻は「夫が８０人の男性とともに裸で地下室に座っていた」と話している。携帯電話を取りあげるためだったが、それでも奇跡的に隠せた人もいたという。そこからの連絡だった。　懲罰として数日間、食事が与えられなかったとの証言もある。​◎重罪受刑者法を動員する法が成立​　動員も手詰まりに陥る中、殺人や強盗犯などの重罪者を前線に動員する法改正にプーチンが４日署名、６日に発効した。この法案は、与党の「統一ロシア」が提案していたもので、上下両院を通過・成立し、大統領のプーチンが署名したもの。重罪受刑者を「合法的に」戦場に送れる。​​　これまで刑務所で重罪犯が戦争に駆り出される報道はさなれていたが、これはあくまでもプーチンお気に入りの新興財閥オリガルヒのプリゴジンが率いる「民間軍事会社」ワグネルがやっていたことだ（写真＝上からワグネルの部隊、ワグネルの雇い兵を前にしたプリゴジン、サンクトペテルブルクに開設されたワグネルの事務所の入ったビル）。ワグネルは、はぐれ者などを雇って、シリアや西アフリカに派兵する「隠れロシア軍」だ。ウクライナ侵略戦争がロシアに旗色が悪くなってきた夏前から、重罪犯刑務所で受刑者の徴募を始めていた。​　いよいよプーチンも、ワグネルでは応募が薄いと思ったか、ロシアという国家の名で、重罪犯の徴募を始める。彼らが送り込まれたウクライナで、彼らが民間人などにどんなことをするのか、身の毛のよだつ思いだ。​◎「ワグネル」徴募の重罪受刑者に高い戦死率​　またワグネルが徴募した重罪受刑者兵士、すでに５００人超が戦死しているという。ロシアの独立系メディア「インサイダー」が４日、報じた。　ワグネルは、戦闘員が戦死した際、遺族に独自の「死亡告知書」を送付している。その通し番号が１０月１３日付で「４５８」となっていた。その後の３週間にも数十人の受刑者が戦死した情報がソーシャルメディアに投稿され、累計で５００人を超えた可能性が高いという。　では、これまでワグネルが刑務所で徴募し、戦闘に参加した重罪受刑者の総数は、どれくらいいるのだろうか。メディアなどによって推計に幅があるが、少なくとも数千人と推定されている。　仮に３０００人だとすれば、死亡率は２０％近くに達する計算になる。正規のロシア侵略軍より明らかに高く、より危険な任務に投入されていることをうかがわせている。​◎極悪犯だから「死んで当然」か​　ＡＦＰ通信による東部ドンバス地方の取材では、受刑者は最前線で決死の前進を命じられ、発砲するウクライナ軍の位置をあぶり出すのに使われているという。　つまり極悪犯だから、捨て駒として危険な任務に従事させるのも当然、という考えだ。　ちなみにワグネルは、受刑者徴募の歳の条件として、６カ月間任務に従事すれば、高額報酬の他、無罪放免される、という「餌」をぶら下げるという。　しかし、これだけの高死亡率の危険な任務に駆り出されるのだ。事実上の「死刑」だろう。​昨年の今日の日記：「武漢肺炎急激な減少、なぜ？」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111090000/​

  2022.11.09

• 

  Ｇ７外相会合ホスト国ドイツのショルツ首相が訪中して習近平と会談、不評ぞくぞく

  ​　ドイツ西部ミュンスターでＧ７外相会合（写真）が１１月３～４日、開かれ、対ウクライナ支援策で合意した。ロシア侵略軍によるミサイル、自爆ドローン攻撃で国内の４割の発電施設が壊されたウクライナの復旧支援を強化し、また防空システム強化を支援する他、ロシアの原油価格輸出に上限設定の発動方針を決めた。​◎滞在はわずか１１時間、宿泊せず​​　ただその間、ホスト国の首相のショルツ氏が国を留守にしてスターリニスト中国を訪問し、習近平と会談し（写真）、これがドイツの評価を貶めた。ドイツの国内のメディアでも批判が噴出している。​　ショルツ首相も、Ｇ７諸国の批判を懸念してか、スターリニスト中国滞在をわずか１１時間に留め、宿泊を避けた。またバランスを取るためか、元首のシュタインマイヤー大統領を、これより先の１日に日本を訪問させている。​◎党大会後初めて訪中した西側首脳​　ただこの時期に、台湾の武力侵攻を習近平が公言するスターリニスト中国に、中国共産党２０回党大会後に初めて西側諸国の首脳として訪問することの非は、論をまたない。実際、習近平は「あなたは党大会後に初めて訪問した欧州の指導者だ」と、ショルツ首相を讃えた。習近平の狙いは、自国包囲網をどんどん縮めるアメリカと西側の足並みを乱すことにある。ドイツを味方に付ければ、ＥＵ諸国と後からついてくると踏んでいるのだ。　ショルツ首相も、無条件の尻尾振りに終始したわけではなく、習近平に人権問題や台湾問題に懸念を伝えた。​◎メルケルの轍を踏まないように​　しかし、そんなことは習近平には馬の耳に念仏である。むしろ中国共産党大会初めて西側の首脳として訪中したという事実が、スターリニスト中国にとってはプラスになるだろう。　アメリカやポーランド・バルト諸国の懸念に耳を貸さず、プーチンのロシア詣でを繰り返し、あげくにウクライナ侵略で見事にプーチンにうっちゃられ、歴史に汚点を残した前首相のメルケルの過ちを再現するのではないか、が懸念される。　今のスターリニスト中国と習近平は、友好関係を進める相手ではない。​昨年の今日の日記：「エチオピア内戦、ノーベル平和賞授賞の首相の下、戦火が拡大」​https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111080000/

  2022.11.08

• 

  進退窮まるロシアのプーチン、逃亡するとしたら逃げ先はどこか

  ​　プーチンのロシアは、占領したヘルソン州のドニェープル川右岸（西岸）を明け渡すという報道が相次ぐ（ヘルソン州の地図）。​◎ウクライナ防衛軍は「罠」を警戒​​　既に現地の親ロシア派の幹部が、「我々の部隊が左岸（東岸）に去るだろう」とロシアメディアに言明、４日にはプーチンもヘルソンから住民が待避する必要があると唱え、ロシア侵略軍の撤退を暗に認めた（​写真​＝占領するカホフスカ水力発電所を警備するロシア侵略軍兵士）。​　実際、州都ヘルソン市の３つの検問所をロシア侵略軍が撤去し、市内の兵士の数も激減している。またヘルソン市の行政府の建物からロシア国旗が既に降ろされている。　ただ追撃するウクライナ側は、「罠」を警戒して慎重な姿勢をとっている。いい気になって進軍した場合、市街戦に巻き込まれ、大損害を受ける懸念があるからだが、士気の落ちた今のロシア侵略軍の中で、自分の命を的にしてウクライナ防衛軍との白兵戦を演じるような兵士・部隊はいないだろう。​◎でっち上げ「沿ドニェートスル共和国」との回廊構想は絶望的​　いずれにしろ、ウクライナ防衛軍がヘルソン市と州全体を奪還するのは時間の問題だろう。　ロシア侵略軍がドニェープル川右岸を去れば、ヘルソン州西部の要衝のオデッサの占領の目論見は水泡に帰す。さらに西進し、親ロシア派が事実上の「独立国家」をでっち上げているモルドバの「沿ドニェートスル共和国」と繋ぐ回廊を造って、これもロシアに併合するという野望は打ち砕かれる。​◎ロシア支持はならず者国家がわずか４カ国​　さて、当初の「首都キーウ占領＝親ロシア派傀儡政権の樹立＝ウクライナの衛星国化」が脆くも挫折したプーチンは、敗勢著しいウクライナ侵略戦争の出口をどう考えているのか。​　盟友と恃むスターリニスト中国も、４日に訪中したドイツのショルツ首相との会談（写真）で、核兵器使用の反対を明言され、戦術核兵器の使用がますますし難くなり、痛手となっている。今やプーチンのロシアを支持する国連加盟国は、ベラルーシ、シリア、北朝鮮ならず者集団、ニカラグアの４カ国に過ぎない（１０月１４日付日記：「ロシア占領下のクリミアで大橋爆破、ウクライナのパルチザンによる攻撃か、ドイツにはロシアによると思われる都市テロ；国連、ロシア非難決議」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202210140000/を参照）。​​◎王手寸前の状況​　侵略軍の兵士は練度も士気も低い。兵器は枯渇寸前で、ならず者国家でかつてはソ連が武器援助したイランや北朝鮮などからの輸入に頼る。　将棋でいえば、もう王手寸前である。　ただイエスマンだけに囲まれた裸の王様のプーチンには、今、自分と自国ロシアが置かれている状況が正しく判断できず、まだ勝利にこだわっているとも言われる。　となれば、プーチンを力で排除するしかない。おそらくアメリカなどは、クレムリンや軍への工作を秘密裏に行い、プーチンを排除する手を打っているだろう。​◎プーチンがもし亡命したら――どこが受け入れる？​　その前に、プーチンが自ら退陣し、外国に亡命することも望んでいるだろう。　ただ、世界中の嫌われ者、ならず者のプーチンを受け入れる国があるかどうか、それが問題だ。　例えば隣国ベラルーシが最も亡命しやすいが、そうなればベラルーシ国家が動揺する可能性が高まる。もしベラルーシのルフチェンコ独裁政権が倒れれば、またも亡命先を探さねばならない。　実利にさとい習近平が、メリットの無く、厄介者に過ぎないプーチンを受け入れるとはとうてい思えない。となると、北朝鮮ならず者集団か？​　あり得ると思う。昨年の今日の日記：「ヴァイキングが北アメリカに建設した入植地の営まれた年代を特定：年輪に残された太陽嵐の痕」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111070000/​

  2022.11.07

• 

  地球の酸素濃度は２４億～２２億年前と８億～６億年前２段階で貯まった（後編）：全球凍結がシアノバクテリアを爆発的増殖させた

  ​​　もう１つ、全球凍結（想像図）とシアノバクテリア（写真）との関連を考える仮説もある。東京大学の研究グループが提唱する。​​◎全球凍結の後にシアノバクテリアの爆発的繁殖​　特にこの仮説は、地球の酸素濃度を急増させた第２期の説明と相性が良い。第２期酸素急増期は、地球の全球凍結の終わった後なのだ。　全球凍結の前、地球の火山活動が一服し、大気に温暖化効果ガスである二酸化炭素が減った。地球表面に少しずつ氷床が出来始める。　氷床は、太陽光を反射させるアルベド効果がある。あるレベルを超えると、氷床は一気に拡大し、地球は全球凍結に至る。このようなメカニズムでこれまで地球は、何度も全球凍結に襲われた。​◎地表のリンの大量供給がシアノバクテリアの爆発的繁殖をもたらした？​　ところが、この全球凍結も永久には続かない。少しずつ火山活動による二酸化炭素が溜まると、今度は平均気温が上昇し、一気に氷床が溶け始める。　この氷床の溶解で、大陸表面は激しく浸食され、生物の必須元素であるリンが大量に海洋へ供給され、海洋は異常な富栄養化を起こして、光合成を行うシアノバクテリアの爆発的な繁殖をもたらした可能性が高い。そうなれば、酸素は大量生産されるようになる。　これが今日のような酸素が豊かに満ちた大気を作ったという。​◎石炭紀には今より５０％も酸素が多かった​　大気中の酸素は、その後も細かい濃度変化を繰り返すが、大筋は変わらない。これにより、地球に酸素消費の大きい多細胞生物が進化することができた。​　ちなみに３．６億年～３億年前の石炭紀には、巨大シダ植物が繁茂し、地球の酸素濃度を今よりも５割も多い３０％になったことがある（想像図）。これにより、アニメ『風の谷のナウシカ』に出てくるような、単純なガス交換システムだけの呼吸を行う巨大節足動物が地球の王者になった（２０１１年８月１０日付日記：「虫の好かない話：なぜ現世に巨大な虫はいないのか。石炭紀の時代との対比」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201108100000/を参照）。​​◎１０億年後、地球から酸素無くなる​　最後に、地球の酸素は、いつまでも今のままに豊富にあるわけではないという。　東工大の若手研究者尾崎和海准教授のコンピューター・シミュレーションによると、今から１０億年後に、地球大気から酸素はほとんど無くなるという。　この要因は、この頃には核融合反応が進み、今よりも１０％も明るくなる太陽である。これにより大気内の二酸化炭素は岩石鉱物に吸収されてしまい、二酸化炭素と水を原料に光合成をしていた植物がほとんど枯れ果て、酸素が供給されなくなるという。　１０億年後に、地球に今のような生命圏があるのかは疑問だ。例えば、種としての寿命が１００万年程度であるホミニンの最新の種である我々ホモ・サピエンスは、長くともたぶんあと１００万年後には消え去っていると思う。　１０億年後という終末期を我々が見ることは、まず無い。（完）​昨年の今日の日記：「世界の願いを裏切る地球最大の二酸化炭素排出国のスターリニスト中国、大量に排出する火力発電所をなお増設中」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111060000/​

  2022.11.06

• 

  地球の酸素濃度は２４億～２２億年前と８億～６億年前２段階で貯まった（前編）：シアノバクテリアの偉大な役割

  　現在の地球大気には、酸素がたっぷりある。その濃度は、約２１％だ。​　しかし地球史で見れば、このように豊かな酸素に恵まれたのは、つい最近、８億～６億年前からに過ぎない。その大半を、小さな藍藻類シアノバクテリア（写真）が作った。​　シアノバクテリアは、今も新しく作られる地球酸素の半分を供給している。​◎地球史の前半半分は「死の世界」＝酸素は今の１０万分の１しかなかった​　そのはるか以前、２４億〜２２億年前以前に、地球大気中の酸素濃度は、現在の１０万分の１以下しかなかった。むろん一部の嫌気性バクテリア以外、生きられない環境だった。​　それが前記のような２４億〜２２億年に酸素濃度が急増し、さらに８億～６億年前にもう１段の急増期があった（図）。この２段階の酸素急増によって、複雑な多細胞生物が地球に住めるようになったのだ。​　すると、地球が生まれたのは今から約４６億年前だから、地球史の前半半分は、「死の世界」だったことになる。　２段階の酸素急増は、いわば偶然の産物だ。　だから、太陽系外の惑星にも複雑な体制の動物が住めるほどの酸素濃度があるか、疑わしいことになる。僕が、安易な太陽系外の「知的生命」の存在に懐疑的なのは、それも１つの理由だ（もっと他にもいろいろな理由があるが、ここでは触れない）。​◎最初は硫黄細菌に圧倒されていたシアノバクテリア​　では、なぜ地球にこれほど酸素が豊かになったのか。２段階のまず第１期の２４億～２２億年前に、最近、新たな仮説が提示された。​　アメリカとカナダの国境に広がる五大湖の１つ、ヒューロン湖の湖底約２５メートルのところに、光合成を行う微生物マットが薄く広がっている（写真）。葉緑体を寄生させたシアノバクテリアと硫黄を酸化させてエネルギーを得ている硫黄細菌で、この両者は競合関係にある。ちなみにシアノバクテリアの起源は、遺伝子の解析から今から３４億～２９億年前と分かっている（１８年４月１４日付日記：「酸素に満ちた大気と緑の地球を形成したシアノバクテリアの奇跡、現代の植物葉緑体の起源」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201804140000/を参照）。​​◎シアノバクテリアの起動は遅い​​　この微生物マットを研究していたドイツ、マックス・プランク海洋微生物学研究所の女性若手研究者ジュディス・クラット博士（写真）は、微生物マットのシアノバクテリアは光を受けてもなかなか酸素を産生しないことを不思議に思った。​　最初は、自然界では夜明けに当たる頃まで、硫黄細菌がシアノバクテリアの上に覆いかぶさるように広がっていて、太陽が出てくる頃になって硫黄細菌は下に移動し、シアノバクテリアが表面に上昇してくる。それから数時間たってやっと、光合成によって酸素を作り出す。つまりタイムラグがあるのだ。​◎太古、地球の自転は速かった​　さて、これを地球史に当てはめてみる。ヒューロン湖の湖底のような状況が、２０数億年前の地球の浅い海だったとすると、どうだろうか。　実は、その頃、地球の自転は早く、したがって１日は短かった。太陽系形成初期の地球の１日は６時間ほどだった。​　これが遅くなるのは、地球が出来て数億年後に、火星大の巨大天体が衝突し、地球の大きな部分を剥ぎ取って原始の「月」を形成してからだ（「ジャイアント・インパクト」説＝想像図）。　月の引力による潮汐作用で、地球の自転は少しずつブレーキがかかる。それと同時に月も、地球から徐々に遠ざかった。​◎２４億～２２億年前にシアノバクテリアが活動始める​　シアノバクテリアが葉緑体と共生し、光合成能力を獲得したのは、前記のように３４億～２９億年前だったが、この頃、地球の１日はまだ短く、シアノバクテリアが硫黄細菌との競合に打ち勝って太陽光を基に酸素を合成するキャパシティーは小さかった。細々と、それこそまさに細々と酸素を生み出していたが、まだ地球の大気圏に蓄積できるほどではなかったのだ。　それが少しずつ、１日が長くなり、シアノバクテリアが活躍できる時間が出来てきた。　その均衡が破られたのが、第１期の２４億～２２億年前だったに違いない。その頃、地球の自転時間、すなわち１日は２１時間ほどになっていた。　地球大気に酸素が急速に溜まり始めた時だった。​◎「カンブリア爆発」の地ならし​　しかし、それでもまだ現在の酸素濃度の１００分の１に過ぎなかった。シアノバクテリア誕生直後より１０００倍に増えても、まだその程度だった。　その後、地球の１日の長さはほぼ停滞期に入る。それが、８億～６億年前にまた遅くなった。​　シアノバクテリアにとってフル稼働できる時間が出来た。また再び急激に酸素が増え始め、現代並みの「酸素に満ちた」大気が形成された（図）。​　５．４２億～５．３億年前に、突如として今日見られる動物の「門」が出揃った「カンブリア爆発」への地ならしが出来たのだ。シアノバクテリアの再びの活動活発化で「酸素に満ちた」地球が出来なかったら、カンブリア爆発もなかった。　先のクラット博士は、地球の自転という天文学的要因が地球大気に酸素を満たすことになった因果関係を、同僚の共同作業でコンピューター・シミュレーションして明らかにしたのだ。　もっともクラック博士も認めているように、これは１つの仮説に過ぎない。しかし地質学的・生化学的成果とも符合する最有力の仮説であるのも確かだ。（この項、続く）​昨年の今日の日記：「スターリニスト中国の『塾禁止令』で大量失業か」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111050000/​

