テーマ:謎を解く(186)
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「さあ、あかねさすの歌の本当の意味を考えよう」
額田王:11「あかねさすの謎」 天皇(すめらみこと)、蒲生野(かまふの)に遊猟(みかり)する時に、額田王の作る歌 あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る (二〇・雑歌) 皇太子(ひつぎのみこと)の答ふる御歌 紫の にほへる妹(いも)を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我(あれ)恋ひめやも (二一・雑歌) 私の疑惑はこれらの歌が「雑歌」とされているところから始まった。恋の歌であれば「相聞」とされるべきである。つまり、恋の歌ではないときっぱり言っているのである。では何だっただろうのか。 この歌の注に次のように記されている。 紀に曰く、「天皇の七年丁卯(ていぼう)の夏五月五日、蒲生野に縦狩(みかり)す。時に、大皇弟(ひつぎのみこと)・諸王(おほきみたち)・内臣(うちのまへつきみ)また群臣(きへつきみたち)、皆悉(ことごとく)従ふ」といふ。 やはり公式行事だったのだ。天皇が即位した最初の薬草刈り、現代でも行われているが、重要な儀式である。その席で詠んだのであれば、公式の歌である。 つまり、元の夫婦が現在の夫に隠れて詠んだものと解釈していたが、それがなぜ公式に記録されているのか……そもそも隠れた恋というのが嘘だと分かる。 それでは公式の歌とした場合、天智天皇が弟から額田王を奪っていたらどうだろう。目の前で元の夫婦が愛のやり取りをするのが面白いだろうか。逆に額田王たちにはそうした気遣いがなかったのだろうか……つまり、こういう歌を天皇の前で堂々と読んだのだから、天智天皇が額田王を妻にしていたということ自体が嘘だということの証明になる。 それでは歌の本当の意味は何だったのか……そこに悩んだ訳だが、『源氏物語』を読んであっさりと解答が出て来てしまった。 「紅葉賀」の巻だ。天皇の紅葉狩りのために、源氏や頭中将らが青海波という舞を披露する。これは祝い事の時に欠かせないもので、天皇の身近な……『源氏物語』では息子が、天智天皇の場合は弟が舞うのである。『源氏物語』では、そのあとに源氏が思いを寄せている藤壺に歌を寄せる。 もの思ふに 立ち舞ふべくも あらぬ身の 袖うちふりし 心知りきや あなたへの思いが強いため、とても舞などしていられぬ私が、あなたのために袖を打ち振って舞った、その心をご存知でしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.06.04 06:50:24
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