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マックス爺のエッセイ風日記

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2020.03.15
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カテゴリ:人生論
<デジャブー・既視感>

  

 2月のある日、新聞の集金人が訪ねて来た。いつの間にか宗教の話になった。真面目なのは分かったが、私の信条には合わない。ネットで調べると、どうやら同じ区内に、彼らの団体の施設があるようだ。そうか、それで分かった。これまでに何度も訪ねて来たことがあった。パンフレットを置いて行ったが、読まずに捨てた。ハッとするような美人だったが、その団体に関心はなかった。

                 

 しかし、待てよ。この既視感(デジャブー)は、以前にも感じたことがあるぞ。さて、何だったか。記憶を探っているうちに「アッ」と思った。毎月集金に来る人は他にもいる。Kちゃんだ。その彼女がわが家担当になって1年近くなるのに、話し込んだのは雪が降った1月下旬。雪は止んだが、強い風が吹いた日だった。その寒空の下で、彼女は私の話を2時間近く聞いてくれ、そのことに感激した私だった。

  

 だが、どうも腑に落ちない。会話中に彼女が大きく動揺してると感じたことが2度あったからだ。1回目は私が別れた妻に、「お父さんは女に騙される」と言われたと話した時。そして2番目は、「次男が時々帰省する」と言った時。なぜ無関係の彼女がそんなことに大きく反応したのかが不思議。

                     

 彼女はある団地で、誰かとホームシェアリングしてると言っていた。昨年初めて仙台に来て、ようやく暮らしに慣れたとも。前に住んでいた市では、何か大変な目に遭ったようだ。それが何なのかは不明だが、私は大体想像がついた。9年前の大震災の話になった時、「実家は大丈夫だったんですが」と彼女が言った。実家は被害に遭わなかったが、じゃあ「婚家」か。私はそう受け取った。

  

 私は彼女が気の毒で、何とか助けられないかと考えた。それが断捨離を始めるきっかけになったのは確か。そしてそれが自分の命を削る大作業になることを、全く予想してなかった。自分の年齢と体力を思えば、今回が断捨離を行う最後のチャンスであろうことは認識していた。前妻との離婚後3年近く経つが、子供たちの古い写真などの処分は手つかずのままだった。

                   

 断捨離を決心した日から、連日15時間ほど作業に熱中。あんまり頑張り過ぎて夜も眠れないほど。そこまで私は没頭していた。私にとって断捨離イコール「終活」。この機会を逃してはいけない。その一念で、辛い作業にも耐えることが出来た。だが、いざ子供たちの幼かったころの写真を捨てる段になると、心が怯んだ。何を捨て、彼らのために何を残すべきか、その判断に苦しんだ。

  

 しかし、不幸の典型とも言うべきわが家にも、幸福感に包まれていた時があった。若い時の妻はそれなりにきれいだったし、3人の子供たちも無邪気な笑顔を見せていた。その何十年か後に、まさかこんな事態が待ち受けていたとは。3人の子供達それぞれに相応しい思い出の品と、是非とも送ってやりたいアルバム類。それを必死でより分けた。結婚式の写真を捨てるのは逡巡したが、二度と見たくなくて捨てた。

                    

 幸い、松山勤務時代に写真館で撮った家族の記念写真が人数分あり、私の分も別に残した。妻の顔が齢を取るにつれて変貌して行くのが良く分かった。当然の現象だが、60歳近くから彼女の容貌にある特徴が表れ出した。驚いたのは「大人の休日倶楽部」の証明用。

  

 それは認知症特有の顔。なぜ彼女が平気でそんな写真を証明書用に使ったのかが疑問だった。今にして思えば、その当時の彼女が、それすら気づかないほど症状が進んでいたのだろう。実父の死、実兄の死、実姉の認知症発症。それらが、彼女の症状を加速したのかも知れない。

                    

 彼女の職場の責任者や、当時彼女が通っていた精神内科のドクターにも相談したが、職場のケアマネはその心配はないと断言し、ドクターは本人を診ないと診断は難しいと言った。だが、彼女は自分は正常で、何とか実姉を精神病院から退院させようとし、「聞く耳」はなかった。夫婦喧嘩の際に包丁を持ち出し、実父が亡くなった当夜は私の首を締めようと、階段を上って来たのが分かった。それでも私はそれをかわす「自信」があった。<続く>





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Last updated  2020.03.15 00:00:15
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