名作落語大全集

「さあ、昨年の ぢい散歩の報告」
「まだ残っています」
「今回は銀座へ」
「またですか」
「今月だけで三度目」
「目的は……銀ブラですか」
「銀ブラは今回も実現せず」
「では、何を……」

「はい、水野由紀さんの独演会」
「それ、音楽の時は演奏会って言うんですよ」
「いつから」
「前から」
「へええ……」
「そんなに驚くな」

「ＣＤArpeggioneSonata発売記念。彼女の２枚目のアルバム」
「へえ」
「１枚目はお馴染みというか、親しみやすい曲ばかりを並べたもの。それが２枚目でアルペジオーネ・ソナタじゃ。びっくりじゃな」
「大変身したんですね」
「そう。１枚目のＣＤだけだったら、こういう会に参加したかどうか……」
「はい」

「演奏会はまず１枚目のＣＤから親しみやすい曲、サン=サーンスの白鳥まで」
「それで、後半は」
「こちらのアルバムから、ショパンの序奏と華麗なるポロネーズがトリ」
「説明まで落語会みたい……ショパンのは大変な曲ですか」
「技術がしっかりしていないとだめじゃな。それにメロディに繊細さもある。彼女の演奏は偏っていないから素晴らしい」
「はい」
「ということで、後はサインをいただいて……ピアノが大活躍するんだから、ピアニストの方にも参加していただきたかったな」
「はい、どうでもいい感想ね」

「さて、ちょうどクリスマス明けの日だったので、イルミネーションを……」
「銀座通りですね」

「柳通りも……」
「さあ、説明が適当になるぞ」

「こちらは丸の内通り」
「毎年人気のイルミネーションですね」

「今年も同じだが、ミッキーマウス型のライトがある」
「へえ、どこでしょう」

「ほら、ここ、ここ」
「見えませんよ」
「……」
「……」
「……」
「どうしました、固まって……」
「今日伝えるべきことは全部伝えた」
「何ですそれ……帰るんでしょう」
「いや、まだあるの」
「え……どうなるの」
「続く」