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ベルリオーズ:11「幻想交響曲の分析:第3楽章」
第3楽章「田園の情景」Adagio 「夏のある夕暮に、若い芸術家はふたりの牧童の奏する牧笛に耳をかたむける。静かな自然のたたずまい。そよ風に樹々はささやき、未来への明るい希望に、彼の心はいっぱいにふくらむ。……しかし、そのとき恋人の姿が浮かび、彼の胸は、不吉な予感にわななく。もし、彼女が自分を裏切ったらどうしよう! やがて、ふたたび牧笛が聞こえてくるが、もうひとりの牧童はそれに答えようとしない。焦燥、日没、遠雷、孤独、そして静寂……」 導入部 1小節~:イングリッシュホルンが牧歌的なフレーズを歌うと、遠くでオーボエが答える。この導入は印象的でなかなか面白い。やりとりがしばらく続くと、 主題 20~:フルートとヴァイオリンが主題となるメロディを奏でる。 正直言えば、このメロディがあまりいいものとは言えない。この辺りから退屈になってしまうのだ。 ただ、これは現代の我々があまりに多種多様な音楽を聴いて分かっているから。この単純なメロディも、恋人との主題と絡み合わせるために作ったもので、単なる変奏曲ではないのである。 48~:木管の下る音程と弦の掛け合いがあって、第1ヴァイオリンの細かい動きになる。 69~:変奏1:そのまま第1ヴァイオリンが16分音符で変奏。木管の合いの手に乗ってヴィオラとチェロが旋律を弾く。 79~:展開がほとんどなく、落ち着かない雰囲気になって盛り上がる。 87~:焦燥をぶつけるような激しい音になるが、その合間に恋人の主題が聞こえる。しばらくして落ち着いていく。 113~:変奏2:テンポが戻り、弦の細かい動きに乗って、木管が旋律を吹く。クラリネットの旋律は新しい物に感じるかも知れない。盛り上がるが、すぐに落ち着く。 150~:弦が旋律を始めるが、木管楽器が恋人の主題を乗せる。 ベートーヴェンの『田園』のように慰めにはならず、自然の中に彼女の姿を思い出すという幻想を見ているのである。不安な気分で曲は静まって行く。 175~:冒頭のイングリッシュホルンが戻って来るが、もう答える者はいない。その代りティンパニによる雷鳴が聞こえる。曲はそのまま静かに終わる。 描写的な内容である。特に最後の牧笛と雷のやりとりは面白い。この雷を描写するために、2対のティンパニを要するのである。当時の人はこれも驚いただろう。 現代的には退屈な楽章に感じる人も多いだろうし、ベートーヴェンの変奏曲以上に何だか分からない展開であるが、面白さを工夫し、ドラマチックなものを作ろうという意欲を感じる楽章である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.12.01 16:23:23
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