  2022.11.05

• 

  正当性の全く無い習近平の「台湾解放」の呼号：共産党独裁が民主主義を武力支配するのか？

  　先の中国共産党第２０回党大会で習近平が改めて宣言したのが、台湾の武力解放だ。これに、正当性はあるだろうか。いや、全く無い！​◎習近平も中国共産党も選挙で選ばれていない​　周知のように、台湾には普通選挙によって民主的に選ばれた蔡英文総統の統治している。一方のスターリニスト中国は、一切の民主的選挙が無く、大統領に当たる国家主席の習近平も現首相の李克強も有権者の投票する民主的直接選挙で選ばれたわけではない。彼らは中国共産党という独裁党の中で指導部までのし上がって来ただけだ。　また彼らを選んだ中国共産党にしても、１度も民衆から選挙の審判を受けていない。この党が唯一の政権政党になっているのは、「人民解放軍」という暴力装置を用いて、暴力（武力）で政権を奪取したからに過ぎない。　つまり広大な中国本土を支配する共産党政権には、一切の正当性がない。​◎「武力解放」はプーチン・ロシアのウクライナ侵略と同じ​　その正当性の無い独裁政権が、民主的に選ばれた政権の統治する台湾を武力支配するなどは、プーチンのロシアがウクライナを侵略し、ウクライナ領４州を武力併合したのと同じように不法・不当なものである。民主主義の守護者アメリカが、共産党一党独裁のスターリニスト中国が台湾を武力侵略するのを許すことはありえない。民主的選挙で統治されている日本も、とうてい許せない。　ポツダム宣言を受諾して敗戦を迎えた日本は、同宣言第８項に盛られたカイロ宣言を受け入れて、台湾と澎湖諸島を放棄した。もちろん返還先は、日清条約で奪い取った、交戦国の中国である。当時、中国は蒋介石の国民党が支配し、終戦と共に共産党の軍との内戦が再燃していた。​◎早くから対共産党との敗戦に備え、台湾統治を準備した蒋介石​　ところが、日中戦争で日本と正面から戦っていた国民党軍は、意外に弱かった。内戦の深化で、日本との正面衝突を避け、力を温存していた共産党軍にじりじりと押し込まれた。　せっかく日本との１５年戦争に勝利したのに、蒋介石は、どうやら自軍の弱さを自覚していたようで、　いざとなれば台湾に立てこもろう、と考え、早くも終戦１年後の１９４６年秋、宋美齢夫人を伴って台湾を視察した。そして台湾を、避難・根拠地にしようと考えた。​　それから台湾への撤退の準備を始める。アメリカからの援助物資も台湾に集積し、国庫の金、銀貨、アメリカドルなども台湾に移送した。さらに北京の故宮博物院にあった宝物も、厳重に梱包してアメリカ海軍の支援のもと台湾に運び込んだ。今日、台北で我々が鑑賞できる原始古代以来の第一級の宝物が、それだ（写真）。​◎束の間の「民主の雰囲気」を破った１９４７年の「二・二八事件」​​　そのための準備として、日本統治から解放されて一時的に民主的雰囲気に包まれていた台湾の武力統治も始める。そのきっかけとなったのが、１９４７年２月２８日に起こった「二・二八事件」である（写真＝台北市内の「二二八紀年館」と内部に展示されている当時の蛮行の復元図）。​　些細な事件が発端のこの血の弾圧で、台湾全土で今もはっきりしていないが２万人前後が殺されたとみられる（２０年８月１日付日記：「国民党独裁と共産中国と２つの敵と闘った台湾民主主義の父、李登輝元総統を悼む」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202008010000/、及び１０年２月１７日付日記「台北紀行③　戦後台湾の最大の悲劇『２．２８白色テロ』を知っていますか？：李登輝、侯孝賢、『悲情城市』、台北二二八紀年館」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201002180000/を参照）。​◎李登輝氏らの苦闘の成果を守ろう​　以後、台湾は長く戒厳令が敷かれ、民主主義が窒息するが、それも故・李登輝氏の台湾総統の就任に伴い、民主化された。ちなみに李総統は、中華民族の歴史上、初めて民主的直接選挙で選ばれた指導者である。　つまり台湾には、蒋介石の国民党独裁に抵抗し、民主化を勝ち取った歴史がある。その台湾に、共産党一党独裁を押しつけるなど論外の極みだ。​　ちなみに台湾と大陸を隔てる台湾海峡は、大部分が水深１００メートル以下と浅い。スターリニスト中国の海軍が大規模に艦船を動員するのは困難と見られるが、現在のところ、スターリニスト中国が台湾ーの武力攻撃を加える場合、サイバーと空からの攻撃が主体と見られるので、油断はできない。昨年の今日の日記：「２０２１年総選挙総括；立民激震で枝野辞任、敗北の共産の志位は居座り、維新の大躍進で大阪は全滅したが、何とか踏ん張った自民」​https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111040000/

  2022.11.04

• 

  ロシアの東部の飛び地カリーニングラート州は守備部隊がウクライナで壊滅し、今や空っぽ

  　モスクワ市政府職員が大量「蒸発」しているという報を昨日の日記で述べたが、ロシアの飛び地のカリーニングラート州では守備部隊「ロシア第１１軍団」の１．２万人が消滅したという。​◎かつてのプロイセン王国（現ドイツ）の一部​​　カリーニングラート州は、ポーランドとリトアニアに囲まれ、ロシア本土から切り離された飛び地だ（地図）。かつてソ連時代は、リトアニアとベラルーシ（当時は白ロシアと言った）もソ連の構成国だったので、飛び地でも何でもなかったが、ソ連崩壊で現在のようになった（今年３月１８日付日記：「ＮＡＴＯ諸国に包まれたロシアの飛び地『カリーニングラード州』の行方」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202203180000/を参照）。​​​　カリーニングラートは、第二次世界大戦後にソ連が占領・併合するまでドイツ領であり、かつてはプロイセン王国（ドイツ統一前の一領邦）の都だった（下の写真の上＝プロイセンの面影が残るカリーニングラート市）。戦後、冷戦が深刻化するとともに、ここはＮＡＴＯを睨むソ連の軍港となった（下の写真の下）。​​◎ＮＡＴＯ睨んで第１１軍団を編成​​　６年前、ロシア中央政府は、カリーニングラート防衛のため、新たな軍団「第１１軍団」を編成した（写真＝演習中の第１１軍団）。むろんＮＡＴＯを睨んだものだ。周りのポーランドもリトアニアもＮＡＴＯ加盟国である。​　第１１軍団は、実際には新たに結成されたものではない。複数の既存部隊を、ロシア海軍のバルチック艦隊に対応する１つの司令部の下に再編成したものだ。同軍団は自動車化師団、独立自動車化連隊、大砲、ロケット、防空中隊および支援部隊を統括し、カリーニングラーシに１万２０００人以上のロシア軍が駐留し、Ｔ－７２戦車１００台、数百の戦闘車両ＢＴＲ、ムスタＳ自走榴弾砲、ロケットランチャーのＢＭ－２７と　ＢＭ－３０を有していた。​◎カリーニングラートから引き抜いた軍団はウクライナ戦線で大敗​　ウクライナ侵略戦争がロシアにとって不利になり始めた時、ロシア政府は第１１軍団地上部隊の８０％をカリーニングラートから引き揚げウクライナに送り込んだ。ところが、その大部分をキーウ占拠を目指した絶望的な戦いでたちまち失ってしまった。　首都へと続く道に沿って配置された、貧弱な統率と補給不足のロシアの大隊、旅団および師団は、ウクライナの大砲、無人機、 精度の高い対戦車ミサイルを装備した歩兵部隊らの攻撃の前に、全く無力だったのだ。第１１軍団は、壊滅した。　わずか1カ月間の熾烈な戦いの後、ロシア軍はキーウから撤退に追い込まれた。推定数はまちまちだが５月に前線が安定するまでの間に、５万人が死亡または負傷した。​◎中にはかつての１割にまで減った大隊も​　次に第１１軍団が悲劇に見舞われたのは、東部ハルキウ戦線だった。　しかしこちらもロシア侵略軍は脆弱だった。新たな兵力を切望したロシア軍は、第１１軍団を船と飛行機で南ロシアのベルゴロドへ、次にウクライナのハルキウ近くへと移動させた。　３カ月に及ぶ過酷な戦いは、第１１軍団の力をそぎ落とした。第１１軍団の書類の一部を入手したロイター通信によると、８月３０日付書類では第１１軍団の戦力は完全編成の７１％であった。しかし、いくつかの大隊は本来の戦力のわずか１割まで減少していたという。​◎ウクライナ防衛軍の反転攻勢で無力化​　だが第１１軍団にとって、状況はさらに悪化していった。８月末と９月初旬、ウクライナ軍はハルキウ東部とヘルソン北部の２カ所で反転攻勢を仕かけた。　激烈な２週間の戦闘後、ウクライナ防衛軍はハルキウ州の２６００平方キロを解放すると、何万というロシア兵が当地で逃亡、投降あるいは死亡した。第１１軍団は現地のほとんどのロシア部隊よりも被害が大きかった。ワシントンの戦略国際問題研究所は９月末に、同軍団が「激しく損耗した」と評した。ほぼ無力化されたことになる。　ウクライナ軍のある幕僚は、反転攻勢によって第１１軍団は車両２００台および兵士の「半数」を失ったと結論づけた。​◎ポーランドとリトアニアはカリーニングラートを占領せよ​　現在、第１１軍団を引き抜かれたカリーニングラート州は全くの無防備状態となっている。一時、ＮＡＴＯに脅威をもたらした同州の部隊は壊滅したからだ。　この影響はヨーロッパ全体に広がるだろう。第１１軍団は本来はカリーニングラートを防衛し、ＮＡＴＯの東部前線に脅威を与えるはずだったのに、今はどちらも遂行不可能となっているからだ。　逆に言えば、ＮＡＴＯ最弱のリトアニア軍（兵力は約２万人）ですら、カリーニングラートに進駐すれば、同州のロシア軍は無抵抗で白旗を掲げざるを得ないことになる。　無慈悲な侵略を行ったロシアに懲罰を加えるために、リトアニアとボーランドは軍を進めて、カリーニングラートをプーチンの軛から解放すべきではないか。実際、ポーランド軍の一部には、カリーニングラートはポーランドの一部だと見る意見もある。　むしろカリーニングラートのロシア住民も喜ぶだろう。​昨年の今日の日記：「１．２万年前の『最初のアメリカ人』はタバコを使った」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111030000/​

  2022.11.03

• 

  モスクワ市職員の３分の１が逃亡、市職員のデタラメ徴兵後２週間後にウクライナで戦死が伝わり

  ​　ロシアの国防相ショイグは１０月２８日、ウクライナ侵略で不足する兵員補充のための部分動員令に基づく３０万人の招集を終えたとプーチンに報告した。そのうえで、追加動員の予定はない、とも明言した（写真＝徴兵され、恋人と別れを告げる２１歳のモスクワっ子ヴラジスラフ・ヴォドピャーノフ氏）。​　しかし、その明言は、いずれ「迷言」として破綻することになるだろう。​◎市職員の３分の１が辞表も出さずに海外逃亡​　プーチンの９月２１日の予備役３０万人を動員するという発表の２週間で、徴兵逃れのため市民３７万人以上もが、ジョージア、フィンランド、カザフスタン、モンゴルなどの近隣国に逃亡している。　僕の友人が教示したくれた「ニューズウィーク日本版」が先月末に伝えた記事によると、実態はもっとお寒いものらしい。　プーチンとショイグのお膝元である首都モスクワの市職員が、１カ月足らずのうちに３分の１も「蒸発」しているという。彼らは辞表も出さずに、海外に逃亡しているという。　地元メディアによると、住宅や地域サービス、医療、教育など、大規模な部門の男性職員やＩＴ部門の専門家らが一斉に逃げ出したという。​◎戦闘経験も無い者が訓練も受けずに最前線に​　逃亡した職員の多くは正式に辞職しておらず、メモだけ残して関係当局に届け出もしていないという。「彼らはマグカップも洗わず、職場に私物を残したままいなくなった」と、ある情報筋は語る。「まさに、大量脱出が起きている」と別の政府筋は述べている。​　きっかけは、１０月１４日にモスクワ市政府職員だったアレクセイ・マルティノフ氏（２８歳）が徴兵後にウクライナで戦死したことが市職員の間に広く知れ渡ったことだった（写真＝ＳＮＳ「テレグラム」にアップされた市役所に即席で作られたマルティノフ氏の祭壇）。マルティノフ氏は、戦闘経験がないにもかかわらず（！）９月２３日に徴兵され、入隊数日後にろくな訓練も受けないままウクライナの最前線に派遣され、１０月１０日に戦闘中に死亡したという。​　ちなみにマルティノフ氏は、軍歴はあるものの、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当するセミョノフスキー連隊に在籍していたに過ぎない。​◎犬死に行くようなもの​　プーチンやショイグの言明とまるで違い、身近な同僚が徴兵され、数日後に最前線に送られ、２週間後にはもう戦死していることが分かった以上、モスクワ市職員が恐慌状態になったことは頷ける。　デタラメがまかり通っているロシアで、徴兵に応じるのは犬死にするようなものだ。ウクライナのゼレンスキー大統領の言うとおりだ。　新たな徴募兵は、満足な武器も防御服も支給されていない。士気は最低だ。　ショイグの名言にもかかわらず、じきに第２次徴募が始まるだろう。その前に、ロシアが戦争を止めれば別だが。​昨年の今日の日記：休載​

  2022.11.02

• 

  岸田グズ政権、またしても理念無きバラマキ補正、日本財政は大丈夫なのか

  ​　またしてもバラマキ満載の補正予算である。９月２８日に人気低落の岸田が起死回生策として打ち出した経済対策と補正予算編成案だ（写真）。​◎相変わらずのバラマキてんこ盛り​　補正予算の規模も、不合理の拡大をした。当初、財務省は２５兆円で調整していたのに、自民党が横やりを入れ、それに岸田が飛び乗り、一晩で２９．１兆円に膨らませた。　中身は、一見すると多くの国民に歓迎されそうなメニューが並ぶ。電気・ガス代の値上がり抑止に補助金支出とか、来年１月１日以降に生まれた子ども1人当たり１０万円分のクーポン給付などなど。​◎節約・省エネが本筋​　後者は、育児支援を名目にしたバラマキそのものだし、前者は前から始まり、今も止められないガソリン補助金の電気・ガス版である。時限的に始められたガソリン補助金も、続けられる。　確かに冬に向かって電気・ガス代のかかる時勢に、ありがたい話だろう。しかし、その財源はどこかと言えば、相変わらずの赤字国債だ。未来の世代の付け回しがさらに上乗せされる。　そもそも電気・ガス代の高騰の原因である原油高・ＬＮＧ高は、外在要因であり、政府にはどうしようもない。できるとすれば、国民に節約をお願いし、輸入を減らすことだ。物の値段は基本的に需給で決まるから、需要が鈍れば値段は下がる。だから本筋は、使用を減らすことである。それは、環境保護・地球温暖化防止にも役立つ。　それを、補助金で省エネ・化石資源消費抑制の努力を妨害すれば、需給バランスによる価格の均衡を期待できない。悪手以外の何物でもないのだ。​◎イギリス売りでトラス首相辞任のイギリスよりよほど悪い日本の財政​​　ちなみに就任後わずか４４日での退陣と史上最短の在任記録となったイギリスのリズ・トラス首相（写真）は、財源の裏付けのない約４５０億ポンド（約７．６兆円）の大規模減税などを柱とした経済対策を打ち出したのが命取りになった。​　減税の財源に国債を発行してまかなおうとしたところ、市場が拒絶反応を示したのだ。債券・株・ポンドのトリプル安となり、トラス政権は大急ぎで減税案のほとんどを撤回、人気が急落し、閣内からも辞任者が出て、万事窮した。　イギリスの債務残高は、よほど悪かったのか。　そんなことはない。ＩＭＦによればＧＤＰに対する政府の債務残高は、２１年でイギリスが９５．３％。対して日本は、２６２．５％で、イギリスより３倍近くも悪いのだ。​◎平穏なのは今のうちかもしれない？​　それなのに日本売りが起こらないのは（いや、一部異常な円安の進行で日本売りが起こっている）、日銀が国債を買い支え、国債と株の暴落を抑えているからだ。　それも、本来は正しい道ではない。日銀が金融引き締めに転じれば、悪くするとたちの悪い国債暴落・株価暴落・円安進行という日本売りが起きかねない。​　そもそも我々は、現下の財政状況からして、これ以上のお上頼み・給付ねだりを止めるべきである。昨年の今日の日記：「速報総選挙、自民微減、立民も微減、共産微減の敗北、維新が約４倍増の大躍進」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111010000/​

  2022.11.01

• 

  プーチンの核恫喝に屈してウクライナに停戦を急がせるのは破滅への道

  　プーチンが強行したウクライナ侵略は、もはや失敗・破綻は誰の目にも明らかだ。プーチンができるのは、ウクライナのインフラを破壊し、ウクライナの人々を困窮・ふるえさせ、市民を殺すことだが、手詰まり感が極まって、ウクライナの穀物輸出を再開させた国連や仲介国トルコとの合意も破って、再び輸出港を封鎖しようとしている。​◎ロシアへの妥協は、先を見ない愚論そのもの​​　その手詰まり感は、時によってプーチン自身と側近から口にされる核兵器使用という恫喝だ（写真＝赤の広場で行われた軍事パレードで核ミサイルを誇示、核ミサイルを使った軍事演習）。　プーチンの核恫喝の前に、西側の指導者の一部にはロシアによる核攻撃を防ぐためにウクライナに自重を促し、ロシアと交渉し、停戦を急がせるべきだという短慮すらある。日和見的な妥協論である。　全く将来が見えていない愚論、と言うしかない。　今、プーチンの脅しに屈すれば、どうなるか。​◎さらにロシアを図に乗らせて侵略拡大、中国・北朝鮮も鼓舞する​　例えば、ロシア侵略軍がウクライナから撤収しないまま停戦に応じたら、プーチンによる核の恐喝が奏功したことになる。味を占めたプーチンは、さらに核の脅しを繰り返し、ウクライナ全土の支配を狙い、さらにバルト３国とポーランドにも核恐喝を用いるだろう。　実際、かつてスターリンのソ連に侵略されて国を奪われ、戦後も共産党支配でのソ連への隷従を強いられたポーランドの外交官は、「プーチンに譲歩して停戦に応じれば、ロシアは必ず同じ侵略を繰り返す」と警告する。　第２に極めて危険なことに、プーチンの脅しが効いたことになれば、スターリニスト中国と北朝鮮ならず者集団は、核脅迫が軍事的効果が大きいことを実感し、まねをする。スターリニスト中国は、「核威嚇」のもとで台湾攻撃を始め、北朝鮮ならず者集団は韓国を脅して、従北勢力（文在寅ら）を政権に就かせようとするだろう。​◎核武装国が拡大し、とめどない核軍拡競争に​　第３に、核保有国による脅しが通用すれば、自国の安全保障として非核保有国は核開発競争を始める。イランは確実に核開発に踏み切り、北朝鮮ならず者集団の核に怯える韓国も核開発に乗り出す。核保有国は、さらに核増強を進めるだろう。　つまりプーチンの核恫喝に屈する先は、無秩序（今でも国連の機能喪失によるロシアによるウクライナ侵略・ウクライナ領４州の併合という無秩序が広がっている）と戦争、核軍拡競争以外にはない。　したがって核恫喝の前に侵略国ロシアと妥協してはならないのだ。世界平和のために、ウクライナへの軍事・経済支援が重要なのは、以上からも明らかだ。​昨年の今日の日記：「アルプス氷河の５２００年前の凍結ミイラ『エッツィ』or『アイスマン』の発見から３０年」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110310000/​

