大友克洋「さよならにっぽん」
初期傑作集第2弾。表題作は連作短篇で5部構成。外、「East of The Sun, West of The Moon」「聖者が街にやって来る」「A荘殺人事件」所収。単行本上梓は81年だが、表題作が描かれたのは70年代後半。当時の雰囲気が横溢している。漫画が日本SF大賞を受賞したことに衝撃を受け、条件反射のように漫画書房で「童夢」を購入したのは80年代前半。その圧倒的な画力の高さで、それまでの日本の漫画とは明らかに一線を画す「童夢」とその後の「AKIRA」があまりにも有名な大友だが、彼は初期のこの頃から絵は上手かった。絵は…。「童夢」が脚光を浴びている頃、中島梓がいみじくも「だって、あんまりおもしろくないんだもん」と語っていたように、その画力の高さとは裏腹に大友のストーリーテリングの才は薄い。それも初期のこの頃から変っていない。漫画家版アラン・ホールズワースなのである。