たくさんの人が関わっている。
ラヂオの時間。
舞台は主に放送中のスタジオの中。
絶えず動き回って絶えず何かを考えているのだ。
脚本家は一人かもしれないし、
主役は一人監督は一人かも知れないが、
たくさんの人々が関わっているのだ。
彼ら彼女らがいなければ
『運命の女』は誰の耳にも届かなかったのである。

主演コンビの千本のっこ（戸田恵子）と
浜村錠（細川俊之）のおかげで
鈴木みやこ（鈴木京香）の脚本はあらぬ方向へ。
今回がデビュー作の内向的な彼女には
急な変更を受け入れられず
そのスジのプロ・バッキーさん（モロ師岡）が
変幻自在にストーリーをいじくりまわす。
とにかく番組ができればいいプロデューサー
牛島さん（西村雅彦）や
千本のっこに首ったけ？の編成マン
堀ノ内さん（布施明）も引っかき回し、
鈴木みやこ（鈴木京香）の物語は原型をとどめなくなる。
踏ん張るのはディレクター工藤学（唐沢寿明）。
思わぬところで大活躍なのは
警備員、伊織万作（藤村俊二）もと効果マン。

第３者のような素知らぬ顔をして
自分の仕事だけしているスタッフや共演者もいる。
だが彼らも思わぬところで大活躍する。
ヒトコトボロリが大きな展開を産み、
小さな動きが大きな動きの引き金となる。
大活躍といえば
広瀬満俊（井上順）、堀ノ内さん（布施明）
手のひらにあるものを
良くも悪くも大きく広げていた。
逆に伊織さん（藤村俊二）は
この現場に足りなかったものをもたらす。
海のないスタジオからマイクを通して、
リスナーに波の音が届いていた。

踏ん張るのはディレクター工藤学（唐沢寿明）。
誰もふんばらなければ現場の危機は収まらない。
バラバラに向かうベクトルを呼び戻し、
鈴木みやこ（鈴木京香）のいる中心へ
集めようとするがどうも上手くいかない。
なにせ監督がおもしろがってバラバラにするのだ。
三谷幸喜、映画初監督作品。
だがスタジオの外に出されても
工藤学（唐沢寿明）は番組をなんとか
当初のエンディングに引き戻していた。
たくさんの人々の協力で。

たくさんの人が関わっている。
ラヂオの時間。

一人ではないのだ。
あらゆる人々が
いろんなカタチで
思いもよらぬカタチで関わっている。
そこにいないリスナーでさえも。
大型のトラックを転がしながらも
大貫雷太（渡辺謙）はずっとドラマを聞いていた。
そして感動していた。
一人ではないのだ。
ラヂオの時間、リスナーもいる。
リスナーの気持ちが
ラヂオに関わる人たちの
次の仕事につながる。

エンディングまで映画は見逃せない。
千本のっこへ（戸田恵子）のラブソング。
美声を轟かせ堀ノ内さん（布施明）が唄う。
それだけではない。
豪華な共演者の名前が
アイウエオ順にながされる。
誰よりも作品は一人では作れないことを知る
三谷幸喜の気持ちに思えてくる。
敬意に思えてくる。