2005/10/05-07 槍ヶ岳 下山
10年以上前の山行記。こちらとこちらの続きです。10月7日 3日目5時前に起床。この日はしっかり眠ることが出来た。予定を繰り上げたので今日が最終日になる。思い出に残るであろう3日間が終わると考えると寂しくもあるが、帰らないワケにもいかない・・・帰りたくはないんだけど。まだ、日は昇ってなかったが、外はそれなりに明るくなってきていた。既に起き出している人も多く、特に迷惑も掛け無さそうだったので簡単に荷物の整理を始める。ダウンジャケットなど、まだすぐに使うようなモノも多いので、中途半端なところで中断。カメラを片手に外に出る。200510yari27 posted by (C)脱力登山家寒い。さすがに標高3000m。日は昇りつつあるが、気温はまだまだ低い。夜明け前の空の端が朱く染まっていくのを見ていると、荘厳な気分に・・・なっても良さそうなモノなんだけど、とにかく寒い!200510yari52 posted by (C)脱力登山家昨日の夕日も良かったが、今日の朝日は更に良かった。小屋のスタッフ曰く、「夕日も朝日も、こんなに綺麗なのは、年に3日もない」ということらしい。200510yari53 posted by (C)脱力登山家5時になり、朝食を摂っていると、東側の窓の外にきれいな日の出が見られた。素晴らしい御来光だ。今まで、山小屋に泊まっても良い日の出に出会えなかったので、うれしい。落ち着いて食事が出来なくなり、ついつい食堂の窓から撮影。とりあえず満足すると、食事に戻るが、それでもやっぱり落ち着かず、かき込むようにして食事を終えるとあわてて外に出る。200510yari54 posted by (C)脱力登山家もう東の空も朱に染まってはいなかったが、空に薄く広がる雲の表情もいい。高さを感じさせ。絵になるとまでは言わないが、気に入った一枚が撮れた。出発は7時。たまたま、大学生5人組と一緒になった。彼らは登ってきたルートを下るそうだ。「気を付けてね」と声を掛けると、「いろいろお世話になりました」と気持ちのいい返事が帰ってきた。「楽しかったよ。またね」そう言って、僕は西鎌尾根へ、2000mの下りに足を踏み出した。西側に下ることになるので、当然尾根が邪魔になって日は当たらない。風もそこそこ強いし、下りなのであまり体も暖まらない。寒いなぁ、と思いながら下っていると霜柱を発見。そりゃ、夜は氷点下に下がってるよなぁ。下り始めは急勾配。そのあとすぐにガラ場になり、尾根道に出るという変化に富んだ下り。ただし、途中で何度も後ろを振り返ったが、槍の穂先は見えず。近すぎることと、急勾配が原因らしい。歩き易い尾根をしばらく進むとになると、すぐに千丈沢乗越に到着する。ここまでの所要時間は40分ほど。双六岳はどれだか分からない(^^;)200510yari57 posted by (C)脱力登山家尾根の北側をのぞき込むと、なかなかいい感じの紅葉が広がっていた。地図を見ると、どうやら一般ルートは無さそうだ。荒らされていない自然のままの姿。これはこのままそっとしておきたい気分。尾根の南側、つまりこれから降りて行く方も、それなりに紅葉している。悪くは無い。200510yari58 posted by (C)脱力登山家飛騨乗越から下るルートを歩いている人が見える。こちらはこれから急勾配の下りだ。旅の終わりであること、急な勾配、眼下に広がる景色、どんよりした空、なんとなく立山剣御前からの雷鳥平への下りを思い出させる。道は結構不明瞭。迷うような心配はないが、狭く、あまり整備はされていない。獣道に近い感じでもある。15分ほどで飛騨乗越からの道と合流する。下りだからあまり時間を気にしていなかったが、標準タイムと比較すると倍以上も早いペースだ。これは後半バテるかも。さすがに汗をかいたので、シャツを脱いで調整。尾根から随分下ったので、もう風は気にならない。ここからはペースを落として、槍平小屋まで1時間で歩く。鮮やかな紅葉に目を奪われもするが、変化が少なく、少々退屈さを感じる。いつしか天気は晴れ渡っていた。雨が降るという予報はどうなった?現在位置も分かりにくいので、歩いていても張り合いがない。そんなわけで、槍平のキャンプ場を見つけた時は、随分ほっとした。槍平小屋では、下山中の3人と一緒になった。雨が降るって言うから降りてきたのに、こんないい天気になったっんじゃ騙されたような気分だ、なんて言っていた。全く同感である。