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27:アモロ夫人の話
はい、パガニーニがドイツへ行った時の話ですか。私は人から聞いただけですが、大変だったそうですね。 入場料を倍にすると言い出して興行主や会場経営者が止めたということですね。それでも押し切ったんですよ。 みんなの言う通りでした。券売所で大騒ぎになってしまったんです。パガニーニはこれを聞いて、今夜の演奏会は中止すると宣告したのです。翌日、今度は安くなっているのだろうと思ったら、何と三倍の値段につり上げると言い出したのです。前日の騒ぎでみんな分かっていますから、二倍で騒ぎになったのに、三倍で切符が売れるものか……みんな呆れたそうです。 ところが、券売所は長蛇の列が出来ました。窓口で高いと文句を言う人がいると、後ろから「何やってるんだ」「早くしろ」「買わないなら出て行け」と声が上がるのです。 結局切符は完売、超満員の客は一人残らず満足して帰ったのです。 すべての演奏会は満員になりましたが、三回目くらいからですか。余りに素晴らしいテクニックで女性客が失神してしまったのです。それが噂になると、次の演奏会では十人の女性が、その次には三十人の女性が意識を失ってしまったのです。同時に男性客の方からは、影が悪魔に見えたという話が出てきました。演奏中にパガニーニの後ろに悪魔を見た。陰が悪魔に見えた途端に隠そうとしたのか、蝋燭がパッと消えた……というのを見て思わず声を上げる男性、それに気づいて女性たちが悲鳴を上げ、バタバタと失神するようになったのです。十数回の演奏会が予定されていたのに、五回目で中止となりました。 ええ、私が聞いたのはパガニーニがイタリアへ戻ってからです。失神と悪魔の噂はイタリアでもあっという間に広まりました。 ドイツへ行く前にも大変な人気だったのですが、帰ってからはそれに輪をかけた評判で、切符はダフ屋によって十倍二十倍になりました。それでイタリアでも最初からチケットを三倍で売るようになったのです。それでも売れて、とうとう普通の五倍の値段で売って、転売禁止を約束させたのです。転売されたものの場合は入場禁止、人に譲る時には会場に許可を得て、無償での譲り渡しの誓約書を書かせたのです。 そんな状態でも常に満員になりました。立ち見でもいいから十倍の入場料で入れてくれなんていう人もいたようですよ。 どこの演奏会でも、男性は影や背後に悪魔が現れるのを確かめようとしたり、パガニーニの足が舞台に付いているかどうかを確かめようというので、足を見ている人が多くなりました。女性は美しい旋律にうっとりとしたところへ悪魔のようなテクニックが来るんですから、失神が相次ぐのは当然じゃありませんか。 私ですか、もちろんです。パガニーニを聞いて失神しないなんて、女性の恥じゃありませんこと。 ※ ※ ※ MS88 アンダンティーノ ト長調 未詳 MS89 アンダンティーノ ハ長調 MS90 アレグレット イ長調 MS91 アレグレット イ長調 MS92 ワルツ ハ長調 以上4作、無伴奏ギターのための小曲。 ツィガンテの演奏を所有。 MS93 ロンド 未詳 MS94 ロンド ホ長調 (ロンドンチーノ) 無伴奏ギターのための小曲。 ツィガンテの演奏を所有。 MS95 アレグレット 未詳 MS96 マルチアとワルツ イ長調 MS97 アンダンティーノ ハ長調 MS98 シンフォニア ニ長調 (ロドヴィシアのためのシンフォニア) MS99 アンダンティーノ ト長調 MS100 ワルツ ハ長調 MS101 トリオ ハ長調 MS102 アンダンティーノ ヘ長調 以上7作、無伴奏ギターのための小曲。 ツィガンテの演奏を所有。ここではMS101をそのままMS100のトリオとして演奏している。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.03.01 12:54:51
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