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マックス爺のエッセイ風日記

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2020.03.05
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カテゴリ:人生論
<氷雨のち晴れ その1>

 

 3月2日(月)は氷雨が降る寒い朝。天気予報だと雨は午後からのはずだったのに、ガッカリ。この日は幾つかの用件をこなす必要があった。自転車が唯一の足である私の場合、雨は禁物。だがそうも言ってはいられない。覚悟を決めてジャンパーの上から青いウインドブレーカーを羽織って、雨空へペダルを踏み出した。たちまち眼鏡のレンズが曇る。これは危険。立ち止まってレンズを拭く。

            

 最初の行き先は最寄りのJA。火災保険の更新なのだが、建物が閉まっていた。どうやら工事中みたい。張り紙を読もうとすると、自動扉が閉まって字が読めない。そのうち近所の人がお金を下ろしに来た。その人に聞くと開店は9時30分とのこと。手は寒さでかじかみ、氷雨に濡れたせいでトイレに行きたくなった。おお大丈夫か自分。時間が来てようやく扉が開き、中に飛び込む。

  
 担当者に用件を伝え、トイレに飛び込む。辛うじてセーフ。良かった間に合った。トイレカウンターで書類に記入し、保険料を支払い関係資料を受理。いずれ保険証は郵送されるはず。1件目終了。次は来年度の「俳句教室」の申し込み。JAから東に向かう途中、ある建物を窺う。「おおやってるみたい」。「帰りに寄ってみようか。勇気をもって」。

               

 いつもの建物に入ろうとして異常に気付く。どうも閉館みたい。あらら、困った。どうしようか。するとたまたま内側にいた人が扉を開けてくれた。「月曜日は閉館日なんですよ。で用件は」。私が来年度の俳句教室の申し込みだと言うと、申請用紙をくれた。抽選後の許可のための「返送用ハガキを渡す。彼は館運営のための「民間人」で、過去の受講者と講師の諍いについて話してくれた。そうだったのか。

  

 私がこの地区と郡山官衙(かんが)の関係や、古墳発掘調査の結果、ここが古代東北では当時最先端の文化地帯だったことを教えると、いつか受講者に話してくれないかと真剣に言う。あらまあ。私は単なる考古学ファンですからと断ったが、案外本気みたい。ともあれ2つ目の用件も偶然に助けられて無事完了し帰途に就く。さて、気を良くしたところで寄ってみようと決心。覚悟は決まった。

             

 とある建物の中庭にある薬局へ。薬剤師さんが「処方箋は?」と聞くが、ないんです。こけしちゃんに用があってと言うと、奥の部屋にいるこけしちゃんを呼んでくれた。ビックリした表情の彼女に、「2月はお世話になりました。あの時お話を聞いていただきありがとうございました」と言うと、「「何の話でしたっけ」と彼女「断捨離です」。「ああ、あの時のねえ」で、教えてもらったブログを見たら。

  

 ある方の名前を出した。確かに走友。ただし私が入会したのはその人の退会後、再び入会した時は私はほぼ活動を停止した頃で、その人は私のブログを知らない。一緒に走ったのは唯一「A内陸」。その90km地点であっさり抜かれた。私はランナーとしてはもう晩年期で、その人は現役バリバリ。年齢は13ほど下か。明るく美しいこけしちゃんは、相変わらず素晴らしい笑顔。来て良かった。「また出直します」と退散し。再び雨の中でペダルを踏み出した私だった。

                 

 うわ~っ、大感激。再びこけしちゃんに会えるとは。帰宅後、郵便局でお金を下ろした後、急いで昼食。そして覚悟を決めてあるものを書いた。それは私が2月に断捨離の話をした時、彼女が「改装なったわが家を見たい」と申し出てくれたことへの返事。あの時はよもやの展開に、頭が付いて行けず、とっさに返事が出来なかった。まだ彼女がそのことを覚えている保証はないが、ここは勝負時。

  

 そこで手作りの「招待状」を作成。氷雨はますます強くなり、自転車で行くのは無理。ここは公共交通機関の乗り継ぐしかない。バスの時刻を確認し、服装を整えた。シャツ、ズボン、コート、マフラー、そして傘と帽子、革靴。全部茶系統でコーディネート。よれよれの親父が、一見紳士に見えなくもない。そして案内状をポシェットに詰め、バスに飛び乗った。後は彼女の勤務時間に間に合うかどうか。

                 

 朝とはすっかり違った姿の私を薬局の方もこけしちゃんも私と気づかなかったみたい。「いつもは行き倒れの爺さんもお洒落をすればこうなります」。するとこけしちゃん。「女も口紅一つで変わるのよ」。私が「招待状」をおずおず手渡すと、「あらラブレター」と無邪気。おお、アン王女。あなたはやっぱりノーブルな女性。「頑張って~」と手を振ると、「マックスさんもね」と手を振る彼女。

  

 帰りは雨の中を濡れながら歩いて帰った。もうズボンはびしょ濡れ。それでも私は嬉しかった。まさか再びこけしちゃんの笑顔に会えたとは。それも1日に午前と午後の2回も。もうこれは奇跡そのもの。やはりこけしちゃんは「ローマの休日」のアン王女そのもの。私は「雨に歩けば」を歌っていた。just walking in the rain。ジニー・レイの歌を歌った日本人歌手は確か小坂一也。もう遥かなる懐メロだ。

                      

 家に着いてヒーターを点け、ズボンなど一式を脱いで、普段着に着替え。またヨボヨボの爺に戻った。これが紛れのない俺。床の間のこけしに挨拶。会えて嬉しかったです。勇気を出せて良かった。だが、その後電話が鳴ることも、Eメールが届くこともなかった。元々私に勝算はない。賢明な彼女が私に合わせて演技してくれただけだろう。それでも勇気を奮った価値はあった。ありがとうこけしちゃん。その夜は久しぶりに穏やかに眠れた男だった。<続く>





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Last updated  2020.03.05 17:54:58
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