テーマ:謎を解く(186)
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「さあ、英雄の最終回。この曲がどういう評価だったかをまとめよう」
ベートーヴェン:6「英雄の評価」 第3変奏で登場する新しいメロディが「エロイカ主題」、これは1801年、3年前にバレエ音楽「プロメテウスの創造物」作品43の終曲に登場している。同じ年の「12のコントル・ダンス」WoO14の第7曲でも使い、翌年には「15の変奏曲とフーガ」作品35も同じ主題で、この曲は「エロイカ変奏曲」と呼ばれている。 ベートーヴェンの場合は転用するのではなく、より良い作品を求めて試行錯誤するのである。モーツァルトが気に入らないとぱっぱと捨ててしまうのに対し、ベートーヴェンは何とか作品にならないかと創意工夫する様子が見られる。いずれにせよ、この交響曲がこのメロディを使う最後となる。完成したのである。 こうして印象的な主題が登場するが、あまりちゃんと扱わず、曲はハ短調になって最初の主題による変奏が現れ、この主題による小さなフーガが展開される。 第五変奏は「エロイカ主題」をフルートで華やかに。ト短調への変化があって低弦で最初の主題が出て行進曲風になる第六変奏が登場する。経過的な部分を経て百五小節もある展開が行われる。これは変奏として数えていいのかどうか悩む場面である。ともかく難しいのだ。 山場を迎えると、店舗を落として第七変奏。木管から次第に広がり、全員のフォルテシモで第八変奏が壮大に始まる。それに更にコーダがついて、その後半ではプレストになり、第1楽章の冒頭を思わせる主和音がガンガンと執拗に鳴って曲が終わる。 後回しになったが、初演は1804年12月、ロブコヴィッツ侯邸で、非公開だった。公開演奏は、翌年4月7日にウィーンのアン・デア・ウィーン劇場、第二部の最初にベートーヴェン自身の指揮で行われる。 『アルゲマイネ音楽新聞』では長すぎる、明るさと透明感、更に統一感が欲しいと言い、「一般に楽しまれるには、まだ多くのことが不足している」としている。展開など簡単にまとめたが、正直に言えば複雑怪奇で、説明のできる状態ではない。 ベートーヴェンは「合唱」を書くまで、自分の最高の作品はこれだと言っている。「第五じゃないんですか」というインタビュアーに「いや三番です」ときっぱり答えている。これはベートーヴェン特有の皮肉かも知れない。先のような酷評に対して、これこそ傑作なのだ、みんなが喜ぶような「第五」ではないと言うつもりだったのではなかろうか。 そして彼の作品で「合唱」ほど受け入れられなかった作品はない。だから、今度は「合唱」こそ自分の最高傑作だということになるのだろう。 いずれにせよ、それまでスケルツォなどを含む新しさはあったものの、古典的に偏っていたのが、この「英雄」では全く新しい世界を作ってしまった。新しいものは難しい。難しいものは受け入れられない、批判されるという構図があったものだと思う。逆を言えば、そういう批判もあることが、本当に新しい作品を生み出したのだという証拠になるのだ。 この曲以降、ベートーヴェンは意欲的な作品を次々生み出し、ウィーンは新しい音楽の世界を生み出す町としてイタリアに対抗出来る「音楽の都」になっていく。ベートーヴェンの作品によってそのように呼ばれる町が生まれるのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.07.27 07:33:54
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