しかし、いくら何でもこの天気が明日まで持つとは思えなかったから、下山してきても損をした気分にはならない。小屋でホットミルクをもらい、ゆっくり40分休憩して出発。ゆるやかな下りがずっと続く。ただし、足元は不安定。バランスをとり続けるために疲れが溜まってくる。滝谷の避難小屋までは35分。相変わらず標準タイムに対し、随分早い。しかし急速に疲労が現れてきた。10分だけ体を休め、すぐ出発。標準タイムなら残り2.5時間。ゴールはもう目の前の気になっていた。いきなりシャリバテ。急に足が動かなくなった。少し歩いては立ち止まり、苦しい思いをしながら、一歩一歩足を進める。周囲の地形と地図を見比べながら、白出沢出合はもうすぐ・・・という予測を立てては、何度も裏切られ、泣きたい気分になってきた頃、ようやく日が差す沢に出た。どれぐらい疲れていたかと言えば、幅30mほどの涸れ沢を横断することすら放棄してその場でザックを降ろしたくなるぐらい。それでも、なんとか沢を渡ってから休憩することにした。到着したのが11:45。ザックを降ろすと、きっかり15分、活動も思考も停止した。何もする気になれず、岩の上にヘタリ込んで笠ヶ岳の方角を見ながら、しばらく惚けていた。200510yari64 posted by (C)脱力登山家12時になると、無理やり動き始めた。こうしていても何かが解決する訳ではないし、とにかく昼なんだからご飯を食べよう。今日のお昼は槍ヶ岳山荘特製弁当である。しかし、疲労が酷すぎた。弁当がちっとも喉を通らない。なんとか三口だけ食べたが、それ以上は無理。食べなきゃダメだということは分かっているけど、食べられないのは仕方がない。しかも、頑張って食べる努力をする元気も残っていない。結局、弁当は三口食べただけで再びザックの中へ戻した。行動食のチョコを囓り、12:45に出発。すぐに歩き易い林道になった。これはありがたい。ペースは上がらないが、足も上がらないので平らな林道はとても嬉しかった。嬉しくてもスキップは出ない。足を引きずるように歩く。まったく誰とも会わない。新穂高は近いはずなのに、ここはそもそも誰も通らないルートなのか?13:20、穂高平避難小屋到着。避難小屋という名のワリに立派な小屋(というか牧場管理小屋?)だったが、ひとけはない。牛は一杯いたけど、今は食べる気にもならない(食うな!)。いつの間にか下り坂に差し掛かってきた空模様を気にしながらチョコでエネルギー補給し、5分ほどで出発。白出沢からの時間や、地図上の避難小屋の位置などから考えると、あと45分も歩けば新穂高のロープウェイ乗り場のハズだ。そこからはバスで平湯へ戻るだけ。実際、35分で到着できたのだが、この35分のつらさと言ったら、これまでの中で最大級のものだった。林道はいつまでも延々と続く。気分的には2時間ほど歩いた感覚だった。つらくても、歩かなければ帰れない。足を投げ出すようにしながら歩く。右下に砂防ダムの工事現場が見えてきた。下からトラックが上がってきた。久しぶりに見る人の姿だった。そのトラックが、前方100m程のところの広場に入ったかと思うと、クルリとUターンした。「連れてってケロ~!」 なんで”ケロ”?思わず声が出たが、その声はトラックに届く訳もなく、トラックはそのまま下って・・・砂防ダムの工事現場に入って行った。よかった・・・連れて行かれなくて・・・強制労働させられるところだった・・・新穂高のロープウェイ乗り場(標高1090m)に到着したのは14:00ちょうど。天気が良ければロープウェイで千石平園地 西穂高口まで上がって槍ヶ岳を見たい気分だったが、よくよく考えてみれば天気が悪いから下山してきたんだった。実際天気もかなり怪しくなってきている。到着すると、まず真っ先に乗り場の自販機でコーラを買う。空腹感はないが、エネルギーが切れているのは良く分かる。とにかく血糖値を上げなきゃ。しばらく休憩し、ようやく重い腰を上げる。バス乗り場まではもうちょこっと(50m?)だけ歩かなきゃならない。何だってロープウェイ乗り場で足を止めたのだろう? 腰を下ろしてしまったものだから、歩きだすのが億劫でしょうがない。バス乗り場で20分ほど(もっと時間が有ればアルペン浴場でお風呂に入ったのだけど)待ってバスに乗り込む。バスが走りだし栃尾温泉の辺りまで下ってくると、雨が振り出してきた。驚くほど激しい雨だった。やっぱり下山してきて正解だった。200510yaripano posted by (C)脱力登山家