カテゴリ:ウルトラマラソン以外の完走記
< 歴史の道ー1 >
国道331号線を快調に走っていると、やがて雄樋川大橋に出た。橋は結構高い位置にあり、目の前には青い海が。ここ港川集落の石切り場からは旧石器時代の「港川人」の人骨が発掘されている。今から1万8千年前のもので、成人男子1体、成人女子3体分だ。DNAはインドネシア人や、縄文人と良く似ているようだ。 橋を渡ると南城市。かつての玉城村だ。右手の奥武島(おおしま)は漁業基地だが、かつては風葬の島だったようだ。沖縄の民俗学者仲松弥秀によれば、「おお」は死者を嘆き悲しむ声から来ている由。NAHAマラソンのスタート地点である奥武山(おおのやま)公園もかつては風葬の島で、今でもその名残が見られる。宮崎の青島も「おお」の系統を持つとか。 国道331号線の内側(山手)には「グスクロード」と呼ばれる道がある。グスクは城のケースだけでなく、砦や聖地、墓地の場合もある。いずれも小高い山の上に築かれ、古い時代の住居址と考えられるグスクもあるようだ。玉城(タマグスク)は自然の石灰岩からなるアーチを持つ小さな城で、拝所(うがんじゅ)も備えている。仲井真城(ナカイマグスク)は琉球第一王朝の王族が眠る墓地だ。 百名集落の道端に分譲マンションの休憩所。15時50分。ここのベンチに座りお握り、パン、バナナを食べて小休止。説明員の方にこれから与那原まで走り、明日はNAHAマラソンに出ると言うと大層な驚きぶり。さらに昨年は最北端の辺戸岬から与那原までの東海岸を150km走ったことを教えると、人間業ではないと言う。付近の新原(みいばる)ビーチには息子達と泳ぎに来たが、珊瑚の破片で足が痛かった思い出がある。 お礼を言って再び走り出す。眼下には海。エメラルドグリーンの個所はサンゴ礁の内側で、沖縄ではイノーと呼ばれる浅瀬。そしてサンゴ礁の外側は急に深くなるため濃い紺をしている。遥か彼方には平べったい久高島が見えた。あれは沖縄の祖先神であるアマミキヨとシネリキヨが渡って来た島だ。 右手の小道を海岸まで下りると「受水走水」(うきんじゅ・はいんじゅ)がある。沖縄で最も古い稲田と伝えられている小さな沼だ。稲は2人の祖先神が携えた神聖な植物。民俗学者柳田國男は、「海上の道」である沖縄は日本列島への稲の中継地と考えた。現在ではルートは別にあると考えられているが、古代米である赤米などは沖縄を経由した可能性があると思う。 さらに行くと道路の左側から大量の流水。標識によれば山上には垣花樋川(かきのはな・ふぃーじゃー)があるようだ。樋川は地層中の水脈を利用するための人工施設。河川が少ない沖縄では掘り抜き井戸(かー)と共に貴重な存在で、古来より聖なる場所として大切に扱われていた。この周辺には丘陵地が多く、石灰岩に沁み込んだ雨水が崖から噴き出し易い地形なのだろう。<続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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