  2022.10.31

• 

  スターリニスト中国を見限る外国人投資家のわずかのおこぼれが日本市場にも流れて

  　世界的なインフレとそれに対処するため、アメリカのＦＲＢなど各国中央銀行が急速な利上げに動いている。　利上げは、景気にブレーキをかけるから、世界は新たな景気後退リスクに脅えている。それもあって、日本の株式市場も軟調だ。​◎共産党のコントロールのない自由市場の香港、大きな下げ​　昨秋の反市場的姿勢の強い岸田グズ政権の登場で、日経平均は急落し、今年になってからは１度も３万円台に回復していない。​　しかしそれでも、隣国スターリニスト中国やその支配下にある香港の株式市場よりはマシだ。そもそも今年になって、両市場も調整色を強め、香港株式市場に至っては、週明けの２４日にハンセン指数は、約６％安と１４年ぶりの急落となり、１３年６カ月ぶりの安値をつけた（図）。​　共産党の統制が効くスターリニスト中国の上海総合市場は、それでも下げは限定的だが、香港は全くの自由市場だ（写真＝香港株式取引所と取引所の入るビル、香港の金融街）。こちらの方が、外国人投資家と中国人の観測を代弁している。​◎香港の下げ率４割超、もはや暴落​　ちなみに２８日先週末の終値を、東京市場（日経平均株価）、香港株式市場（ハンセン指数）、上海市場（上海総合指数）で見てみよう。・東京＝日経平均株価　２万７１０５．２０円・香港＝ハンセン指数　１万４８６３．０６・上海＝上海総合指数　　　２９１５．９２６　一方でそれぞれの今年の高値は、以下の通り。・東京＝日経平均株価　２万９３３２．１６円（１月５日）・香港＝ハンセン指数　２万４９６５．５５（１月２１日）・上海＝上海総合指数      ３６３２．３２９（１月４日）　いずれも前年の好調さの余韻を持つ１月が高値で、それからずるずると下げてきた。　だが、下げ率を計算してみると、一風変わった様子が見えてくる。・東京＝日経平均株価　　７．４４％・香港＝ハンセン指数　４０．４７％・上海＝上海総合指数　１９．７２％​◎鄧小平の「改革開放」の終わりを予感か​　香港の場合、１万ポイント以上の下げで、半値近くになった。　香港と上海の調整は、世界市場、特にニューヨーク株式市場と余波を受け、今年になって一貫した下げだったが、２２日の中国共産党２０回大会閉幕で習近平の１強体制が確立してから、海外投資家の逃げ足が速くなっている。​　海外投資家は、鄧小平の敷いた「改革開放」路線が、習近平の「共同富裕」で終わったことを実感している。習近平１強体制により、鄧小平の理念を受け継ぐ指導者が指導部から一掃され、さながら毛沢東時代の「人民公社」の時代に戻ることを恐れているのだ。特に、経済通の首相・李克強の退任とその後任が習近平の茶坊主の李強となることが、暗い経済見通しを助長させている（写真＝上海取引所の入るビル）。​​◎外国人投資家が見切る中国からの行く先はインド​　最近、海外の機関投資家に日本株を扱うアナリストは、海外投資家が中国株を見切って売りに出し、代わりに安くて安定している日本株に関心を寄せていることの手応えをつかんでいる。それが、上記の３市場の動向だ。　日本株は確かに下げているが、それは限定的だ。しかし香港は、もはや暴落相場である。　中国株を見放した彼らがまず向かうのは、成長期に入ったインド株で、次は日本株、という。インド株は成長期待で買われるが、日本株はあくまでも消去法的な買いだという。それでも、売られる一方だった日本株にとって、スターリニスト中国を見切った資金が日本にわずかでも流れてくるのは朗報と言える。　それなのに、最高司令塔の岸田グズ政権のやるのが、１昨日明らかになった相変わらずのバラマキ補正予算である。海外投資家ならずとも、呆れているのではないか。​昨年の今日の日記：「プロ野球パ・リーグでオリックスが優勝、投打の３本柱の大ブレークが２年連続最下位から押し上げた」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110300000/​

  2022.10.30

• 

  ロシアの「汚い爆弾」デマ・キャンペーンを糾弾し、ウクライナ防衛軍への使用を阻止せよ

  　ロシアのプーチンら、ごろつき幹部どもが、盛んにウクライナが「汚い爆弾」を使う、とデマを飛ばしている。ウクライナの信用を毀損し、自らがウクライナで「汚い爆弾」を使ってウクライナに責任をなすりつける布石だと懸念されている。​◎ナチやスターリンの常用した「嘘も１００回言えば」​　もちろんウクライナ政府は「汚い爆弾」使用を全否定し、西側諸国もロシアのデマ、プロパガンダだ、と否定している。しかし、嘘も１００回言えば真実になると言われる。これを多用したのは、ナチとスターリン一派だった。　２５日には、プーチン一派は、国連安保理にもこの「疑惑」を持ち出した。おそらくロシア以外、これに同調する理事国はないだろうが、油断はできない。　「汚い爆弾」とは、核兵器と違って、通常爆弾に「放射性物質」を加え、放射能を爆発地周辺にまき散らす爆弾だ（絵）。核爆弾と異なり、高度なウラン濃縮技術も、爆発の制御技術も必要ない。　これまで使われたことはないが、テロリストにとって無差別都市攻撃を行うのに好都合な爆弾で、これまで実際にテロリストが製造に動いた例はある。​◎核兵器使用の口実か​　そもそも放射性物質で爆発地周辺環境を広く、長期間汚染させる「汚い爆弾」を、ウクライナが使用するメリットは全くない。しかし、南部・東部４州を武力占領する侵略者ロシアにとって、退却に際して「汚い爆弾」を使う誘因は大きい。少なくともウクライナ防衛軍の追撃を一定期間防げるし、ウクライナの大地を長期間、汚染する効果がある。　さらに、「ウクライナが『汚い爆弾』を使ったから、その報復だ」として、戦術核兵器を使う口実になり得る。クリミア大橋の破壊を口実に、ウクライナ主要都市にミサイルと自爆ドローンで攻撃しているのと同じだ。　その布石なのか、ロシア侵略軍が占領するザポリージャ原発の使用済み核燃料に手を付けようとしている。​◎電力施設の４割が破壊され厳冬のウクライナに痛手​​　ウクライナは、相次ぐロシアのミサイル、自爆ドローンによって発電所など４割の施設が破壊され（写真）、厳冬期を迎えるウクライナは、広範囲に停電に見舞われている。​　戦争では勝てないので、発電施設などエネルギー関連施設を破壊し、ウクライナ国民を広く凍えさせようという魂胆だ。　卑劣な手段を次々と考え出して、ウクライナを攻撃するロシアに深い憤りを覚える。​　ナポレオン軍やナチ・ドイツ軍をも撃退した「冬将軍」（絵）は、ウクライナにも襲いかかる。耐えて欲しいと願わざるをえない。​​​昨年の今日の日記​：「第二次世界大戦のミステリー、ロシア、ツァールスコエ・セロー「琥珀の間」の膨大な琥珀はどこへ消えた？」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110290000/​

  2022.10.29

• 

  エチオピア紀行（１８４）：ＮＭＥ＝頑丈化へと特殊化を強めた人類の側枝パラントロプス

  　前回の日記にチラリと言及したパラントロプス・エチオピクスの化石が、ここエチオピア国立博物館（ＮＭＥ）のアウストラロピテクス・ガルヒの隣に展示されている。​◎エチオピアではずっと早くに発見されていたパラントロプス・エチオピクス​​　パラントロプス・エチオピクスは、俗に呼ばれる「頑丈型猿人」の祖型である。実は、これまで述べてきたアルディピテクス２種（カダバとラミダス）、アウストラロピテクス２種（アファレンシス、ガルヒ）の発見よりもずっと早い１９６８年に、初期のオモ渓谷調査をしていたフランス人調査隊によって頑丈な下顎骨などが発見されていた。２７０万～２３０万年前のシュングラ層群から出土したので、２５０万年前頃、とされた（写真）。​​　後の１９８５年にケニアのトゥルカナ西岸の２６０万年前の地層から、やはり頑丈な頭蓋（ＷＴ－１７０００、通称「ブラックスカル」（写真）が見つかり、同一種と認定された。​◎戦前に見つけられていた南アフリカの頑丈型猿人​　話がやや複雑になるが、頑丈型猿人は、実は早期ホモ属やアウストラロピテクス・アファレンシスの「ルーシー」などよりずっと早くに、東アフリカのオルドヴァイ峡谷と南アフリカのクロームドライやスワルトクランスで発見されていた。　南アフリカのパラントロプスを第二次世界大戦前に（！）見つけたロバート・ブルームは、その顔つきがあまりにも頑丈に見えたこと、臼歯が巨大だったことから、人類の側枝という意味の「パラントロプス」と属名を付け、クロームドライ産を「パラントロプス・ロブストス」、スワルトクランス産を「パラントロプス・クラシデンス」と呼んだ。​◎系統異なる新しい頑丈型猿人２種​　一方、１９５０年代後半に東アフリカで独自に初期人類化石の探索を始めたルイス・リーキー、メアリー・リーキー夫妻は、１９５９年に念願の人類化石を発見、これをアウストラロピテクス・ボイセイと名付けた。後にこれは、パラントロプスに一括された。　ただ南アフリカ産も東アフリカ産も、年代は２００万年前よりずっと若く、後に発見されたエチオピクスの方がはるかに古かった。　ここからパラントロプス・エチオピクスは、東アフリカ産のパラントロプス・ロブストスにつながったと考えられた。ただ南アフリカ産は、特徴がやや異なるため、エチオピクスとの間に系統関係はなく、むしろ南アフリカだけにいた特殊な初期人類化石のアウストラロピテクス・アフリカヌスが頑丈な方向に特殊化していったホミニン、と考えられている。​◎華やかさを失ったエチオピクスはひっそりと​　今では完全さでブラックスカルに遠く及ばず、年代的古さも中途半端で、さらに人類の側枝の祖型とされるので、パラントロプス・エチオピクスは、ＮＭＥではひっそりと展示されている。　彼らの祖先は、アウストラロピテクス・アファレンシスだったと思われ、おそらくホモ属とは別の、頑丈型へと特殊化を進めた系統なのだろう。​昨年の今日の日記：「『ＦＩＲＥ』の夢――その可能性を探るとなかなか厳しい」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110280000/​

  2022.10.28

• 

  シベリア２洞窟出土のネアンデルタール人１３個体の血縁関係、１組は父・娘の関係

  ​　ドイツ、マックスプランク進化人類学研究所などの国際研究グループは１０日、シベリア、アルタイ山脈北麓の２つの洞窟で見つかったネアンデルタール人１３個体のゲノムを解析し、同集団の社会組織を調査した。成果は、イギリス科学誌『ネイチャー』１０月２０日号で報告された。ちなみに２洞窟の東には、ネアンデルタール人の他にデニーソヴァ人の化石も出たデニーソヴァ洞窟がある（図＝２洞窟の位置）。​​◎父・娘１組、二親等内の血縁者同士が１組​​​　調べられたのは、チャグリスカーヤ洞窟（下の写真の上）１１個体、オクラドニコフ洞窟（下の写真の下）２個体の計１３個体のネアンデルタール人集団の歯などの細胞から抽出したＤＮＡ。ゲノム情報の類似点などから血縁関係を明らかにした。なおオクラドニコフ洞窟は、古くから中期旧石器の出土で知られた有名な遺跡で、ここからネアンデルタール人骨が出ていたのだ。​​​　それによるとチャギルスカーヤ洞窟の一部個体群は密接な親族関係にあり、父と娘の親子ペアが１組、二親等内の血縁者同士１組がいた。このことから、少なくとも同洞窟の一部個体群は、同時期に居住していたことが明らかになった（写真＝チャギルスカーヤ洞窟の発掘）。​​◎ネアンデルタール人共同体はゴリラ並みに小さかった？​　またゲノム解析から、同洞窟ネアンデルタール人集団は、かなり小さな共同体だったことが分かった。従来は、近代の狩猟採集民バンドから類推して３０人程度と考えられたが、それよりずっと少なかったようだ。現生ゴリラの群れ並みと言える。　また父親から受け継ぐＹ染色体の遺伝的多様性は、母親から受け継ぐミトコンドリアＤＮＡのそれよりも１桁少なく、このパターンは、婚入などにより女性が共同体間を移動していたと考えると最も説明しやすいという。​◎報告者にペーボ博士も名も​　この報告者の中には、今年度のノーベル生理学・医学賞受賞者のスヴァンテ・ペーボ博士も名を連ねている。　なおネアンデルタール人は、４３万年前頃にホモ・ハイデルベルゲンシスからヨーロッパで派生進化し、一部はシベリアまで進出し、４万年前頃にはヨーロッパ西部で絶滅したホミニンで、我々ホモ・サピエンスとはいとこの関係に当たる。​昨年の今日の日記：「「忍び寄る新しいインフレ＝greenflation（グリーンフレーション）の足音が聞こえる」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110270000/​

  2022.10.27

• 

  香港株式市場が暴落で応えた中国共産党の習近平１強支配体制の確立

  　２２日の中国共産党第２０回党大会の閉幕、翌２３日の第２０期中央委員会第１回総会（１中総）での政治局員、政治局常務委の選出、と習近平１強支配体制の確立を演出したセレモニーが終わった。​◎ハンセン指数は６％安、テック企業は１０％超安​​　これについての論評は、昨日の日記で書いたが、この政治動向は、翌日月曜日の香港株式市場でさっそくネガティブに反応した。２４日の同市場の株が大きく売られ、ハンセン指数は前週末比６％安、１０３０．４３ポイント安の１万５１８０．６９と、２００９年４月以来、約１３年半ぶりの安値となった（写真＝ビルの側面の電光掲示板が伝える市場動向）。​　習近平１強支配体制で、スターリニスト中国経済はますます逼塞し、衰退するのではないか、と多くの中国関係投資家が考えたことによる。　特に習近平が抑圧対象にする中国のテック企業が売られ、アリババは１１％安、テンセント１１％安、出前アプリの美団に至っては１５％安と、大幅安だ。​◎上海市で失敗した李強が時期首相とは！？​​　この投資家の反応は、極めて健全だ。どう考えても、習近平の支配するスターリニスト中国の経済がかつてのように成長していくとは、政治局常務委の顔ぶれを見ても、考えられないからだ。特に来年春に引退する予定の李克強に代わって首相に就任するのが確実な党ナンバー２の李強（写真＝１中総の後、習近平と並んだ政治局常務委の面々。習の左隣に並ぶ李強は、他５人と別格であることを示す）が、それでなくとも困難になっている経済をうまくマネージメントしていけるとは誰も思えない。​　李強は、言うまでもなく上海市党委のトップとして君臨した習近平の子分で、中国最大の経済都市・上海市の武漢肺炎ウイルスの感染力の強さを見誤ってウイルス封じ込めに失敗し、上海に２カ月のロックダウン（都市封鎖）をもたらし、市民から総批判を受けた。党大会前、一部の観測筋は、この時の「失政」が批判されて政治局員の地位すら危ないとされていたのに、逆に次期首相に「昇格」である。​◎ロシアの失敗に学ばない硬直したスターリニスト中国体制​　国内外で広がった驚きが、香港市場の下げをさらに増幅させただろう。　指導部が独裁者に異論を唱えられないイエスマンばかりで構成された体制の失敗の顕著な例は、今のプーチンのロシアの困難さを見れば、誰もが納得するだろう。　中国共産党の新指導体制は、世界の誰の期待にも応えられないほどのお粗末なものである。アメリカなども、さっそく身構えるだろう。​昨年の今日の日記：「今年もノーベル賞と無縁だったスターリニスト中国、科学技術界の根本的な欠陥大きく」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110260000/​

  2022.10.26

• 

  中国共産党大会終わり、１強体制を確立した習近平、共青団は全滅

  ​　中国共産党第２０回党大会（写真）が２２日終わった。予想以上の習近平１強体制である。​　まず習近平のライバルと目されていた共青団出身の李克強と習と距離があるとされる、同じ共青団出身の全国政治協商会議主席・汪洋が、党政治局常務委を外れ、６８歳定年前に引退を強いられた。​◎党指導部から一掃された共青団閥​​　また共青団のホープとされた副首相の胡春華（写真）が政治局員を外された。党大会前は、李克強・汪洋の代わりに政治局常務委入りが有力視されていたのに、蓋を開ければまさかの降格である。在任中、胡春華は特にミスしたわけではない。​　これで、政治局常務委から共青団出身者は一掃された。また常務委７人のうち６人までが明確な習近平派だ。その下の政治局員２４人のうちでも７割は、習近平派と言われる。　今回の党大会の最高幹部人事の最大の目玉は、以上の人事配置で明確になった。つまり習近平の１強支配体制確立、そして習に距離を置く共青団人脈の一掃である。​◎途中退席させられた胡錦濤​　以下、素人の憶測だが、奇妙にも政治局員の定員が、従来までの２５人から１人減の２４人に減ったことと、胡春華の降格と関連があるのではないだろうか。つまり直前まで習近平は、胡春華を政治局常務委には昇格させないまでも政治局員留任を考えていたが、それに本人か共青団閥が異論を唱え、そのために胡春華を降格させ、その枠を埋める手当が時間的にできず、１人減にしたのでは、と疑うのだ。​　それと関連があるのかどうか、最終日の２２日、党規約改正の決議案などが採決される直前、習近平の隣に座っていた前総書記の胡錦濤が、途中退席した（写真）。退席の様子をテレビで見ると、係員に腕をとられ、嫌々ながら連れ出されたという感じだった。胡錦濤は、共青団出身で、かつて李克強の強力な後ろ盾だった。自派の共青団閥の人事での冷遇に、胡錦濤の不満が表れていたように思われた。​​◎イエスマンばかりに囲まれた習近平、第２のプーチンを懸念​　こうして習近平は、周囲をイエスマンだけで固めた。　懸念は、つのる。例えばウクライナ侵略に踏み切ったロシアのプーチンのように、習近平が台湾の武力「解放」をすると言い出せば、これを制止できる人物は誰もいない。経済面に明るい李克強なら、中国経済を破綻させるから、と制止するだろうが、次期首相が予定されるナンバー２の李強は、むしろイケイケと習近平をけしかけかねない。　習近平１強支配体制となったスターリニスト中国は、戦狼外交を推し進めた外相・王毅が政治局入りを果たしたことに象徴されるように、さらに外に対しても内に向けでも、強硬一辺倒に向かうだろう。​昨年の今日の日記：「これぞまさにＲＥＩＴ投資の醍醐味、大成功のコンフォリア・レジデンシャル投資法人の例」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110250000/​

  2022.10.25

• 

  １００万年前を越える最古のＤＮＡを探して（後編）：マンモス、「クレストフカ」臼歯は１６５万年前！

  　今回の研究されたのは、２種類のマンモスの臼歯３点だった。​◎永久凍土に埋まっていた３つマンモスの臼歯​​　１つは最も新しいものでは北極海に浮かぶウランゲリ島で約４０００年前まで生き残っていたケナガマンモスの祖先として知られるステップマンモス（トロゴンテリーゾウ＝想像図）で、もう１つは約１２０万年前のシベリアに住んでいた未知のマンモスという。​​　後者のマンモスは、約４２万年前にケナガマンモスと交配し、その後、北アメリカを席巻することになるコロンビアマンモスを生み出したと見られる（写真＝ウランゲリ島の永久凍土に埋まっていたマンモスの牙を抱える研究チームの一員）。​　研究対象になったマンモス臼歯は、１９７０年代にロシアの古生物学者アンドレイ・シャーが永久凍土の中から発見したものだ。​　３つの臼歯のうち２つは、発見地にちなんで「クレストフカ」、「アディチャ」と名付けられた。もう１つは、２点よりもずっと前の８７年前にシベリアで見つけられていたもので、「チュコチヤ」と名付けられた（写真＝チュコチヤの臼歯）​。​◎生層序年代推定では２つが１００万年前超​　これら３点の臼歯の年代は、出土層位に共伴していた齧歯類の生層序に基づき、クレストフカが１２０万～１１０万年前、アディチャが１２０万～１００万年前、チュコチヤが８０万～５０万年前と推定された。　さらに研究チームは、各臼歯から抽出した古代核ＤＮＡを抽出した。チームは得られた地質年代の情報と遺伝子情報を比較した。年月を経て、ＤＮＡは変異を積み重ねていく。研究者は変異の数を数えることで、例えば種が枝別れするといった進化における重要な出来事が起こってから、どのくらいの年月が経ったかを推測することができる。　ちなみに２０１８年に報告された研究成果で、マンモスと現生のゾウは、約５３０万年前に分岐したことが分かっている。マンモスから読み取れる変異の数を計算することで、そのマンモスがいつくらいのものか、見積もることができた。​◎変異数を数えて割り出したクレストフカ臼歯は１６５万年前​　その結果は、生層序による推定年代よりさらに古い推定年代が導かれた。古い方の２つ、すなわちアディチャが約１３４万年前、クレストフカに至っては約１６５万年前、と推定されたのだ。ちなみにこの頃、人類はホモ・エレクトスに分岐進化し、一部はジョージア、ジャワなどアジア大陸に進出していたが、寒冷環境に順応していないので、北極圏には足を踏み入れていなかった。　だが研究チームの１人、アンダース・グーセルシュトローム博士は「我々はまだ限界には達していない」とプレスリリースで強気に語った。「今回の経験をもとに推測するならば、（仮に臼歯が発見されれば）２００万年前のＤＮＡも解読が可能で、２６０万年前程度までは遡れる可能性がある｣、としている。　ただそれ以前となると、地球が氷河期以前の温暖な時期だったため、古代ＤＮＡを保存する可能性のある永久凍土が存在しないので、この辺りが限界と考えられる。　やはり『ジュラシック・パーク』は夢物語なのだ。（完）​昨年の今日の日記：「２００兆円を切り詰める男、民主党上院議員だがバイデン大統領の金看板政策３．５兆ドル法案に反対し、大幅削減を飲ませる」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110240000/​

