Persian & Basque

イランプレミアリーグ最終節、勝ち点１差で名門エステグラルをムスタファ・デニズリ率いるパスが追う展開となった優勝争いはエステグラルの素晴らしい勝利で幕を閉じた。なかでも際立ったプレーを見せたのがイラン代表の弱点とされる左サイドの男達だ。ここ数年UAEとイランを往来し、気性の荒さから安定した結果を残せず、さらに怪我にも見舞われその才能を疲弊しつつあったニクバフト・ヴァへディが本来のスピード、フィジカルコンタクトの強さ、爆発的なパワーを見せつければ、パスのサイクロン、メイサム・マ二ーもPKを含むハットトリックを達成する。
(Meysam.Manaei)

さらにはアシストキングの座を射止めたエステグラル・アフヴァズのゴラム・レザ・エイディザデ(彼については過去ログ参照)も１ゴールを叩き込むなどIPL最終節はレフティーの素晴らしい競演が繰り広げられた。

ちなみに今季の主な左サイドの選手達のスタッツは

【LB Player stats】(2005~2006IPL)
Manaei.........(6goals,10assist)/27games
Madanchi......(1goal,5assist)/27games
Sattar.Zare...(1goal,5assist)/27games
Eidizadeh......(3goals,11assist)/26games
Vahedi.........(1goal,3assist)/24games
Yavarzadeh...(4goal,5assist)/24games

以上の通りで、メイサム・マナイーが成績としては最も優れた結果を残している。

このように見ると、イラン代表の左サイドの問題は国内に優れたレフティーが居ないことが原因では無いことを端的に表してはいないだろうか。事実今季のアシストランキングを見てもエイディザデ、マナイーという２大レフティーが１位と２位を独占しており、他にも多くのレフティーがランキングに名を連ねている。ではこの問題を招いた元凶は誰だ。それこそ愚かで頑固なクロアチア人監督に他ならない。ノスラティにこだわり批判を招き、応急処置であったはずのザレを使い続け、いざこざを起こしたバダヴィを追放し、ジャヴァド・シールザドやエイディザデを使い捨てにし、W杯を控えた今でさえ誰一人左サイドで成長させることも、定着させる事もできていない。勿論これは左サイドに限った話ではない。一方、就任１年目にしてジャヴァド・ネコーナムという主力を失いながらも優勝争いを演じたパスのムスタファ・デニズリの元で、メイサム・マナイーは目覚しい成長を成し遂げた。その名将は今季でイランを去る可能性が高い。


そして同じく左利きのストライカー、ゴラム・レザ・エナヤティは最終節でも２ゴールと２９試合で２１ゴールという金字塔をうちたて０１～０２、０４～０５に続く自身３度目の得点王の座を射止めた。一時はアフヴァズのファズリ（１７ゴール）やゾブ・アハンのラジャブザデー（１４ゴール）と争った得点王レースも最後には大きく引き離し圧倒的な得点力を見せ付けている。さらに２００１年から始まったIPLでの通算得点数は２位セパハンのハティービの４２ゴールを倍近く上回る８０ゴールという驚異的な記録を達成している。また今季はアブ・モスレム時代の同僚モジュタバ・ジャッバリの加入も好影響を及ぼし、また１試合２得点が４回、ハットトリックも２回という固め獲りが目に付く。頭でも右足でも左足でも得点できるまさしく理想のストライカーだが、経験不足を理由に代表においてはアリ・ダエイ（今季１１ゴール）のサブになることすら許されていない。代表選手の条件としてコンスタントに所属クラブでプレーする事をうたっているブランコだが、たとえ海外クラブであっても出番の少ない選手が無条件でスタメンを勝ち取る現状はあまりにも不公平ではないだろうか。ブランコは言う。「海外組と国内組ではレベルが違うし、国際経験にも差がある」と。だが、所属クラブに関しては本人に責任は無いし、その国際経験を積む場を与えていないのは一体誰だと言いたい。彼はインタビュアーのどうしてダエイを控えに回さないんだ？という質問に表情を一瞬凍らせて、搾り出すような声で「ダエイとハシェミアンはイラン最高のストライカーだ」と答えたのが印象的であった。もしかしたら彼を責めるのは酷なのかもしれない。彼の感情を押し込めたマリオネットのような表情がイランサッカーにはびこる暗い闇の全てを物語っているかのようであった。エナヤティが掲げたゴールデンブーツの金色の光が、その闇をうち破ってくれる事を願いたい。