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テーマ:珈琲井戸端会議(676)
カテゴリ:試行錯誤の跡
「断然うまい!コーヒーいれ方の定理」というテーマで去年の6月9日にNHKの「ためしてガッテン」で放送していました。
現在でも「ためしてガッテン」のサイトで過去の放送の内容を確認できますので、 詳しくはそちらを参照してください。 (NHKのサイトはトップページ以外にリンクするには承認が必要なようなので、 興味のある人は「ためしてガッテン」で検索して行ってください。) 珈琲の成分は非常に複雑で、科学的にわかっていない部分が多いようですが、 番組では苦みに着目して解説していました。 簡単にまとめますと、 コーヒーの苦味には2種類あり、それを「良いおこげ」と「悪いおこげ」と呼ぶことにする。 そして、 「良いおこげ」は(分子が小さいため)水に溶けやすい 「悪いおこげ」は(分子が大きいため)水に溶けにくい という性質がある。 「良いおこげ」だけを溶かして「悪いおこげ」が溶けないようにコーヒーを抽出すれば、 コクがあり(良い成分が多い)、かつキレのある(「悪いおこげ」が少ない)コーヒーができる。 ということでした。 ここまでは、非常に良くガッテンできました。 それでは、どのように抽出すれば、「良いおこげ」が多く、「悪いおこげ」が少ないコーヒーが できるのでしょうか。 ガッテン流の抽出方法を期待して見ていたのですが、ここから普通のペーパードリップの抽出方法になってしまいました。 蒸らしの段階で粉全体が均一に膨らむようにお湯を注げば、「良いおこげ」は、ますます溶けやすくなり、美味しいコーヒーが抽出できるということでした。 結局、蒸らしが重要であるというだけで、少しもの足りない感じがしましたが、 良い抽出とは何かを考える手段(良いおこげ、悪いおこげ)を提供した点で画期的でした。 コーヒーの成分は複雑なため「おこげ」は万能ではありませんが、いろいろ考えることができます。 番組では、プロと素人がコーヒーを淹れて、味を比較する実験もしていましたが、 プロは、コーヒーの粉を均一に蒸らしているので、コクとキレがあるコーヒーになる。 素人は、均一に蒸らしていないので、コクのない、キレの悪いコーヒーになる。 ということで、その理由まで説明していませんでした。 せっかく「おこげ」という思考ツールが提供されたのに、これではもったいないと思いまして、 自分なりに理由を考えてみました。(考えただけでですので、正しいという保証はありません。) 素人が抽出した場合は、 ・蒸らすためのお湯の注ぎ方にムラがあり、均一にコーヒーを蒸らすことができていない。 ・蒸らしの段階でお湯がたくさん注がれて成分が溶けやすくなっているところと、 お湯があまり注がれずに溶けにくくなっているところができてしまう。 ・人数分のコーヒーを抽出しているうちに、成分が溶けやすくなっているところからは、 「悪いおこげ」がでてきてしまう。 ・蒸らしが不十分で溶けにくくなっているところからは、「良いおこげ」が十分に溶ける前に 抽出が終わってしまう。 ・その結果、キレが悪い(「悪いおこげ」が多く後味が悪い)、コクがない(良い成分が十分に でていない)コーヒーになってしまう。 一方、プロが抽出した場合は、 ・蒸らしが均一なため、全体から均等に成分が抽出される。 ・ちょうど人数分のコーヒーが抽出されたところで、「良いおこげ」が十分に溶けて、 「悪いおこげ」がたくさん溶け出してくる前に終了できる。 ・このため、コクがあって(良い成分が十分に溶けている)、キレが良い(「悪いおこげ」が少ない) コーヒーになる。 というふうに説明できます。 この「おこげ」の考え方は、他にもいろいろと応用がききそうです。 抽出するときは、お湯をそっと乗せるように注いで、なるべく水圧をかけないようにしますが、 これは、お湯の水圧でコーヒーの粉が攪拌されると、分子の大きい「悪いおこげ」も溶けだしてくるからと説明できます。 水出しコーヒーも「おこげ」を使って説明しますと、 「良いおこげ」は、温度が低い水では、(数時間かかって)ゆっくり溶ける。 「悪いおこげ」は、温度が低い水では、溶けない。もしくは(数十時間以上で)ものすごくゆっくり溶ける。 ということになり、「良いおこげ」だけ溶けた時点で抽出をやめれば簡単に美味しい珈琲が抽出できるわけです。ただし、水だと「良いおこげ」も溶けにくくなるため、コーヒー豆は細かく挽いて成分を溶けやすくするなどの工夫が必要になります。 低温抽出も、お湯の温度を75~85℃程度に下げることで、 (分子の小さい)「良いおこげ」は、低温でも溶けやすい。 (分子の大きい)「悪いおこげ」は、低温だとますます溶けにくくなる。 というように解釈できて、通常の90℃前後のお湯をつかう抽出よりも、簡単に美味しい珈琲ができそうです。ただし、あまり低温にしすぎると、「良いおこげ」も溶けにくくなりますのでコクのないコーヒーになる危険性もあります。 分子の大きい「悪いおこげ」を溶かさないようにイメージしながらドリップしてみるのも、 面白いかもしれませんね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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