  2022.10.24

• 

  イランからドローンを買ってウクライナ都市インフラなどを攻撃するロシア、ダム爆破計画も

  ​　ＥＵとイギリスは、侵略者ロシアにドローン（無人機）を供与しているイランに対し、新たな制裁を決めた。イラン製ドローン（写真）がロシアに供与され、対ウクライナ攻撃用に使われている証拠がたくさん集まったことで２０日、決定した。​◎１機１０億円と高くないイラン製ドローン​　イラン製ドローンは、イエメン内戦でシーア派テロリスト集団「フーシ派」に供与され、フーシ派が対立するサウジアラビアの石油施設攻撃に威力を発揮している実績があり、またロシアと共に同じシーア派系のアサドが支配するシリアで反アサド派の抵抗勢力や都市に対して自爆攻撃にも使われた。シリアで共闘したロシアが、それに目を付け、自軍のミサイルが残りが乏しくなっている代替としてウクライナ都市インフラ攻撃に使っている。　イラン革命防衛隊の教官がロシアの支配地域に入り、ロシア侵略軍にドローンの操作の指導もしている。　イラン製ドローンは、１機約１０億円とさほど高くない。ここに数十キロの爆弾を積み、編隊を組んで都市攻撃すれば、ウクライナの防空システムで半数が撃ち落とされても、ある程度、都市インフラや民間施設にダメージを与えられる。​◎カネだけはあるロシア​　原油をスターリニスト中国やインド、トルコなどに売って金回りだけはいいロシアにとって格好の武器だ。　さらに一部では、対イスラエル攻撃用にイランが開発した中距離ミサイルをロシアに供与する計画もあるという。　しかし、時代は変わった。かつてロシアの前身のソ連は、途上国に最新兵器を売りまくっていた。イランも、兵器供与相手だった。それが、立場が逆転した。　それだけ兵器が払底しているのだ。​◎ウクライナ侵略にウクライナ人や先住民少数民族を使う卑劣さ​　ウクライナ防衛軍の反撃ですっかり劣勢に陥ったロシアのプーチンは１９日、併合したウクライナ領の４州に戒厳令を敷く大統領令を発した。戒厳令により、４州は総動員体制になる。つまり４州のウクライナ人男性をロシア侵略軍に徴兵し、ウクライナ侵略戦争に使う魂胆だ。​　２０１４年に併合したクリミアでは、人口比では１２％しかない先住民のクリミア・タタール（写真＝民族衣装を着て踊るクリミア・タタールの人たち）に、同地域の召集令状の９割が渡されているといわれている。クリミア・タタールには、もともと反ロシア感情が強く、かつてソ連時代の末期は自治権獲得運動が起こっていた。彼らをウクライナ侵略戦争の最前線に送るというのは、なんと残忍なことか。プーチンしか思いつかないだろう。​　併合した４州の戒厳令施行は、それと同じことだ。​◎撤退の際にカホフカ水力発電所を爆破か​　しかし、それでもプーチンのロシアは侵略戦争に巻き返せない。　イギリス国防省が２０日に発表したところによると、ロシア侵略軍がウクライナ防衛軍の反転攻勢を受け、南部ヘルソン州の州都ヘルソンのあるドニエプル川西岸から、大規模な撤退を計画しているという。​​　しかし撤退の際、ロシア侵略軍は、ドニエプル川を堰き止めるカホフカ水力発電所（写真）のダムに爆発物を設置したという情報がある（地図）。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ダムを破壊して人為的に洪水を起こそうとしているとロシア侵略軍を非難している。​​　この恐れは、ロシア侵略軍が占拠するザポリージャ原発でもあり得る。　ロシア侵略軍による戦術核兵器の使用の恐れと共に、ウクライナ防衛軍も様々なリスクを警戒する必要が出ている。​昨年の今日の日記：「２００兆円を切り詰める男、民主党上院議員だがバイデン大統領の金看板政策３．５兆ドル法案に反対し、大幅削減を飲ませる」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110240000/​

  2022.10.23

• 

  １００万年前を越える最古のＤＮＡを探して（前編）：永久凍土に埋まった化石でないと無理

  ​　映画『ジュラシック・パーク』は、琥珀の中に封入された太古の蚊が吸っていた恐竜の血液を採集し、そこから恐竜の遺伝子を復元し、現生の爬虫類の卵子に移植し、恐竜を復活するという話だった（写真）。​◎４万年前のネアンデルタール人の古代ＤＮＡもズタズタ​　あくまでも空想の物語であり、いまだに恐竜復活など夢物語だ。それどころか、シベリアの永久凍土中に凍結保存されていたマンモスからＤＮＡを抽出・増幅し、現生のアジアゾウの卵子に移植して、マンモスを復活させようという試みも、まだ成功していない。　古い動物細胞中のゲノムは、理想的な環境下でも、壊れるのは防げない。今年度のノーベル生理学・医学賞を受賞したスヴァンテ・ペーボ博士でも、４万年前頃のヴィンディア・ネアンデルタール人から核ゲノムを解読する試みは、１００％すべて読み取れたわけではなかった（１０月６日付日記：「ノーベル生理学・医学賞受賞の分子人類学の創始者スヴァンテ・ペーボ博士の業績」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202210060000/を参照）。たかだか４万年前のネアンデルタール人の古代ＤＮＡでもあちこち、ズタズタにちぎれ、寸断されているのだ。​◎永久凍土は理想的​　古代ＤＮＡが保存されるのは、厳しい条件がある。冷涼な環境で、速やかに遺体が外気から遮断され、腐敗による微生物の汚染も免れる必要がある。ヨーロッパの冷涼な環境の洞窟内や永久凍土は、その点、望ましい条件を備えている。これまでネアンデルタール人やデニーソヴァ人のＤＮＡが解読できたのも、すべて洞窟内に埋まっていた骨だった。その意味では、暑い環境に棲んでいた恐竜のＤＮＡを復元しようとした『ジュラシック・パーク』の研究陣は、無い物ねだりをしていたようなものだ。　それに匹敵、いやむしろ洞窟よりも理想的な環境は、永久凍土層である。永久凍土地帯に人類が進出するのはせいぜい２万年前頃だろうから、ネアンデルタール人は望めない。しかしマンモスやケブカサイなどなら、希望が持てる。​◎最古のウマの古代ＤＮＡ年代を更新​　２０２１年、イギリスの科学誌『ネイチャー』で、驚くべき報告があった（『ネイチャー』２０１１年３月１１日号２６５ページ）。​​　シベリア東部の永久凍土に保存されていたマンモスの臼歯から、史上最古となる古代ＤＮＡが抽出され、その塩基配列が解読されたのだ。この年代は、解析技術の理論的な限界に近づくものだった（想像図＝「アディチャ」と名付けられたマンモスの想像図；下の写真は永久凍土から突き出るマンモスの牙）。​　今回の研究は、１９７０年代に発掘された前期更新世と中期更新世のマンモス３個体の標本について行われたもので、得られた遺伝子情報によって、歯の持ち主のマンモスは、後のケナガマンモスと北アメリカを席巻したコロンビアマンモスの共通の祖先であると判明した。　これまで解析に成功した最古のＤＮＡは、５６万年前～７８万年前のものと推定されたウマのＤＮＡだったが、今回はそれを１００万年も古く更新した。（以下、続く）​昨年の今日の日記：「僕が長年の自民党への投票を止め、維新の会に乗り換えた理由：期日前投票で」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110220000/​

  2022.10.22

• 

  武漢肺炎によるオンライン授業でアメリカで何が起こったか、貧困層を主に深刻な学力低下の証拠

  　世界的に峠を越えた武漢肺炎パンデミックだが、世界各国の社会に深い傷跡を残した。　日本ではまだ検証されていないが、世界最多の感染者を出したアメリカでは、経済に大きな痛手を与えた。そして、その立ち直りが急だったために、今、世界の最大の焦点となっているアメリカ金利の急騰、それに伴うドル独歩高が起こっている。​◎急速なインフレ​　その引き金を引いたのが、異常なほどの失業率低下と急激な需要増加であった。武漢肺炎で毎日何十万人もの感染者が出ていた時、人々はひたすら巣ごもりに徹した。バイデン政権も、国民への直接の給付金支給を２度までも行った。また被雇用者への手厚い給付も行った。巣ごもりで、被雇用者への手厚い給付、国民全員の給付金支給となれば、支出が抑えられるから、過剰貯蓄が積み上がる。　武漢肺炎の下火で、この過剰貯蓄が動き出し、需要に火が付いた。そのうえ、被雇用者の労働復帰が遅れた。インフレが起こるのは、しかたがない。　ここに昨年からの原油高・資源高・食料高がシンクロし、インフレが昂進、ＦＲＢのハイペースの利上げとなったわけだ。​◎武漢肺炎で学校が閉鎖され​　さて、目立たないが、一部の研究者から、不安をもって指摘されているのが、子どもたちの教育面へのしわ寄せである。　２０２０年秋、政府や各州は、ロックダウンを解除し、人々は職場や酒場に繰り出したのに、多くは学校の対面授業を再開しなかった。​　大人たちはバーやレストランに繰り出し、飲食を楽しんだのに、子どもたちはオンライン授業を強いられた。しかし特に低学歴層・低所得層にとって、オンライン授業とは実質、全く授業を受けていない状態だった。彼らには、オンライン授業のバックグラウンドが無かったから、教育の機会から放置されたのである（写真）。　人ごとではない、と僕は思った。赤貧洗うが如しだった母子家庭で育った僕が、今のアメリカに置かれていたら、間違いなく学校教育を閉ざされていただろうからだ。​◎深刻な学力低下​　その結果は、明白な学力低下となって現れた。９月初めに発表された全米学力調査で、９歳児の算数と読解力が劇的に低下していることが分かった。２２年の算数の点数は、２０年を下回った。学力は社会の努力で年と共に少しずつ伸びていたのに、学力調査の５０年の歴史で初めての減少となった。読解力に至っては、最近約３０年間の中で最大の減少幅で、いずれも０４年の水準を下回った。　そして予想されたように、学校の休校によるオンライン授業で、最も打撃を受けたのが成績の悪い層だった。成績が下位１０％の生徒の算数の減少幅は、上位１０％の４倍にも達したのだ。読解では、低下幅は５倍になった。成績の悪い生徒とは、すなわち家庭環境が恵まれず、世帯収入も低く、そのためにオンライン授業の基盤の無い家庭の子どもたちだ。将来、この子たちが成人となった時、豊かな世帯、すなわち成績の良かった層との格差は広がるだろう。​◎将来の収入減も​　事実上、学校教育を１～２年受けられなかった貧困家庭の子どもたちは、将来の収入源を甘受せざるを得ない。統計からの推定によると、学校教育を１年間受けられないと、勤労者の収入は１０年で少なくとも４万ドル（約５８０万円）も減少するという。​　大学進学者数も減った。ある研究では、武漢肺炎禍でコミュニティカレッジ（日本の短大に相当）に進学した高卒者は１６％、４年制大学への進学者は６％減少した。この減少となった多くが、低所得層であることは推定できる。世帯主が非大卒者である家庭の収入は、世帯主が大卒の家庭の収入の約２分の１だからだ（写真＝究極の貧困層であるホームレス）。​　この災禍を埋めるには、６月からの夏休みを７月からに短縮し、土曜日も開校し、平日の授業時間１～２時間も増やすしかない。　ところが、それが実現できていない。​◎教職員組合が学力回復の癌​　癌となっているのは、日本と同じように教職員組合だ。組合は、新型ワクチンや治療薬が広く普及した後でさえ、公立学校の教師が仕事に復帰するのは危険だと主張し続けた。今は、労働過重を訴えるのだろう。　彼らリベラルはことあるごとに貧困と格差の存在を問題視し、格差是正を主張する。しかし、その舌の根も乾かぬうちに、自らのエゴのために実は貧困と格差を拡大させているのだ。​昨年の今日の日記：「スターリニスト中国が日本の新幹線規格での計画を横取りしたインドネシア高速鉄道計画、大幅建設遅れにコスト膨張の悲惨」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110210000/​

  2022.10.21

• 

  エチオピア紀行（１８３）：ＮＭＥ＝ホモ属の祖先かと議論となったアウストラロピテクス・ガルヒの発見

  ​　エチオピア国立博物館（ＮＭＥ）の人類化石展示風景（写真）は、実際、僕にはいくら時間があっても見足りないほどの充実ぶりである。​​◎２５０万～２６０万年前のガルヒの発見​　これまで観ただけでも、以前に観たニューヨーク自然史博物館をも上回る充実である。　その一角に、またまた凄い化石ホミニンである。​　アウストラロピテクス・ガルヒ頭蓋である（写真）。　ガルヒは、アファール低地で１９９６年からアメリカ人古人類学者のティム・ホワイトやエチオピア人古人類学者ベルハネ・アスフォー、日本人研究者の諏訪元氏などにより発見された。なお諏訪氏は、この発見地の近くの別地点で、１９９７年にホモ・サピエンス・イダルツを発見している（９月１７日付日記：「エチオピア紀行（１７７）：ＮＭＥ＝ホモ・サピエンス・イダルツ頭蓋；古人類の測定年代は正しいか、論争の的となったイノシシ化石」を参照）。​　年代が２５０万～２６０万年前と推定されたガルヒは、１９９９年にその成果が発表された頃、とりあえず「アウストラロピテクス」と分類されたが、一緒に見つかった他の遺物が議論の的になった。​◎小さな脳、そして石器も製作し、動物解体に使った？​​​　１９９７年１１月にガルヒの頭蓋（ＢＯＵ－ＶＰ－１２／１３０）も見つかり（下の写真の上＝隣の化石がパラントロプス・エチオピクス）、ここから脳容量が４５０㏄程度と計測された。その数字だけを見れば、脳は同類のアウストラロピテクス並みだが、すぐそばに石器で割られたと思しき羚羊類の骨（下の写真の下）、さらにはオルドワン石器も見つかり、ガルヒが石器を製作・使用していたと推定された。​​　すると、これは初期ホモ属か、後のホモ属につらなるアウストラロピテクスという可能性もある、とされた。​◎ガルヒはホモ属とは別の枝​　しかし１９９９年に別のアメリカ人古人類学たちにより、ガルヒは初期ホモ属とは同じ共有派生形質を持たないことから（つまりアウストラロピテクスの一派として特殊化していたため）、ホモ属とはつながらない、別の枝の人類であることが分かった。　僕がエチオピアを訪れた前年の２０１５年に、２８０万年前の最古のホモ属化石が見つかり、この議論は決着がついた。　ちなみに古い石器に関して言えば、３３０万年前の東トゥルカナのロメクウィで原初的な石器が見つかっている。　当時、東アフリカには、アウストラロピテクス（ガルヒと場合によってはアファレンシス生き残りも）、パラントロプス・エチオピクス（次回で詳述）、さらに早期ホモ属の３ないしは４種のホミニン（ヒト族）がいたのである。​昨年の今日の日記：「蜜でアリを操作するアブラムシ、天敵を攻撃させる薬物を含んだ蜜を出す」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110200000/​

  2022.10.20

• 

  探査機ＤＡＲＴ、二重小惑星の衛星「ディモルフォス」に命中、周回軌道の変更に成功！　地球衝突の恐れの小惑星から回避へ

  　将来の小惑星の地球衝突を回避するための技術開発として昨年１１月に二重小惑星に向けて打ち上げられ、去る９月２６日にその「衛星」小惑星「ディモルフォス」に衝突させたＮＡＳＡの探査機ＤＡＲＴが、首尾良く軌道を変えさせることに成功した。１１日、ＮＡＳＡが発表した。​◎迫られる衝突回避の方法​　宇宙発の地球最大危機は、小惑星の地球衝突だ。その危険性の大きさは、６６００万年前にユカタン半島沖合に衝突した直径１０キロほどの小惑星によってもたらされた「終末」的大惨禍で明らかだ。この衝突で、大半の恐竜類、魚竜、翼竜、さらに海ではアンモナイトなど、地球生命種の７６％が絶滅した。　小惑星衝突の危機は、アメリカ映画『アルマゲドン』でも描かれているように、なかなか予測できず、また衝突の危機が分かってからも対策がほとんど無い。　『アルマゲドン』は、宇宙飛行士を小惑星に派遣し、そこに核兵器を埋設して爆破するストーリーだったが、莫大な費用と宇宙飛行士の生命を危険にさらすなど、フィクションの映画ならまだしも、およそ現実的ではない。​◎体当たりさえできれば​　しかし、もし事前に接近が予測できたら、ロケットを打ち上げ、接近する小惑星にちょっと体当たりして軌道を変えれてやりさえすれば、衝突を回避できるかもしれない。​　ＤＡＲＴは、それを実験するために昨年打ち上げられた（想像図＝標的小惑星に接近するＤＡＲＴ）。　本日記でも、２回に分けてその意義と狙いを記述した（２１年１２月２３日付日記：「ＮＡＳＡが小惑星ミニ衛星に体当たりするＤＡＲＴ探査機を打ち上げ、成るか、軌道を変える壮大な地球防衛実験（後編）」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202112230000/、及び２１年１２月２０日付日記：「ＮＡＳＡが小惑星ミニ衛星に体当たりするＤＡＲＴ探査機を打ち上げ、成るか、軌道を変える壮大な地球防衛実験（前編）」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202112200000/を参照）。​◎二重小惑星の衛星なら効果の判定が可能​　ＤＡＲＴが向かったのは、地球から約１１００万キロ離れた二重小惑星「ディディモス」と「ディモルフォス」だ。直径約７８０メートルのディディモスは、１９９６年に発見されたが、その後の観測で、ディモルフォスという直径約１６３メートルの小惑星を衛星として従えていることが分かった。　だからＮＡＳＡが、今回の実験対象に選んだ。　ちなみにディディモスもディモルフォスも、将来地球に衝突する危険性は、無い。​　しかもディディモスには、ディモルフォスという衛星を持つ。もし探査機を衛星ディモルフォスに体当たりさせれば（写真＝体当たり直前のディモルフォス）、軌道が変わるかもしれない。多くがそうである単独の小惑星なら、その効果の判定がつけにくい。しかし衛星なら、母天体のディディモスと共に観測すれば、公転周期に変化が出来る。​◎体当たりで軌道は数十メートル動いた！​　ディモルフォスは、ディディモスの周囲を１１時間５５分かけて周回していた。体当たりさせた後、地上の望遠鏡で観測すると、公転周期は３２分短くなり、１１時間２３分になったことが分かった。​​　この成功は、イタリアの小型探査機「ＬＩＣＩＡCube」とハッブル宇宙望遠鏡が見ていた（写真；下はハッブル宇宙望遠鏡が撮影したディモルフォスの体当たり後に出来た破片）。​　予想されたとおり、ディモルフォスは「ラブルパイル天体」で、つまり１枚岩の天体ではなく、いくつもの岩が緩やかに集積して集合体をなしていたから、体当たりから３分足らずで、現場近くを通過していた「ＬＩＣＩＡCube」が立ち上る塵の雲を撮影した。　衛星ディモルフォスは、ＤＡＲＴの体当たりによって軌道を変えられ、数十メートルだけ、ディディモスに近づいた。そして母天体に近い新軌道を取るようになったのだ。　ＮＡＳＡのビル・ネルソン長官は、周期が１０分でも変われば大成功だっと思っていた、と喜びを爆発させた。　もし直前ではなく、ある程度余裕をもって小惑星の接近が予測されれば、これで探査機を打ち上げて軌道を変更させられることが実証できた。従来軌道よりほんの数十メートルでも軌道を変えさせられれば、地球最接近時には大きくそらすことができる。　大きな意義のある実験成功だった。​昨年の今日の日記：「出れば圧勝のはずが……トヨタ自動車王国の愛知１１区でトヨタ出身議員が引退の異風」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110190000/​

