名作落語大全集

「さあ、鐘ヶ淵の散歩を続けましょう」
「前回、狸寺で有名な多聞寺へ参りました」
「写真はそのすぐ隣、香取神社」
「さあ、本日はどちらへ」

「こちらは荒川と隅田川が接近して、５００メートルも離れていない。間に彫られた水路を渡る」
「写真はその橋の上から……隅田川ですか」
「隅田川は西からへ流れて来るが、ここで急カーブし、２７０度も回って南へ流れる。写真はそのぐうっと曲がっている部分じゃ」
「これが名代の鐘ヶ淵ですね」
「白鬚橋公園の外れ、鐘淵中学校の脇に由来の看板が出ている。
　川の曲がり型が大工の使うさしがねに似ているから『かねが淵』となった。台東区にあった普門院が亀戸に移る時、梵鐘が落ちたというのは後から作られた話。明治の頃には紡績会社が出来、鐘ヶ淵紡績から『鐘紡』となった。昭和４４年に工場はなくなったが、跡地が利用されていることがよく分かるな」
「はい」

「さあ、北千住の方に移動して、最初に訪れたのは西光院」
「またしてもお寺巡りです」
「こちらは石出常軒の碑。石出帯刀吉深という名で、江戸町奉行の配下で牢屋奉行（断獄令）を勤めた。明暦の大火、いわゆる振袖火事の折、小伝馬町の牢に入っていた囚人を避難させてその命を救った」
「へえ」
「後に慣例となるが、それをやった最初の人なのじゃ。常軒というのは隠居後の号で、源氏物語の注釈を完成させている」
「すごい人ですねえ」
「この碑は息子が父の事績を書き残したもの。かなり風化して読めないが、『新編武蔵風土記稿』に一部が記録されている」
「面白いね」

「京成線堀切橋近くで線路とくぐると、十一面観世音が鎮座ましましていた」
「小さな祠ですね」

「このすぐ先にあるのが柳原千草園」
「植物園ですか」

「小さな流れをくみ入れ、雰囲気は悪くない」
「はい」

「花の中の少女像」
「はい……どうやらいつものように……」

「黄色いの」
「はい」

「ピンク」
「ほら……」

「紫」
「説明がいい加減になると思った」

「最後に白」
「はいはい」
「さあ、次回はここから北千住のお馴染みの場所まで含めてぶらぶらと参ります」
「いよいよ最後かな」