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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:映画祭
スクリーン2にて鑑賞、客席は最前列を除いてほぼ満席だ。本作は映画祭上映時には「バーリア」と言うタイトルで上映されました。
映画の話 威勢のいい牛飼いの息子として過ごした1930年代から、美しいマンニーナとの許されぬ恋と結婚、そして騒然としながらもどこか滑稽な政治の世界でのキャリア、さらには家庭生活に至るまで、ペッピーノ・トーレヌォーヴァの人生の旅路を追う・・・。 映画の感想 「ニュー・シネマ・パラダイス」で知られるジュゼッペ・トルナトーレ監督の最新作だ。本作は監督の父親の人生と故郷を愛情たっぷりに描いた監督にとって私的な作品になるだろう。映画は監督の父ベッピーノを中心とした3世代に渡る物語であり、監督が生まれ育った街バーリアを舞台にした作品だ。 トルナトーレ監督の前作「題名のない子守唄」が現代を舞台にしたサスペンス作品で意表つかれたが、本作は「ニュー・シネマ・パラダイス」や「マレーナ」と同じ過去を舞台にしたノスタルジックな作風であり、トルナトーレにとっては十八番的な作品だ。 本作は監督の父親=一般人を主人公にしているので話はそれほど面白くない。しかし、トルナトーレの手にかかると、実に魅力的な登場人物と饒舌なストーリーテリングで観客をグイグイと引き寄せる。映画はバーリアの全景を観客に俯瞰映像で見せる為に、面白いギミックを使ったオープニングから絶好調で私は思わず目頭が熱くなってしまった。きっと日本人が見てもこんな状態なのだから、その時代を生きたイタリア人たちは涙が溢れるのかもしれない。 映画は貧しい田舎町で暮らすぺッピーノの子供時代から幕を開ける。学校に通いながら家族の一員として牛飼いの仕事を手伝い日々を暮らす子供時代~少年~青年へと細かいエピソードを積み重ねてとてもテンポよく描かれる。ベッピーノを演じる役者も子役、少年、青年~晩年迄3人が当てられている。役者~次の役者へのつなぎ方も面白く丁度、スティーブン・スピルバーグ監督が「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」で使った手法と同じだ。少年時代のインディ~現在のインディへとつなげるシーンで、少年時代を演じたリバー・フェニックスにおなじみの帽子をかぶせ、顔を上げるとハリソン・フォードに変わるギミックと同じ手法が何度も使われているのが面白い。 映画はどのエピソードも本当に短く台詞で言って誤魔化そうとはせずに、監督はどんな細かいエピソードも映像で見せようとする。きっと相当なフィルムを回したと思われるし、相当なエキストラも動員されている。映画はペッピーノと監督の母となる美しい女性マンニーナとの愛が主軸となり、二人の親の世代と二人の間に生まれる3人の子供たちと3世代に渡る長き物語は実に私的であり、イタリアの歴史ともリンクしているので、イタリアの歩んだ歴史背景に疎い日本の観客には若干判り辛い所も否めない。 音楽を担当するのはトルナトーレ作品には欠かせない、イタリア映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネだ。監督の描く人情劇により深みを与えてくれる音の代弁者として惜しみなく手腕を発揮している。トルナトーレ・ファンとして2時間45分という至福時間はあっという間だ。それにしてもトルナトーレは相変わらず子役の使い方が上手い。特に主人公の次男を演じた子役は「ニュー・シネマ・パラダイス」の主人公“トト”に似ていた。 それにしてもトルナトーレ作品を見ると滅びの美学を感じてしまう。「ニュー・シネマ・パラダイス」では、トトの愛した映画館は最後に爆破されるが、映写技師アルフレードの残したフィルムと共にトトの心の中では永遠に輝き続ける。本作の幕引きも不思議なギミックを使いながら、監督の愛したバーリアと言う町に対して「ニュー・シネマ・パラダイス」と共通する滅びの美学を感じて目頭が熱くなってしまった。本作はまだ日本での配給が決まっていないと言う。是非、ミニシアター系でも良いので上映すべき作品である。 映画「バーリア」関連商品 【送料無料選択可!】ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版 [廉価版] / 洋画 [1990年ヘラルド:DVD未発売] みんな元気【字幕】●マルチェロ・マストロヤンニ (中古ビデオ/VHS) (DVD)海の上のピアニスト 【21%OFF!】マレーナ(DVD) <スマイルBEST>[DVDソフト] 題名のない子守唄 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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