  2022.10.19

• 

  奥日光の旅（４）：ミズナラ、ダケカンバなどの深い森を歩く

  　戦場ヶ原の木道を進む。​​　１時間弱で青木橋を渡った（下の写真の上）。戦場ヶ原を貫く湯川の対岸に行く。これを渡ると、緩やかな丘陵になり、ミズナラの純林が広がる（下の写真の下）。下生えは、一面のササだ。​◎ミズナラ林を貫く道に大量のドングリ​　ミズナラは、かなりの樹齢の木が多い。​　ミズナラ林を貫く土道をふと見ると、一面にドングリが落ちている（写真）。​　目にできるのは、裸地の散策路に落ちているからだが、ミズナラの樹林の下は、広大なササで覆われていて見えない。この下には、もっと多数のドングリが落ちているはずで、膨大な生産量である。冬を前にしたツキノワグマにとって、重要な食料源だ。　僕は、手近なドングリを５、６個ばかり拾った。帰宅して、鉢に埋めてみようと思った。​◎１本だけ鮮やかに紅葉した木​　泉門池に着いた。「せんもんいけ」と読んでいたが、道標から「いずみやどいけ」と読むことが分かった。あまりきれいな湖沼ではない。ここで、道は４つ角になり、まっすぐ進むと湯ノ湖、右は北戦場ヶ原となる。僕は左に曲がり、小田代原に向かう。​　途中、ミズナラ林の中で、１本だけ紅葉の進んだ木を見つけた（写真）。ミズナラなのだろうか、それならなぜこの木だけ紅葉が進んでいるのか、よく分からない。​　ただ、小田代原も戦場ヶ原のように、おそらく単調な景色が続く。深く入り込んでも、仕方がない気がする。​　シカを侵入を防ぐ防鹿柵の扉があり（写真）、ここを通って、「てくてく歩道」を行くことにした。​◎戦場ヶ原展望台のベンチで昼食兼休憩​​　森は、ミズナラからやがてダケカンバ（写真）、そしてカラマツへと変わった。​　深く、広い森が、どこまでも続くようだ。時折、道ばたにドングリが目立つようになると、森はいつの間にかミズナラに変わっている。ミズナラの森は、深い。　やがて防鹿柵の扉が見えてきた。つまりシカ食害のフェンスは、小田代原の広大なミズナラ林を取り囲んでいるわけだ。冬季に辺りが雪に埋まると、シカが食べるものはミズナラの樹皮だけになるからだ。　歩き始めて２時間を過ぎ、そろそろ昼飯兼休憩を取りたくなった。​　ちょうど「戦場ヶ原展望台」の標識があり、見ると、ベンチが設置されている。この展望台はさほど景観が良い所ではないが（写真）、それでも休憩にはもってこいだ。​​◎平地はやはり物足りない​　一休みの後、道をさらに進むと、二股に分かれた。僕は、左の道をとった。こうすれば、戦場ヶ原に入る元の道に戻れる。　果たして湯川の流れにたどり着いた。架かる湯川赤沼橋を渡ると、もう出発地へ戻る道であった。　今日のハイキングは、景観は望めなかったが、たっぷりと森林浴はできた。約３時間のテクテク旅だった。　でも、やはり山がいい。もっともこの日のような曇天では、どこに登っても眺望は望めないだろうけれど。（完＝１０月３日現在）​昨年の今日の日記：「日本郵政の第３次売り出しに買うべきか、年５．４％の高配当利回りのセールストークに惑わされるなかれ、前２度の売り出しで個人投資家は全員損している！」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110180000/​

  2022.10.18

• 

  ウクライナ攻撃のミサイルの無駄撃ちと殺されにいくだけのロシア予備役召集

  　プーチンが鳴り物入りで造ったクリミア大橋が８日爆破されたが、それに怒ったプーチンは、キーウ初め、ウクライナ都市への無差別ミサイル攻撃というテロ攻撃をしかけた。１０日から始まって、１２日まで続けられたこの無差別テロ攻撃で、ウクライナ側は２０数人の死者を出した。◎戦略的にナンセンスなミサイル攻撃​​　しかしこのミサイル攻撃は、戦略的に全くナンセンスだった。しかも発射されたミサイルの半分前後は、ウクライナ側の防空システムによって打ち落とされたという（写真＝ロシアの戦術ミサイル「イスカンデル」）。​　「無駄撃ち」も、いいところだった。　それを察したか、あるいは空軍からの「もうミサイルがありません」という悲鳴が届けられたのか、１４日、プーチンは当面、ミサイル攻撃は行わない、と白旗をあげた。​◎精密誘導ミサイルの３分の２以上を使い果たしたロシア​　報道によると、ウクライナのレズニコフ国防相はその１４日、ロシア軍が今年２月にウクライナ侵略を始めて以来使用した精密誘導ミサイルの種類と内訳をツイッターで公表した。ロシア侵略軍が保有しているとされるミサイルのうち、既に３分の２を使い果たしたと主張し、「ロシアの非武装化」が進んでいると皮肉った。　それによると、侵略開始前のロシア軍には計１８４４発の精密誘導ミサイルがあったが、１２日時点で残っているのは６０９発だと指摘した。つまり当初の３分の２以上を戦術的に浪費し、もはや３分の１弱しか残っていないのだ。それでいて、西側諸国からの経済制裁で、精密機器の輸入がストップしているから、もはや補充もできない。　１４日のプーチンの「当面、ミサイル攻撃は行わない」と言ったのは、「もう、できません」ということなのだ。​◎訓練無しに即時最前線へ送られて死ぬロシアの若者たち​​　戦局の不利の挽回策として、大慌てで発表された予備役動員（写真＝ボルゴグラード州の駅で列車に乗る動員兵）も、ロシア的な杜撰さが表れている。​　中部チェリャビンスク州では、訓練も無しに前線に送られた動員兵士５人の戦死が明るみに出た。１３日、徴兵事務所が５人の死亡を確認した。　イギリスのＢＢＣは、うち３人を特定して、実態を報道した。　３人は、９月２６～２９日に招集された後、１週間もたつかたたない今月３日にウクライナ東部ルハンスク州に送られ、その後、南部のヘルソン、ザポロジエ両州に転送され、９日に家族が死亡告知書を受け取った。　まさに殺されにいくだけの召集だった。​◎たった２週間で戦死、の戦慄​　徴兵事務所が不都合と見なして隠蔽を図るケースもあるようだ。ロシア中部スベルドロフスク州の２８歳男性は９月２８日に召集され、数日後に（！）ウクライナに派遣。早くも今月１０日に戦死し、ＳＮＳでその情報が伝えられた。ところが、徴兵事務所は心配して問い合わせた母親に「生きている」と説明したが、妻がＳＮＳで戦死は事実と確認した。　訓練無しに、最前線に送られるという告発は以前からあった。プーチンは９月２９日の時点で「追加訓練も行わなければならない」と厳命した。それなのに、その頃に招集された予備役が約２週間で死亡していることをみると、命令は守られていない可能性が極めて高い。ロシア侵略軍の人員補充が「待ったなし」であることの裏返しとも言える。　独立系メディアは１２日、ロシア当局の内部情報として、侵略開始の２月下旬以降のロシア侵略軍の損害は、死傷者と行方不明者を合わせて９万人以上に上るとみられると報じている。​昨年の今日の日記：「人類のエドモントン以南の北米の到着は遅くとも２．３万年前か、テキサスのホワイトサンズ国立公園でＬＧＭ（２．３万～２．１万年前）の足跡が見つかる」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110170000/​

  2022.10.17

• 

  たった１年で最低の支持率更新という岸田グズ内閣、疫病神はさっさと失せろ

  　岸田グズ政権が発足して１年が過ぎたが、最近の各メディアの世論調査では、不人気ぶりが際立つようになった。​◎支持率２７％、不支持率との差はマイナス１５．６ポイント​　時事通信が直近の７～１０日に実施した１０月の世論調査では、岸田内閣の支持率は、政権発足後最低だった前月と比べ４．９ポイント減り２７．４％となった。政権維持の「危険水域」とされる２０％台に落ち込んだのは初めてで、菅内閣で最低だった２０２１年８月の２９．０％も下回った。　その反対に不支持率は伸び、４３．０％（前月比３．０ポイント増）となり、２カ月連続で不支持が支持を上回り、その差は前回の７．７ポイントから１５．６ポイントに拡大した。​◎心に響かない演説、ばらまき政策​　支持率の落ち込み、不支持率の増加の原因は、いろいろ言われている。いわく統一教会がなんだかんだ、安倍氏国葬うんぬん、さらに最近の物価高などだが、それはとってつけたようなもので、何よりもその政治姿勢、政治理念が「真面目」でないからだ。​　例えばテレビ露出の機会の多い首相会見でも、書いてある原稿の棒読みで（写真）、言いたいことがさっぱり心に響いてこない。​　当初から唱えた「新しい資本主義」も、１年経っても何なのかが全く見えてこない。やるのは、住民税非課税世帯への１０万円給付、ガソリン補助金など、露骨な人気取りばらまきばかりだ。そして財政赤字だけが積み上げていく。​◎外国人観光客受け入れも遅れに遅れ​​　安倍政権は、日本は変わりつつあるというアピールを国内外に発信してそれに成功したが、岸田グズ政権は、全くアピールできていない。それが、日本売りである大幅な円安を招く一因になっている（写真＝１４日には円は一時１ドル＝１４８円台に安くなった。約３２年ぶりの安値）。​​　その円安は、交易条件の悪化をもたすが、唯一、輸出やインバウンド観光需要にはプラスに働く。ところが、円安をアピールできる外国人観光客入国を、事実上の鎖国であるナンセンスな「水際対策」で、Ｇ７諸国の中でただ１国シャットアウトし続けた。ようやく「開国」に踏み切ったのは、最適観光シーズンも終わろうとする１０月１１日に過ぎない（写真）。実にＧ７諸国より半年以上も遅い対応で、円安のメリットを享受できる時間を空費した。​　何よりもあの寝ぼけたような表情から、政治へのパッションがまるで感じ取れない。​◎沈み行く日本の象徴か？　岸田​　おそらく心に信念が無いのだろう。親父の地盤を受け継いで、「なんとなく」、「サラリーマン感覚で」政治家になったに違いない。安倍氏のような持病による挫折という試練を受ける機会も無かった。　昨年１０月の衆院選と今夏の参院選を、安倍・管政権の遺産で勝ち、向こう３年、大型選挙の無い「黄金の３年間」を得たというが、昨今の不人気ぶりからすれば、いずれ政権を投げ出さざるを得ないのではないか。それが１日も早いことを、没落する日本を愛するがゆえに、切に願う。　思えば自民党は、何の思慮も無く、最悪のボンクラを総裁に選んだものだ。何の経綸も無いのに、１度は首相になりたいという岸田の意を満たしてやるためだけに。　そこには、沈みつつある日本への危機意識が皆無だった。　今のままでは、自民党も維新に侵蝕されていくだろう。　ＩＭＦ統計によれば、２０００年の日本人１人当たりの名目ＧＤＰは、ルクセンブルクに続く世界第２位だった。２２年後の今、韓国にも抜かれ、世界２８位に落ち込んでいるのである。​昨年の今日の日記：「原油高・円安の秋に、心深くエネルギー安保を考えよう！」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110160000/​

  2022.10.16

• 

  習近平支配３期目、後半はゼロ成長が常態化か

  ​　昨年まで、世界第１の経済大国と第２位のスターリニスト中国のＧＤＰは、２０２７年には逆転する、と予測されていた。少なくともＩＭＦは、そう予測していた（写真）。​◎今年の成長率は２％台に急ブレーキ​　世界の経済機関も、だいたいこの頃にＧＤＰの米中逆転が起こる、と予測していた。　歓迎できない、暗い未来を予測させる見通しだった。​　しかし１０月の中国共産党２０回大会（写真）で党総書記の３選が確実視される習近平のおかげで（？）、米中逆転の目は、ずっと先になり、ひょっとすると永遠に来ないかもしれない、と思えるようになった。半ば僕の希望的観測も含むが、最近のスターリニスト中国の経済指標を見ると、そんな期待感（？）が抱ける。​　そもそも２７年逆転を予測したＩＭＦは、近く発表する予測でこれを大幅に先送りすると見られる。２２年の実質ＧＤＰ成長率の見通しを、この７月には３．３％と引き下げたが、さらに下方修正する見込みだ。　これに先立ち９月２６日、世銀はいち早くスターリニスト中国のＧＤＰ成長率を２．８％と、前回４月の５．０％から大幅に下方修正している。​◎ＩＴ企業などの締め付け​　昨年、あるいは一昨年から習近平の政策で目立つのは、せっかく好調なスターリニスト中国の経済を、じわじわと真綿で首を絞めるように締め付けていることた。まさに、Why、である。　鄧小平の改革開放の旗印だった「先富論」（先に豊かになれる者は豊かになれ）を覆すような共同富裕政策によるＩＴ企業、教育産業の締め付け、スターリニスト中国のＧＤＰの３割を占めるといわれる不動産業の抑制、昔からの電力不足のさらなる深刻化、などである。昨年からの武漢肺炎流行による都市のロックダウンが、さらに追い打ちをかけている。​◎人口減、高齢化の重し​　そこに、遅くとも今年から始まる人口減、高齢化による社会福祉予算増などの脚を引っ張る要因が加わる。これは、スターリニスト中国の長く続いた「一人っ子政策」の必然的結果である。今さら、共産党がどう旗を振ろうと、もう人口増も高齢化の停止も起こらない。　そして不動産業の不振から、中小銀行の不良債権が積み上がり、その結果として、今年から住宅ローン返済停止や中小銀行の取り付け騒ぎが起こり出している。まだ日本の１９９０年代のバブル崩壊ほどではないが、その入り口に入りかけている。　日本は、１９９０年から始まった日銀の三重野の失政による強引なバブル潰しで、３０年にも及ぶ「失われた時代」、「デフレ時代」が招来した。そこに、人口減と高齢化がシンクロした。まるで、日本とそっくりの負の構造が、スターリニスト中国で起きかけている。​◎外貨準備もピーク時から１兆ドルも減る​　スターリニスト中国の強みだった世界１の外貨準備高も、減少の一途だ。この８月の外貨準備高は３兆０５４９億ドルと、８年前のピーク時の３兆９９２３億ドルから１兆ドル近くも減っている。習近平のかけ声で始まった「一帯一路」の投資も、途上国各国で焦げ付きが増えだし、一帯一路投資も激減している。つまりスターリニスト中国には、もう海外に投資する余裕が無くなってきているのだ。　おそらく習近平３期目は、経済対策に奔走されることになると思われる。しかし１度、坂の転がりかけた経済的落ち込みは、挽回できないだろう。成長を回復させるエンジンが、全く見当たらないからだ。　３期目の習近平体制の後半は、ゼロ成長かマイナス成長が常態化することになるだろう。​昨年の今日の日記：「現代の夢物語を振りまく立憲民主党の選挙公約のペテン」​https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110150000/

  2022.10.15

• 

  ロシア占領下のクリミアで大橋爆破、ウクライナのパルチザンによる攻撃か、ドイツにはロシアによると思われる都市テロ；国連、ロシア非難決議

  　ウクライナの強みの１つが表れた作戦だった。​　８日早朝、ロシア本土とウクライナ南部クリミア半島を結ぶ「クリミア大橋」（全長約１９キロ＝下の写真の上）が、おそらくクリミアに潜むウクライナ・パルチザンによって爆破された（下の写真の下）。​​◎開通にプーチンが渡り初めのクリミア大橋​　２０１８年５月に、プーチンが自らトレーラーを運転して渡り初めをした橋の爆破は、いつでも、どこでも占領地にウクライナ・パルチザンは攻撃を仕掛けられることを示した。８月に、クリミア占領地サキ空軍基地やマイスケの弾薬庫を攻撃して大破させたが（２２年８月２３日付日記：「ウクライナ防衛軍による相次ぐクリミア攻撃でロシア侵略軍に大きな打撃」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202208230000/参照）、クリミア大橋の爆破は、ロシア侵略軍のウクライナ南部方面への補給作戦に大きな痛手となるだろう。　橋を渡っていたトラックが爆発し、その２車線が２５０メートルにわたって一部崩落、さらにその上を走っていた鉄道の油送貨物にも引火し、鉄道にも被害を与えた。　ロシア侵略軍は、大慌てで反対車線２車線の整備を進め、同日夕方には片側通行で再開させたが、輸送能力は半減以下になる。​◎米紙はウクライナ情報機関の作戦と報道​　ただ、この爆破について、一部、異論も出ている。　ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は８日のツイッターへの投稿で、ロシア軍と対立を深めてきた情報機関の連邦保安庁（ＦＳＢ）が爆発に関与した疑いが強いとの見解を表明した。爆発したトラックがロシアからクリミアに向かっていた点に触れ、「誰が爆発を起こしたのかは明白ではないか？」と書き込んでいる。　いわばロシアによる自作自演説で、ＦＳＢが軍を窮地に追い込むため、「作戦」を仕組んだのではないかというわけだが、クリミア大橋の開通式にプーチンが渡り初めをしたことから、爆破はプーチンの面目をつぶすことになり、にわかに信じがたい。　実際、アメリカの「ワシントン・ポスト」紙と「ニューヨーク・タイムズ」紙は８日、ウクライナ政府当局者が自国の情報機関による関与を認めたと相次いで報じた。　ウクライナ側が表だって大々的に「戦果」を誇示できないのは、やはりプーチンを刺激して核のボタンを押させることに不安があるからだろう。​◎同じ日、ドイツで鉄道通信ーブル切断と鉄道が大混乱​　一方でロシアの仕業と見られる破壊活動が、ドイツで相次いでいる。​　同じ８日、ドイツ北部で、通信システムの障害で列車の運行がおよそ３時間にわたり止まるなど、鉄道網で大規模な混乱が発生した（写真）。​　ベルリンやハンブルク、ハノーバーなど主要駅で多くの乗客が足止めされた。約３時間後に復旧したものの、運休や遅延が相次いだ。長距離の高速鉄道「ＩＣＥ」にも影響が出たことで、ドイツ国内の移動手段が一時寸断し、オランダ・アムステルダムなど隣国の都市につながる列車にも混乱が生じた。　原因は、破壊工作だった。ベルリン郊外と西部のノルトライン・ウェストファーレン州２個所で通信ケーブルの損傷が確認されたという。ウィッシング運輸・デジタル相は記者会見で「通信ケーブルが２個所の異なる地点で故意に切断された」として、破壊工作だった可能性を示している。​◎天然ガスパイプラインの破壊も​　ドイツでは、バルト海で９月下旬にロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム１」と「ノルドストリーム２」が２つとも損傷され、ガス輸送ができなくなった。　当時、近くで海底地震も観測されていなかった。２つのパイプラインがほぼ同時に損傷したことから、破壊活動であることは確実で、これもドイツに永久に天然ガスを供給しないぞというプーチン側の通告テロであろう。　ロシアに天然ガスを依存し切っていたドイツは、ロシアと経済関係を断ち切りつつあり、ロシアからの報復を受けやすい。西側陣営で、最もロシアからの攻撃に「弱い環」である。　ウクライナではっきりと劣勢に立たされているロシアは、これからも西側への報復テロを仕掛けるだろう。警戒を強めなければならない。　また１０日、１１日には、ウクライナの首都キーウ初め各都市に、ロシア侵略軍による無差別ミサイル攻撃があり、約２０人が死亡するなど、大きな被害があった。こうした大規模都市テロに、強く非難する。​昨年の今日の日記：「ＮＨＫ－ＢＳプレミアム『シャーロック・ホームズの冒険』で観る１９世紀末のロンドン」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110140000/​​​追記　国連総会でロシアのウクライナ４州併合の非難・無効宣言決議​​　国連総会は１２日、緊急特別会合を開き、ロシアによるウクライナ東部、南部４州の一方的な併合を「違法だ」として非難し、無効を宣言する決議案を１４３カ国の圧倒的多数の賛成で採択した。反対はロシアなど５カ国（他にベラルーシ、北朝鮮、ニカラグア、シリア）、棄権はスターリニスト中国やインドなど３５カ国だった。　国連総会は今年３月、ロシア軍の即時撤退を求める非難決議を採択した。この時は１４１カ国が賛成し、反対は５カ国、棄権は３５カ国だった。賛成は３月の決議からわずか２カ国だが、増えた。　ちなみに国連総会は２０１４年３月、今回と同様にロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合を認めない決議を賛成１００カ国、反対１１カ国、棄権５８カ国で採択している。今回の賛成はこれも大きく上回った。

