テーマ:落語について(2336)
カテゴリ:パズル
「今日は……というが、実は27日の記事じゃ」
「分かってます」 「お昼に三遊亭円右師匠の葬儀に参列、新宿へ出て昼食をとり、楽譜がほしかったので銀座へ寄って、そのままお江戸日本橋亭へ」 「お忙しいことで。楽譜は何を」 「ふと思いついてシュトラウスの『春の声』をフルートでやってみたくなったのじゃ」 「ふと思いつくって……そういう人生送っているからね」 「それでは日本橋亭の報告にしよう」 「そうしましょう」 「前座は智太郎?、新人で漢字が分からない。『痴』かも」 「それは失礼でしょ」 「『子ほめ』の途中まで。まあこれからの人ということで……もう一人の前座が橘ノ冨多葉、『転失気』を演じた。わしが行くとよく『ラブレター』を演じていたが、痴楽のままで時代錯誤な部分が多い。中で3曲ほど歌謡曲が出るが、わしらの年齢でも懐メロとしてしか聞いたことのない曲ばかり。現代を取り入れないと生き残れないぞ、と苦情を申し入れたこともある」 「今日の『転失気』は古典ですね」 「そうじゃ。この噺は普通に演じても『転失気』の正体が分かったとたんにぱっと客席が明るくなる。この日の冨多葉は人物もしっかりしていたし、粗筋では書けないちょっとした台詞が洒落ていた。なかなかだったな」 「冨多葉さん、初めてほめられました。さて、ここからプログラムに載っている人で……まず神田京子さん」 「講談だが、ギャグや大袈裟な表現が多いな。わしは何か違うと思う……まあ、講談は聞き込んでいるとは言えないから……」 「歯切れが悪いね。この日は三遊亭遊之介が2席演じるんですね」 「若手勉強会なのじゃ。しかし、今日円右師匠の葬儀に出て、『次に死ぬのは自分かも知れない』なんて考える年ではないだろう……ギャグなのかな……」 「落語は」 「1席目は『雛鍔』、植木屋夫婦と子供、隠居、それぞれの台詞がいいな。ちょっと滑舌が悪いから、隠居に重みが足りないが、これは演者の持ち味で仕方がない、それ以上に植木屋と子供がいい。上出来じゃよ」 「中トリは春風亭小柳枝師匠」 「お得意の『小言幸兵衛』、いつも言っている通り、台詞の切れがいいぞ。江戸っ子の啖呵をもっと聞きたいと思うな……師匠、どうも、葬儀ではお世話になりまして。楽屋に差し入れましたのは、詰まらん物で……へい……どうか皆さんで……」 「ネットを私的に使わないで下さい」 「仲入り後は三遊亭春馬。珍しい『阿弥陀池』じゃ。これは上方落語で、東京では『新聞記事』という改作が演じられている。元のまま東京で聞くのは初めてじゃな。ネタは新鮮だが、まだこなれていないのかな、何か物足りなかったのは何じゃろう」 「何かが何だろうって、よく分かりませんね」 「北見マキのマジックをはさんで、遊之介の2席目。『三方一両損』をたっぷり。やはり奉行の重さはないが、二人の江戸っ子の性格の違いがよく出ていたし、二人の大家の違いも少し違うのじゃ。やはり人物をきちんと描くと面白いなあ」 「まあ、不満な部分も少しずつありますが」 「全体には満足の席だったね」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.03.29 18:51:32
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