名作落語大全集

「さあ、東京国際フォーラムから線路の下をくぐります。この道が鍛冶橋通り」
「はい、写真は」
「鍛冶橋の交差点。線路と交差点の間が江戸城の堀で、橋があったのじゃ。鍛冶町へ出るからその名があって、門では大名が防御に当たり、南北町奉行も交代で詰めた」
「へえ」
「狩野探幽がこの前の屋敷を拝領して鍛冶橋狩野派として有名。明治維新で門は壊され、橋が残っていたが、これも戦後埋立てられて消えてしまった」
「はい、歴史があるんですよ」

「こちらが福岡銀行」
「……何なんです」
「この辺りが千葉周作の弟、定吉の道場があった場所なのじゃ。１８５３年の地図に、先ほどの狩野屋敷として記録されている。坂本龍馬がこの道場で入るが、定吉が鳥取藩に仕官していたので、息子の重太郎に教わったという。その後もこの道場に来て、１８５８年に北辰一刀流長刀兵法の目録を伝授されている」
「はい。北辰一刀流は幕末に大流行しましたからね」

「道の向こうに見える明治製菓のビル」
「旗がチョコレートですねえ」

「さあ、中央通りを超えると国立近代美術館のフィルムセンターがございます」
「こちらもお馴染み。本日９つ目の美術館です」

「３月末日まで開催中なのが西部劇の世界展」
「懐かしいですねえ」
「真昼の決闘……ハイヌーンじゃな。リアルタイムで描かれた作品で、映画館でも正午に銃撃戦が始まるようにしたという」
「面白いですね」
「ポスターの展覧会じゃが、それだけ見ても楽しい。日本映画の歴史を堪能するなら時間をたっぷり取っておくこと」
「大家さんは急ぎ足で、２０分で出ちゃいました」
「さあ、今回最後の美術館へ参りましょう」
「はい……もしや……」
「それはまた次回」
「やっぱりね」