  2022.10.14

• 

  奥日光の旅（３）：戦場ヶ原のハイキング、季節はずれだがハイカーは多い

  　翌日（１０月３日）は、薄い雲がほぼ全天を覆っていた。　雨を降らす雲ではなさそうだが、山に行っても、眺望はあまり期待できない。　そこで、この日は、前日に半月山展望台から遠望した戦場ヶ原のハイキングにしようと決めた。​◎戦場ヶ原入り口の赤沼で半数近くが下車​　戦場ヶ原は、だいぶ前に歩いたことがある。その頃は、まだ若く、自然を愛好できる頃ではなかった。数十年ぶりの再訪だが、違った思いを抱けるかもしれない。　東武日光駅から湯元温泉行きのバスに乗る。平日なのに、満席に近かった。途中の中禅寺温泉バスターミナルまでは比較的本数があるが、それから先はぐっと少なくなるからか。　そのせいか、中禅寺温泉では、誰も降りなかった。　そこからは、途中で乗ってくる人もいるから、車内は立ち席になった。いろは坂なら危険で立ち席は許されないだろうが、湯元温泉まではさほど曲がりくねった道はない。　赤沼のバス停で、半数近くが降りた。なるほど戦場ヶ原のハイカーが多いのだ。平日だから、若者はほとんどおらず、中高年層ばかり。そのうち７対３か８対２の比率で、おばさんが多い。夫婦連れもいるが、そうでない場合は、おばさん連ればかりだ。​◎はや冬枯れの景観​　天気は、相変わらず曇っている。昨日と違って、青空は全くない。　そして、湿原のワイルドフラワーの季節はとうに過ぎている。ただ冬枯れた草本類だけだ。覚悟していたが、これはやはり落胆する。　紅葉にも早いので、湿原に所々で群落を作るダケカンバもミズナラも、紅葉していない。山ではないので、チングルマも生えていないから、この紅葉もない。　すべてに中途半端なハイキング行だ。​　戦場ヶ原には、所々生えるススキが穂を出し、右には男体山が優美な山裾を見せている（写真）。男体山は、どこから見ても山容は美しい。​◎澄んだ湯川の水​​　ただ左側に流れる湯川の水は、きれいだ（写真）。湯元温泉の湯ノ湖に水源を持つ。温泉水を集めているから、酸性に違いない。見ると、河面と右側の戦場ヶ原とでは、戦場ヶ原の方がわずかに高い。戦場ヶ原の排水溝のような役割を果たしているようだ。これでは湿原は、いずれ湿地に強い植物が侵入し、たぶん森に遷移していくだろう。​​　道は、木道が敷かれ、よく整備されている（写真）。​　向こうから修学旅行らしい小学生の一行が来た。引率の教師が「右側１列」と言っても、まるで聞いていない。小学生なら、仕方ないか。野生動物もおらず、ワイルドフラワーも咲かない、ただ単調の枯れ風景は、子どもたちに「自然に浸れ」と言っても、難しいだろう。つまらなかったという印象しか残らないのではないか、と危ぶむ。（この項、続く）​昨年の今日の日記：「武漢肺炎小康の今、エネルギー安保に目を向けよ！　原油高・円安に見舞われる日本の危うさ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110130000/​

  2022.10.13

• 

  少年は麻酔無しの左脚切断手術に耐えた！　ボルネオ島で旧石器時代の左脚切断の外科手術が発見される

  　今から３万１０００年前頃、ボルネオの森の中で大きな悲鳴と号泣が響いた。１人の少年の四肢を大人たちが押さえつけ、少年の左脚先を切断していたのだ。何のために行われたのか分からない。しかし切羽詰まった事情で、大人たちは少年の左脚先を切り落とす「外科手術」を決定をしたのだ。​◎石灰岩洞窟の墓に埋葬された外科手術を受けた青年​　その凄惨な切断手術は、少年が１０代前半に行われたと思われる。もちろんその頃に麻酔など無い。少年は、激痛に悶え苦しんだだろう。途中で失神したかもしれない。　オーストラリアのティム・ライアン・マロニー博士らの国際研究チームは、ボルネオ島インドネシア領東部のある石灰岩洞窟リアン・テボ洞窟の原始時代の墓を発掘し、墓壙からほぼ完全に近い――左脚先を除いて――ヒトの骨格を掘り出した。失われた左脚先は、墓からは見つからなかった（写真）。イギリスの科学誌『ネイチャー』９月１５日号で報告した。​　研究者たちが注目したのは、左の脚先、すなわち脛骨と腓骨の切断面だった。まるで刃物で切ったように滑らかだった（写真）。その切断面は、明らかに事故で折り取られたり、肉食獣に食い切られたりしたものではなかった。​◎術後の感染もなく​　また脛骨と腓骨には、細菌感染の痕も認められなかった。切断された傷跡は、細菌感染から守られ、清潔にされていたことを推定された。　さらに残された脛骨と腓骨は、右側のそれらと比べると明らかに小さく、骨の治り具合から、その推定死亡年齢１９歳～２０歳くらいの遺体は、少なくとも死ぬ６年～９年前の少年時代に、意図的に切断されたと判断された。また性別は正確には決定できなかったが、同時代の同年齢のヒトの身長から男性と推定された。​◎外科手術の行われたのは３万１０００年前頃​　問題は、遺体の年代である。墓壙の上、下、内部の層の木炭の放射性炭素年代を測定し、また遺体の歯の一部のウラン年代から、約３万１０００年前、と推定された。　これは、驚くべき発見だった。当時の先進地アフリカやヨーロッパと遠く離れ、「文化的僻地」と考えられた東南アジアで、つまりスチール製メスや麻酔薬、感染防止薬など全くない旧石器時代に、１０数歳の少年は超先端的な左脚切断の外科手術を受けていたのだ。金属器はまだ無かったから、メスには鋭利な黒曜石が使われたのだろうか。​　しかも少年は、身体障害者になりながらも、６年～９年は生き続けた。家族や一族が、彼を支えたのだ（想像図＝洞窟の最上部奥壁に残されていた壁画から推察したもの）。　これまで先史時代の四肢の切断例は、７０００年前の新石器時代が最古の例とされる。　それを一気に過去に遡る仰天の旧石器時代外科手術を誰が決め、誰が執刀したのだろうか――それを考えると、実に興味深い。​昨年の今日の日記：「過去最大級の彗星＝バーナーディネリ・バーンスタイン彗星がやって来る、最接近は１０年後、でも残念、地球からは遠く肉眼では見えない」​https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110120000/

  2022.10.12

• 

  エチオピア紀行（１８２）：ＮＭＥ＝人類の作った最古級の石器も：アシューリアン文化、オルドワン文化

  　エチオピアは、人類史で最古級の様々なホミニン化石が、それも骨格を含めて見つかっている国だ。​◎人類化石の他にも石器も​　この国が、かつて帝政時代、ハイレ＝セラシエ皇帝が、アメリカの著名な人類学者クラーク・ハウエルに対し「我が国ではなぜ化石がないのか」と慨嘆したことが、逆に信じられないくらいだ。　その嘆きに対してクラーク・ハウエルはすかさず、「ございますとも、陛下。探されていないだけです」と返し、エチオピアに入っての調査の許可を得たことは有名な逸話だ（１６年２月１８日付日記：「エチオピア紀行（１４）：『我が国になぜ化石がないのか？』、『ございますとも、陛下』の問答が開いた進化人類学発展の門」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201602180000/を参照）。　エチオピアで真に凄いのは、もちろんホミニン化石もたくさん見つかっているが、石器の出現と進歩も、この国で追えることだ。​◎エチオピアではゴナで​　最古の石器も、エチオピアで発見されている。僕の訪れる前年に３３０万年前の石器が隣国ケニアのロメクウィで石器が発見されたという報があったが（１５年５月１６日付日記：「３３０万年前頃の『ロメクウィアン文化』か、ケニア、西トゥルカナで人類史で最古の『石器』発見；考古学、進化人類学」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201505160000/を参照）、本当にホミニンが意図的に作った物か異論は残る。​　アファール渓谷のゴナでは、アシューリアン文化を含む各ホミニン段階の石器が見つかっているが、最古のモードⅠ（オルドワン文化）では、２６０万年前の石器群が見つかっている（写真＝東京大学総合研究博物館で）。​◎万能石器のハンドアックスも​　ここでは、アシューリアン文化のハンドアックスも見つかっている。　ハンドアックスとは、主としてホモ・エレクトスの出現と共に製作されるようになる石器で、ホモ・エレクトスは、これで何にでも切るのに使った。動物の解体、木の切断などだ。後のホモ・サピエンスが作り出す石刃石器と異なり、用途別にまだ分化していなかった。ハンドアックスの変種のクリーバーという石器と共に、アシューリアン文化の指標石器となる。​　ＮＭＥ（エチオピア国立博物館）の展示フロアで、そのアシューリアン文化（モードⅡ）のハンドアックスを観た（写真4138,4139）。​　どこの遺跡出土のものか、年代はどれくらいか、肝心なことを記録しなかったが、２０１８年１月に東大総合研究博物館に観に行った資料の類推からおそらく１５０万年前頃のものかと思われる（１８年２月２８日付日記：「ニュージーランド出発直前に東大総合研究博物館にホモ・エレクトスの作った人類最古級の石器ハンドアックス展を観に行く」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201802280000/参照）。　土地柄からゴナ出土のものか、と想像している。​昨年の今日の日記：「武漢肺炎の発生は遅くとも２０１９年の夏か、スターリニスト中国主張の１２月より半年以上も早く；ＰＣＲ機器の調達急増の示すもの」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110110000/​

  2022.10.11

• 

  奥日光の旅（２）：絶景！！　半月山展望台から望んだ深い青い空の下の群青色の中禅寺湖と優美な山容の男体山

  　中禅寺湖展望台で一休みした。さて、どうするか。​◎中禅寺湖展望台の駐車場端に半月山への登山路​　５月の時は、これ以上の縦走を諦め、さりとて夏だけ運転するバス便もまだ無く、親切な老人２人組に頼んで車に同乗させてもらって、中禅寺湖畔まで下りた。　この時、この老人２人組がさらに車を奥まで進めず、どうして下山を選んだのか分からなかった。理由は、後で分かった。　見ると、駐車場の一番端に、半月山への登山路が開いていた。５月に来た時は気がつかなかった。そこを行ってもよかったが、僕はスカイラインをさらに奥に進む選択をした。これも、失敗だった。　実は僕は、スカイラインの行き止まりが、半月山展望台だとばかり思っていたのだ。​​◎たどり着いたのはバス停「半月山」の展望の良くない駐車場​​​　歩いているうちに、はるか後方に中禅寺湖展望台が望めた（写真）。左の突き出た山が男体山だ。右の山の上の鉄塔は、５月に見覚えがあった。​​​　ところが中禅寺湖展望台からやはり３０分ほど歩いたどん詰まりは、だだっ広いが展望の良くない駐車場だった（下の写真の上；その下の写真は、半月山展望台への登山路から俯瞰）。バス停の名は、紛らわしくも「半月山」だった。​​　半月山展望台は、ここから登山路に入って、０．６キロほど山道を戻る形になる。つまり車で来た観光客は、半月山展望台まで山道を登らないと中禅寺湖を望めないのだ。​​　広大な駐車場の右に半月山展望台に行く登山路があり（写真＝登山路を遠望）、何人もが下りてくる。軽装だから、縦走した登山者ではなく、みんなここに車を駐めた観光客だった。　中禅寺湖展望台の駐車場で僕を乗せてくれた親切な老人２人組は、それを知っていて、ここまで来なかったのだ。​◎半月山展望台に登る​　バス停の時刻表で最終バスは３時４０分だった。それまで１時間以上はある。体力も、緩やかなスカイラインの登り道を歩いてきたから、まだ十分にあった。　しかしこの時点で、歩いて半月峠まで向かう時間はない、と思い定めた。体力的に行っていけないことはないと思ったが、秋の日はつるべ落としだ。へたをすると、夕闇の山道を歩かねばならないかもしれない。未知の山道を歩きたくはなかった。　僕は、半月山展望台までの登山路に脚を踏み入れた。初めての山行が、片道０．６キロほどなのは、中途半端だったが、すべては狸窪の登山道入り口を間違えたことに起因する。　道は、こんなもの、と思うほどで、さほどきつくはなかった。それでも３０分ほどかかったか。　大人が１０人も入れないような木造の展望台があった。​◎群青色の中禅寺湖と美しい山容の男体山の絶景​​　到着した半月山展望台（標高１７２０メートル）からの景色は、息をのむほど、素晴らしいの一語だった（写真）。車で容易に行ける中禅寺湖展望台より、ずっと良い。自分の脚で来た人だけに開かれた景観、である。​　眼下に、まるで天狗の鼻のように湖に突き出た緑の八丁出島があり、その周囲に深い群青色の中禅寺湖が広がり、その向こうに男体山がどっしりと聳え立つ。僕のすぐ下の斜面の木が、少しばかり紅葉していた。　そう言えば、奥日光のほとんどは、紅葉はまだだった。以前に紅葉が素晴らしい時に来たのは、１０月末だった。​　そこからやや左に触れると、中禅寺湖の奥、男体山の緩やかな山裾の左に、わずかに茶色の一角が見える。これが、戦場ヶ原だ（写真＝矢印の下）。​　登山路を間違えたりのさんざんな半月山への山行だったが、僕はその展望台からの景観にしばし見とれていた。​◎半月山にはあえて行かず​　そこで１０分ばかり、景観を堪能した。展望台を３０メートルほど下りた所に標識と分岐路があり、元来た道の反対側の２００メートル先に半月山があるようだった。　しかしガイドブックにも、展望台にいた高齢の登山者夫妻に聞いても、全く展望が開けず、あるのは半月山の道標だけだという。その登山者夫妻は、景観が全く無いので、ここにわざわざ展望台を造ったのでしょう、と解説した。　わざわざ失望しに行く必要もあるまい、と僕は半月山はパスして、元の駐車場に下りることにした。　そんなわけで、半月山リベンジ登山は、なんとなく中途半端に終わったのである。​昨年の今日の日記：「２０２１年のノーベル賞自然科学３賞出揃う、今年もアメリカ人研究者が圧倒」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110100000/​

  2022.10.10

• 

  今年のノーベル平和賞、ベラルーシ、ロシア、ウクライナの人権活動家・団体：ロシアのウクライナ侵略への厳しい批判

  ​　７日発表された今年２０２２年のノーベル平和賞は、まさに今日の世界の状況を映し出すものとなった。他国を侵略し、他国民に子どもを含めて無差別なテロ行為を行い、他国の重要施設を破壊・占領する暴虐なならず者国家のロシアへの厳しい警鐘である（写真＝受賞を発表するノルウェー・ノーベル委員会）。​​◎今は獄中にあるベラルーシのアレシ・ビャリャツキ氏​　受賞は、１個人と２団体。​　個人では、プーチンの悪党仲間であるルカシェンコが独裁支配するベラルーシの人権活動家アレシ・ビャリャツキ氏（写真＝ミンスクで、２０１１年）。同氏は１９８０年代から人権活動を始め、９６年に人権団体「ビャスナ（春）」を設立し、活動を主導、これまで何度も逮捕され、現在も政治犯として獄中にある。​　ルカシェンコ独裁政権による抑圧は苛烈で、「ビャスナ」によると現在もビャリャツキ氏を含む１３４８人が獄中にある。​◎今もソ連のような抑圧体制が続くベラルーシ​　ちなみに本日記では、過去に何度もベラルーシの深刻な人権状況を記録してきた（２１年８月２１日付日記：「ベラルーシの独裁者ルカシェンコ、リトアニアにイラク経済難民を大量送り込みの策謀の挫折」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202108210000/、２１年５月２６日付日記：「国家によるハイジャック行為でベラルーシ反体制派のネット記者が空港強制着陸後に逮捕；これは００７のスパイ映画か！？」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202105260000/、及び２０年８月１９日付日記：「日本から最も『遠い』『欧州最後の独裁者』ルカシェンコの統治する国ベラルーシが動揺、市民の反独裁・民主化の闘い」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202008190000/を参照）。　あたらめてこれらを読み返しても、これがヨーロッパの一国なのかと驚くほどだ。まさに旧ソ連が続いているかのようだ。​◎ロシアの「メモリアル」も​​　２団体の１つ、「メモリアル」は、侵略国家ロシアの人権団体「だった」。「だった」と過去形で語らねばならないのは、昨年１２月２８日にプーチンの意を受けてロシア最高裁がメモリアルを外国エージェント法違反で閉鎖を命じられたからだ（２２年１月２日付日記：「スターリン体制の犠牲者と遺族たちの心の拠り所の人権団体『メモリアル』が『外国のスパイ』のレッテル貼られ、解散」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202201020000/を参照：写真は解散命令にメモリアル記念碑前で静かに抗議する女性）。​​　メモリアルは、旧ソ連時代末期の１９８７年に、ゴルバチョフ政権下の雪解けを受け、スターリン時代の大粛正やその後の政治弾圧に関する歴史や記憶を集め、それを公開するために設立された。その活動により、シベリアなど流刑地で朽ちた多くの無実の人たちの名誉回復や遺族のサポートなどで、ロシアの最大の「良心」とみなされた（写真＝メモリアル本部に掲げられていた表札）。​​◎もっと早くに受賞してもおかしくなかった​　プーチン体制後、強権化するプーチンは自分に刃向かう反体制知識人やジャーナリストなどを暗殺したり、投獄してきたりしたため、その活動はプーチンによる犠牲者の救済などにも広がり、その活動は激しく妨害されるようになり、ついに昨年末、解散させられた。しかし、メモリアルに拠った人権活動家は、細々とだが今もネットで活動している。　メモリアルのロシア人権活動に果たした役割は大きく、もっと早くにノーベル平和賞を受賞してもおかしくはなかった。​◎ロシアの戦争犯罪を記録する活動を続けるウクライナの人権団体ＣＣＬも​​　ベラルーシ、ロシア……と来て、バランスを意識したためか、最近になって急速に注目を集めるようになったウクライナの人権団体「市民自由センター」（ＣＣＬ）も、受賞者に加えられた（写真＝授賞を知らされて歓喜するＣＣＬ事務局員）。​　授賞を発表したノーベル委員会によると、ＣＣＬはウクライナの人権状況と民主主義の進歩を目的に、２００７年に首都キーウで設立された。ウクライナの市民社会を強化し、同国を本格的な民主国家にするために当局に働きかけてきた。　今年２月に始まったロシア侵略後は、ウクライナ市民に対するロシアの戦争犯罪を特定し、記録する取り組みを続けている。​◎世界中の独裁体制下で活動する人権活動家・団体に勇気​　ただノーベル平和賞の選考活動は、例年、その年の１月末に終えていると言われ、またメモリアルに比べると国際的に無名に近いＣＣＬが入ったのは、ロシアによるウクライナ侵略後のブチャ、イジューム、そしてリマンなどで相次いで発見されたウクライナ市民大量虐殺の戦争犯罪への告発の意味もあるのだろう。　世界中の独裁国国内で、弾圧・抑圧されても不屈に活動する多くの人権活動家・団体への勇気を与える今年のノーベル平和賞であった。​昨年の今日の日記：「スターリニスト中国の不動産会社、恒大に続いて『花様年控股集団』もデフォルト」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110090000/​

  2022.10.09

• 

  奥日光の旅（１）：半月山再チャレンジに道を間違え自動車道を歩く羽目に

  　近場の軽登山だと、天気予報を見て、思い立って行けるのがいい。　１０月２日日曜日の朝、東武線浅草駅から日光に行った。目指すは、奥日光の半月山だ。​◎５月の途中挫折にリベンジ登山​　これには、因縁がある。実はこの５月１９日、中禅寺温泉バスターミナルから茶ノ木平登山口に入り、ここを登って、茶ノ木平―狸山―中禅寺湖展望台―半月山―半月峠の縦走を計画しながら、前日の高山縦走でくたびれたため、中禅寺湖展望台で力尽き、途中下山した経緯があるからだ。　だから後半の半月山の再チャレンジを計画した。　天気は、上々だった。むしろ１０月にしては日差しが強く、日陰を選んでの歩行となった。​◎立木観音や英国・イタリア大使館別荘記念公園をスルー​　まずは、中禅寺湖バスターミナルで下車し、中禅寺湖を南湖岸を西に歩く。途中の立木観音はスルーした。​　右側に限りなく青い中禅寺湖と優雅に裾を広げる男体山が美しい。休日とあって、中禅寺湖には鱒釣りと思われる無数のボートがひしめく（写真）。　さらに進むと、英国大使館別荘記念公園とイタリア大使館別荘記念公園がある。ここに寄っていくと、時間を取られるので、僕はその入り口に向かうはずの歩道を外し、車道を歩いた。これが、失敗のもとだった。　実は、車道は中禅寺湖スカイラインにつながる道だったのだ。登山路は、英国大使館別荘記念公園とイタリア大使館別荘記念公園とつながる道の先だった。　気がついた時は、だいぶ舗装路を上がった時だった。​◎登山路入り口の狸窪から入れず​　僕が選ばなかった道の先に「狸窪」という登山路入り口があったのだが、僕はずっと手前、つまり東側でスカイラインにつながる舗装道路を歩く羽目になった。　本来なら、ミズナラなどの森林浴を楽しめるところだったが、僕は照り返しの強い舗装道路をずっと歩くことになった。　ただ、自動車道のスカイラインは、車を通すために、山の斜面を等高線に沿う形で緩やかな斜度の道になる。登山路によくある、時には４０度にもなる急登もダウン路もない。​◎５月に歩いた茶ノ木平遊歩道入り口にたどり着く​　その代わり、歩く距離は等高線沿いに巻く形になるスカイラインの方がずっと長い。時間は、かかった。固い舗装道路を歩くので、膝にも負担がかかる。それでも２時間ほどで、以前に見た「茶ノ木平遊歩道入り口」に着いた。ここにバス停があり、スカイラインは山の鞍部を貫いている形だった。　左の山道を行けば、５月に歩いた道を逆向きに行き、中禅寺湖バスターミナルに戻ってしまう。また右の斜度４０度にはなりそうな登山路は、以前にへばる原因となった道だ。そのままスカイラインを進めば、この山道を登って下りた「中禅寺湖展望台」に至る。　僕は、スカイラインをそのまま行くことにした。右の登山路の険しさが、記憶に蘇った。​◎中禅寺湖展望台に到着​　約３０分も歩いたろうか。ようやくにして、５月に行き着いた「中禅寺湖展望台」に着いた。​​​　ここには、多くの車の駐められる広大な駐車場にもなっている。そこからの展望は、中禅寺湖に突き出た形の八丁出島が左に見て、右に男体山を配した中禅寺湖を観るかたちになる（下の写真の上）。５月に観た時は、さらに遠下くの奥白根山がまだ雪をいただいていたが、さすがに夏を過ぎて、雪は無くなっていた（下の写真の上＝５月に撮ったもの）。昨年の今日の日記：「秋の１日、２度目の筑波山の登山」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110080000/​​​

  2022.10.08

• 

  ウクライナ防衛軍の奪還進み、ロシアでは招集逃れ国外脱出１００万人、ロシア国防省も苦戦認めるほどの混乱

  　ロシアのプーチンがウクライナ東部・南部の４州（東部がルガンスク州、ドネツク州、南部はザポリージャ州、ヘルソン州）を一方的にロシアに併合すると宣言したのは、９月３０日だったが、皮肉にもその直後にロシアは重要占領地を失った。​◎リマンでは５０００人のロシア侵略軍兵士が捕虜か戦死​​　交通の要衝のドネツク州のリマンで、翌１０月１日、ロシア侵略軍はウクライナ防衛軍の包囲を免れるため敗退した（写真＝ロシア侵略軍の敗走したリマンと遺棄されたロシア侵略軍戦車、そしてウクライナ国旗を掲げる兵士たち）。​​　報道によると、リマンには約５０００人のロシア侵略軍が展開していたといわれる（写真＝放置されるロシア侵略軍兵士の遺体）。そのほとんどが、戦死するかウクライナ防衛軍の捕虜になったと見られる。しかも後には、９月に解放されたハルキウ州イジュームのように、膨大な武器、物資が残されていた。​　ロシア側も、さすがに隠せなかったのか、包囲を免れるための撤収と敗退を認めた。　これに先立つハルキウ州での敗退の責任を問われたのか、この直後にロシア西部軍管区司令官のアレクサンドル・ジュラブリョフが解任されていたことが分かった。ロシア側は何も発表していないが、後任はロマン・ベルドニコフという将官のようだ。​◎今やプーチンのウクライナ侵略戦争は崩壊寸前​　リマン解放後も、ウクライナ防衛軍の反攻の手は緩まない。すでに欺瞞的な「住民投票」を行ったという東部・南部４州でも、数十個所の集落をウクライナ防衛軍は侵略者から解放した。　ロイター通信によると、ウクライナ防衛軍は南部でロシア軍の防衛線を各地で突破し、「侵略開始以来、最大の躍進を遂げている」と報道した。ロシア国防省もウクライナ軍がヘルソン州の「防衛網深くに侵入した」として苦戦を認めたほどだ。同州の親ロシア派幹部も、劣勢に追い込まれているとの認識を示した。　今やプーチンの主導するウクライナ侵略戦争（プーチンは、全面戦争でないとロシア国内を言いくるめるために「特別軍事作戦」と称している）は、崩壊寸前だ。​◎国外脱出は既に１００万人か​　あまりの体たらくに、ロシア国内でも武闘派・強硬派の間から軍と政権への批判が起こっている。　９月２１日の予備役部分動員令に対するロシア国民の反発も予想外の広がりを見せている。　アメリカ経済誌『フォーブス』ロシア語版は、ロシア大統領府筋の話として、同日以降の約２週間で、ロシア人約７０万人が出国したと伝えた。大半が招集逃れのためとみられる。別の筋は、もっと多く約１００万人と推計していると伝えた。​◎カザフスタンやジョージア、フィンランドなどへ逃避​　ロシア国民の逃亡先は、やはり陸路で国境を越えられ、ロシア語も通じる旧ソ連諸国が多く、『フォーブス』などによると、カザフスタン内務省は１０月４日、部分動員令以降にロシア人２０万人が入国したと明らかにした。独立系メディア『メドゥーザ』によると、ジョージアには９月２１～２９日に６万９０００人が入国した。他に西側諸国の一角であるフィンランドには、１０月３日までに６万６０００人が入国した。　他国に侵略している側の国民が、これほど海外に大量に逃げ出すというのは極めて異例の事態だ。　逃亡しているのは、招集される恐れのある若者で、しかも高学歴層だろう。将来のロシアを背負って立つ核の層が、大量にエクソダスしていることに、ロシアの苦境が垣間見える。​◎ロシア社会を映し出す杜撰な招集も​　国防相のショイグによると、既に２０万人超の予備役が招集され、入隊したと発表、３０万人を動員予定と改めて言明した。ただ、一部で実際の動員予定数が１２０万人と報じられている（写真）。　また各地で対象外の人が招集される杜撰な実態も表面化している。​　極東ハバロフスク地方では基準外招集が半数に及び、責任者が問責される事態に発展した。こうした杜撰さは、旧ソ連以来のロシアの「伝統」であり、それが最近のウクライナ防衛軍の反攻・ロシア侵略軍の敗走と結び付いている。​　社会の混乱が深刻化している。​昨年の今日の日記：「岸田新内閣を手荒く迎えたマーケット、危機に立つ日本の指導力を欠く凡庸さを怖れる」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110070000/​

  2022.10.07

• 

  ノーベル生理学・医学賞受賞の分子人類学の創始者スヴァンテ・ペーボ博士の業績

  ​　今年２０２２年のノーベル生理学・医学賞に、ドイツ（スウェーデン生まれ）、マックス・プランク進化人類学研究所のスヴァンテ・ペーボ博士（６７歳）が単独受賞した（写真）。​　自然人類学関係者としては初めてのノーベル賞である。また、ペーボ博士は分子人類学の創始者でもある。​◎元祖ネアンデルタール人化石からミトコンドリアＤＮＡ抽出​　この速報については、４日付日記の追記で記したが、ここではもう少し、ペーボ博士の業績を掘り下げていく。​​　僕が、初めて氏の業績に触れたのは、１９９７年のアメリカの科学誌『Cell』に掲載された論文だ。そこで、初めて誰もが知る化石人類として著名な元祖ネアンデルタール人（フェルトホーファー１号、１８５６年発見＝下の写真の上：有名な頭蓋冠）の骨化石から初めてミトコンドリアＤＮＡの抽出に成功したと報告された（下の写真の下＝右上腕骨から３．５グラム切り取った）。​​　『Cell』は、イギリス誌『nature』、アメリカ誌『Science』と並ぶ、権威ある３大科学雑誌だ。もちろん厳格な査読を経ての掲載で、そこに載ったのだから、間違いないと思ったが、正直、「？」という疑念は拭えなかった。　元祖ネアンデルタール人は、鉱石採掘中に発破をかけられた中から転がり出したものだったので、出土層位など全く不明だったが、４万年前頃と推定されていた。そんな古い化石に断片とは言え、ミトコンドリアＤＮＡが残るなど、信じられなかったのだ。今をときめくＰＣＲ法でゲノム断片を増幅しての成功だった。　僕は、手近で『Cell』誌を閲読できなかったので、友人に頼んでコピーを送ってもらった。​◎ヴィンディア・ネアンデルタール人から核ＤＮＡ、デニーソヴァ人の発見​　以後、ペーボ氏は、同僚と共に技術を洗練化させ、次々に化石人類のミトコンドリアＤＮＡ、さらにはさらに長大な核ＤＮＡの解析を続けた。​　２０１０年には、アメリカのライバルチームと競いつつ、クロアチア、ヴィンディア洞窟まネアンデルタール化石から、６０％以上の核ＤＮＡゲノムを解読した（写真＝成果を報告した『Science』誌）。​　さらにこの２カ月前には、シベリアのデニーソヴァ洞窟で見つかっていたヒトの小指の骨から、ネアンデルタール人とほぼ同時代者のデニーソヴァ人のミトコンドリアＤＮＡも抽出し、新たな人類種の存在を示した。　また２００２年には、ヒトの言語に関係する遺伝子ＦＯＸＰ２を報告し、現生人類ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の違いが言語進化に影響を及ぼしたことも示した。​◎３種の人類の分岐年代​　こうして得たＤＮＡデータから、ネアンデルタール人やデニーソヴァ人、そしてホモ・サピエンスの分岐年代も明らかになってきた。分子進化は「分子時計」にもなるからだ。それによると、３者の共通祖先がホモ・ハイデルベルゲンシスから分かれたのは、８０万４０００年前頃、約６４万年前にはネアンデルタール人とデニーソヴァ人が分岐したと推定された。ホモ・サピエンスの祖先は、そのずっと後、アフリカのホモ・ハイデルベルゲンシスから、ずっと新しい２０万～３０万年前頃に分かれたと見られている。​◎私たち現代人にも受け継がれていたネアンデルタール人遺伝子​　おそらくネアンデルタール人の核ゲノム解析で、最も大きな反響を呼んだのは、私たち現代人にも２～４％程度のネアンデルタール人遺伝子が受け継がれているという研究成果だ。それが、一部では私たちホモ・サピエンスの生存に有利に働いた一方、多少の害悪ももたらしたことが分かっている。ちなみに先のデニーソヴァ人遺伝子も、アジア人を主に、特にメラネシア人に数％が受け継がれていることが分かっている。　このことは、４万年前頃に絶滅したネアンデルタール人は、それ以前、おそらく数波目に出アフリカしたホモ・サピエンスと、直後の中東で在来集団のネアンデルタール人と交雑したことを示した。　当初は、現生アフリカ人にネアンデルタール人遺伝子は認められない、したがって出アフリカした現生人類は一方通行だったと見られていたが、後に現生アフリカ人からもネアンデルタール人遺伝子が検出され、交雑したホモ・サピエンスがアフリカに戻ったことも分かった。​◎古い化石では検出困難​　このように、比較的新しい時代の人類進化の様子が、分子からアプローチするペーボ博士の開いた分子人類学で明らかになってきた。　ペーボ博士以前の進化人類学は、化石の形態を観察し、計測し、そのデータを統計的処理する手法だった。それによって系統の関係などを考察していた。それに、新たな進化人類学の「武器」が加わったわけだ。　ただ、それでも限界はある。例えば分析するＤＮＡは、「生身」なので、分解されやすく、保存がされにくい。特に、暖かい環境では保存されにくい。　実際、これまで最古とされるＤＮＡは、１６５万年前頃のされるマンモスの歯から検出されたものだ（２０２１年３月１１日号『nature』誌）。歯という動物体内で最も堅固な組織内に封入され、しかも永久凍土に「冷凍保存」されたＤＮＡだった。​◎ホモ・エレクトスやアウストラロピテクスでは検出できない​　基本的に熱帯起源の人類では、古いホミニンでは、したがってホモ・エレクトスやアウストラロピテクスではＤＮＡは保存されない。だからこうしたホミニンの研究は、すべて従来からの形態面からのアプローチに限られる。　しかし２世紀近い歴史のある自然人類学の研究に、ペーボ博士が新たに手法を打ち立てたことは確かで、複数研究者との同時受賞の多いノーベル生理学・医学賞で、分子人類学創始者のペーボ博士が単独受賞したことに、その傑出した業績が表れている。　日本にも、関係が深い。沖縄科学技術大学院大学（ＯＩＳＴ）の客員教授を務める。　ちなみにペーボ博士の父、スネ・ベリストローム氏も、１９８２年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。父子２代でノーベル生理学・医学賞を受賞したのも初めての快挙である。​昨年の今日の日記：「光触媒による水素大量生産が地球を救う；追記　ノーベル物理学賞に日本出身の真鍋淑郎氏」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110060000/​

  2022.10.06

• 

  階層固定化の進むアメリカの現実；ハイソの子はハイソに入る構造

  　両親が一流大卒の子は、やはり一流大に進み、それだけ高収入が約束される仕事に就き、また似たような一流大卒の配偶者を得て、その２人から生まれた子もまた一流塾から一流私立中に入って……、という格差の固定。​◎階層化進む日本だが共産党一党独裁国家やアメリカはさらに​　これは、日本でも否定できない現実になった。母子家庭の極貧家庭に育った僕は、幸いにも世間的には一流と見られる大学に進め、一流企業に就職できたが、それは今よりやや前の、まだ階層化社会が出来ていない牧歌的な時代だったからだろうか。　しかし日本は、まだ緩い。階層化社会どころか完全な階級社会のスターリニスト中国や北朝鮮ならず者国家（共産党・政府幹部のノーメンクラツーラが支配する）や自由で民主的な社会でも階層がほぼ固定しているアメリカは、もっとシビアだ。　例えばアメリカでは、こんな調査がある。経済学者ラジ・チェティ氏らが、フェイスブックを使って調べた調査だ。​◎富裕層は富裕層とだけ交わる​　同氏は、フェイスブックの登録アメリカ人７２２０万人を調べた。所得なとで上位１０％に入る富裕層の友人をみると、その人の友人の３４％が同じ上位１０％の富裕層だった。８４％まで広げると、上位５０％の階層に含まれる。　下位１０％の貧困層となると、友人の階層は一変する。富裕層の友人は数％しかおらず、大半は下位の階層だった。　それは、かなり納得できる結果だ。富裕層は富裕層と交遊し、下位の貧困層とは没交渉となる。下位の階層も、富裕層と知り合う機会はないし、「ダチ」はやはり貧困層だ。趣味も思考も行動様式も違うから、別の階層とはふれ合うことがない。　かくてこの交友関係は、子や孫まで受け継がれ、階層分化が固定される。​◎学費の超高いアイビーリーグ​　ところでどこの世界でも、上位の階層に属する人たちは、だいたいその国の最高学府を出ている。​　アメリカも同じだ。俗にアイビーリーグ（アメリカ北東部にある名門私立大学８大学。ハーヴァード大、イェール大、ペンシルベニア大、プリンストン大、コロンビア大、ブラウン大、ダートマス大、コーネル大）と称される、それこそアメリカの最高学府は、進学も卒業も難しいが、卒業すれば高収入の約束される職を得やすい（写真＝上からハーヴァード大、イェール大、コロンビア大）。​　アイビーリーグの大学の学費は、また高い。だいたい日本円で年間５００万円以上と言われる（円安の今はもっと高くなっているはずだ）。学費が高いのは、こうした大学が高給与でノーベル賞級の有名教授を雇い入れるからだ。日本人留学生は、この他に高い生活費も負担するから、年間１０００万円近くかかる。​◎大半の学生が借りる学生ローン​　アメリカの大学の学費が高いのは、アイビーリーグに限らない。西部や中西部の一流私大もやはり高額だ。　アメリカが日本と異なるのは、国立大学が無いことで、公立大学としては州立大学があるだけ。この州立大学も、学費は日本の私立大学より高い（同じ州の出身者なら割引があるようだが）。​　かくてよほどの富裕層でない限り、学生はほとんどが大学進学に際し、学生ローンを借りる（アメリカには日本の学生支援機構のような国家レベルの奨学金は無い。ただ財政の豊かなアイビーリーグなどの私立大学には、大学独自の奨学金がある）。前記のように私立大学の学費は高いから、卒業時にはけっこうな負債を抱えて、人生のスタートを切る（写真＝アメリカの大学生）。​​◎アメリカのバイデン大統領、一部「徳政令」​　かつてオバマ大統領（コロンビア大卒業）が在任中に「私も妻も、やっと学生ローンを返済し終えた」と述べたことがあるが、この返済の負担感は大きい。結婚して子どもが出来、家を買えば、住宅ローンの返済ものしかかってくる。　アメリカのバイデン大統領は８月２４日、連邦政府の提供する学生ローンの返済の一部免除を発表した。１人当たり１万ドルの免除で、多くの学生ローンの利用者は恩恵を受ける。　それでも５万ドル以上借りている大卒者も多い。仮に５万ドルとして、１万ドル免除されても４万ドルは残る。けっこう厳しい返済負担であることは変わらない。​昨年の今日の日記：「子どもの頃に観た映画の記憶から連想するコローの『エウリュディケの救出』」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110050000/​

  2022.10.05

• 

  エチオピア紀行（１８１）：ＮＭＥ＝ホミニン最古の幼児骨格、ディキカの「セラム」の衝撃；ノーベル賞に初の人類学者

  　ＮＭＥ（エチオピア国立博物館）で「ルーシー」の骨格（の模型）が見られることを期待していたが、「アルディ」まで見られたのは望外の喜びだった（９月１９日付日記：「エチオピア紀行（１７８）：最古の全身骨格の揃った人類化石『アルディ』、６年前の興奮の主が眼前に」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202209190000/を参照）が、それで終わりではなかった。​◎３歳くらいの幼いアファレンシスの雌の骨格​　前世紀末の２０００年１２月１０日、エチオピア人古人類学者のゼレゼネイ・アレムゼゲドがアファール渓谷南部のディキカで、とんでもない化石を発見した。​　それは、アウストラロピテクス・アファレンシスの３歳くらいと見られる幼ない雌の化石だった（写真）。一般に幼弱個体は骨に軟骨が多いことから、保存されにくい。例えば縄文時代の貝塚は、貝の石灰成分のせいで火山灰土の多い日本でも例外的に保存環境が良い。だから縄文人骨は、全身骨格点数は多く、おそらく数千体にのぼる。　それでも、幼児骨格となると、少ない。　ましてアウストラロピテクス・アファレンシスという超太古の若齢個体など、希有の例とも言える。​◎ルーシーより１４万年は古い「ルーシーの赤ん坊」​　そのトンデモない骨格化石（模型）も、展示されていた。イギリスの科学誌『ネイチャー』に発見と成果が報告されたのは、２００６年９月２１日であり、それから１０年足らずで、ＮＭＥを飾ることになったわたげ。　そのディキカの若齢雌個体化石は、「セラム」という愛称が付けられた。アムハラ語で「平和」という意味である。そこに、内戦の繰り返されるエチオピア人の切なる願いが読み取れる。　当初、セラムは、同性ということもあり、保存の良さで先輩格に当たる「ルーシー」と関連づけて「ルーシーの赤ん坊」(Lucy's baby)と呼ばれたが、実際は幼くして亡くなった「姉」であった。包含された火山灰層から年代が３３２万年前頃と推定されたからである。　ルーシー（３１８万年前）、「大きな顔（ＡＬ４４４：３００万年前）よりも、古いのである。​◎死後すぐに水に流された土砂で「埋葬」され死肉食屋から守られた​　セラムは、現時点で最古の幼弱個体になる。ちなみに石灰岩洞窟の発達した南アフリカでは、アウストラロピテクス・アフリカヌス、パラントロプス・ロブストス、アウストラロピテクス・セディバ、ホモ・ナレディなどに幼弱個体も混じるが、完全に近い骨格はなく、若齢個体骨格となると死者を簡易的に埋葬するようになるネアンデルタール人までくだる。　セラムの例外的な保存の良さを物語る最も特徴的な例は、化石人骨では極端に珍しい喉の舌骨まで見つかっていることだ。ちなみにこれ以外の舌骨の発見例は、はるかに新しいネアンデルタール人の「ケバラ１号」しかない。　では、なぜこんなにも古い遺骸が、腐らず、また肉食動物に食べられずに保存されたのだろうか。熱帯のアフリカでは、サバンナに野たれ死んだ遺体は、ハイエナ、次いでハゲワシによって骨まで完全に食い尽くされる。　発見者のアレムゼゲドは、遺体は河川の氾濫で速やかに土砂に埋もれたから、という。ナマズなどの川魚に食い荒らされなかったのは、まさに僥倖だった。◎はるか後の同じように埋もれたトゥルカナ・ボーイはもっと完全​​　こうした砂に速やかに埋もれて保存された最も有名な例にケニアの「トゥルカナ・ボーイ」（ホモ・エレクトス、１５３万年前）がある。トゥルカナ・ボーイは、前記のほぼ完全に残された１０万年前以前のホミニン６個体の中で、傑出した保存の良さで知られる（写真）。​　セラムまで観られて、僕のエチオピア国立博物館見学は最高についていた。​昨年の今日の日記：「日本発の新素材『ＭＯＦ』の大きな可能性に期待；ＭＯＦを見つけ、発展させた日本の２人の研究者にノーベル化学賞の期待」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110040000/​​追記　人類学関係に初のノーベル賞​​　２０２２年のノーベル生理学・医学賞にドイツ（スウェーデン生まれ）のスヴァント・ペーボ氏（写真）が単独受賞した。人類学関係者としては初めてのノーベル賞である。また分子人類学の創始者でもある。​　ペーボ氏は、条件さえ揃えば化石にもＤＮＡが残っていることを発見、実際、１９８７年、ネアンデルタール人から初めてミトコンドリアＤＮＡを抽出し、世界を瞠目させた。　その後も、ネアンデルタール人と現生人類化石の全ゲノムも明らかにし、さらにネアンデルタール人と同時代にデニーソヴァ人がいたことも、わずかな骨片から抽出したＤＮＡで明らかにした。　複数研究者との同時受賞の多いノーベル生理学・医学賞で単独受賞したことに、他の追随を許さないほどの氏の傑出した業績が表れている。

  2022.10.04

• 

  プーチン、ウクライナ領４州の併合を宣言；核威嚇とウクライナ人を使ってウクライナ侵略を進める卑劣さ

  ​　プーチンが９月３０日、ウクライナ東部・南部の４州（東部がルガンスク州、ドネツク州、南部はザポリージャ州、ヘルソン州）を一方的にロシアに併合すると宣言した（写真）。​◎ウクライナ領土の２０％を強奪​　他国の領土を、勝手に切り取り、自国領として併合する――まるで１９世紀後半の帝国主義時代に戻ったかのようだ。​　その前段として、９月２３日～２７日の間、銃を携えた軍兵士の威嚇のもと、戸別訪問まで行ったインチキ「住民投票」で、「圧倒的な承認」が得られたとしてイカサマを行っている（写真）。​​　ちなみにロシアが自国領とした前記４州の一部の面積は、ウクライナ領土の約１４％に当たる。これより先の２０１４年に、同じくウクライナから強奪し、一方的に自国領にしたクリミアを含めれば、ウクライナ領土の２０％近くになる（図＝数字はロシア侵略軍の実効支配率）。​　いったい何の権利があって、プーチンは他国領を一方的に奪えるのか。​◎２０１４年のクリミア併合を黙認したオバマの責任は重い​　そもそもの今日の布石は、２０１４年のクリミア併合にあった。この時、西側諸国は、ロシアに対して微温的な制裁に留めた。特にアメリカの大統領だったオバマは、当時副大統領だったバイデン氏の厳しい制裁をという勧告を無視して、表面的なものに留めた。　オバマの独裁国への対応は、終始、微温的で、この間、北朝鮮ならず者集団は核武装化を進め、またスターリニスト中国は南シナ海の一方的な埋め立て・軍事拠点化を進めた。オバマは、それを目にしながら、何ら制裁の手を打たなかった。　クリミア併合に対しても、同じだった。これにより、プーチンは、アメリカと西側を甘く見た。今年２月のウクライナ侵略開始に対しても、今度はバイデン大統領が、軍事介入をしないと事前に手の内を見せていたことから、クリミアと同様の「領土強奪→併合」も、黙認されると「誤解」した可能性が高い。​◎ナチ・ドイツのズデーテン併合を認めた英仏​　独裁者への融和的対応がいかに将来に禍根を残すかは、かつて１９３８年のナチ・ドイツのズデーテン地方（当時のチェコスロバキア領土）の併合を、ミュンヘン会談でイギリス、フランスが認めた歴史的過ちからも明らかだ。　ナチ・ドイツは、ここからさらに他国領を奪っても、イギリス、フランスは黙認すると増長し、翌年のポーランド侵略に踏み切り、第二次世界大戦へと至った。​◎自国領だから核で守る、と威嚇​　無視できないのは、４州の併合で、一方的に自国領と宣言した際、「すべての手段を用いて国土を守る」と、ウクライナの奪還に対してまたしても露骨に核威嚇を行ったことだ。これで、アメリカなどの西側の腰が引けると思ったのだろう。　しかし、西側諸国は威嚇に怯んではならない。場合によっては、先制核攻撃を行っても、プーチンの野望を挫けさせねばならない。それが、ミュンヘン会談とクリミア併合の教訓である。​◎ウクライナ人によってウクライナ領土を侵略させる卑劣さ​　プーチンが、４州の自国領化した、もう１つの狙いが、これによってはっきりした。すなわち４州はロシア領になったのだから、そこの住民はロシア人となった。だから４州の若者を徴兵し、ロシア侵略軍に組み入れようとしているのは明らかだ。すでに一部に、徴兵が行われている。　ウクライナ人を使ってウクライナ侵略を続けようとする卑劣な狙いである。　しかしそれは、プーチンへの叛乱に種を撒く行為だ。​・昨年の今日の日記：「ゲノムを通じて描き出したポリネシア諸島へ太平洋を渡る人類の大移住」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110020000/​​・昨年の明日の日記：「世界で最も超多忙な会社、ＴＳＭＣ（台湾積体電路製造）の安全保障は十分か」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110030000/​​お断り：都合により明日の日記はお休みします。​

  2022.10.02

• 

  エチオピア紀行（１８０）：ＮＭＥ＝同一遺跡で雌雄の性差の大きさを示した化石、ルーシーと「大きな顔」

  ​　ＮＭＥで「ルーシー」の展示のそばに、アウストラロピテクス・アファレンシスと思しき部分骨格が横たわっていた（写真）。​◎身元不明？　メモも取らず大失敗の部分骨格​　ところがメモもとらず、骨格そばの説明プレートも撮影しなかったので、これが何の個体か分からない。一連の写真のコマ順からアウストラロピテクス・アファレンシスであることは間違いないのだが、こんな化石があったのかどうか、僕の古人類学の知識にもない。　帰国後、ネットでほうぼうのサイトを探しても、名前（標本番号）が分からなかった。残念ながら不明なままに掲載する。​　この骨格レプリカのそばで、白人の老人と黒人の青年が観ていた（写真）。さすが国立博物館、フロアは僕がこれまであちこちで観てきた博物館と違い、広々としている。​​◎ルーシーのハダールで見つけた顔の付いた雄の頭蓋​　さて、ルーシーは死亡時年齢は成熟前と見られているが、残念ながら顔面を欠く（写真）。骨格が揃った化石でも、顔面まで保存される例はあまりない。顔面は、脳頭蓋と比べて骨が薄いからだ。前述の骨格も、脳頭蓋と顎は辛うじて残されているが、顔面はない。​　その顔面は、雄のものだが、後に発見された（写真）。原始性を示して頑丈で、「大きな顔」と俗称される。「ルーシー」を１９７４年に発見したアメリカのドナルド・ジョハンソンが、１９９２年に再びハダールに戻って見つけた断片で、見つかった地層は、ルーシーの包含層よりも上にあったので、年代はルーシーよりやや若く、約３００万年前と見られる。​​◎雌雄の性的二形の大きかったアファレンシス​　これら６０片近い骨片を調査隊のビル・キンベルらがＮＭＥに戻って、ジグソーパズルのように組み上げた。かつてルーシーは、ジョハンソンが母国のアメリカに持っていって分析したが、今はとうに海外には持ち出せないように変わっているのだ。　ルーシーには顔面が付いていなかったが、華奢で小型だった。しかしこの雄（ＡＬ４４４という化石番号）は大型で、おそらく推定身長は１．５メートルはあった。　動物で雌雄間の差の大きいことを「性的二形」と呼ぶ。例えば現生のマントヒヒでは、雄と雌とでは親子ほどの体格差がある。　つまり乏しい標本での判断だが、アウストラロピテクス・アファレンシスでは、現生のヒト、すなわち我々ホモ・サピエンスよりはるかに大きな雌雄差があったになる。​昨年の今日の日記：「スターリニスト中国の足下に忍び寄る不動産バブルの崩壊」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110010000/​

  2022.10.01

• 

  自国領土の一部がロシアに実質占領されているのに、ウクライナの側に立たないジョージアの闇

  　以前は「グルジア」と言われたが、今は「ジョージア」と呼ばれるコーカサス山脈の南の国がある。ワイン好きには「グルジア・ワイン」で著名で、実際、ジョージアは「ワイン発祥の地」とも呼ばれる。一説には、紀元前６０００年頃には、ワイン作りが始まったという。​◎古人類学では超重要なドマニシのある国​　僕には、関心を抱く２つのカテゴリーで、ジョージアを外せない。　１つは古人類学で、ドマニシという中世の城の地下から、約１７７万年前の古人類化石がいくつも見つかっていることだ。年代の古さと人類化石の豊富さで、ドマニシは世界でも超有名な遺跡となった。何回か、本ブログで取り上げている（１５年１１月１４日付日記：「ヒトはいつから障害者をケアするようになったのか？　東アフリカで野生チンパンジーの家族で障害児を２年間育てた観察結果」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201511140000/、及び１３年１１月３日付日記：「グルジア、ドマニシの古人類化石は早期ホモ属（ヒト属）観を変えるか」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201311030000/を参照）。​　ドマニシの発見で、ひょっとすると１８０万年前頃のホモ・エレクトスは老個体（写真＝推定年齢４０歳で歯が１本もないＤ３４４４頭蓋とＤ３９００下顎。ホモ・エレクトスでは、４０歳は異例の高齢）の介護をしていたのではないか、とそれまでのホモ・エレクトス観を変える知見が得られたし、アフリカで出現したホモ・エレクトスは、直後にはもう出アフリカしていたことが確認されたのだ。​◎ロシア革命で多数の革命家を輩出​　もう１つ、個人的な関心を抱くロシア史でも、ジョージアは見逃せない。ここは、ロシア革命を変質させ、今日の北朝鮮ならず者集団やスターリニスト中国に引き継がれた大粛正を命令したヨシフ・スターリンの故郷だからだ。​　その他、革命前のジョージアは、「諸民族の牢獄」のロシア帝国の支配下で、スターリン以外、多数の革命家を輩出した。スターリンの盟友だったが晩年にスターリンと衝突して自死に追い込まれた党政治局員だったグリゴリー・オルジョニキーゼ（写真）や同じく党幹部だったアヴェリ・エヌキーゼ、、一時はスターリンの後継者も狙ったラヴレンチー・ベリヤなどがいる。​​◎２００８年にロシアに侵略され、北部を実効支配されているのに​　それはさておき、このジョージア、２００８年にプーチンのロシアに侵略され、北部のアブハジアや南オセチアを実効支配されている。　それだけに、今年２月に同じプーチンのロシアに侵略されたウクライナに同情的だと思うのだが、どうもそうではない。確かにロシアのウクライナ侵略を批判するが、西側諸国による対ロシア制裁に加わっていない。ウクライナに対する軍事支援にも、後ろ向きだ。　さらにウクライナ側の疑念として、ロシアへの制裁逃れのために、ジョージアの銀行や企業が使われていると疑惑もある。​◎ロシア人の流入には寛容だが摩擦も​　一方で、プーチンの専制を嫌って国外脱出するロシア国民をビザ無しで受け入れている。２１日のロシアの「予備役動員」でさらに脱出者が増えたが、これも受け入れている。国境付近は、連日、２０キロ以上の車の大渋滞だ。​　あまりのロシア人の流入に、野党の間には安保上の危機感が高まり、国境で抗議集会も開いた。参加者はジョージアとウクライナの国旗を振り、ウクライナの国歌や民謡を演奏。「プーチンはテロリスト」、「ロシアは人殺し」などと書かれたプラカードを掲げた（写真）。​　珍商売も生まれている。ジョージアが自転車での国境通過を認めていることから、ロシアとの国境で自転車を５万ルーブル（約１２．５万円）で販売し、越境後にジョージア側で５０００ルーブルで買い戻し、それをまたロシア側に持って行って５万ルーブルで売るというビジネスだ。​◎オリガルヒのビジナ・イヴァニシヴィリの影​　腰が定まらないが、本音はプーチンの機嫌を損ねたくはない、という姿勢がほの見える。​　その背後には、ジョージアのＧＤＰの２割以上の資産を持つとされる大富豪ビジナ・イヴァニシヴィリがいるとされる。イヴァニシヴィリは、ソ連崩壊後のロシアで事業を広げ、莫大な財を成したオリガルヒだ（写真）。​　現与党の「ジョージアの夢」党を創設し、一時は首相も務めた。今の首相のイラクリ・ガリバシヴィリは、イヴァニシヴィリの盟友、子分であり、ジョージア政界を牛耳る。　イヴァニシヴィリは、２０１０年代に少なくともロシア企業１０社を所有していた。つまりロシアに持つ多数の権益は、そのまま対プーチンの融和姿勢に通じるのだ。​◎ジョージアだけＥＵ加盟申請をはねられる​　ウクライナへの怨恨もある。この６月２３日のＥＵ首脳会談で、加盟申請していたウクライナとモルドバは加盟候補国として承認されたのに、同じく申請していたジョージアだけは却下された。ウクライナはもちろんロシアから侵略されている国で、モルドバは国内に親ロシア傀儡国家を抱える。条件は同じはずなのに、ジョージアだけが「落選」した。理由は、国内民主化が不十分ということだ。　それを逆恨みするかのように、ガリバシヴィリ政権はウクライナがアメリカに働きかけた結果だとウクライナ非難を展開した。　自国領土がロシアに実質占領されているのに、ウクライナや西側の側に立たず、対ロシア融和姿勢を改めないジョージアに、プーチンの少なからぬ影響力の強さが分かるようだ。​昨年の今日の日記：「武漢肺炎、緊急事態宣言解除でも対策は終わらない；追記　自民新総裁に岸田氏」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202109300000/​

  2022.09.30

全5206件 (5206件中 701-750件目)

< 1 ... 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 >